平成31年1月理事長定例記者会見

理事長定例記者会見

山川理事長の定例記者会見のトピックスをお伝えします

日時:平成31年1月11日(金) 13:30-14:30

場所:JAXA東京事務所 B1F プレゼンテーションルーム

司会:広報部長 鈴木 明子

新年年頭あいさつ

 皆様、あけましておめでとうございます。本年もどうぞ宜しくお願いします。

 昨年は、9月に種子島宇宙センターでは、最初のロケット打ち上げから50周年を迎え、10月にはJAXA発足から15周年を迎えた節目の年となりました。
 この節目の年となった昨年4月の理事長就任から、宇宙基本計画のもと、第4期中長期計画の具体的施策を着実に実行することに尽力してまいりました。
 基幹ロケットでございますH-IIAを2機、H-IIBを1機打上げまして、政府衛星であります情報収集衛星レーダ6号機、温室効果ガス観測技術衛星2号「いぶき2号」、H-IIBロケットによって国際宇宙ステーション補給機「こうのとり」7号機(HTV7)を打上げました。H-IIAの打上げでは、小型衛星も同時に搭載して、企業や大学等の超小型衛星も多く打ち上げることができ、これから多様な宇宙活動が広がるよい先駆けとなったと思っております。HTV搭載小型回収カプセルを地球に帰還させることができたことも、小さいながらも、日本の宇宙開発技術にとって大きなステップでございました。小惑星探査機「はやぶさ2」の「リュウグウ」への到着も、皆さまに大きく取り上げていただきました。
 諸外国との連携におきましては、金井飛行士の国際宇宙ステーションでの長期滞在、国際水星探査計画BepiColombo打上げも印象深い出来事でした。
 また昨年は大変災害の多い年でしたけれども、我々JAXAも人工衛星データを利用した災害対応を行いましたが、引き続き技術を磨いて、国内外のお役に立てるよう尽力してまいりたいと考えております。
 残り3か月となりました今年度ですけれども、後ほど詳しく触れますが、来週にはイプシロンロケット4号機による革新的衛星技術実証1号機の打上げ、そして「はやぶさ2」の「リュウグウ」タッチダウンも控えております。引き続き身を引き締め、成功を目指してまいります。
 来年度に入ってからになりますが、光データ中継衛星と「こうのとり」8号機の打ち上げが予定されています。年末には野口宇宙飛行士が3回目の宇宙飛行に挑みます。昨年同様、大変忙しい年になりそうです。
 また、今年は、アポロ11号が月に着陸してから50年目の年になります。世界の宇宙関係者が新たな目標を模索している中で、JAXAでも昨年設立しました国際宇宙探査センター等を通じて、次の時代を目指してまいりたいと考えております。
 JAXAは、今後も、政府、地方自治体、民間、アカデミア、国際機関を結ぶ宇宙航空分野のハブとして、日本のプレゼンスを最大限に発揮できるよう、日本全体の宇宙開発利用の拡大・強化に積極的に貢献してまいる所存です。

新年度予算について

 新年度(2019年度)予算の政府原案が決定されたところでございますけれども、その原案によりますと、JAXAの本予算額は1556億円、前年度比でいいますと15億円プラスで設定頂いております。また、今年度の補正予算がございますが、これは前年度同額の291億円を計上いただいております。主な項目を少しだけご紹介させていただきます。
 一つ目は、次期基幹ロケットでありますH3ロケットの開発費に補正と合わせて331億円が計上されております。
 その他、2019年度打上げ予定の光データ中継衛星(JDRS: Japanese Data Relay System)の開発費として、本予算そして補正予算を合わせて112億円、2020年度に打上げ予定の先進光学衛星(ALOS-3)/先進レーダ衛星(ALOS-4)の開発費として補正予算を合わせて合計89億円が計上されております。
 また、デブリ除去技術の実証に係る研究開発を推進するための予算として、新規に3億円が計上されております。宇宙デブリ問題は年々深刻度を増しており、持続的な宇宙開発のためには、その解決は必須ですが、決して1国だけで全て解決できるものではありません。そのような状況の中、日本が国際的なイニシアティブをとり、この問題解決に向けて真摯に取り組む姿勢は極めて重要だと考えております。
 二つ目は、昨年7月に新たな組織として立ち上げました「国際宇宙探査センター」による国際宇宙探査の推進についてですが、先日の宇宙開発戦略本部会合で安倍総理からのご指示にもありましたが、米国が構想する月近傍の有人拠点(Gateway)への参画に向け、日本の強みのある分野で積極的な貢献するために必要な技術検討等の研究開発費として、5億円が計上され、また、火星衛星探査計画(MMX)のフロントローディングの研究開発費として、16億円が計上されております。
 三つ目は、次世代航空科学技術の研究開発についてですが、特に、コアエンジン技術の実証などを確実に推進していくために37億円が計上されております。
 昨今、厳しい財政事情が続いておりますが、限られたリソースのもと、成果の最大化に向けまして、より効果的、効率的な研究開発を進めてまいりたいと考えております。引き続き、ご理解とご支援のほどよろしくお願いいたします。

イプシロン4号機の打上げについて

 いよいよ、小型実証衛星1号機(RAPIS-1: RAPid Innovative payload demonstration Satellite 1)、超小型衛星3機およびCube Sat3機の合計7つの衛星からなります革新的技術実証衛星1号機を搭載したイプシロンロケット4号機が、来週の1月17日(木)に内之浦宇宙空間観測所から打上げられる予定です。
 イプシロンロケット4号機は、昨年9月19日に内之浦宇宙空間観測所へ1段モータを搬入し、順次組立、そして点検作業を進めております。搭載する衛星については、昨年11月22日から複数衛星搭載機構への結合作業を開始しており、12月23日には頭胴部とロケットとの組み付けを完了しました。
 今週、1月8日深夜から9日にかけて、ロケット整備塔から発射位置までの移動など、打上げ当日の作業を模擬するリハーサルも実施しました。引き続き1月17日の打上げに向けて着実に作業を進めていきたいと考えております。

イプシロン4号機のリハーサル時の機体公開の様子(1月8日)

1段再使用化に向けた飛行実験フェーズ1(RV-X)の研究状況について

 JAXAでは、宇宙基本計画のもと、再使用型宇宙輸送システムの研究開発として、小型実験機の飛行実験とロケット1段再使用化飛行の実現に向けた取り組みを行っております。
 打ち上げから着陸、再使用までの一連の飛行・運用シーケンスにおける誘導制御技術、推進薬マネジメント技術、そしてエンジン再整備技術を重要なシステム技術として認識しており、小型実験機RV-X、RVXというのはReusable Vehicle -. eXperimentのRとVとXを用いた名前ですが、このRVXを使った着陸フェーズの誘導制御実証を行う実験フェーズ1と、そしてフランスのCNES/ドイツのDLRとの国際協力によって実施し、再突入に向けエンジンを噴射して姿勢を変えるブーストバックなどの実証に取り組むカリスト(CALLISTO)というCALLISTO飛行実証の実験フェーズ2、この2つの段階的な研究開発により技術的知見を蓄積することを目的としています。
 本日はこの中で、そのフェーズ1について話をしたいと思います。フェーズ1の技術開発には、2015年まで実施されておりました宇宙科学研究所(ISAS)の再使用エンジン研究の成果が活用されており、また、飛行試験時には航空部門の低層風予測、DREAMSというふうに技術を呼んでおりますけれども、そのDREAMSという低層風の予測やD-SENDという実験によって得られた統計的誘導制御技術が活用される予定です。
 昨年9月から10月にかけ、秋田県にございます能代ロケット実験場にて実施しましたRV-X第1次地上燃焼試験では、推力4トン級の再使用エキスパンダー・ブリードサイクルエンジンを用いまして、推力100%から40%までの推力制御を行う6回のステージ燃焼試験に国内で初めて成功しました。特に試験期間の後半では、各試験後の準備から次の試験実施までを中一日での少人数・短サイクルによる試験運用を実現しまして、高頻度な繰り返し運用を目指すエンジン/推進系の開発、および運用技術等の世界トップクラスの独自技術を獲得するとともに、今後の飛行試験に向けた小型実験機RV-Xやその地上設備についての技術課題も抽出することができました。
 今後、得られた課題に適切に対応するとともに、工程表に示されました2019年度に第2次地上燃焼試験およびRV-Xの飛行試験を成功裏に実施するため、関係諸機関のご協力のもと全力で取り組んでまいりたいと考えております。 

JAXAの衛星データと産総研の大規模AIクラウド計算システムを用いた共同研究について

 第4期中長期計画におきまして、先端技術の活用等による新産業創出への貢献として、JAXAは、衛星データの利用促進に力を入れております。
 その一環として、先月25日に、国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)と、「衛星データのAI解析手法の研究開発に関する協定」を締結し、JAXAが保有する大量の衛星データを自動解析する人工知能、いわゆるAI技術の研究開発を開始しました。
 これまで、人工衛星による災害観測時における浸水や土砂災害などの災害発生箇所の推定には、衛星データを元にして、限られた専門家による解析処理が必須でした。JAXAの陸域観測技術衛星2号「だいち2号」などに搭載されておりますLバンド合成開口レーダ、これをPALSAR2と呼びますけれども、この合成開口レーダは、天候や昼夜に関わらず継続して観測可能なため、得られる衛星データは爆発的に増加しています。特に、農業、水循環、生態系、防災分野においては、大量のデータを迅速に解析処理するための解析手法や機械学習の必要性とともに、膨大な計算機リソースの確保も問題となっていました。
 この課題を解決するために、JAXAが30年間以上にわたって蓄積してきましたSARデータ、合成開口レーダのデータをはじめとする大量の衛星データと、産総研が昨年8月より運用を開始しました世界トップクラスの性能、スパコン性能ランキング世界第7位だそうですけれども、この性能を持つ大規模AI橋渡しクラウド計算システム(英語ではAI BridgingCloud Infrastructure、略してABCI)を相互利用する枠組みを構築することにより、AI技術による新たな解析手法の研究開発を進めることになりました。
 この協定のもと、JAXAの持つ衛星データの内、日本域、全球レベルのデータセットとして整備されている衛星データと、産総研が所有する大規模AIクラウド計算システム(ABCI)を用いて、人間の能力では容易に得られない情報を迅速に抽出するための技術開発に着手します。
 また、JAXAの衛星データに加え、産総研の保有する衛星データ、具体的に言いますと、ASTERセンサー、Landsat衛星、Cバンドという領域を測定する合成開口レーダーでありますSentinel-1および2等、そしてさらに情報通信研究機構(NICT)の保有しますXバンドの航空機SARデータも利用可能な環境を整えます。「だいち2号」(ALOS-2)などに搭載されておりますLバンドSARは電波の透過性に優れており、植生の影響を受けにくいため、国土の7割が植生に覆われているわが国やアジアなどの国々において、火山、地震などによる地殻変動や災害前後の地表面の変化抽出に有利となります。このような特徴を活かして、JAXAのみが保有しておりますLバンドという周波数帯のデータによる全球の蓄積データと他衛星からのCバンド、Xバンドの合成開口レーダーデータ(SARデータ)および光学データを組み合わせて、計算システムでありますABCI上で高速かつ自動での解析処理を実現するとともに、広域の災害情報の抽出精度を高めることを期待しています。
 JAXA及び産総研の研究者及び外部研究者が研究開発を進められる環境を整備することで、災害等の分野での利用拡大を目指していきます。

小惑星探査機「はやぶさ2」について

 小惑星探査機「はやぶさ2」は、11月下旬~12月下旬の「合」期間に対応する運用を終了しました。「合」というのは、すでに記者会見等でご説明しているかと思いますけれども、太陽に対して地球と探査機が反対側のところにあって通信の環境が非常に厳しい状況を指しておりますけれども、この「はやぶさ2」の姿勢や通信状態、各搭載機器ともに健全であることを、「はやぶさ2」より受信したデータから確認しました。探査機状態は正常です。
 「はやぶさ2」は今月から再び小惑星リュウグウ近傍での観測活動を行い、早ければ来月にもリュウグウへのタッチダウンを行って、サンプルの採取を試みる予定です。地球から約3億キロ離れたリュウグウの表面へ、高精度で誘導する難しい運用となります。
 リュウグウにおいて、「はやぶさ2」の1回目のタッチダウン候補地は現時点で2か所となっており、候補地の岩の状況、探査機の安全性の確保の観点や、それぞれの候補地へ降下する精度をどこまで追い込めるかといった情報の比較検討など、タッチダウンへ向けた検討作業を「はやぶさ2」プロジェクトチームが引き続き実施しているところであります。2月6日には検討作業の結果を皆さまにご報告する記者説明会を実施致しますので、是非ご参集いただければと考えております。

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