平成31年4月理事長定例記者会見

理事長定例記者会見

山川理事長の定例記者会見のトピックスをお伝えします

日時:平成31年4月19日(金) 13:30-14:30

場所:JAXA東京事務所 B1F プレゼンテーションルーム

司会:広報部長 鈴木 明子

平成31年度の事業計画について

 昨年4月に私が理事長に就任いたしましてから、1年が経ちました。国内では各省庁はもちろん地方自治体や産業界、海外のさまざまな機関と連携を図ることをスタートできた1年間、と考えております。
 国内外との連携をさらに加速させて、JAXAの研究開発やプロジェクトの成果が特に政策判断に生かされて、生活に利用され根付いていくようにしていくこと、そして、過去の技術を十分に活用しつつ、日本の宇宙・航空分野において挑戦的な開発を行っていきたいと考えておりまして、これは昨年度から変わっておりません。
 今年度の事業計画について、現状をご報告します。
 今年度は、種子島宇宙センターより、光データ中継衛星(JDRS: Japanese Data Relay System)、そして「こうのとり」8号機の打ち上げが予定されています。また、野口宇宙飛行士、星出宇宙飛行士の両名は、国際宇宙ステーション(ISS)への3回目のフライトを目指して、訓練を継続しているところでございます。「はやぶさ2」については、後程詳細をお話ししますけれども、今年末にいよいよ小惑星リュウグウを出発し、地球へ帰還するための準備に入ることになります。
 また、この4月より組織改正を行い、理事の担当業務の変更をしております。
 これまで輸送技術および衛星系システム開発・運用および衛星利用に関する業務を統括しておりました宇宙技術部門から、H3ロケットを含む輸送系システムの開発および打上げ業務のみが独立し、「宇宙輸送技術部門」を新たに設置いたしました。
 先週皆さまにお越しいただきました三菱重工業(MHI)田代試験場での、「LE-9」エンジンと実機を模擬したタンクを組み合わせた第1段厚肉タンクステージ燃焼試験(BFT)の2基体制でのシリーズの試験を終了しました。この燃焼試験は、これから続いていくロケットをシステムとしてまとめ上げていくための大規模な試験の第一歩でしたが、この成功で1つの山場を越えたと考えております。次期基幹ロケットでありますH3ロケットの開発も、理事の布野が統括する新しい組織体制にて着実に進めてまいります。
 また、衛星系システム開発・運用および衛星利用を統括する宇宙技術部門につきましては、理事の今井が統括いたします。宇宙技術部門の中に、新たに、後ほど話をいたします「高精度測位システムプロジェクトチーム」を設置いたしました。準天頂衛星システムに係る内閣府からの受託に基づき、2023年度目途の7機体制の構築に向け、高精度測位システムの開発を着実に進めてまいりたいと考えております。
 また、これまで航空技術部門を統括していた理事の佐野が、新たに研究開発部門も統括します。理事の今井が宇宙技術部門に移りましたので、研究開発部門は航空部門と合わせて理事の佐野が統括するということでございます。
 今後も、成果の最大化に向けまして、より効果的、効率的な研究開発を進めてまいりたいと考えております。引き続き、ご理解とご支援のほどよろしくお願いいたします。

準天頂衛星システム「みちびき」にかかる内閣府からの受託について

 先ほど、宇宙技術部門に設置したと申しあげました高精度測位システムプロジェクトチームについてですが、準天頂衛星システム「みちびき」は、JAXAが初号機の開発・実証運用した後、内閣府により、昨年11月から4機体制によるサービスが開始されています。
 また、昨年12月に改訂されました宇宙基本計画工程表におきましは、米国GPS等に依存しない持続測位を実現することを可能にするために、2023年度目処の7機体制構築に向け、JAXAとの連携を強化して機能・性能向上を図り、着実に開発を進めることが明示されました。
 こうした中、JAXAは、内閣府から5号機、6号機、7号機の測位ミッションペイロードの開発に係る受託を受けまして、本年4月より、新たに高精度測位システムプロジェクトチームを発足させたところです。今後は、本事業を確実に推進するとともに、安全保障の確保、産業振興、そして国際競争力強化の観点から、引き続き技術面でシステム向上に貢献をしてまいりたいと考えております。

米国出張の報告について

 先々週から先週にかけまして、私が米国へ出張に行ってまいりました。
 まず、4月5日(金)に、ワシントンDCの旧日本大使公邸におきまして、在米日本大使館と共同で「日米宇宙航空協力セミナー」を開催いたしました。NASAのブライデンスタイン長官をはじめとしまして、NASAおよび米国政府関係者、産業界などから総勢100名以上もの多くの方々にご参加いただきまして、セミナー終了後のレセプションも盛会のうちに終えることができました。私からは、JAXAの今年度の事業説明をさせていただくとともに、JAXAワシントン駐在員事務所が設立40周年を迎えたことを報告いたしました。
 翌週、つまり先週になりますが、4月8日(月)から11日(木)にかけまして、「第35回スペースシンポジウム」に出席してまいりました。本スペースシンポジウムは、アメリカのコロラド州コロラドスプリングスにおいて毎年開催されているものですが、米国最大の宇宙関連シンポジウムです。
 米国における、先日の第5回国家宇宙会議で、米国のペンス副大統領より「5年以内に有人月着陸を目指す」というメッセージが発表されましたが、全体を通じまして、米国内外のパートナーや産業界へ与えたインパクトは大きく、公開セッションや会談等において宇宙探査関連の議論が活発に行われたという印象を持ちました。
 私は、プレナリーセッションにおきまして、「はやぶさ2」をはじめとしたJAXAの直近の成果や、計画中の将来ミッションなどを紹介してまいりました。本セッションの中で、JAXAとトヨタ自動車株式会社が共同で進めております国際宇宙探査ミッションにおける有人与圧ローバの検討に、トヨタ自動車のもとで、新たに株式会社ブリヂストンが参画することも紹介させていただきました。有人与圧ローバは、本格的な月面の探査・利用におきまして重要な役割を担う要素でありますが、国際宇宙探査に挑戦する仲間が増え、検討が加速することを大変嬉しく思っております。
 シンポジウムにおきましては、ほかに、宇宙機関長会議に出席したほか、NASAや欧州宇宙機関(ESA)をはじめとする各国の宇宙機関や政府機関等との会談を実施し、強固な協力関係を確認するとともに、将来に向けた協力の可能性についての意見交換を行うことができました。今回の出席を通じまして、海外におけるJAXAのプレゼンスを十分に発揮できたものと考えております。

「はやぶさ2」の衝突装置運用と今後の計画について

 「はやぶさ2」は、4月5日に衝突装置(SCI)を分離し、クレーター生成運用を実施いたしました。SCIの分離は、「はやぶさ2」本体に搭載されました光学航法カメラ(ONC-W1)と中間赤外カメラ(TIR)の両者で確認がされました。そして、本体から分離されましたカメラ(DCAM3)の撮像によって、SCIがリュウグウに衝突し、飛散物が発生したことも確認ができました。
 SCI運用後の「はやぶさ2」は、飛散物回避のため退避軌道に入っていましたが、3回の軌道修正を行って、現在ホームポジション(HP)に復帰中です。
 今後は、4月24日午後にリュウグウに向けて降下を開始し、4月25日11時過ぎには小惑星リュウグウ上空1.7kmまで接近して、約90分間、観測を行う予定です。ここでリュウグウ表面の画像を取得し、事前の観測運用で取得した画像と比較してクレーターを探索する予定です。そして、リュウグウ内部のサンプル回収を目指して、クレーター内部または周辺にタッチダウンするのに安全な場所があるかどうか、検討を続ける予定です。

 こちら(※)は、以前、「はやぶさ2」観測成果論文がScience誌のウェブサイトに掲載されたことについてプレスリリースをさせていただきましたが、「はやぶさ2」が撮影した小惑星リュウグウが、本日のScience誌の表紙を飾ったというご報告でございます。

最後に

 先月ご紹介いたしましたワイヤレス給電技術の研究開発へのクラウドファンディングによる寄付金募集についてですが、4月11日までに300名を超える多くの皆様からの多大なるご支援により、無事に目標額でありました450万円を達成することができ、本日時点で、465万5千円となっております。皆様に多くの記事として取り上げて頂いたおかげではないかと考えております。厚く御礼申し上げます。今後も、継続的に開発状況や日々の活動等の情報発信を行うこととしておりますので、是非引き続きご覧いただければと思います。

 また、別途お知らせにて既にご案内しておりますが、来月5月15日(水)13:30より、日本橋のステーションコンファレンス東京5Fサピアホールにおきまして「高分解能リモートセンシング衛星シンポジウム」を開催する予定でございます。このシンポジウムでは、先進光学衛星(ALOS-3)および先進レーダ衛星(ALOS-4)の開発状況や利用推進に関するご報告を行う予定です。是非取材していただければと思います。

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