2019年(令和元年)6月理事長定例記者会見

理事長定例記者会見

山川理事長の定例記者会見のトピックスをお伝えします

日時:2019年(令和元年)6月7日(金) 13:30-14:30

場所:JAXA東京事務所 B1F プレゼンテーションルーム

司会:広報部長 鈴木 明子

防災グローバルプラットフォームへの参加について

 スイスのジュネーブ国際会議場におきまして、5月13日(月)~17日(金)に開催されました第6回防災グローバルプラットフォームに参加してまいりました。このプラットフォームは、国連防災機関(UNDRR: UN Office for Disaster Risk Reduction)が隔年で主催しており、世界各国の政府防災関係者、および国連の防災関係機関が参加する国際会議です。
 ハイレベルセッションの1つであります“Risk-informed Public and Private Investment(リスク情報に基づいた公共投資と民間投資)”というセッションでは、ここで私に加え、ザンビアの防災担当大臣、ドミニカ共和国の経済計画開発省大臣、フィリピンのSMアジアの創始者、SMアジアというのはフィリピン最大の大型モールの会社です、UN Global Compactボードの5名が登壇してパネルディスカッションが行われました。UN Global Compact というのは、20年程前に当時の国連事務総長でありましたコフィー・アナン氏が提唱したイニシアチブで、企業のたとえば環境等の原則を求めたものですが、それに賛同する民間企業が作っている団体です。そのボードメンバーの1人の方が登壇しておりました。
 私の冒頭の基調ステートメントでは、宇宙技術と仙台防災枠組み(2015年の第3回国連世界防災会議にて制定)との繋がり、衛星画像による国内および海外の災害対応への活用とその発展、さらにJAXAが主導しておりますセンチネルアジアの活動および最近の活動事例について紹介をいたしました。センチネルアジアというのは、アジア太平洋地域において衛星データを活用して自然災害の被害を低減させるための国際的な協力プロジェクトでございます。
 パネルディスカッションにおきましては、モデレータからの質問に答える形で、実際に衛星データを利用する防災ユーザーとの連携が重要であり、その活動例として、フィリピンにおける衛星データを用いた土砂災害の警報システムの取り組みについて紹介しました。そして、セッションの最後に、私からは宇宙技術はサイエンスだけではなく、減災・防災活動や気候変動にも取り組んでいることをメッセージとしてお伝えしました。
 このようなハイレベル会合で発言したことで、各国の政府レベルの防災関係機関に衛星画像が防災分野に多く活用されてきていることを認識していただき、さらに防災分野におけるJAXAのプレゼンスを高めることができたと感じております。

新たな宇宙用慣性基準装置(IRU)の実現性検討に関する共同研究開発パートナーの募集について

 JAXAの研究開発部門におきまして、ジャイロセンサ複数台から構成される高精度な宇宙用慣性基準装置 (IRU:Inertial Reference Unit)をJAXAと共同で研究開発する国内企業パートナーを現在公募中です。
 ジャイロセンサとは、人工衛星の宇宙空間に対する姿勢を計測するセンサであり、ミッションの成立性を左右する重要なセンサです。現在、たとえばだいち2号など地球観測衛星などには、国産の機械式ジャイロセンサが用いられておりまして、信頼性も高く、各衛星に対して適合したものとなっております。
 しかしながら、近い将来、たとえば高速度の光通信や即時応答性の高い観測要求など、ミッションが高精度化する、あるいは高アジリティ化(敏捷性)するといった高度化が進むにつれまして、より振動のない(擾乱のない)、より早い回転角速度(回転レート)が検知可能な、新たな方式のジャイロセンサが必要になると考えております。
 そのような将来のミッションニーズに応えられるようなジャイロセンサは現在国産では存在しておらず、今後もジャイロセンサの市場で、国内産業の国際的競争力を維持するためには、新方式ジャイロセンサの開発は喫緊の課題となっているところです。
 現在、将来の革新的衛星技術実証プログラム等の実証機会を利用して、ちなみに第1回目の実証プログラムの衛星打上げが今年1月にイプシロンロケットから実施されましたが、この将来の機会を利用して、ジャイロセンサ部の軌道上実証の機会を提供する計画を検討中であり、まず今年度は、実証モデル製作開始前のフロントローディングを実施したいと考えております。
 今回の国内企業パートナーとの共同研究を通じて新たなジャイロセンサの開発技術を国内企業が獲得することができれば、ジャイロセンサは多くの分野で活用される技術のため、将来的には例えば車両等の移動体、船舶、航空機など多くの他産業への展開が期待されるところです。JAXAとしても、本取り組みを通じて、国内産業の競争力強化に貢献するとともに、新たなイノベーションの創出を期待しているところです。
 なお、このパートナーの募集についてですが、提案要請書の交付は来週6月13日まで、皆さまからのご提案書の締切は7月8日となっております。ご関心のある企業の皆さまにおかれましてはぜひご検討いただければと思います。詳しくは、JAXAの調達情報のWebページに書かれておりますので、是非ともご参照いただければと思います。

「きぼう」利用の取り組みについて

 国際宇宙ステーションにございます我が国の実験棟「きぼう」について、「きぼう」利用では、科学研究や民間による利用拡大を進めていますが、打ち上げ手段を持たない国々との宇宙開発利用を通じた国際協力にも取り組んでいるところです。たとえば国連宇宙部との共同プログラム「KiboCUBE(超小型衛星放出機会の提供)」もその一つですが、他にも国連の定めた持続可能な開発目標「SDGs」があり、世界全体の持続的な成長の実現に向けて、宇宙開発利用を社会課題解決に向けたツールとして有効に進めていくことが重要ではないかと考えているところです。
 そのSDGsに向けた「きぼう」利用の直近の取り組みを2つご紹介します。一つはマレーシアとの協力、もう一つは東京大学を通じたルワンダとの協力です。
 マレーシアとは、マレーシア宇宙庁(ANGKASA)との協力協定により、JAXAの宇宙ステーションにございます簡易曝露実験装置(ExHAM)を活用して、マレーシアプトラ大学(UPM)が開発しました光ファイバーのサンプルを、5月30日に「きぼう」の船外に搬出・設置しました。このサンプルは宇宙空間に1年程度曝露して、宇宙用放射線線量計としての光ファイバー実証実験を行います。マレーシアとは、今回の協力を通じて更に継続的な関係を構築していく計画です。
 ルワンダ政府関係機関は、地上のセンサ情報を収集するStore & Forward技術を水資源管理等の実利用に活用する実験のために、東京大学と共同でルワンダ初の人工衛星RWASAT-1(ルワサットワン)を開発しました。RWASAT-1は、今年5月16日にルワンダで開催されたアフリカ最大級のICT会合でありますTransform Africa Summit 2019におきまして、東京大学からルワンダ政府に引き渡されました。そして、東京大学とJAXAとで締結しております「新たに「きぼう」を最大限活用するための具体的な連携協力協定」の第一弾として、RWASAT-1を「きぼう」からの放出することを予定しています。8月には第7回アフリカ開発会議(TICAD)が横浜で開催されますが、ルワンダとの協力は、SDGsが掲げる目標に対し、JAXAの宇宙分野からの貢献として、アピールできればと考えております。

「はやぶさ2」の状況と今後の計画について

 先月5月28日から30日にかけて、「はやぶさ2」の低高度降下観測運用を行いました。「はやぶさ2」は30日の11:18(機上、日本時刻)、小惑星リュウグウ表面から高度約9mの地点から、2つ目となりますターゲットマーカを分離しました。この投下したターゲットマーカは、光学航法カメラ(ONC-W1)の撮影によって、目標としておりました人工クレーター付近の着陸地点候補であります、C01と我々が呼んでいる領域への投下に無事成功したことを確認しました。
 2回目のタッチダウン運用の実施判断について引き続き慎重に進めているところですが、今回のターゲットマーカ投下運用の成功により、2回目のタッチダウン運用に向けた布石を一つずつ打っている状態と考えております。
 そして、「はやぶさ2」プロジェクトは次の低高度降下観測運用の検討を進めております。こちらについては、来週6月11日に開催いたします「はやぶさ2」の定例記者説明会にて情報をお伝えできると思いますので、ぜひお越しいただければと思います。
 なお、このたび、「はやぶさ」と「はやぶさ2」ミッションが「COOL JAPAN AWARD 2019」を受賞いたしましたので、ご紹介いたします。先月5月27日に、理事の國中が授賞式に出席してまいりました。この賞は、一般社団法人COOL JAPAN協議会主催により、世界各国の外国人審査で"クールジャパン"を発掘・認定されるものと聞いております。引き続き、ご理解とご支援のほどよろしくお願いいたします。

「JAXAシンポジム」の開催について

 JAXAシンポジウムを毎年開催しておりますが、今年は7月16日(火)18:00~20:30に有楽町朝日ホールにて、2部構成で開催する予定です。
 第1部では、昨年度からスタートしました第4期中期計画の初年度を終えての事業の成果と今後の事業の見通しに加えまして、ホットトピックスとして「はやぶさ2」の現状や、H3ロケットの開発状況、月・惑星探査の今後などについて報告をいたします。第2部では、「宇宙開発とサブカルチャー」というテーマでパネルディスカッションを行う予定です。
 詳細が決まり次第、速やかにJAXAホームページ等でお知らせする予定です。

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