2021年(令和3年)1月理事長定例記者会見

理事長定例記者会見

山川理事長の定例記者会見のトピックスをお伝えします

日時:2021年(令和3年)1月15日(金) 13:30-14:15

場所:オンライン会見

司会:広報部長 鈴木 明子

新年のご挨拶

 明けましておめでとうございます。本年も何卒宜しくお願い申し上げます。

 現在も、新型コロナウイルス感染症との戦いが続いておりますが、昨年からこれまでもJAXAはテレワーク勤務を積極的に活用しまして、業務を進めてまいりました。先日、政府が2回目の緊急事態宣言を発出したことを受けまして、1月8日には、私からJAXA役職員及び関係者に対しまして、テレワーク勤務の強化を指示いたしました。出勤率の7割削減を目指すなどの政府の基本的対処方針に沿って、引き続き、感染症拡大防止対策の徹底を、最重要課題として取り組んでいきたいと考えております。
 このような中でも、2021年のJAXAは重要な事業を多く控えています。野口宇宙飛行士の国際宇宙ステーション(ISS)での活動と帰還、そして星出宇宙飛行士の船長(コマンダー)としてのISS長期滞在、H3ロケットの開発も正念場となります。また、先進光学衛星「だいち3号」(ALOS-3)の開発、そして「革新的衛星技術実証2号機」の開発と、そのイプシロンロケットによる打上げも予定しております。
 さらに、「はやぶさ2」では、12月から引き続きまして、採取しましたサンプルの一次キュレーション作業として、サンプルの詳細なカタログ化を行っております。これらは本年6月以降、本格的に開始される初期分析、そして国内外の研究機関にサンプルを提供する国際公募研究において、重要なステップとなります。今後の分析を通じまして、新たな知見が得られることを期待しているところでございます。
 これら様々な取り組みを通しまして、今年もJAXA役職員及び関係者一丸となって、頑張ってまいりたいと思います。

2021年度予算財務省内示について

 昨年12月に、2021年度予算の政府原案が決定されました。原案によりますと、JAXAの本予算額は1,571億円で、前年度比1,400万円増、また、今年度の補正予算は573億円、対前年度比256億円増となっております。したがって、今年度の補正予算と2021年度本予算の合計では2,144億円、対前年度比で256億円増を計上していただきました。
 主な項目は概算要求時と変更なく、米国の提案する国際宇宙探査「アルテミス計画」参画に向けた研究開発、H3ロケット開発やそのペイロードとなります先進レーダ衛星(ALOS-4)の開発、そして、次世代航空科学技術の研究開発などの推進、また、新規事業としましては「はやぶさ2」拡張ミッション、将来宇宙輸送システムの研究開発プログラム、そして小型技術刷新衛星研究開発プログラムに必要な予算を計上していただきました。
 また、政府全体の宇宙関連予算も最大規模の4,496億円に増額されております。昨今の厳しい財政事情において、このような増額計上をしていただきましたことは、国民の皆様はじめ、政府、自治体、スタートアップ企業を含む産業界、学術研究分野の研究者から「しっかりやってもらいたい」という強いメッセージと捉えておりまして、非常に身が引き締まる思いであります。我々に与えられました役割と責務を再認識して皆さまのご期待に応えるべく、事業を遂行してまいりたいと考えております。

野口宇宙飛行士のISS活動状況及び新規宇宙飛行士募集について

 野口宇宙飛行士のISS滞在は2か月を経過し、「きぼう」日本実験棟における、さまざまな実験作業、ISSのメンテナンスなど、順調に任務を遂行しております。
 特に12月からは、「きぼう」を使って、再生医療につながるiPS細胞を用いた立体培養に関する実験も実施しております。野口宇宙飛行士は、12月8日から実験サンプルの実験装置への取付け、細胞の培養、サンプルの状態を確認するため、顕微鏡観察の準備作業等を行いました。実験を終えたサンプルは、ドラゴン補給船で昨日14日に、地球に帰還しました。今後、研究者による解析が行われます。この実験ではiPS細胞由来の細胞塊を用いて、大血管を付与した立体臓器の創出を目指しています。つまり、毛細血管ではなく、太い血管の大血管を表していて、これを用いることで、大型の臓器やより生体に近い臓器の創出が期待できると伺っております。この大血管を付与した立体臓器の創出を目指した宇宙実験は世界初となります。

 また、今年の秋頃の新しい宇宙飛行士募集についてですが、昨年の発表以降、多くの皆様から反響をいただきまして、期待されていることを実感しております。アルテミス計画への参画をはじめ、宇宙探査活動が国際協力で展開していくにつれ、人類の活動領域は拡大していきます。この国際宇宙探査時代を迎えるにあたりまして、これまで宇宙機関だけで考えておりました応募条件、すなわち宇宙飛行士に求められる能力やスキルも、多様化させていく必要があると考えております。
 そのため、JAXAでは募集に先立ち、選抜試験の募集から基礎訓練に至るまでに役立つアイデアやノウハウなど、民間企業の皆様がお持ちの情報をお寄せいただきたいと考えております。来週にはなりますが、詳細はRFI(情報提供要請)という形でお知らせをいたします。併せて、月末には、そのオンライン説明会も開催する予定です。さらに、応募条件等に対する一般の方々からのご意見を伺う、パブリックコメントも同時に募らせていただきます。宇宙飛行士を目指す方はもちろんのこと、多くの皆様からの情報提供やご意見をお待ちしています。

アメリカ海洋大気庁(NOAA)との「全球衛星観測に係る協力に関する了解覚書」の締結について

 昨年の話になりますが、12月11日に、アメリカ海洋大気庁(NOAA)との間で「全球衛星観測に係る協力に関する了解覚書」を締結いたしました。NOAAは、海洋と大気に関する調査および研究を専門とする、米国商務省の機関の一つで、米国のさまざまな地球観測衛星を運用している機関です。
 JAXAとNOAAは、JAXAの水循環変動観測衛星「しずく」(GCOM-W)を2012年に打ち上げて以降、良好な協力関係を築いております。
 この衛星「しずく」に搭載しましたマイクロ波放射計(AMSR2)が取得する全球観測データを効率的に、かつ迅速に受信するため、NOAAが所有します米国内の受信局に、リアルタイムで直接データの伝送等を行うとともに、NOAAからは、高頻度で受信可能な高緯度に位置する地上局の支援を受けております。また、JAXAのAMSR2データと、NOAAが運用しております環境観測衛星「JPSS」1号機の取得データとの間で校正検証作業を相互に実施するなどの活動も行っております。
 このたびの了解覚書の締結によりまして、協力範囲を拡大して、現在、2023年度の打上げを目指して環境省、国立環境研究所、そしてJAXAの3者で共同開発を進めております「温室効果ガスおよび水循環観測技術衛星」(GOSAT-GW)に搭載します、次世代マイクロ波放射計(AMSR3)についても継続して協力を推進していくこととなりました。これによりましてNOAAとは20年近いパートナーシップ関係を維持し、発展させていくこととなります。
 このマイクロ波放射計は、地表面や海面、そして雲の中の水に関する物理量を、雲を透過して観測することが可能なセンサで、これによって取得したデータは、気候変動に伴う水循環変動を把握し、また社会生活への影響予測や対策を行うなど、さまざまな利用ニーズに向けた活用が期待されております。例えばNOAAにおきましては、ハリケーンの予測情報の精度向上や、海面水温や海氷観測による気候変動モニタリング能力の強化に、現在JAXAのAMSR2のデータが活用されております。
 今後もJAXAは、国際パートナーと協力しながら、効率的かつ協調的な地球環境のモニタリングに貢献してまいりたいと思います。

日米宇宙航空協力セミナーの開催について

 一昨日(1月13日)に政府からも発表がございましたが、このたび、「民生用月周回有人拠点のための協力に関する日本国政府とアメリカ合衆国航空宇宙局との間の了解覚書」に、杉山在米国日本国大使館特命全権大使とブライデンスタインNASA長官との間で署名がなされました。
 今回署名されました了解覚書は、日本が月周回有人拠点「ゲートウェイ」の居住棟へ機器等を提供することや、NASAが日本人宇宙飛行士のゲートウェイへの搭乗機会を提供することなど、昨年7月に萩生田文部科学大臣とNASA長官の間で確認されましたゲートウェイに関する協力内容を可能とする、法的枠組みとなるものです。実施機関でありますJAXAは、政府方針及び合意の内容に則りまして、国際宇宙探査の推進に、より一層、着実に取り組んでまいりたいと思います。

 なお、今回の締結の機会を捉えまして、JAXAおよび在アメリカ合衆国日本国大使館との共催で「日米宇宙航空協力セミナー2021」をオンラインで開催いたします。このセミナーの副題を“アルテミス時代の幕開け”として、杉山大使、井上宇宙政策担当大臣、萩生田文部科学大臣、そしてNASAのジャーズィック局長から今後の展望や期待などについてご挨拶をいただくほか、私自身もJAXAプログラムの現状と将来について講演をいたします。日本時間で、本日から明日にかけての深夜午前1時から、という時間帯にはなりますが、今年はオンラインでの開催となりますので、ぜひご視聴いただければと思います。

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