2021年(令和3年)4月理事長定例記者会見

理事長定例記者会見

山川理事長の定例記者会見のトピックスをお伝えします

日時:2021年(令和3年)4月9日(金) 13:30-14:15

場所:オンライン会見

司会:広報部長 佐々木 薫

令和3年度の事業計画について

 4月に入りまして、2021年度がスタートしたところです。4月1日には新入職員36名がJAXAに入構しました。これから多くの経験の中で、宇宙そして航空のプロフェッショナルとしての力を身に着けてくれると期待しているところです。
 さて、今年度は、2018年度から始まりました、第4期の中長期目標期間のちょうど中間の年度ということになります。前半を振り返りまして、後半につなげていくためにも重要な年度であり、さらにその先の次の第5期以降の将来を見据えた方向性を示すための準備期間と私は位置づけているところです。
 この重要な年度におきまして、3月26日には国会で本年度予算が可決されまして、JAXAとしては、2020年度補正予算とそして2021年度本予算の合計2,144億円についてご承認をいただいたところです。
 今年1月の会見時にも述べましたが、改めまして国民の皆様をはじめ、政府、自治体、産業界、そして学術研究分野などのステークホルダーの皆様からの期待の高まりや宇宙航空事業が担う役割の大きさに真摯に向き合って、JAXAは責務を全うしていきたいと考えているところです。
 こういった事業の環境のもとで、今年度、着実に実施していくべき事業の状況をいくつかご紹介させていただきたいと思います。
 まず、星出宇宙飛行士のクルードラゴン宇宙船運用2 号機(Crew-2)の打上げ及び国際宇宙ステーション(ISS)長期滞在の開始、野口宇宙飛行士の地球帰還が予定されております。また、H3ロケット試験機1号機による「だいち3号」(ALOS-3)の打上げ、そしてイプシロンロケットによる革新的衛星技術実証2号機の打上げ、観測ロケットの打上げも予定しております。
 H3ロケットにつきましては、引き続き開発の山場が続いているところです。
 また、衛星「だいち3号」の開発は、現在、衛星システムとして打上げ環境や宇宙空間での真空環境、温度差のある過酷な環境に耐えるかなどの試験を行っているところです。試験機1号機となりますH3ロケットの搭載は初めてになりますので、この点からも打上げに向けた準備として大きなポイントとなっているところです。
 もう一つの衛星であります革新的衛星技術実証2号機については、JAXAが開発をします「小型実証衛星2号機(RAISE-2)」、及び超小型衛星4機、さらにキューブサット4機、合わせて9機の衛星を打ち上げる予定です。それぞれの衛星とも、現在、フライトモデルの開発試験を進めておりまして、こちらも開発の山場を迎えているところです。この9機の衛星を搭載します革新的衛星技術実証2号機を打ち上げるイプシロンロケットは、前回の打上げは2019年1月でしたので、それ以来の打上げとなります。JAXAは関連企業と一丸となって、現在打上げに向けた作業を着実に進めているところです。
 そして、これらの打上げ等の事業以外にも、JAXAは研究開発機関として、先導的な研究や技術開発を行い、そして生み出した成果、あるいは価値というものを社会に展開していきたいと考えております。
 本日は産業界との連携について一つご紹介したいと思います。JAXAにとって産業界との連携も一つの大きな柱となっておりまして、先般、「科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律」の改正が令和3年4月1日に施行されることによりまして、JAXAは、JAXAの研究開発成果を活用する法人に対して出資並びに人的及び技術的な援助の業務を行うことが可能となりました。
 この「科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律」に基づいて、法律では3つの出資対象先を想定しております。まず、出資等を行う研究開発法人の研究開発成果を活用するベンチャー(いわゆる研究開発法人発ベンチャー)、これが1つ目の対象先となります。2つ目が、出資等を行う研究開発法人発ベンチャーに対して必要な助言、そして資金供給等を行うベンチャーキャピタル又はファンド(いわゆるベンチャーキャピタル等)に対して、そして3つ目が成果活用等支援法人に対してです。
 これに伴いまして、JAXAはこの4月1日付で組織改編を実施し、出資業務を統括する担当理事を配置するとともに、新事業促進部が同業務を所管することといたしました。本業務は、JAXAの研究開発成果等の最大化及び社会実装の実現に貢献することに加えまして、我が国の産業競争力及び産業科学技術基盤の維持・強化並びに科学技術・イノベーション創出の活性化に寄与することが目的となります。
 JAXAは、これまでもさまざまな産業界との連携を実施しており、例えば、小型衛星のロケット相乗り、国際宇宙ステーション関係で言えば「きぼう」日本実験棟からの衛星放出、あるいは、先ほどこれから2号機を打ち上げるという話をしましたが、「革新的衛星技術実証プログラム」といった宇宙実証の機会を提供すること、また、宇宙探査関連で言いますと「宇宙探査イノベーションハブ」、航空関連で言いますと「次世代航空イノベーションハブ」、そして新事業促進部で推進しております「宇宙イノベーションパートナーシップ(J-SPARC)」など、こういったさまざまなことに取り組んできました。こういった取り組みに加えまして、今回出資業務も産業振興の施策の一つとして活用していきたいと考えているところです。

野口宇宙飛行士、星出宇宙飛行士の活動状況について

 星出宇宙飛行士が搭乗するクルードラゴン宇宙船運用2号機(Crew-2)の打上げは4月22日(木)午後7時11分(日本時間)に、また、野口宇宙飛行士の地球帰還は4月29日(木)午前1時35分(日本時間)に向けて、それぞれ準備を進めることにつきましてNASAと合意をいたしました。国際宇宙ステーションの運用状況などに応じて、最終的な日時が決まりましたら改めてお知らせをいたします。
 この予定通りにいけば、長期滞在クルーであります日本人宇宙飛行士が初めて同時にISSに滞在することになります。野口宇宙飛行士、星出宇宙飛行士ともに経験豊富であり、それぞれの強みを生かしてISSミッションに貢献することはもちろん、また日本人宇宙飛行士のプレゼンスの向上に努めてくれると信じております。
 また、ISSにおいても、Crew-2到着に向けた準備が整えられているところです。先日4月5日には、Crew-2宇宙船がISSにドッキングする予定のポートを空けるために、それまで付いておりましたCrew-1の宇宙船を一度ISSから離脱させて、別のポートに再ドッキングさせる作業(リロケーション)が離脱から再結合まで全自動制御で実施され、無事完了いたしました。その時に、Crew-1宇宙船が何らかの事由によって再結合ができない場合、このCrew-1宇宙船は地上に帰還することになるために野口宇宙飛行士ほか4名のクルーが宇宙船に搭乗して行ったわけです。このように安全とリスク管理が徹底して行われる中、再結合が完了して、私としては大変安堵しているところです。
 野口宇宙飛行士の宇宙滞在は早いもので残り1か月弱となりまして、星出宇宙飛行士はこれから約半年の宇宙滞在となります。日本人を代表してそれぞれのミッションをしっかり遂行して、ISS国際パートナー間においてもその成果を示してくれると信じているところです。

超小型衛星人材育成プログラムの新設について

 JAXAは、国際宇宙ステーションの「きぼう」日本実験棟が有するロボットアームとエアロックの特徴を活かしまして、2012年より超小型衛星の放出を行っております。このJAXAの放出機構からこれまで放出した衛星は合計52機になります。うち、半数以上が海外の超小型衛星であり、例えば、コスタリカの「Irazu」という衛星やルワンダの「RWASAT-1」という衛星などはその国にとって初めての衛星となるものでありまして、そういった観点からも人材育成およびSDGsへの貢献策として成果を挙げていると考えております。
 また、2015年9月にはJAXAは国連の宇宙部との間で、能力開発イニシアチブとして、連携プログラムであります「KiboCUBE」を立ち上げまして、打上げ手段を持たない開発途上国の教育機関や研究機関に対し、超小型衛星を「きぼう」日本実験棟より放出する機会を提供しているところです。既に国連との連携プログラムにおきましても、例えばケニア共和国やグアテマラ共和国の超小型衛星は放出に成功しておりまして、今後予定されているものについても、例えばモーリシャス共和国やモルドバ共和国の超小型衛星などが既に選定されているところです。
 昨年12月にはこの国連の宇宙部との連携協定を延長しまして、さらなる衛星放出機会の追加と、超小型衛星の開発・運用・利用のライフサイクル全般を学ぶ機会として「KiboCUBEアカデミー」というものを連携して実施することに合意をいたしました。現在は、「KiboCUBE」の第6回目の公募とオンライン講座の開催を行っているところです。
 そして、この4月より新たに取り組みを始めたものがありまして、国内の大学向けにも超小型衛星放出機会を提供する「J-CUBE」を新たに立ち上げたところです。国内大学の技術力強化と、その技術力による国際貢献を通じて人材基盤の強化を図ることを目的としております。これまでも国内大学として、例えば、東京大学、九州工業大学、東北大学、そして北海道大学とは戦略パートナーとして連携を進めておりましたが、さらにその活動を発展させてより幅広く大学の対象を広げるものとなります。
 3つの取り組みをお話しましたが、今、お話しました超小型衛星を“学ぶ” 「KiboCUBEアカデミー」、そして超小型衛星の開発および運用に“トライする”国連との連携プログラムであります「KiboCUBE」、さらに国内にその門戸と広げていくという意味での超小型衛星への取り組みをさらに“発展させていく”「J-CUBE」、この3つの仕組みを、『「きぼう」からの衛星放出を通じた人材育成パッケージ』として一体化いたします。その実施にあたっては、NPO法人であります大学宇宙工学コンソーシアム(UNISEC)と連携することとして、この度、新たに協定を締結いたしました。
 UNISECは、大学および高等専門学校(高専)の学生による宇宙工学分野で、実践的な教育活動の実現を支援することを目的とした特定非営利活動法人(NPO)です。過去にUNISECには超小型衛星を放出した大学の多くも加盟しておりまして、これまでに蓄積した衛星開発技術や小型衛星利用に関わる知見や経験を活かし、海外も含めた衛星開発能力の強化も期待されるところであります。
 JAXAはこれからも、UNISECをはじめとしまして、国内、そして海外の超小型衛星開発を進める大学、機関との連携をより一層強化し、「きぼう」日本実験棟の利用の促進、人材育成を通じたSDGsへの貢献をしてまいりたいと考えております。

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