2021年(令和3年)10月理事長定例記者会見

理事長定例記者会見

山川理事長の定例記者会見のトピックスをお伝えします

日時:2021年(令和3年)10月15日(金) 13:30-14:15

場所:オンライン会見

司会:広報部長 佐々木 薫

 まず始めに、イプシロンロケット5号機による革新的衛星技術実証2号機打上げにおきまして、打上げ直前に中止し、延期することとなりました。関係者の皆様、特に、地元地域にてご協力をいただいております皆様、また、搭載衛星する皆様に、多大なご迷惑とご心配をおかけいたしました。安全を第一に、確実な打上げを実施すべく、引き続き取り組んでまいります。

JAXA宇宙飛行士の活動状況について

 星出宇宙飛行士は、今年4月28日に国際宇宙ステーション(ISS)の船長に就任し、先週10月4日、フランスのトマ・ペスケ宇宙飛行士に交代するまでの約5か月間、船長としての重責を担ってまいりました。ISS搭乗員を統括し、責務を全うしてくれたことを、日本人として誇りに思います。
 星出宇宙飛行士は、先週10月6日に行われましたJAXAの小型衛星放出機構(J-SSOD)による超小型衛星放出において、衛星放出の準備として、放出機構への断熱材取り付け、同機構を「きぼう」エアロック内に格納するなどの作業を行いました。今回はフィリピンの大学が中心となって開発した衛星2機と、同じくオーストラリアの大学が中心となって開発した衛星2機の合計4機が放出されましたが、全ての衛星放出が完了したとの報告を受け、私も安堵しました。引き続き、超小型衛星放出の機会提供を通じて、日本及びJAXAは国際貢献に努めてまいります。

 また、若田光一宇宙飛行士が、2022年秋以降に打上げ予定でありますスペースX社のクルードラゴン宇宙船運用5号機に搭乗することが決定いたしました。若田宇宙飛行士は、1996年、2000年、2009年の米国のスペースシャトル、及び2013年のロシアのソユーズ宇宙船に次ぐ、自身5度目の宇宙飛行となります。日本人宇宙飛行士がクルードラゴン宇宙船に搭乗するのは、野口宇宙飛行士、星出宇宙飛行士に続き3年連続となりますが、これは歴代の日本人宇宙飛行士による国際宇宙ステーション(ISS)運用への貢献が認められた成果であると考えております。
 若田宇宙飛行士は、2020年11月にISSの長期滞在が決定してから現在も訓練を続けており、今回の搭乗機の決定を受けまして、引き続き気を引き締めて訓練に臨んでほしいと考えております。

宇宙教育センター事業「うちゅうのたね2021」募集について

 野口宇宙飛行士が国際宇宙ステーション(ISS)長期滞在中に、アジア・太平洋地域のハーブ種子を利用した植物実験プロジェクト「Asian Herb in Space」を実施しました。このプログラムの目的は、アジア・太平洋地域の若手研究者や青少年に、「きぼう」日本実験棟での宇宙実験や宇宙環境利用研究について学ぶ機会を提供するものです。
 このプログラムは2つのミッションで構成されており、ミッション1は、2種類のハーブを実際にISSで栽培、観察などを行うもの、そしてミッション2は、アジア太平洋の12の国・地域の種子を宇宙飛行させた後、各地に返還して、参加各機関において教育ならびに研究活動に利用するというものです。日本では、ミッション2で返還された種子を用いて「うちゅうのたね2021」という教育アウトリーチ活動を実施いたします。
 「うちゅうのたね2021」では、この地球に帰還した種子を、就学前6歳児から小学生までを対象に配布し、育成体験・実験を行っていただくものです。この種子は、ミッション1で野口宇宙飛行士がISSにおいて軌道上栽培実験を行ったスウィートバジルと同種のものになります。参加する子どもたちによる観察日記や感想文などを終了後にご提出いただき、更にはアジア・太平洋地域で同様のプログラムに参加する子供たちとSNSなどを通じた国際交流体験なども提供していく予定です。
 宇宙を旅した種子の育成を通じて、参加する子供たちの感性が育まれ、自然や科学、更には宇宙などへの興味、関心が喚起されることを期待しています。

民間事業者等との共創活動について

 宇宙探査イノベーションハブは、宇宙分野の枠にとらわれず、これまで宇宙分野と関連性のなかった事業分野や業種の皆様とも協働を進めており、さまざまな民間企業や大学も巻き込んだ共同研究によって、将来の月、火星等における探査技術の開発と、そして民間企業による地上ビジネスでのイノベーション創出の両方に重点を置いた「Dual Utilization」をコンセプトとして、2015年から研究提案募集(RFP)を続けてまいりました。
 これまでの具体的な成果としては、「はやぶさ2」帰還カプセルの地上追尾レーダにも使用した株式会社光電製作所殿の「固定化マリンレーダ」があります。そのほか、昨年ISSでの実証実験を行った株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所殿との共同成果であります小型光通信実験装置「SOLISS」が、海外企業と世界初の商用光地上局までの光ダウンリンク確立に成功したとも報告を受けています。
 そのような中、今年度は、第7回目の研究提案公募を6月から7月にかけて行い、19件を選定し、本日公表いたしました。
 今回の選定では、将来の宇宙科学探査に活用の期待があるテーマとしての超高解像度3D断層画像データを取得する技術提案や、宇宙での限られた資源を有効利用、そしてリサイクルするための「大気中CO2の資源化」や「有機性廃棄物の資源化」を目指した研究提案などを選定しております。

 また、本年5月の政府による「革新的将来宇宙輸送システム実現に向けたロードマップ」の中間取り纏めを受けまして、JAXAの研究開発部門では、官民の英知を結集するための「革新的将来宇宙輸送プログラム共創体制」を、立ち上げました。これは、地上産業にも活用できる新たな部品技術や製造技術などについて宇宙輸送分野に適用する共同研究を行うことで、抜本的な低コスト化の実現を目指すものです。

この共創体制においても、この7月から8月まで、これまで宇宙開発に参画していない企業も含め、幅広く革新的な技術を募集することを目的に、初めての研究提案募集を行い、このたび21件を選定いたしました。選定案件の半分は、宇宙分野と関連性のなかった企業や大学からの提案が選定されたと報告をうけています。
 宇宙分野の枠にとらわれない民間企業や大学、機関等との共創体制の拡張を継続することで、宇宙開発のみならず、日本の産業界への貢献に繋げてまいりたいと考えております。

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