2022年(令和4年)1月理事長定例記者会見

理事長定例記者会見

山川理事長の定例記者会見のトピックスをお伝えします

日時:2022年(令和4年)1月21日(金) 13:30-14:15

場所:オンライン会見

司会:広報部長 佐々木 薫

年頭ご挨拶

 2022年を迎えまして、謹んで新春のご挨拶を申し上げます。
 本年もどうぞよろしくお願いいたします。

 昨年は、「宇宙旅行元年」と呼ばれるなど、世界的にみても航空宇宙分野におきまして、国や公的機関の事業に加えて、民間企業の皆様による活動が活発になり、航空宇宙分野において節目の年であったと実感しております。
 そこでJAXAにおきまして今年2022年に予定しております主な取り組みをいくつか挙げたいと思います。

 有人宇宙活動におきましては、新たな宇宙飛行士候補者募集、そして選定をはじめ、若田宇宙飛行士の、日本人最多となる自身5度目の宇宙飛行、国際宇宙ステーション(ISS)長期滞在が計画されております。
 日本人宇宙飛行士、「きぼう」日本実験棟の運用や、ISSにおける有人宇宙活動を通して、これまで培ってきました日本の強みを生かしつつ、我が国の優位性や波及効果が大きく見込まれます有人滞在技術等での貢献を目指し、研究開発を着実に進めてまいります。
 また、NASAのネルソン長官は、日本時間1月1日に、ISSの運用を2030年まで延長し、国際パートナーとともに軌道上での革新的研究を継続できるよう取り組むことに関する、米国政権のコミットメントを表明されました。JAXAではISS運用延長に関する技術的な評価を国際パートナー間の協力により進めておりまして、引き続き政府による検討に必要な支援を行ってまいります。

 昨年は集中豪雨や海底火山噴火に伴う軽石漂流などの自然災害が多く発生しましたが、本年も衛星データを利用した防災・減災に貢献していきたいと考えております。本日はのちほど、先日15日に発生いたしましたトンガ沖海底火山噴火に関しまして「だいち2号」等による観測協力についてご紹介いたします。

 宇宙探査においては、先週(1月13日)に、小惑星リュウグウのサンプルにつきまして、国際研究公募に供するカタログをWEBサイトにて公開いたしました。
 超小型探査機でありますOMOTENASHIとEQUULEUSは、米国アルテミスIに搭載され、現時点では3月以降の打上げが予定されております。ミッション担当者は、打上げ及び運用に向けたリハーサルなど、準備を進めているところでございます。
 次年度には小型月着陸実証機「SLIM」と、X線分光撮像衛星「XRISM」打上げに向けた開発を進めております。また昨年12月の定例会見でもご紹介いたしましたとおり、イプシロンロケット6号機による「革新的衛星技術実証3号機」の打上げも計画しております。

 政府全体の宇宙航空活動を技術で支える中核的実施機関として、JAXAに求められております役割、そして期待をしっかりと受け止めて、成果につなげてまいりたいと思います。

星出宇宙飛行士ミッション報告会等について

 星出彰彦宇宙飛行士については、昨年11月9日の地球帰還後、米国におきまして順調にリハビリ等を実施してまいりましたが、この度、日本に一時帰国し、2月19日には、ISS第65次/第66次長期滞在ミッション報告会の実施を計画しておりますので、ご案内いたします。
 今回の報告会は、小中学生向けと高校生以上向けの二部構成でのオンライン開催を予定しております。また、報告会と併せて、ミッションの詳細や、ISS「きぼう」日本実験棟、国際宇宙探査に関するバーチャル展示も、報告会の前後1か月間にわたり開設予定です。
 また、国際宇宙ステーション(ISS)・「きぼう」利用シンポジウム2022も、1月19日より2月中旬にかけまして、全4回のシリーズで開催いたします。
 ぜひ、多くの皆様にご参加いただき、JAXAの有人宇宙分野に関する取り組みについて、一層のご理解とご支援をいただければと思っております。

 次に、新たな時代の宇宙飛行士候補者の募集についてですが、昨年12月20日より応募受付を開始し、3月4日(金)正午の募集締め切りとしております。
 具体的な応募者数等につきましては、2月中旬頃に、別途、中間報告の形で公表をさせていただく予定です。
 女性の方からも多くのご関心をお寄せいただいていると聞いております。今回、多くの女性の方々にもご応募いただけることを期待しております。
 本件の最後となりますが、2月4日(金)19時より、オンラインで宇宙飛行士募集に関するイベント(第2回)を企画していますので、どうぞご視聴ください。

トンガ沖海底火山噴火観測協力について

 1月15日、トンガ沖におきまして大規模な噴火が発生しました。トンガを始めとする周辺国での被害、我が国においてもこの噴火に起因した津波の被害が発生しており、被害にあわれた方々にお見舞い申し上げます。

 昨年12月の定例会見でも、福徳岡ノ場から発生した軽石について、JAXAの衛星観測状況をご紹介しましたが、今回のトンガの火山島噴火に対しても、陸域観測技術衛星2号「だいち2号」、そして気候変動観測衛星「しきさい」などの衛星観測情報の解析を行っております。特に今回は外国での噴火であるため、JAXAが事務局を務める、宇宙技術を用いた国際的な防災協力枠組み「センチネルアジア」を通じて、センチネルアジアメンバーであります現地の太平洋共同体(Pacific Community)などと連携して、「だいち2号」の緊急観測、観測情報の提供を行っています。

 図1は、噴火から2日後の1月17日と、噴火前の2019年12月14日の火山島周辺の「だいち2号」観測画像を並べたものです。噴火によって、画像のほぼ中央の火口を中心に、大半の陸地が消失したことが分かります。
 図2は、JAXAも参加しております国際災害チャータで公開されている欧州及びフランスの光学衛星画像となります。噴火前の2021年12月8日と、噴火後の2022年1月16日を比較していますが、やはり火山島の大半の消失が分かります。光学衛星は視認性が良い特長がありますが、1月16日の光学衛星画像では、点線で示されている島の領域において、画像左側の部分は雲が掛かって良く見えておりません。災害発生時は、迅速かつ確実に情報を得られることが求められますが、「だいち2号」は雲や噴煙の影響を受けず、また夜間でも観測が可能なレーダ衛星であるため、安定的に災害状況を確認できます。これらレーダと光学の2種類の衛星画像の両方を使うことで、現地の状況把握に役立つと考えております。また、現地防災機関での被害把握等に役立つよう、「だいち2号」の緊急観測、画像提供を調整していきます。

図1 「だいち2号」が観測したフンガ・トンガ-フンガ・ハアパイ火山の変化(左)2019年12月14日、(右)2022年1月17日

図1 「だいち2号」が観測したフンガ・トンガ-フンガ・ハアパイ火山の変化
(左)2019年12月14日、(右)2022年1月17日

国際災害チャータで提供された光学衛星画像
        (左)2021年12月8日 Sentinel-2(分解能10m)
        (右)2022年1月16日 Pléiades (分解能50cm)
        Copyright: Contains modified Copernicus Sentinel data (2021)
        Includes Pleiades material © CNES (2022), Distribution Airbus DS.
        Map produced by UNITAR / UNOSAT

図2 国際災害チャータで提供された光学衛星画像
(左)2021年12月8日 Sentinel-2(分解能10m)
(右)2022年1月16日 Pléiades (分解能50cm)
Copyright: Contains modified Copernicus Sentinel data (2021)
Includes Pleiades material © CNES (2022), Distribution Airbus DS.
Map produced by UNITAR / UNOSAT

 JAXAでは引き続き、「だいち2号」、そして「しきさい」による観測を継続して、関係機関への情報提供を行っていきます。本日ご紹介したものを含め、トンガ火山島に関する衛星観測情報をJAXAのWebsiteに掲載し、公開しております。

H3ロケット試験機1号機の打上げについて

 JAXAは、現在開発を進めているH3ロケットの試験機1号機の2021年度の打上げを見合わせることをご報告いたします。

H3ロケットでは、第1段エンジンとして新たにLE-9エンジンの開発をしております。2020年5月に、このエンジンの設計を確定させる一連の試験におきまして、推進薬をエンジンに送り込む役割のターボポンプに疲労破面が認められるとともに、燃焼室壁面に開口が確認されました。

 これら事象への原因究明と対応策の検討を進めた結果、試験機1号機の打上げを2020年度から2021年度にする等、H3ロケットの開発計画を見直しました。

 この見直した開発計画に基づき、ターボポンプの再設計や翼の振動データを直接取得する新たな試験等を進め、2020年5月に確認された技術的課題に対し、一定の技術的目途を得ることが出来ました。

 一方で、ターボポンプの翼の振動データから、その他にも配慮すべき事象も確認され、そこも確実に処置をした上で設計を確定させる必要があると判断し、冒頭にも申しました通り、2021年度中の打上げを目指していた、H3ロケット試験機1号機の打上げを見合わせることとしました。

 打上げ時期の変更は2度目になり、想定していた計画通りに打上げを実施できないことを大変重く受け止めております。JAXAとしては、H3ロケットの試験機1号機の確実な打上げのためには必要な措置と考えており、関係者一丸となって残りの開発を進めて参ります。
 引き続き、皆様のご理解、そしてご支援を賜りますようよろしくお願い申し上げます。ありがとうございます。

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