理事長定例記者会見
山川理事長の定例記者会見のトピックスをお伝えします
日時:2022年(令和4年)12月9日(金) 13:30-14:15
場所:オンライン会見
司会:広報部長 佐々木 薫
今年も残すところ数週間となりました。
報道記者の皆様には11月25日に記者会見を実施し、「人を対象とする医学系研究に関する不適合事案」の調査結果、再発防止策などにつきまして、宇宙医学研究、人対象倫理審査委員会事務局における責任者であり、また当該事案の医学系指針不適合事案等対策検討チームのチーム長でもある佐々木理事より、ご説明をさせていただきました。
基礎研究から開発・利用に至るまで一貫して行う組織として、これらの事態を招いたことの責任を重く受け止め、再発防止に全力をあげて努めるとともに、研究開発機関としての責務を果たしてまいります。改めまして、納税者である国民の皆さまからの負託に応えることができなかったことを深くお詫び申し上げます。
1.第28回アジア・太平洋地域宇宙機関会議(APRSAF-28)開催結果
11月15日から18日までの4日間、ベトナム・ハノイにて、「持続可能で豊かな未来への架け橋 宇宙イノベーション」をテーマに、第28回アジア・太平洋地域宇宙機関会議(APRSAF-28)が開催されました。過去2年は、新型コロナ感染症拡大の影響によりオンラインによる開催でしたが、今回、3年ぶりの現地開催となりました。36の国と地域から380名の参加登録があり、APRSAFが現地開催できたことについて、参加者から多くの喜びの声を聞くとともに活発な交流が行われました。
前半の2日間は、①衛星利用、②宇宙教育、③宇宙能力向上、④宇宙フロンティア、⑤宇宙法政策の5つの分科会が開催されました。後半の2日間では、各国の宇宙機関の機関長や代表者が参加する本会合を開催し、5つの分科会での成果をまとめた共同声明採択されました。
各分科会は、2019年の名古屋開催時に採択された「名古屋ビジョン」に沿って活動しています。個別の成果の具体例を申し上げますと、衛星利用分科会において、水田からのメタン排出に関わる水利用状況把握を行うSAFE CH4Riceプロジェクトがベトナム国家宇宙センター(VNSC)から提案されました。また、宇宙教育分科会では、アジア太平洋地域における次世代の人材育成に貢献することを目指し、宇宙教育の高等教育機関における実践例の収集を行う「アジア太平洋地域宇宙教育会議」が初めて開催されました。
今回のAPRSAFは、民間企業からの参加者が全参加者のうちの約44%を占めました。民間企業同士はもちろんですが、民間企業と政府機関等との交流ができる場としても、参加者からAPRSAFに対する高い期待が寄せられていると感じました。特に、「宇宙産業ワークショップ」は、本会合を除けば、APRSAFイベントの中で最も多くの参加者が集まりました。パネルディスカッションや参加型のラウンドテーブルなどで、宇宙機関と民間企業が各々の役割や期待する活動について意見を交換し、宇宙機関は今後の政策の方向性を認識し、民間企業は今後のビジネス展開の方向性を得る場となりました。
APRSAFが、国・地域、産学官、異業種といった垣根なく、多様なプレイヤー同士が出会える場、そして関係を深化させていく場として機能することを期待されていると改めて認識し、今後も引き続き、その場を提供してまいりたいと思います。
次の第29回は、2023年にインドネシアにて開催、そして、その次の第30回は、2024年にオーストラリアで開催を予定しています。
2.出資業務
先月11月の定例記者会見でも、日本の宇宙ビジネスや宇宙スタートアップ企業に関するご質問を頂きました。
JAXAではこれまでも、航空宇宙分野に加えて、多様な分野との連携等につなげるため産業振興施策に取り組んでおります。特に今週は、企業連携、産学官連携などに関するプレスリリースを3件ご案内いたしました。
さらに本日は、日本の宇宙ビジネスの加速、拡大を支援する取り組みの一つである「出資業務」についてご紹介いたします。
昨年(2021年)4月、「科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律」が改正され、JAXAは、JAXAの研究開発成果を活用する法人に対して、出資並びに人的・技術的援助の業務を行うことが可能となりました。
そして、今年4月に、JAXAから出資を希望する成果活用事業者の募集を開始し、ご応募いただいた企業の中から、株式会社天地人に出資することを決定いたしました。JAXAにおける初の出資案件となります。
株式会社天地人は、JAXA衛星をはじめとする地球観測衛星等の膨大なリモートセンシングデータの解析・可視化を行い、土地評価サービスなどの事業を展開する、JAXAベンチャー認定企業となります。人工衛星データを利用し、JAXAが目指す宇宙開発利用促進、成果の社会実装につながる事業を展開していること、世界で活発化する人工衛星データ利用の分野において、土地利用・地理空間利用の観点から国内外で活発に事業展開を進め、その成長性が高いとの期待があることなどを総合的に判断し、今回の出資決定に至りました。
今後も出資機能などを活用し、JAXAの研究開発成果のビジネス利用を促進するとともに、日本の産業競争力および産業科学技術基盤の維持・強化につなげる取り組みを進めてまいります。
3.H3ロケット第1段エンジン燃焼試験の状況
H3ロケットの開発状況をお知らせします。
先月、種子島宇宙センターにおいて実施した、試験機1号機の1段実機型タンクステージ燃焼試験(CFT)について、現在、試験データを詳細に評価しつつ順次必要な対応に着手しています。
試験機1号機の打上げに向けて、CFTまでに抽出された改善・反映事項について入念に検討し、年度内の打上げ時期を見極めてまいります。
また、試験機2号機以降に向けたLE-9エンジンについて、最適な仕様を選定するための試験の準備及びこれまで取得した試験データの評価を進めています。12月10日には角田宇宙センターにて最適な仕様を選定するためのデータ取得を行うためのターボポンプ単体試験を実施予定です。今後、当該結果も踏まえ、試験機2号機以降に向けたLE-9エンジンの開発を進めてまいります。