2024年(令和6年)7月理事長定例記者会見

理事長定例記者会見

山川理事長の定例記者会見のトピックスをお伝えします

日時:2024年(令和6年)7月12日(金) 13:30-14:15

場所:JAXA東京事務所 B1F プレゼンテーションルーム

司会:広報部長 佐々木 薫

1. 最近の取り組み、成果など

 最初は、7月5日に公表いたしました、JAXAにおいて発生した不正アクセスに関してとなります。
 本インシデントの概要につきましてはプレスリリースにてお知らせしておりますとおり、VPN装置の脆弱性を起点として、JAXAの一部のサーバおよび端末への侵入、サーバからさらに侵害を広げ、アカウント情報等を窃取することでMicrosoft365に対して正規ユーザを装った不正アクセスが確認されたこと、またJAXAが管理していた情報の一部が漏洩していたことを確認いたしました。
 本インシデントで漏洩した情報については、その情報に関係される方々との関係もあることから詳細は差し控えさせていただきますが、関係者の皆様には既に個別にご説明と謝罪を差し上げております。なお、本インシデントで侵害を受けた情報システムやネットワークにおいては、ロケットや衛星の運用等の機微な情報は扱われておりません。
 現在のところ、国内外の関係者の皆様の事業活動に著しい支障が生じているとの報告はございませんが、皆様に多大なご迷惑をお掛けしたことは大変遺憾であり、改めてお詫び申し上げますとともに、信頼関係を損ないかねない事案として重く受け止め、再発防止に向け、引き続き情報セキュリティ対策を一層強化してまいります。

 続いての話題です。
7月1日、種子島宇宙センターから、先進レーダ衛星「だいち4号」を搭載したH3ロケット3号機を打ち上げました。当日にも申し上げましたとおり、H3ロケットは計画通りに飛行し、「だいち4号」を所定の軌道に投入いたしました。「だいち4号」においても、分離後の太陽電池パドル展開や太陽捕捉制御、またミッション機器である、Lバンド合成開口レーダPALSAR-3、船舶自動識別システムの実証を行うSPAISE3の両アンテナの展開など、一連の作業が完了し、衛星運用に必要な状態に移行するための期間、いわゆるクリティカル運用期間を7月3日に終了いたしました。「だいち4号」はこれから約3か月間、初期機能確認運用期間として、衛星全体のシステム、観測センサ等の搭載機器の機能確認を行ってまいります。
 「だいち4号」およびH3ロケットの各プロジェクトメンバーに加えて、両プロジェクトに携わる三菱電機株式会社様、三菱重工業株式会社様をはじめとする多くの企業・機関の皆さまのご尽力に改めまして敬意を表します。
 「だいち4号」の運用については、初期運用もご支援いただいている三菱電機様、SPAISE3開発にJAXAと共に携わっていただいた日本電気株式会社様など多くの関連企業の皆様と一致団結し、引き続き着実に取り組んでまいります。

 次は、来月8月11日に実験予定の観測ロケットS-520-34号機実験について紹介します。
 S-520-34号機では、液体推進剤によるデトネーションエンジンシステムの飛行実験を行います。デトネーションエンジンシステムとは、燃料と酸化剤の混合ガスが爆発的に反応した際に生じる衝撃波(爆ごう波)を安全かつ効率良く推力に変換するロケットエンジン技術です。
 デトネーションエンジンシステムの飛行実験は、3年前、2021年7月のS-520-31号機でも実施しており、世界で初めて宇宙飛行実証に成功しました。なおこの時の飛行実証では、エンジンの推進剤としてメタンガスと酸素ガスを用いておりました。
 そして、その成果を踏まえて更に開発を進め、今回の34号機では、液体燃料のエタノールと酸化剤を用いたデトネーションエンジンを搭載、実際に宇宙空間で作動させ、その推進性能等を評価することを目的としています。実験代表者は名古屋大学の笠原次郎教授で、31号機と同じく名古屋大学未来材料・システム研究所様、名古屋大学大学院工学研究科様、慶應義塾大学様、そして室蘭工業大学様とJAXAの共同研究により実施いたします。
 デトネーションエンジンは、ロケットのキックモーター、第1段・第2段エンジン、小型衛星・探査機用エンジンなどの多様な宇宙推進分野への応用が可能と考えられており、国内の大学・研究機関において研究開発が進められるとともに、実用化を視野に入れた研究としても、日本、欧米、アジアで活発に行われております。
 8月の実証実験にむけて、しっかりと取り組んでいきたいと考えております。

2. 宇宙戦略基金7月5日より公募開始

 宇宙戦略基金について、令和5年度補正予算分の技術開発テーマ22件のうち、5件について7月5日に公募を開始しました。締め切りは8月30日となります。選定にあたりましては、第3者である外部有識者によって厳正かつ公正な審査、評価を行い、採択者を決定いたします。

 残りの17テーマについても、7月中旬以降、随時、公募を開始してまいります。宇宙戦略基金ウェブサイトでは、7月中旬に公募を開始する予定の4テーマ7月下旬の4テーマ8月前半の4テーマについて、それぞれ掲載しております。詳しくは、宇宙戦略基金ウェブサイトをご参照ください。

 JAXAとして、産学官・国内外における技術開発・実証、人材における結節点として、技術開発マネジメント等の役割をしっかり果たしてまいります。また、多くの方々が、本基金への応募、活用をご検討いただければ幸いです。

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