プレスリリース・記者会見等

  • TOP>
  • プレスリリース・記者会見等>
  • 全大気平均二酸化炭素濃度が初めて400 ppmを超えました ~温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)による観測速報~>
このエントリーをはてなブックマークに追加

全大気平均二酸化炭素濃度が初めて400 ppmを超えました
~温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)による観測速報~

平成28年5月20日

国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
国立研究開発法人国立環境研究所
環境省

環境省、国立環境研究所(NIES)及び宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT(ゴーサット))を用いて二酸化炭素やメタンの観測を行っています。
「地球大気全体(全大気)」の月別二酸化炭素平均濃度について、平成28年1月までの暫定的な解析を行ったところ、平成27年12月に月別平均濃度が初めて400 ppmを超過し、400.2 ppmを記録したことがわかりました。

「いぶき」による「全大気」月別二酸化炭素濃度の観測成果

 環境省、国立環境研究所、JAXAの3者では、平成21年5月から平成28年1月までの7年近くの「いぶき」観測データから解析・推定された「全大気」の二酸化炭素の月別平均濃度とそれに基づく推定経年平均濃度※ の速報値を、国立環境研究所「GOSATプロジェクト」の「月別二酸化炭素の全大気平均濃度 速報値」のページ(http://www.gosat.nies.go.jp/recent-global-co2.html)において公開しています(平成27年11月16日の報道発表 http://www.env.go.jp/press/101671.html を参照)。 このたび、平成28年1月までの暫定的な解析を行ったところ、月別平均濃度は平成27年12月に初めて400 ppmを超え、400.2 ppmを記録したことがわかりました。平成28年1月も401.1 ppmとなり、北半球の冬季から春季に向けての濃度の増加が観測されています(図参照)。

「いぶき」の観測データに基づく全大気中の二酸化炭素濃度の月別平均値()と推定経年平均濃度(・)

二酸化炭素濃度は1年の周期を持つ季節変動をしているが、地球大気の長期的な変動を論ずるには季節変動を取り除いた2年程度の平均濃度値を用いる必要がある。このため、観測濃度から平均的な季節濃度変動を取り除いた平均濃度を算出した。本文中では「推定経年平均濃度」と記しているが、科学的には経年トレンド濃度と呼ぶべきものである。この値は、その前後半年の1年間の平均値とほぼ同じ値を示す。


 世界気象機関(WMO)などいくつかの気象機関による地上観測点に基づく全球大気の月平均値では、二酸化炭素濃度はすでに400 ppmを超えていましたが、地表面から大気上端(上空約70km)までの大気中の二酸化炭素の総量を観測できる「いぶき」のデータに基づいた「全大気」の月平均濃度が400 ppmを超えたことが確認されたのはこれが初めてです。これにより、地表面だけでなく地球大気全体で温室効果ガスの濃度上昇が続いていると言えます。
 また、推定経年平均濃度は平成28年1月時点で399.6 ppmでしたが、このままの上昇傾向が続いたと仮定すれば、平成28年3月頃には400 ppmを超えた可能性があります。これにより、現在の地球大気の二酸化炭素濃度は実質的に400 ppm台に突入していると考えられます。
 なお、本結果はいぶき観測データの系統的なずれ量に関する予備的な評価(検証速報値)に基づいています。詳しい解析方法と解説については、前述の「月別二酸化炭素の全大気平均濃度 速報値」のページをご覧下さい。
 今後も引き続き、「いぶき」観測データに基づく成果の公表を行うとともに、平成29年度をめどに打上げを予定している「いぶき後継機(GOSAT-2)」を用いて継続的な温室効果ガス観測を実施し、それらの成果を地球温暖化予測の精緻化に反映させていく予定です。

【使用データについて】

本発表における「いぶき」観測データ処理には、気象庁から提供された気象予報数値データGPV及び気象庁及び゙電力中央研究所によるJRA-25⻑期再解析プロジェクトにより提供されたデータJCDASが利用されている。

【参考】

温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)とは

 温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)は、環境省、NIES及びJAXAが共同で開発した、世界初の温室効果ガス観測専用の衛星です。二酸化炭素とメタンの濃度を宇宙から観測し、その吸収・排出量の推定精度を高めることを主目的にしています。さらに炭素循環の将来予測の高精度化への貢献を目指しています。平成21年1月23日の打上げ以降、現在も観測を続けています。

「いぶき」による温室効果ガス観測の特徴とその意義

 世界気象機関(WMO)を含む世界のいくつかの気象機関でも、地表面の各地の観測地点や、それらのデータを用いて算出した地上での二酸化炭素の全球平均濃度を発表しています。しかし、二酸化炭素は高度によって濃度差があるために、地上観測点だけの濃度データでは地球大気の全体濃度を表しません。
 これに対して「いぶき」は二酸化炭素の地表面濃度ではなく、地表面から大気上端までの大気中の二酸化炭素全体を観測できます。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第5次評価報告書において予測されている将来の二酸化炭素濃度は「全大気」の平均濃度であることから、今後の二酸化炭素の増加による地球温暖化のリスクを算出・予測する上では、地球全体の二酸化炭素の平均濃度の算出が重要であり、上空の大気まで含めた「全大気」を把握することが不可欠です。



PAGE TOP