プレスリリース・記者会見等

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「イプシロンSロケットの開発及び打上げ輸送サービス事業の
実施に関する基本協定」の締結について

2020年(令和2年)6月12日

国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構

 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)は、イプシロンSロケット(※1)の開発及び開発したロケットを用いた打上げ輸送サービス事業に関する基本協定(※2)を株式会社IHIエアロスペース(以下、IA)と締結しましたのでお知らせいたします。

 イプシロンSロケットは、JAXAが開発した強化型イプシロンロケットをもとに、現在開発中の大型液体ロケットであるH3ロケットとのシナジー効果を発揮させて国際競争力を強化することを目的としたロケットです。本基本協定は、自立的にイプシロンSロケットを用いた打上げ輸送サービス事業を展開できる体制を構築し、産業基盤を維持および発展させて宇宙輸送システムを自立的かつ持続可能な事業構造に転換することを目的として、JAXAとIAが開発段階および運用段階で担う役割などの基本的事項を定めたものです。今後JAXAはIAとともに本基本協定にもとづき、イプシロンSロケットの開発と打上げ輸送サービス化に向けた取り組みを進めていく予定です。

 (※1)別紙1:イプシロンSロケット概要

 (※2)別紙2:基本協定概要

別紙1(1/3)

イプシロンSロケットの概要

 イプシロンロケットは、我が国がペンシルロケットから60年以上に渡り蓄積してきた固体燃料ロケット技術を結集させたロケットであり、宇宙基本計画(平成28年4月1日閣議決定)において我が国の基幹ロケットに位置付けられています。
 これまでに第1段階として、イプシロンロケット試験機および強化型イプシロンロケットの開発を進め、イプシロンロケット4号機までの打上げに全て成功し、コンパクトな打上げ運用や世界トップレベルの衛星搭載環境、高い軌道投入精度などの成果を実現しました。
 イプシロンSロケットはこれらに続く第2段階として、これまでの開発成果をもとにH3ロケットとのシナジー効果を発揮させ、打上げコスト低減と基幹ロケットの高い信頼性との両立や衛星の運用性向上等により国際競争力を強化することを目的としたロケットであり、これを民間事業者が主体的に打上げ輸送サービス事業として担っていく体制を構築し、今後需要の拡大が予測される小型・超小型衛星の打上げ市場への本格参入を目指しています。

イプシロンロケット開発の全体像

イプシロンロケット開発の全体像 ©JAXA

【プロジェクト名称】
日本語名称 :イプシロンSロケットプロジェクト
英語名称 :Epsilon S Launch Vehicle Project
通称 :“イプシロンS”、“Epsilon S”

“Sの意味” Synergy(シナジー)×Speed(即応性)×Smart(高性能)×Superior(競争力)×Service(打上げ輸送サービス)

別紙1(2/3)

【H3ロケットとのシナジー効果の発揮】

H3ロケットとイプシロンで技術・部品・機器等を共通化し、開発の効率化、打上げ価格低減等を実現。

H3ロケットとのシナジー効果の発揮の具体例

H3ロケットとのシナジー効果の発揮の具体例 ©JAXA

別紙1(3/3)

【イプシロンSロケットの特徴】
  • 打上げ能力
     SSO軌道:600kg以上(高度350~700km)(エクストラ目標:800kg以上(高度350km))
     LEO軌道:1,400kg以上(高度500km、軌道傾斜角31.1deg)
  • 複数衛星打上げに対する拡張性を確保
  • 軌道投入精度:高度誤差±15km以下、軌道傾斜角誤差を±0.15deg以下
  • 衛星搭載環境:世界トップレベルの音響・振動・衝撃環境
  • 標準打上げ価格:世界の小型衛星打上げ市場で競争可能な価格帯
  • 打上げスロット:3か月に2機以上打上げ可能
  • 契約から打上げまでの期間:12か月以内
  • 衛星受領から打上げまでの期間:10日以内
  • レイトアクセス(打上げ前の搭載衛星へのアクセス):打上げ3時間前まで対応可能
システム仕様の比較(強化型とイプシロンS)

システム仕様の比較(強化型とイプシロンS)©JAXA

別紙2

基本協定の概要

 本基本協定は、自立的にイプシロンSロケットを用いた打上げ輸送サービス事業を展開できる体制を構築し、産業基盤を維持および発展させて宇宙輸送システムを自立的かつ持続可能な事業構造に転換することを目的として、JAXAとIAが開発段階および運用段階で担う役割などの基本的事項を定めたものです。

 イプシロンSロケットの総合システム(ロケットシステムと射場施設設備システム)の開発はJAXAがとりまとめる一方で、民間事業者がイプシロンSロケットを用いて自立的に打上げ輸送サービス事業を担う観点から、総合システムのうちロケットシステムの開発は民間事業者が主体的に進める役割分担としています。

 基本協定に定めるJAXAと民間事業者の役割等に係る基本的な考え方を下表に示します。

JAXA 民間事業者
開発段階 ロケットシステム、及び射場施設設備システムを統合した「総合システム」を担当し、我が国の自立的な宇宙輸送システムを確保し、既存技術や射場設備におけるロケット技術基盤を保持し、活用する。 運用段階における自立的な打上げ輸送サービス事業展開のことを考え、主体的にロケットシステムを開発する。
運用段階 我が国の固体ロケット技術基盤及びキー技術を維持するとともに研究開発を推進しその成果を民間事業者に移転すること等により、民間事業者の打上げ輸送サービス事業の発展に貢献する。 ロケットの品質向上、設計改善、不適合対策、枯渇対応等の処置について自らの判断により対応する方針とし、我が国の産業基盤の維持・向上に資するよう、打上げ輸送サービス事業を展開する。
基本協定締結式の様子

2020年6月11日(木)に、JAXA東京事務所において本基本協定の締結式を開催し、JAXA山川理事長とIA牧野代表取締役社長による基本協定書への署名を行いました。

基本協定書への署名

基本協定書への署名 ©JAXA

集合写真

©JAXA

JAXA

  • 山川理事長(左から3番目)
  • 布野理事(左から2番目)
  • イプシロンロケットプロジェクトチーム
    井元プロジェクトマネージャ(左から1番目)

IA

  • 牧野代表取締役社長(右から3番目)
  • 田村取締役(右から2番目)
  • 宇宙輸送システム技術部
    永山部長(右から1番目)

協定締結にあたってのコメント

JAXA理事長 山川 宏

「本日は、IHIエアロスペースの牧野社長と共に、国際競争力をもたせたイプシロンSロケットの開発と運用における基本協定を締結できました。イプシロンSロケットを民間に移管して打上げ輸送サービスを展開していく一連の土台を整えたという意味で、極めて重要なステップを踏み出せたことを大変嬉しく存じます。

近年の人工衛星打ち上げ市場では、小型化・集積化の技術進展によって宇宙ビジネス利用の拡大が急速に進み、質量・サイズ・用途等大変多様な衛星の打上げ需要が数多く計画されている市場動向があります。

このイプシロンSロケットでは、これまでの固体燃料ロケットを維持・発展させながら、官需に加えて、民需を積極的に取込んでいくことで打上げ機会を確保し、自立的な打上げ輸送サービスの展開と我が国の宇宙産業の規模の拡大を目指して、IA殿と一緒に頑張っていきたいと思いますので、引き続きよろしくお願いします。」

IA代表取締役社長 牧野 隆

「本日は、『イプシロンSロケットの開発、及び打上げ輸送サービス事業に関する基本協定』を、JAXAさんと締結することができ、大変うれしく思います。これまで、ご尽力いただいた関係者の皆様に心から御礼申し上げます。

今後、イプシロンSによる打上げ輸送サービスを世界に展開していくために、開発のみならず、お客さまの開拓から打上げに至るすべてのフェーズにわたる運用体制の構築を図っていきます。世界を見ると、宇宙産業には、新しいプレーヤーによる、新しいビジネスが始まっています。イプシロンSにおいても、年間1機の国の衛星打上げに加え、商業衛星の打上げサービスを受注し、自立的かつ持続可能な事業へ育てていきたいと思います。

イプシロンSの実証機の打上げは、2023年に予定されていますが、それまでに現行型イプシロンの打上げも計画されています。これからも引き続き打上げを成功させ、イプシロンSの打上げサービスの展開に弾みをつけられるよう、JAXAさんと共に全力を尽くします。皆様のご支援をお願いしたします。」

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