JAXA、茨城県、森林総合研究所の連携による「森林の伐採検知とその行政利用」の手引きを公開
-地球観測衛星による森林管理行政の効率化-
2024年(令和6年)2月20日
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
茨城県
国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)、茨城県および国立研究開発法人森林研究・整備機構 森林総合研究所(FFPRI)は、「だいち2号」(ALOS-2)の観測データを利用した森林伐採検知の方法と、その結果を森林クラウド※1を通じて利用する方法についての手引きを作成し、下記のWebページ(下記URL)にて公開しました。
■森林伐採検知の推奨手順と行政利用の手引き: https://www.eorc.jaxa.jp/ALOS/jp/alos-2/a2_data_j.htm
〇背景と課題
森林管理行政では、伐採届に基づき適切な森林伐採が行われているかどうかについて、自治体職員が現地確認を行う必要がありますが、労力を要し地方自治体職員の負担となっています。
近年、多くの都道府県で「森林クラウド」と呼ばれる行政システムの導入が進んでいることを受け、森林クラウドに衛星データから検知した伐採地情報(伐採検知情報)を追加することにより、伐採届※2等の行政情報との突合が容易になり、現地調査の負担の軽減が期待できます。また届出のない伐採地の早期の特定に役立つことも期待されます。
JAXAとFFPRIは2018年5月に基本協定を締結、さらに2021年1月には茨城県を加えた三者で連携協力協定を締結し、「だいち2号」を利用した伐採検知技術の検討と精度検証、さらに行政利用へとつなげる利用実証を行ってきました。この活動を通じて、「だいち2号」から得られた伐採検知情報が、地方自治体の森林管理において有効に活用されうることが示されました。この成果を取りまとめ、「ALOS-2/PALSAR-2 データを利用した森林伐採検知の推奨手順とその行政利用の手引き」を作成したので、公開いたします。
〇手引きの内容
- 「だいち2号」の観測データを利用した伐採検知処理の推奨手順(森林クラウド事業者の利用を想定)
- 伐採検知情報を森林クラウドにおいて利用する推奨手順(地方自治体職員の利用を想定)
- 届出のない伐採検知箇所を対象とした現地確認の推奨手順(地方自治体職員の利用を想定)
- 茨城県での利用実証において市町村による伐採検知情報の利用結果
〇期待される効果
茨城県では、この伐採検知情報を活用し、伐採届の確認作業の効率化と伐採者への指導に向けた検証を進めているところです。本手引きおよび茨城県による今後の検証を参考にして、衛星データを利用した伐採検知の技術が他の地方自治体でも広く利用され、森林管理の効率化に貢献することを期待しています。
※1: | 森林クラウド:地方自治体で導入が進んでいる、森林情報をインターネット(クラウド)上で共有するためのシステム。森林計画図※3や空中写真等の情報を扱うことができ、都道府県職員や市町村職員、林業関係者の間で効率的に情報共有ができる。 |
※2: | 伐採届:森林法の規定により、森林を伐採する者が市町村へ提出することが義務付けられている届出。 |
※3: | 森林計画図:森林計画の単位となる森林の区域を表した地図。 |
【関連リンク】
森林伐採検知の推奨手順と行政利用の手引き:
https://www.eorc.jaxa.jp/ALOS/jp/alos-2/a2_data_j.htm
森林研究・整備機構 森林総合研究所との基本協定の締結について:
https://www.jaxa.jp/press/2018/05/20180525_ffpri_j.html
https://www.ffpri.affrc.go.jp/press/2018/20180525/index.html 外部リンク
JAXA、茨城県、森林総合研究所の三者協定の締結について:
https://www.jaxa.jp/press/2021/01/20210129-1_j.html
〇役割分担について
JAXA:衛星データの提供、伐採検知処理手順の開発
茨城県:森林クラウドでの伐採検知情報の利用促進
FFPRI:伐採検知情報の行政利用や現地確認の手順検討
森林クラウド上での伐採検知情報の表示例
伐採検知した情報(赤色の範囲)を森林クラウドに追加することで、この画面のように空中写真や行政情報等と重ねて表示できます。地方自治体職員は、伐採検知情報と伐採届等を重ねることで、伐採の状況や届出の有無を容易に確認できます。