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雲エアロゾル放射ミッション「EarthCARE」衛星(はくりゅう)搭載
雲プロファイリングレーダ(CPR)の定常運用段階への移行
およびレベル1プロダクトのリリース開始

2025年(令和7年)1月14日

国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
国立研究開発法人情報通信研究機構

 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA、理事長:山川 宏)、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT(エヌアイシーティー)、理事長:徳田英幸)が開発した雲エアロゾル放射ミッション「EarthCARE」衛星(愛称: はくりゅう(*1))搭載雲プロファイリングレーダ(Cloud Profiling Radar: CPR)(*2)は、初期機能確認および初期校正検証確認を無事完了し、定常運用段階へ移行しました。また、欧州宇宙機関(ESA)においても、大気ライダ(ATLID)、多波長イメージャ(MSI)、広帯域放射収支計(BBR)の初期校正検証を終了しました。
 これに伴い「EarthCARE」衛星(はくりゅう)全センサのレベル1プロダクトリリースを開始することをお知らせします。

初期校正検証確認の成果

 「EarthCARE」衛星(はくりゅう)は、2024年5月29日(日本標準時)に打ち上げられ、これまでに以下の初期校正検証確認を実施しました。

• 観測機器の機能確認
搭載された各観測機器(雲プロファイリングレーダ、大気ライダ、多波長イメージャ、広帯域放射収支計)の正常動作を確認しました。
• データ取得と初期解析
取得された観測データの初期解析を行い、期待通りの性能を発揮していることを確認しました。

プロダクトリリースの概要

 初期校正検証確認の完了に伴い、2025年1月14日より、以下の各センサ単体の観測データを工学値変換したレベル1プロダクトをリリースいたします。(別紙: 観測例)

• CPRデータ
雲の鉛直分布および上下の動きに関するデータ
• ATLIDデータ
雲やエアロゾルの鉛直分布に関するデータ
• MSIデータ
雲やエアロゾルの水平分布に関するデータ
• BBRデータ
地球の放射収支に関するデータ

 これらのデータは、今後、大気物理学的な物理量(雲水量、雲氷量、光学的厚さ等)に変換され、レベル2プロダクトとなります。「EarthCARE」衛星(はくりゅう)の複数センサのデータを組み合わせ、単一のセンサだけではわからない精緻な観測データを提供し、そのデータが、将来の気候変動予測の改善に利用されることで、気候変動への適応に関する検討に貢献します。
 レベル2プロダクトのリリースは2025年3月半ば以降、順次予定しています。(*3
 データは、JAXA及びESAのサイトからどなたでもご利用いただけます。
JAXAのサイト(日本語)
JAXAのサイト(英語)
ESAのサイト(英語) 外部サイト

今後の展望

 「EarthCARE」衛星(はくりゅう)は、運用を通じて、さらなる観測データの取得を行います。「EarthCARE」衛星(はくりゅう)で取得される観測データを解析することで、気候変動の理解と予測精度の向上に貢献していきます。これまで特別ユーザのみの観測データ配布でしたが、今回のリリース開始により、すべてのユーザが観測データを利用可能となり、それによりデータの活用が促進することが期待できます。初期機能確認および初期校正検証にご協力、ご支援頂きました関係者の皆様に、深く感謝申し上げます。

各機関の役割分担

• 宇宙航空研究開発機構(JAXA)
CPRの開発、地上システムの開発・運用、データ提供
• 情報通信研究機構(NICT)
CPRの性能評価、CPRデータの地上処理アルゴリズム開発
• 欧州宇宙機関(ESA)
CPR以外の搭載3センサの開発、衛星システム及び地上システムの開発・運用、データ提供

補足

*1

「EarthCARE」衛星の外観の特徴「白く、太陽電池パドルが長い尾のように見えること」を表現しています。 愛称について、詳しくはこちらをご確認ください:
https://www.satnavi.jaxa.jp/files/project/earthcare/earthcare_special/pickUptopics/topics_20240401.html
雲エアロゾル放射ミッションである「EarthCARE」の概要について、詳しくはこちらをご確認ください:
https://www.satnavi.jaxa.jp/files/document/pdf/EarthCARE_CPR_overview.pdf

*2

CPRは、W帯(94GHz)における世界初の衛星搭載ドップラーレーダで、JAXAとNICTが共同開発を行いました。

*3

「EarthCARE」の観測プロダクトは「レベル1」、「レベル2」に大別されます。
レベル1: センサから得られた観測データを物理量(工学値)に変換したもの
レベル2: 各センサの工学値をもとに大気物理学的な値に変換したもの
詳しくはこちらをご確認ください: https://www.eorc.jaxa.jp/EARTHCARE/data/prd_intro_j.html


別紙

 CPRは2024年6月以降、観測を続けていますが、ここでは2024年11月7日のCPRレベル1プロダクトの例を示します。図1は「EarthCARE」衛星(はくりゅう)の1周回の軌道を示しています。「EarthCARE」衛星(はくりゅう)は1日に地球を約16周しており、軌道1周回は約90分間にあたります。図1の軌道に沿って観測しているCPRのレーダ反射強度の高さ分布を図2、CPRのドップラー速度の高さ分布を図3で示します。図2図3では1周回をA~Hの8個のシーン毎に示しています。

図1: 「EarthCARE」衛星(はくりゅう)の1周回の軌道(2024年11月7日、軌道番号:2524)。1周回が8個のシーンに分割され、それぞれシーン毎にAからHの文字を付けている。

©JAXA

図1:「EarthCARE」衛星(はくりゅう)の1周回の軌道(2024年11月7日、軌道番号:2524)。
1周回が8個のシーンに分割され、それぞれシーン毎にAからHの文字を付けている。

 CPRは、宇宙から地球へ向けて電波を発射しており、さらにその電波が空に浮かぶ雲粒や雨粒に当たって跳ね返ってきたものを受信しています。 レーダ反射強度(図2)は、この「跳ね返ってきた電波」の強さを表していて、その値が大きいところには、空に多くの雲粒や雨粒があることを意味しています。 図から、CPRは世界中のさまざまな雲を観測していることが分かります。

 ドップラー速度(図3)は、雲粒や雨滴の上下方向の動きをドップラー効果に基づき計測した速度です。ドップラー効果は、救急車の通過時に音の高低が変化することで有名です。図で青色はドップラー速度が下方向に大きいことを示し、雨滴の速い落下速度に対応します。

 さまざまな雲域でCPRが観測することにより、豪雨等を予測する数値気象モデルや将来の気候を予測する数値気候モデルで重要な役割を果たす雲粒が降雨へ成長するメカニズムの理解を進め、数値モデルの雲・降水過程を改良することで、予測精度が向上することが期待できます。また、雲が気候システムに与える効果は、雲の高さや重なり方、雲の種類などにより大きく影響されるため、「EarthCARE」衛星(はくりゅう)の観測方式が異なる4種類のセンサで、雲の高さ方向の情報を、雲の上下の動きも含めて、世界規模で計測することで、雲が気候変動に影響する仕組みの解明に貢献します。

図2: レーダ反射強度の高さ分布について、A~Hの8シーン毎に1周回を図示。横軸は経度(度)、縦軸は高さ(km)。

©JAXA/NICT

図2:レーダ反射強度の高さ分布について、A~Hの8シーン毎に1周回を図示。
横軸は経度(度)、縦軸は高さ(km)。

図3: ドップラー速度の高さ分布について、A~Hの8シーン毎に1周回を図示。横軸は経度(度)、縦軸は高さ(km)。

©JAXA/NICT

図3:ドップラー速度の高さ分布について、A~Hの8シーン毎に1周回を図示。
横軸は経度(度)、縦軸は高さ(km)。

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