JAXAと国土交通省道路局が災害発生時の人工衛星画像データの活用に関する協定を締結
―道路の被害状況把握にJAXAの衛星画像データを活用―
2025年(令和7年)10月28日
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)と国土交通省道路局(以下、道路局)は、10月27日(月)に人工衛星画像データ(以下、衛星画像データ)の活用に関する協定を締結しました。
国土交通省とJAXAでは2017年より水害・土砂災害発生時における衛星画像データ活用での連携(※【別紙参照:国土交通省との連携】)を実施しており、それに加えて今回新たに道路の被害状況の把握に必要な支援等を行います。
本協定で活用される人工衛星は、現在運用中の陸域観測技術衛星2号「だいち2号」(ALOS-2)および2024年に打上げられた先進レーダ衛星「だいち4号」(ALOS-4)です。これらのレーダ衛星観測の強みである「夜間・悪天候時に左右されることなく地表を撮像できる点」や「直接、現地調査を行うことが難しい地域や状況の観測が可能な点」、「広域観測が可能な点」などを生かして、道路被害を早期に把握できる体制を構築してまいります。
今回の協定における具体的なポイント
- ■道路災害時における人工衛星による緊急観測※1
- ■道路被害状況の早期把握のための体制構築(災害後の迅速な交通確保に資する衛星画像データの活用等)
- ■平常時のインフラ管理への衛星画像データの利用拡大
また本協定締結を踏まえ、JAXAでは道路災害発生時に対応するためのワーキンググループを設置し、災害発生後に土砂や地震によって生じる道路閉塞を迅速に把握するための技術的検討を進めます。さらに、JAXAの中期計画※2で掲げる「重点テーマ」※3の一つである「インフラ管理・防災DX」においては、インフラ老朽化への対策などの平常時における衛星画像データを活用する取り組みについて検討していきます。
国土交通省道路局の取り組みについては、10月28日(火)付国土交通省プレスリリース「道路の被害状況把握にJAXAの衛星画像を活用」をご覧ください。
※1:
緊急観測
政府防災機関等の要請を受けて、JAXAが運営する「だいち2号」や「だいち4号」の定常観測計画を見直し、被害の発生が推測される場所を衛星運用に反映させて優先的かつ迅速に観測を行うこと。
※2:
中期計画
JAXAの中長期目標を達成するための計画
【別紙】
【JAXAにおける防災への取り組み】
JAXAは安全で豊かな社会の実現に向けて、人工衛星を活用した防災活動に取組んでいます。JAXAは協約を締結した関係府省庁や地方公共機関から地震・火山噴火・土砂災害などの災害発生時に観測要求を受けた際、「だいち2号」および「だいち4号」による緊急観測を実施し、衛星画像データおよび解析結果を提供しています。さらに、災害種別ごとにワーキンググループ(WG)をそれぞれ設置・運営し、衛星画像データの利活用や効果的な防災支援に向けた意見交換を行っています。
【国土交通省との連携】
JAXAと国土交通省は、2017年より協定を締結し、水害・土砂災害時における衛星画像データの活用で連携を進めてまいりました。特に豪雨や大雨による洪水については、「水害WG」で取り組みを行っており、そこでの成果として現在は「だいち2号」および「だいち4号」の緊急観測から約2~3時間後に自動解析を実施し、衛星画像データのみならず図1で示す「浸水被害推定域」として情報を定常的に提供しています。
■(過去対応事例紹介)令和5年台風2号における「愛知県豊川市付近」の浸水状況の把握
令和5年(2023年)6月2日、台風2号による大雨被害が発生した際、JAXAは国土交通省からの要請を受けて、表1のタイムラインに沿って緊急観測および浸水状況の自動解析を実施しました。
| 2023/6/2 | 18:00 | JAXAが国土交通省から豊川市付近の緊急観測要請を受けて調整を開始。 |
| 23:44 | JAXAの「だいち2号」による該当エリアの緊急観測を実施。同時に、浸水推定域の自動解析も開始。 | |
| 2023/6/3 | 2:40 | JAXAは観測したデータおよびデータを基に自動解析した結果を国土交通省に提供。 |
| 未明 | 国土交通省は、JAXAから提供された情報を参考に、ヘリ調査や地上調査が必要なエリアの絞り込み検討を実施。また、推定浸水面積の情報を基に、必要な排水量を概算し、排水ポンプ車の検討を開始。 |
表1令和5年台風2号におけるタイムライン
図1の青色ポリゴンで囲まれた範囲は、「だいち2号」の観測時間(2023/6/2 23:44)における推定浸水域の解析結果を示しています。災害時の情報提供では、迅速性に加えて視認性が重視されていることを踏まえ、図1で示す浸水被害域の結果はウェブでの閲覧が容易であるHTML形式で提供しています。その際、衛星画像データをJAXAとして処理解析し、結果を地図上に落とし込むなど、衛星データの予備知識がない方でも利用しやすいように工夫しています。

図1JAXAが「だいち2号」で観測したデータを自動解析した浸水被害推定域