2020年(令和2年)11月理事長定例記者会見

理事長定例記者会見

山川理事長の定例記者会見のトピックスをお伝えします

日時:2020年(令和2年)11月13日(金) 13:30-14:15

場所:オンライン会見

司会:広報部長 鈴木 明子

野口宇宙飛行士打上げ及び有人宇宙活動の継続的発展に向けて

 野口宇宙飛行士は、日本時間11月9日(月)午前3時45分に打上げ場所でありますNASAのケネディー宇宙センターに到着しました。野口飛行士ら搭乗員4名の準備は順調でありまして、野口宇宙飛行士が搭乗するクルードラゴンの運用初号機(Crew-1)を載せたファルコン9ロケットは39A射点で打上げに向けた最終準備を現在行っているところです。
野口宇宙飛行士は今回3回目のフライトで、クルードラゴン運用初号機に搭乗します。過去2回は、スペースシャトル、そしてソユーズ宇宙船に搭乗しましたが、これら3種類の宇宙船で国際宇宙ステーションへ向かうのは世界初ということになります。日本には他にも経験豊富で技術に精通した現役の宇宙飛行士が6名(野口飛行士含めて7人)おります。日本人宇宙飛行士をはじめとしまして、「きぼう」日本実験棟の運用や、HTV(こうのとり)のランデブ・キャプチャ技術等など、これまで培ってきました日本の有人宇宙技術は、世界の信頼に足りうる技術だと自負しております。
 日本人宇宙飛行士はみなベテランの域に達しておりまして、今後の高齢化を見据えまして、次世代への技術継承が不可欠と考えております。先日、萩生田文部科学大臣からもご発言いただきましたとおり、日本人宇宙飛行士の新規募集を、13年振りとなります来年の秋頃を目途に開始いたします。これまで宇宙飛行士を目指していた方々に対して、具体的な実現の機会を提供できることを私も嬉しく思っております。また今後、宇宙を目指す子どもたちにも希望を与えるものになると考えております。
 また、政府が国際宇宙探査のアルテミス計画に参画を表明したことを受けまして、日本人宇宙飛行士の活動機会を、ISSに加えまして、月周回有人拠点「ゲートウェイ」や月面に拡大することも目指します。日本人宇宙飛行士が継続して国際舞台で活躍できるように取り組んでまいりたいと思います。

「光データ中継衛星」の打上げについて

 現在開発中の光衛星間通信システム(LUCAS)の機器を搭載しました「光データ中継衛星」を、11月29日(日)に、H-IIAロケット43号機で打ち上げる予定です。
 光衛星間通信システム(LUCAS)は、今回打ち上げます「光データ中継衛星」、および地球低軌道を周回するユーザ宇宙機の双方に搭載された光通信機器、そして光データ中継衛星と地上局をつなぐ通信システムで構成されております。
 光データ中継衛星は、2021年度以降に打上げ予定の先進光学衛星(ALOS-3)、そして先進レーダ衛星(ALOS-4)に搭載します光通信機器との間で、光衛星間通信に関する技術実証を行う計画です。
 データを中継する衛星は静止軌道上にありまして、地球低軌道を周回する人工衛星と地上受信局とのデータ通信を仲介する役割を担います。
 データを中継する衛星を用いない場合は、地球低軌道の人工衛星と、地上の受信局とが直接通信ができる時間は1回あたり約10分と限られています。しかし、データを中継する衛星を仲介すれば、地球低軌道の人工衛星と地上受信局が直接通信できない位置関係にあったとしても、地上との通信が可能となる範囲が拡大します。
 これまで2002年に打ち上げましたデータ中継技術衛星「こだま」、及び2005年に打ち上げました光衛星間通信衛星「きらり」におきまして、データ中継に必要な実用技術と、世界で初めてとなる衛星間光通信技術などを獲得してまいりました。
 そして今回の光衛星間通信システム(LUCAS)では、それらを継承、そして発展させて、「通信時間の長時間化・即時性の向上」そして「データ伝送の高速化・大容量化」を目指しています。
 今回、光通信で使用します通信波長は、地上の光ファイバ通信でも使用している波長帯です。地上で確立された技術を宇宙で有効活用するスピンインを取り入れ、将来の発展性を見据えた開発をしております。
 社会が一層デジタル化に進む中、「宇宙からデジタル社会を支える」高速宇宙通信ネットワークの中核となるべく、社会実装を目指して技術実証を進めたいと考えております。

「はやぶさ2」の状況について

 「はやぶさ2」の12月6日のカプセル帰還まで、いよいよ1か月をきりました。
 現在、「はやぶさ2」は地球まで約850万kmの位置を順調に航行しておりまして、探査機の状態は正常です。
 11月4日には、探査機実機を用いたカプセル分離運用リハーサルを行い、昨日11月12日には、地球に帰還するための2回目の化学エンジンによる軌道修正運用(TCM-2)を行いました。現在、運用手順の確認をひとつひとつ進めているところです。
 さて、カプセル回収班メンバーですが、先発隊14名、そして本隊59名の計73名は全員、日本を出国し、現在、南オーストラリア州のアデレードに隔離滞在中です。先発隊は、来週11月16日に回収場所となりますウーメラへ移動し、まずは到着した荷物の開梱作業やご協力いただきます豪州の関係機関の皆さま方との確認作業などの準備を、順次進めていく予定です。回収班メンバーの健康状態にも問題はございません。
 この後は11月25日〜29日頃に3回目の軌道修正運用を行いまして、地球への再突入カプセルの大気圏への再突入を目指します。
 カプセルの回収が順調に行われました場合には、豪州でサンプルコンテナ内のガスを取り出して簡易分析を行います。そしてサンプルは日本へ空輸し、陸路で相模原の宇宙科学研究所内にありますキュレーション施設のクリーンルーム内に搬入します。そこで、光学観察、重さの測定や、分光観察など、最初の確認を行います。
 また、JAXAとフランス国立宇宙研究センター(CNES)との間の協定に基づき、先方から作業スタッフにも来日いただいて、フランスが開発しました赤外分光顕微鏡(MicrOmega;マイクロオメガ)による分光観察も実施する予定です。このようなサンプル回収直後の最初の確認段階で、分光観察による観察結果を早期に得ることは非常に意義があるものと期待しております。サンプルの具体的な分析は、初期分析チームにて2021年6月頃から開始する予定です。
 なお、NASAの探査機「OSIRIS-Rex(オサイレス・レックス)」が日本時間の10月21日に小惑星「Bennu(ベンヌ)」へのタッチダウンに成功されましたが、「OSIRIS-REx」とも、科学協力や小惑星サンプルの交換、成果の比較・検証を行い、「はやぶさ2」ミッションの成果を最大化してまいりたいと考えております。
 「はやぶさ2」プロジェクトのメンバーには、再突入カプセルを回収し、日本まで無事にサンプルを持ち帰るというミッションを完遂させるべく、12月6日に向けてこれまで以上に一丸となり、万全を期して取り組んでもらいたい、と思っております。
 引き続きご支援の程よろしくお願いいたします。

最近の主な国際機関との継続的対話について

 秋は、例年国際会合が多く開催される時期でありますが、私もさまざまな国際会合への参加や宇宙機関長との会談等を通して、各国との国際的な対話を行っているところです。最近の主な内容をご紹介したいと思います。
 10月3日~6日に、約100の国と地域の科学技術大臣級の方々や20の国際機関の代表が集まります「科学技術と人類の未来に関する国際フォーラム(STSフォーラム:Science and Technology in Society forum)」が今年はオンラインで開催されました。例年は京都で開催されているものになります。
 私は、10月5日に各国の科学技術機関の方々とともにパネルディスカッションに登壇し、観測・通信・測位といった宇宙システムの役割や優位性とそれらによる人類への貢献についての議論を行いました。私からは、宇宙システムの貢献が期待されます、デジタル化やリモート化、自律化・自動化といった分野への応用につきまして、特に高速通信衛星を用いた医療や教育への活用などについてご紹介をいたしました。
 また、10月7日には「宇宙経済リーダーズ会議 -Space20-」がオンラインでやはり開催されました。この会議は、G20の議長国のサウジアラビアが主導して、初めてG20の宇宙機関長を対象として開催されたものです。私も、G20の宇宙機関長として参加して、「宇宙経済の拡大が世界経済の拡大に重要な役割を担っており、SDGsの達成にも繋がる」ことなどについてお話をいたしました。
 また、さらに別の国際会議ですが、10月12日には、オンラインにて国際宇宙会議(IAC)が開催されました。IACの宇宙機関長セッションに登壇しまして、JAXAの2020年の活動ハイライトとして、HTVミッションの完遂、はやぶさ2の帰還予定、そして国際宇宙探査等に関わるJAXAの計画等をご紹介するとともに、IACのバーチャル展示ホールでは、JAXAブースの出展も行いました。
 いま申し上げました国際会合以外にも、各国の宇宙機関長とオンラインでの会談も実施しております。
 最近では10月には、イタリア宇宙機関(ASI)のサコッチャ総裁と会談を行い、両機関間の新たな協力覚書の署名を行いました。これは2010年に構築した両機関間の協力の枠組みを引き継ぐもので、今後も引き続き両機関間での取り組みを進めていくことを確認いたしました。
 また、フランス国立宇宙研究センター(CNES)のルガル総裁との会談では、小惑星探査機「はやぶさ2」や火星衛星探査計画(MMX)、さらに1段再使用飛行実験(CALLISTO)など、両機関間の協力案件につきまして議論し、進捗の確認を行いました。
 11月に入りましてからは、今週になりますが、今年の9月に就任されましたカナダ宇宙庁(CSA)のキャンベル長官、そして10月に就任されましたドイツ航空宇宙センター(DLR)のカイザー=ピッツァーラ長官とも、それぞれ会談を行い、新長官のもとでも、さらなる協力を推進していくことを確認したところでございます。
 依然として、新型コロナウイルスの影響によって、世界は様々な制約のもとでの活動を余儀なくされておりますが、このような対話の機会を捉えまして、オンラインであっても海外の宇宙機関等と議論を重ね、意見交換をすることは、各国が協力して持続的な宇宙活動を行うために非常に重要であると考えております。今後ともこういった取り組みを実施してまいりたいと思います。

JAXAシンポジウムの開催について

 先月も少しお伝えいたしましたが、今年度のJAXAシンポジウムは、今月11月21日にオンラインで開催いたします。すでに11月9日には特設Webサイトも公開し、プレスリリースをいたしました。
 今年は、日本初の、そして日本が世界で4番目に人工衛星を打ち上げた国となりました「おおすみ」の打上げからちょうど50年にあたります。その“「おおすみ」打上げ50周年を記念して、『宇宙開発 今昔物語』”というテーマで、日本の宇宙開発の歴史を振り返ると共にJAXAの現在、そして未来の活動についてご報告することとしております。
 シンポジム全体は二部構成になりまして、第一部では、おおすみの打ち上げやロケットの開発、ISS計画への参加など当時の様子を関係者のインタビュー映像を交えながら宇宙飛行士とスタジオMCにより昔を振り返ります。第二部では、JAXAの今、例えば、はやぶさ2の帰還や野口飛行士のミッションなどについて最新の情報をお伝えする予定です。
 また、さらに特設Webサイトでは、筑波宇宙センター展示館や管制室のバーチャル体験、さらに「はやぶさ2」のタッチダウンシミュレーションARなど、シンポジウム当日の講演以外も楽しめるコンテンツを公開しているところです。是非ご覧いただければと思います。

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