2021年(令和3年)3月理事長定例記者会見

理事長定例記者会見

山川理事長の定例記者会見のトピックスをお伝えします

日時:2021年(令和3年)3月19日(金) 13:30-14:15

場所:オンライン会見

司会:広報部報道・メディア課長 岸 晃孝

東日本大震災から10年を迎えて

 3月11日、東日本大震災から10年を迎えました。犠牲になられた方々とそのご遺族に対しまして、改めて哀悼の意を表します。また被災された皆様や、今なお、生活面等でご苦労されている方も多くいらっしゃると思います。心からお見舞い申し上げます。

 震災当時、JAXAは宇宙航空技術を用いた災害支援を行っておりました。技術試験衛星VIII型「きく8号」や超高速インターネット衛星「きずな」による通信環境の提供、実験用航空機による福島第一原子力発電所周辺の放射線計測の協力、そして陸域観測技術衛星「だいち」での緊急観測などでした。衛星「だいち」は、東日本大震災時の緊急撮像を行い、政府や自治体等への情報提供をして政府の情報集約に貢献をいたしました。その2か月後の2011年5月に運用を終了しました。「だいち」としては最後に大きな役目を果たしてくれたと改めて感じております。
 この大きな震災をきっかけとしまして、地球観測衛星は、災害時の対応に加えて、防災や減災の観点でより重要な役割を担うようになっております。2017年には、政府の防災基本計画に情報収集手段のひとつとして人工衛星が明記されました。またJAXAは、内閣府や国土交通省などの政府系防災関係機関、そして地方自治体と協定を締結することで、人工衛星による防災利用活動の社会基盤としての定着化に向けた取り組みを促進しております。具体的には、災害時に緊急観測を行って、豪雨による浸水域の判読、土砂崩落個所の抽出、地震後の継続モニタリング等の観測データを政府そして自治体に提供する枠組み構築や観測データの提供を行っております。
 防災そして減災への取り組みは、国内のみならず、アジア太平洋地域の災害管理を目的とする国際協力プロジェクトであります「センチネルアジア」や、世界17の宇宙機関が連携して取り組みます「国際災害チャータ」など、国際的な活動にも注力をしております。日本の地球観測技術への信頼性向上にもつなげていきたいと考えております。
 さらに、一般の皆様もご活用できますように、世界の雨の分布の速報を発信しております「GSMaP」や、日本中の河川の流量やその氾濫域の推定結果をリアルタイムでモニタリングが可能な「Today’s Earth-Japan」等の新たな防災システムの公開も行っております。
 宇宙だけではなく航空分野におきましても、東日本大震災時には多数の航空機が救援活動に従事しました。これをきっかけに、災害時に、航空機と地上の災害対策本部などで情報共有を行い、より効率的な救援活動を実現する、災害・危機管理対応統合運用システム「D-NET」の開発そして利用促進にも取り組んでおります。
 今後ですが、2021年度には先進光学衛星「だいち3号」、2022年度には先進レーダ衛星「だいち4号」の打上げを予定しております。
 「だいち3号」は、「だいち」(初号機)の広い観測幅(直下70km)を維持しつつ、地上の分解能は約3倍に向上(直下2.5mから0.8m)します。また、建物の崩壊や道路の寸断の状況がより明確に視認できるようになると考えております。また、「だいち3号」は姿勢変更を行うことで、被災地を発災後およそ24時間以内に観測が可能となります。
 また、「だいち4号」は、現在運用しております「だいち2号」の高い空間分解能(3m)を維持しつつ、観測幅を4倍(200㎞)に拡大をします。この観測幅200kmというのは、東西方向で九州の幅に相当しますが、例えば九州の幅が一度でほぼすべて観測できる範囲であり、平常時における地殻あるいは地盤変動などの観測頻度が向上します。これによりまして、災害発生後の状況把握のみならず、火山活動、地盤沈下、地すべり等の異変の早期発見など、減災への取組において重要な役割を担えるべく、現在開発の準備を進めているところです。
 災害時に観測したデータを有効に活用するためには、災害発生前のデータと比較することが重要となります。平常時から繰り返し観測をして、データを蓄積するための長期的な取り組みが重要だと考えております。
 JAXAは、今後も観測を継続して、社会に役立つデータを提供するために観測技術の向上に注力して取り組んでいきたいと考えております。

H3ロケット試験機1号機の極低温点検の結果について

 3月17日(水)から18日(木)にかけまして、H3ロケット試験機1号機の極低温点検を実施しました。
 H3ロケットの打上げに向けましては、これから重要なマイルストンが2つありまして、1つはLE-9エンジンの認定試験、もう一つは種子島宇宙センターで行う総合システム試験です。今週行いました極低温点検は、この後者の総合システム試験の1つでありまして、打上げまでのリハーサルとして、機体と射場設備を組み合わせ、打上げ日当日の作業を最初からほぼ最後まで実施して機能確認を行うとともに、作業性や手順を確認することが目的です。H3ロケットの機体を種子島に輸送して全段を初めて組み上げて行うもので、これまでの開発試験の中でも特に大きな規模でした。
 18日夕刻には、H3機体を大型ロケット組立棟(VAB)に戻しまして、一連の点検工程を無事に終了しました。取得したデータについては、詳細解析を現在進めているところですが、ひとまず点検工程が終了しまして大変ほっとしているところです。
 この点検に引き続きまして、種子島宇宙センターではまもなく第1段エンジンLE-9の技術データを取得するための試験が再開されます。来年度の打上げに向けまして、第1段エンジンの開発完了、そして実際にエンジンを燃焼させる実機型タンクステージ燃焼試験(CFT:Captive Firing Test)など大きな山場が続きますが、H3ロケット試験機1号機の確実な打上げに向けまして、関係者一丸となって開発を進めてまいります。

インド宇宙研究機関及びパラグアイ宇宙機関との国際協力について

 JAXAの事業活動において非常に重要となります各国宇宙機関との国際協力ですが、本日は、インド宇宙研究機関(ISRO)、及びパラグアイ宇宙機関との国際協力についてご紹介したいと思います。
 まず、インドとの協力についてですが、先週3月11日に、インド宇宙研究機関(ISRO)のシバン長官と2年半ぶりとなりますが会談をオンラインで実施いたしました。2016年にISROとJAXAの間の機関間の協力覚書を締結してから今年で5年目を迎えます。両機関の相互理解が深まり、探査や地球観測などにおいて協力が拡大してきていること、そして今後もさらに協力を深めていくことを確認いたしました。
 月探査の分野では、月面での持続的な活動につなげるための重要な一歩となります資源探査を目的としまして、月極域探査共同ミッションを進めております。インドのISROは主に着陸機の開発を担当し、JAXAは主に月面での移動手段となりますローバの開発と、そしてH3ロケットによる打上げを担当します。間もなく基本設計を行う段階に移行できる予定です。
 また、科学データにおける協力も実施しておりまして、JAXAの金星探査機「あかつき」の観測データを用いて、インドのISROで金星の大気構造の研究が行われております。
 地球観測の分野においても衛星データを利用した協力分野が拡大しております。インドの衛星のデータとJAXAの衛星のデータを相互に検証そして利用し、データの精度向上やアジア地域全体のデータ提供について研究を進めているところです。これにより、例えばですが、降雨推定データを用いた豪雨の監視や、農業気象データを用いた米の出来具合の予測に向けた活用を目指しているところです。さらに今回の会談の機会を捉えまして、「水稲の作付面積把握と大気環境監視データの相互比較に関する実施取決め」を締結いたしました。アジアの主食であります米の収穫分量と環境課題の一つでありますエアロゾルの把握精度の向上に向けた研究を新たに共同で推進してまいります。
 次に、パラグアイ宇宙機関との協力についてですが、3月14日に九州工業大学が進める超小型衛星開発プロジェクト「BIRDSプロジェクト」を通じまして、パラグアイ共和国の初の衛星となります「GuaraniSat-1(グアラニーサット・ウノ)」が国際宇宙ステーション(ISS)「きぼう」日本実験棟から放出されました。
 衛星放出の際には、衛星開発を行ったパラグアイ宇宙機関のディアス長官自ら準備完了を示す「Go」という掛け声をされたほか、駐日パラグアイ大使のフロレンティン=アントラ閣下からもビデオメッセージをいただくなど、パラグアイの国を挙げて取り組まれております。また、この度の放出の機会を捉えまして、JAXAはパラグアイ宇宙機関との間で、協力の可能性を検討する意向表明書(LOI)に署名をいたしました。
 このような様々な分野での各国との協力を通じて、継続的にトップマネジメントレベルで関心を共有しながら、今後も、効率的かつ効果的に事業を進めてまいります。

野口宇宙飛行士のISS活動状況について

 野口宇宙飛行士は、3月5日から3月6日(ともに日本時間)にかけまして、船外活動を実施しました。
 これまで野口宇宙飛行士は、2005年にスペースシャトル「ディスカバリー」号によるSTS-114「国際宇宙ステーション組み立てミッション」で3回の船外活動を行っております。3回の船外活動時間は延べ20時間5分でした。そして今回の3月の船外活動で野口さん自身4回目となり、これは日本人で最多ということになります。
 今回は、船外活動におきまして新型太陽電池アレイの設置に向けた準備として基礎部分の架台取り付けを行い、作業は約7時間に及びましたが問題なく終了しました。ISSには現在8つの太陽電池アレイ(パネル)がありますが、いずれも老朽化が進んでおります。まだそれぞれ十分に機能しているものの、今後の運用を見据えまして、小型そして高効率の太陽電池アレイを設置して電力の増強を図るものです。その基礎となる部分を今回取り付ける重要な作業でした。
 日本人宇宙飛行士の活動がISSの運用を大きく支えており、確実に任務を遂行してくれたことを大変誇りに思います。軌道上での重要な実験や作業が続きますので、気を緩めずに最後まで野口さんはやり切ってくれると信じております。

最後に

 「はやぶさ2」の再突入カプセルの一般公開が相模原市立博物館で3月12日(金)から16日(火)まで開催されました。この次の公開は、国立科学博物館にて3月27日(土)から4月11日(日)までの予定です。「はやぶさ2」ミッションを無事に達成できたこと、そして、その成果の一つであります再突入カプセルを皆様にご覧いただく機会を設けられたのは、まさに関係各位のご協力あってのことだと考えております。改めまして皆様のご協力に感謝申し上げます。
 そして来年度は、星出宇宙飛行士が、クルードラゴン宇宙船運用2号機(Crew-2)に搭乗して打ち上げられまして、国際宇宙ステーションでの長期滞在が始まります。星出宇宙飛行士の打上げは現時点では4月22日以降が予定されておりますが、具体的な最新の情報が入り次第、お知らせいたします。また、H3ロケット試験機1号機による「だいち3号」の打上げ、イプシロンロケットによる革新的衛星技術実証2号機の打上げも予定しております。これらのミッションを確実に実施すべく、引き続き、気を引き締めて取り組んでまいりたいと思います。

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