トピックス

2021年

2021年11月

2021年11月25日 更新
第2回RFI募集開始!/説明会日程変更12月1日(水)→9日(木)

JAXA革新的将来宇宙輸送プログラムでは第2回情報提供募集(RFI)を開始しました。
積極的なご提案お待ちしています!
募集は★★1月7日(金)★★まで。
12月9日(木)にオンライン説明会も予定しています。(日程が変更になりました)

2021年11月22日 更新
パラグアイ国家功労勲章の授与について

JAXA山川宏理事長は、2021年11月21日、訪日中のエウクリデス・アセベド・カンディア・パラグアイ共和国外務大臣から、「ドン・ホセ・ファルコン」国家功労勲章を授与されました。九州工業大学が進める超小型衛星開発プロジェクト「BIRDSプロジェクト」を通じて開発されたパラグアイ共和国の初の衛星となる「GuaraniSat-1」を、今年3月、国際宇宙ステーション(ISS)「きぼう」日本実験棟から放出したことを受け、同国への貢献を理由に受賞に至りました。

山川理事長は「パラグアイ共和国の宇宙分野への参画に、JAXAが一翼を担うことができたのは大変光栄なことであり、この勲章は、その(パラグアイ共和国初の超小型衛星ミッションの成功)実現にご尽力されたみなさまとともに受章したと思っています」と述べ、宇宙協力を通じて両国の外交関係の更なる深化に貢献できることへの期待を表明しました。

2021年11月19日 更新
第2回情報提供要請(RFI):革新的将来宇宙輸送プログラム

革新的将来宇宙輸送プログラムでは、情報提供要請(RFI:Request for Information)を通年で募集しております。
このたび、第2回研究提案募集(RFP:Request for Proposal)にむけて新しく技術課題を追加して、第2回RFIとして募集いたします。
宇宙産業・非宇宙産業を問わず、たくさんの企業・大学の皆様からのご応募お待ちしております。

2021年11月16日 更新
衛星データを利用したJAMSTECによる軽石漂流に関する予測シミュレーションについて

海洋研究開発機構(JAMSTEC)のWEBサイトにおいて、軽石漂流に関する予測シミュレーション更新版が公開されました。
更新版では、JAXAが衛星観測画像から解析した軽石情報が活用されています。

2021年11月4日 更新
沖縄本島に接近・漂着している軽石の衛星観測情報(続報)

10月29日に公開した「沖縄本島に接近・漂着している軽石の衛星観測情報」の続報になります。前回はJAXAが運用する気候変動観測衛星「しきさい」(GCOM-C)および陸域観測技術衛星2号「だいち2号」(ALOS-2)による軽石の観測情報を紹介しました。今回は海外の宇宙機関が運用する人工衛星による軽石の観測情報を紹介します。

沖縄本島北西部の欧州宇宙機関のSentinel-2の観測画像(動画)

沖縄本島北西部の欧州宇宙機関のSentinel-2の観測画像(動画)

沖縄本島付近の同衛星による比較的雲が少ない10月16日、26日、31日の観測画像を示します。白い矢印部分の灰色の筋状の分布が軽石と推定されます。

2021年11月4日 更新
國中 均 宇宙研所長が紫綬褒章を受章

宇宙科学研究所 國中 均 所長が令和3年秋の紫綬褒章を受章しました。

宇宙科学研究所 國中 均 所長

2021年11月2日 更新
沖縄本島に接近・漂着している軽石の衛星観測情報

10月23日ごろから現在にかけて大量の軽石が沖縄県に漂着し、船舶の航行や漁業、観光等に被害が出ています。これは8月13日に南方諸島にある海底火山、福徳岡ノ場が噴火して発生した大量の軽石です。2か月にわたり洋上を漂流し、1400km離れた沖縄本島に至りました。JAXAは、海上の軽石の分布を人工衛星観測画像によって把握し、関係機関に情報提供しています。今回は、その分析に利用している主な光学(可視、赤外線)衛星画像、合成開口レーダ(SAR)画像についてご紹介します。

JAXAの気候変動観測衛星「しきさい」(GCOM-C)の多波長光学放射計(SGLI)は1,150kmの観測幅を有しており、広い海域の観測が可能です。図1.4に「しきさい」で捉えた軽石の分布を示します。

GCOM-C/SGLIによる観測画像

図1.4 2021年10月26日10:43(日本時間)のGCOM-C/SGLIによる観測画像

2021年10月

2021年10月28日 更新
JAXAとトルコ宇宙機関(TUA)間の協力覚書の締結について

 JAXA山川理事長およびTUAユルドゥルム長官は、本日、アラブ首長国連邦(UAE)ドバイで開催中の第72回国際宇宙会議(IAC 2021)に於いて平和目的のための宇宙活動分野における協力覚書を取り交わしました。署名式には、イルケル・キリック駐ドバイトルコ共和国総領事、関口駐ドバイ日本総領事にご臨席いただきました。
JAXAは2018年のTUA設立以前より「きぼう」からの超小型衛星の放出、「きぼう」船外における材料曝露実験(ExHAM)等を通じてトルコと緊密な協力関係を構築してきました。JAXAは本協力覚書の締結によりTUAとの協力関係を一層推進・発展させ、新たな協力創出にむけて取り組みを進めてまいります。

署名式の様子1

TUA ユルドゥルム長官(左)
JAXA 山川理事長(右)

署名式の様子2

イルケル・キリック駐ドバイトルコ共和国総領事(左)
TUA ユルドゥルム長官 (中央左)
JAXA 山川理事長 (中央右)
関口駐ドバイ日本総領事(右)

2021年10月27日 更新
JAXA、CSA、DLR、宇宙機関におけるグローバルな人材意見交換ネットワークの構築に関するLoIを締結

宇宙航空研究開発機構(JAXA)の山川理事長、カナダ宇宙庁(CSA)のキャンベル長官、ドイツ航空宇宙センター(DLR)のカイザー・ピッツアーラ長官は、2021年10月26日、宇宙機関におけるグローバルな人材意見交換ネットワーク“International Forum for Space Organisations Human Resources Management(人的資源管理に関する宇宙機関国際フォーラム)”(略称は「INFOHRM」)の設立に関する意向趣意書(Letter of Intent)に署名しました。

急速な技術の発展に伴い、世界の社会・経済は互いに密接に結びついています。Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の時代にあって、私たちは未来に向けた新たな挑戦を求められており、宇宙技術の分野も例外ではありません。
過去の延長線上として未来を予測することが困難な状況で、この枠組みに参加する我々宇宙機関は、組織運営における知恵や経験を共有し、変化に対して準備することのメリットを感じています。今回の情報交換フォーラム設立の合意は、技術協力を成功させてきた長い歴史と、結果として得られた相互信頼に基づき、新たな分野への協力の可能性を広げるものです。

この協定の目的は、参加機関の間で、人事および組織運営等に関する情報やベストプラクティスを共有するための国際フォーラムを設立することです。この協定によって、人事部門や経営者間の情報交換や対話が深まることが期待されています。またこの協定は、人事施策、人的資源管理、事業管理プロセスに関する課題に取り組み、宇宙人材育成分野における将来の現実に備える解決策を見出すために、共通の関心事について互いの知見を深めることを目的としています。

宇宙機関同士のマネジメント、実践的な知識の共有、あるいはナレッジマネジメントに関する協定は前例がなく、宇宙分野でのイノベーションの時代に合った新しいタイプの協力といえます。

署名式において山川理事長は、組織の重要な要素である人材施策について、共通の関心事項として取り組んでゆくことへの期待を表明しました。

署名式の様子

2021年10月25日 更新
JAXAとウクライナ国家宇宙庁(SSAU)間の平和目的の宇宙活動分野におけるあり得る協力の検討のための協力覚書の締結について

JAXA山川理事長およびウクライナ国家宇宙庁(State Space Agency of Ukraine:SSAU)ボロディミル・タフタイ長官は、アラブ首長国連邦ドバイにおいて、2020年ドバイ国際博覧会のスペースウィークの期間中の10月23日に、平和的目的の宇宙活動分野におけるあり得る協力の検討のための協力覚書を取り交わしました。署名式には、コルスンスキー・セルギー駐日ウクライナ特命全権大使、大塚在ウクライナ日本国臨時代理大使にご臨席いただきました。

本協力覚書は、宇宙探査、宇宙科学、地球観測及び研究開発という幅広い分野における情報交換及びあり得る協力を検討することを目的とした文書です。JAXAとSSAUは本協力覚書のもと、両国の宇宙コミュニティ間における、科学的及び技術的協力の進展に良好な環境を作り出すことに向けて協議をしてまいります。

署名式の様子1
署名式の様子2

2021年10月1日 更新
JSTの未来社会創造事業[大規模プロジェクト型]に採択されました

JAXA第一宇宙技術部門は、国立研究開発法人科学技術振興機構の未来社会創造事業[大規模プロジェクト型]の令和3年度新規研究開発提案に応募し、JAXAとしては初めて採択されました。

2021年10月1日 更新
ドイツやベルギーで発生した豪雨による洪水~気候変動による大雨の増加~

2021年7月、欧州各地で断続的な大雨が発生し、ドイツやベルギーなどを中心に洪水が発生して甚大な被害が発生しました。被害を受けられた方々に対し、謹んでお見舞い申し上げます。

降水状況の把握に関する情報提供の観点から、全球降水観測計画(GPM)主衛星や衛星全球降水マップ(GSMaP)など、宇宙から雨の状況を観測しているデータを用いて解析を実施しました。本稿では、その解析結果について報告します。また、このような頻発する豪雨災害の背景として、2021年8月に公開された気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書(AR6) 第1作業部会(WG1)報告書に示された、大雨の頻度と強度の増加に関する見解について紹介します。
欧州周辺での7月の大雨の様子
図1は、衛星観測から求めた世界の雨マップ(衛星全球降水マップ;GSMaP)による2021年7月12日~14日(以降すべて世界標準時)の平均降水量(図1左)と、過去21年分のGSMaPの統計から算出した2021年7月12日~14日の豪雨指標(図1右)の分布を示しています。
図1左に示したGSMaPによる衛星降水情報から、洪水による被害が報告されているドイツ西部などを中心とした地域で大雨が確認でき、3日間の積算で75 mmを超える大雨が続いていたことがわかります。同領域での過去21年のGSMaP統計から、7月のひと月に降る雨の総量は、おおよそ60~80 mmなので、例年のひと月(31日)分の雨と同じ程度の雨が3日で降ったことがわかります。
図1右には、過去21年の7月12日~14日の平均降水量のうち上位数%の降水強度以上に相当する降水があった領域を豪雨指数として示しています。濃いピンクの領域が、2021年の7月12日~14日が過去21年分の7月12日~14日の平均雨量と比較して、どの程度極端に雨が多い事例であったかを表しており、ドイツ西部やベルギーなどで持続的に雨が多かった傾向が捉えられています。

欧州周辺での7月の大雨の様子

図1. 2021年7月12日~14日(世界標準時)の衛星全球降水マップ(GSMaP)による平均日降水量 [mm/day](左)と豪雨指数(90, 95, 99パーセンタイル値)(右)
濃いピンクは、過去21年の7月12日~14日の平均降水量のうち上位1%の降水強度(99パーセンタイル値)以上に相当する降水があった領域を示しています。

2021年9月

2021年9月30日 更新
JAXA社会環境報告書2021を公開しました

JAXA社会環境報告書2021を公開しました

JAXAの環境・社会に関する取り組みや、SDGsに関する取り組みについて、ステークホルダーの皆様にご紹介したい点をまとめています。コロナ禍においてもロケットの打ち上げやはやぶさ2カプセル回収などを確実に遂行した点など記述していますので、是非ご覧いただければと思います。
また、報告書中にはWebへのリンクを貼っておりますので、より詳しいJAXAの取り組みにも触れていただければ幸いです。
アンケートがございますので、率直なご意見・ご感想をおまちしています。

2021年9月30日 更新
JAXA機関紙「JAXA's」の85号を発刊しました

今号は、イプシロンロケット5号機での打ち上げが迫る「革新的衛星技術実証2号機」を特集。対談には為末大さん(元プロ陸上選手)と金子豊(革新的衛星技術実証グループ長)が登場します!
そのほか、今夏に実施したKIBO宇宙放送局と大人気漫画『ONE PIECE』のコラボレーションについて(WEB版は関係者のインタビュー、タブロイド版はビジュアルの掲載)など、盛りだくさんの内容でお届けします!

2021年9月13日 更新
第2回「きぼう」ロボットプログラミング競技会(2nd Kibo-RPC)軌道上決勝大会のお知らせ

JAXAは、第2回「きぼう」ロボットプログラミング競技会の軌道上決勝大会を9月15日に開催いたします。大会の様子は、YouTubeで配信しますので、ぜひご覧ください。

開催日時:9月15日(水) 17:00 – 21:30

第2回Kibo-RPC軌道上決勝大会

 技術的な確認事項が発生したため9月15日の開催は中止となりました。新しい開催日は決まり次第ご案内します。

2021年9月1日 更新
種子島宇宙センターにおけるサウンディング型市場調査の実施について

種子島宇宙センターにおけるロケット実機等の広報展示の在り方を検討するため、サウンディング型市場調査を実施します。

2021年8月

2021年8月27日 更新
第2回「きぼう」ロボットプログラミング競技会 プログラミング決勝大会の開催報告

2021年7月18日(日)、第2回「きぼう」ロボットプログラミング競技会(Kibo-RPC)のプログラミング決勝大会 (Programming Skills Round (PSR))を開催しました。9つのアジア・太平洋地域の各国・地域で開催された予選を見事勝ち抜いた代表チームが、プログラミングスキルズアワードをかけて戦い、タイ代表の「Indentation Error」が見事優勝しました。これらのチームは、9月に開催される軌道上決勝大会に参加します。

第2回「第2回Kibo-RPC予選開催

2021年8月27日 更新
第2回「きぼう」ロボットプログラミング競技会 日本国内予選会の開催報告

2021年7月18日、第2回「きぼう」ロボットプログラミング競技会(Kibo Robot Programming Challenge:Kibo-RPC)の日本国内予選会が開催され、日本大学のチーム「Cosmic Jellyfish」が見事に優勝しました!

第2回「第2回Kibo-RPC日本国内予選会開催報告

2021年8月18日 更新
「だいち2号」による2021年8月の豪雨の緊急観測結果について

今回の災害で被害にあわれた全ての方々に心よりお見舞い申し上げます。
2021年8月12日から季節外れの梅雨前線が日本の東西を広く覆う形で形成された大規模な線状降水帯により続いた豪雨によって、西日本を中心に各地で河川の氾濫による浸水などの被害が発生しました。JAXAは、国土交通省からの要請に基づき、8月12日から15日にかけて「だいち2号」(ALOS-2)搭載のLバンド合成開口レーダ「パルサー2」(PALSAR-2)による緊急観測を行い、データを防災関係機関等に提供しました。

図)九州地方の「だいち2号」の観測画像(左)および推定された浸水域(右、青色部分)2021年8月12日23時23分頃の観測
図)九州地方の「だいち2号」の観測画像(左)および推定された浸水域(右、青色部分)2021年8月12日23時23分頃の観測

図)九州地方の「だいち2号」の観測画像(左)および推定された浸水域(右、青色部分)2021年8月12日23時23分頃の観測

2021年8月5日 更新
アメリカ航空宇宙局(NASA)との会談実施について

JAXA山川宏理事長は、2021年8月5日にビル・ネルソンNASA長官とオンライン会談を行いました。会談では、それぞれの主要な事業、両機関の協力プロジェクト(アルテミス計画、月周回有人拠点(Gateway)、国際宇宙ステーション、超小型探査機オモテナシ・エクレウス、X線分光撮像衛星(XRISM)、エアロゾル・雲・対流・降水(ACCP)ミッション、超音速機のソニックブーム等)について言及され、協力関係を更に発展させることを確認しました。

NASAネルソン長官(左)、JAXA山川理事長(右)

NASAネルソン長官(左)、JAXA山川理事長(右)

2021年8月5日 更新
木星高層大気の温度分布をあらためて観測し、その異常高温の原因を解明 

概要:惑星大気を加熱するオーロラ

木星と太陽の距離は地球のそれと比べて5倍以上もありますが、そのことは木星大気が温度の高い状態にあることを期待させません。実際、太陽光の入射量を基に計算すれば、この巨大惑星の高層大気の平均温度は約200K(ケルビン)、つまり摂氏-73℃ほどと推測されます。しかし実際の観測値は約700K、摂氏で420℃にも及んでいることが分かっています。なぜこれほどまでに木星高層大気の温度は高いのか。これは50年来の謎であり、科学者たちはこの謎を「エネルギー危機(energy crisis)」と呼んできました。

今回、JAXAのジェームズ・オダナヒュー(James O’Donoghue)が主導する研究が、木星大気の高温状態を説明すると考えられる原因を特定しました。研究チームは、木星高層大気の全球温度マップを最高分解能で作成することにより、木星大気の異常高温をもたらす熱源が強力なオーロラであると示すことに成功しました。

(動画):可視光で観測された木星が示された後、木星高層大気での赤外線の輝き(オーロラ)の様子を想像図で重ねた。高層大気の温度は、高温から低温へ、白→黄色→オレンジ→赤、と表現されている。オーロラ領域は最も高温の領域で、風によって熱がオーロラ領域からどのように運ばれ木星高層大気全体の加熱につながっているかを表している。最後は、実際のデータに基づき、温度スケール入りで観測した全球での構想大気温度分布が示されている。(Credit: J. O'Donoghue (JAXA)/Hubble/NASA/ESA/A. Simon/J. Schmidt)

オーロラは、木星周辺の宇宙空間にある荷電粒子が惑星の磁場にとらえられたときに発生します。粒子は磁力線に沿って惑星の極域大気に降り込み、大気中の原子や分子と衝突すると光という形でエネルギーを解放します。地球では、このことにより極域の夜空を彩るオーロラが作られます。木星では、火山活動が活発な衛星イオから噴出するガスが木星周囲の宇宙空間に荷電粒子を豊富に供給しており、太陽系最強の木星オーロラとそれによる極域大気の加熱を生み出しています。長年にわたり木星オーロラは、木星大気の異常高温を引き起こす熱源候補として注目されてきましたが、これまでの観測では結論を出すことはできませんでした。

研究の詳細

研究チームは、2016年4月および2017年1月の夜、ハワイ島マウナケアにある10mのケックII望遠鏡で木星をそれぞれ5時間ずつ観測しました。ケックIIに搭載された近赤外線分光器(NIRSPEC)を用い、木星大気中のH3+イオンからの輝線を極域から赤道までの全緯度で検出しました。H3+イオンは木星高層大気(電離層)の主成分であり、輝線の強度からその領域の温度を導き出すことが可能です。

これまでの木星高層大気の温度マップは、数ピクセルだけで構成されていました。これでは木星全体でどのように温度が変化しているのかを理解することは難しく、異常高温を引き起こす熱源が何であるかの手がかりはほとんどありません。これを改善すべく、研究チームは以下の二段階のアプローチをとりました。まずケックIIの高性能を利用して木星の表面温度の計測点数を増やしました。次に、計測値の不確定性が5%以下の場合にのみ、その値を最終的な木星マップに反映することとしました。

図1:木星大気のH3+の(上段)温度、(中段)柱密度、および(下段)視線方向に積分した放射輝度。長い破線で囲まれた高緯度部分はオーロラのメイン領域、短い破線と実線はそれぞれ衛星イオおよびアマルテアと磁力線で繋がる位置を示す。(O’Donoghue et al, 2021, Nature)

具体的には、研究チームは異なる空間分解能で5つのマップを作成しました。最も高い分解能のものは、木星表面の緯度2度×経度2度の領域での平均気温からなるマップです。そこから解像度を下げて、経度4度×緯度4度、6度×6度、8度×8度、10度×10度の領域での平均気温マップも作成しました。最高分解能で作成したマップの計測結果の不確定性が高い場合には、より低い分解能での不確定性の低い値を代わりに採用しました。結果として、可能な限り高い空間分解能を追求しつつ不確定性の排除も行い、分析に最適なマップが作成されました。

「データを注意深く抽出してマッピングし、分析するには何年もかかりました。」オダナヒューはこのように述べます。「最終的に出来上がったのは、1万を超える個別のデータポイントから成る温度マップでした。」

マップを見れば、一目瞭然

木星高層大気の温度マップは、高緯度のオーロラ領域から赤道に向かって温度が低下していくことを明確に示していました。これは、高緯度で加熱された大気が惑星風によって低緯度へと運ばれることで、オーロラにより持ち込まれたエネルギーが木星全体を循環しているということを示しています。

オーロラが木星大気の異常高温の原因である可能性は以前より提案されていました。しかし、これまでの木星高層大気の全球モデルにおいては、木星の速い自転による影響のために赤道向きの風は西向きに曲げられてしまうとされ、これでは極域のオーロラのエネルギーが低緯度へと拡散され大気全体を加熱することにはならないとされてきました。今回の新しい観測結果によると、そのような強い風の曲げは起きておらず、極域から低緯度に吹き出す成分が従来の予想よりも強いものであるということが示されました。

図2: 可視光で観測された木星が示された後、木星高層大気での赤外線の輝き(オーロラ)の様子を想像図で重ねた。高層大気の温度は、高温から低温へ、白→黄色→オレンジ→赤、と表現されている。オーロラ領域は最も高温の領域で、風によって熱がオーロラ領域からどのように運ばれ木星高層大気全体の加熱につながっているかを表している。 (Credit: J. O'Donoghue (JAXA)/Hubble/NASA/ESA/A. Simon/J. Schmidt)

JAXAの惑星分光観測衛星「ひさき」は2013年の打ち上げ以降、地球周回軌道から木星のオーロラを観測してきました。長期間にわたる観測により、木星のオーロラは太陽風(太陽から吹き出す荷電粒子の流れ)の影響を強く受けていることがわかっています。より強い太陽風が木星の固有磁場と衝突すると木星側の磁場が強く圧縮され、木星オーロラが増光します。今回、研究チームは、この強まった太陽風との相互作用の結果として生じる強い大気加熱の証拠も見出しました。増光したオーロラを起源にして高温領域が低緯度へと伸びている様子を観測したのです。この観測の時、木星では太陽風がきわめて強い状態にありオーロラも強くなりました。この幸運により、低緯度に向かって高温帯が伸びていく様相を捉えるという発見が可能となりました。

「熱が伝播する様相をとらえられたことはとても幸運でした。」オダナヒューは続けます。「もし木星を観測したのが別の日で太陽風が強いという条件が揃わなかったら、私たちはこのような成果を得られませんでした。」

今回の発見により熱源がオーロラと同定され、木星の「エネルギー危機」を終わらせることが出来るかもしれません。木星のような強いオーロラは、巨大ガス惑星全般に期待される現象です。その一方で、様々な要素により惑星風の状態が決まることを考えれば、それぞれの巨大ガス惑星で大気加熱源としてオーロラの役割は様々に異なっている可能性があります。

論文情報

原題:Global upper-atmospheric heating on Jupiter by the polar aurorae

雑誌名:Nature

出版日:2021年8月5日(日本時間午前0時)

DOI:10.1038/s41586-021-03706-w外部リンク
主著者名 所属:ジェームズ・オダナヒュー(James O’Donoghue)JAXA, NASAゴダード宇宙飛行センター

共著者 所属:
L. Moore ボストン大学宇宙物理学センター
T. Bhakyapaibul  ボストン大学宇宙物理学センター
H. Melin レスター大学
T. Stallard レスター大学
J. E. P. Connerney Space Research Corporation, NASA ゴダード宇宙飛行センター
垰 千尋  情報通信研究機構 (NICT),

関連リンク
情報通信研究機構(NICT): https://www.nict.go.jp/info/topics/2021/08/05-1.html 外部リンク

2021年8月4日 更新
長期衛星降水観測から明らかになった最近10年間の梅雨前線帯の降水の活発化(論文解説)

地球温暖化や気候変動などの影響により、近年は梅雨の季節になると毎年のように豪雨がもたらされ、水災害頻発しています。今年も、7月上旬に活発化した梅雨前線に伴って熱海などの東海・関東南部では大雨による土砂災害が発生しました(詳細はこちらの記事参照)。より正確な降水の予測のためには、近年、雨の降り方がどのように変化してきているかを捉えることが極めて重要です。

JAXAでは、20年以上の長期にわたり、熱帯降雨観測衛星(Tropical Rainfall Measuring Mission; TRMM)と全球降水観測計画(Global Precipitation Measurement Mission; GPM)を通して宇宙から世界の雨を観測しています。これらの長期間の衛星降水観測データを用いた研究として、7月7日付(英国時間)で英国ネイチャーリサーチの『Scientific Reports』電子版で、東京都立大学と名古屋大学による研究成果が掲載されました。この研究発表について東京都立大学から発表されたプレスリリースでは「本研究の結果は、梅雨前線の雨の降り方が変化していることを示唆しています。今後も降雨観測衛星による継続的なモニタリングが重要です。さらに、梅雨前線の雨の降り方の変化に対応した防災対策が必要であると考えられます。」とされています。本研究は、JAXA共同研究(第2回地球観測研究公募; EO-RA2)で実施されました。そこで本稿では、この東京都立大学と名古屋大学による最新の研究成果に加え、使われたJAXAの衛星搭載降水レーダによる降水観測について紹介します。

図1. TRMMとGPMの衛星降水レーダ観測による、1998年〜2008年と2009年〜2019年の各11年平均の降水頻度の差。単位は%。緑色(オレンジ色)は、降水活動が活発化(不活発化)していることを示す。図中の黒丸(灰色の丸)は、平均値の差が有意水準95%(90%)で統計的に有意であることを示す。(東京都立大学の発表資料引用に加筆)

2021年8月2日 更新
宇宙生活/地上生活の課題を解決する生活用品のアイデア募集(古川宇宙飛行士メッセージ)

2021年7月

2021年7月28日 更新
オンラインイベント「JAXA-NASAの気候変動に向けた挑戦にかかわる協力について」の録画公開

 7月21日(水)、JAXAワシントン駐在員事務所は「JAXA-NASAの気候変動に向けた挑戦にかかわる協力について」と題するウェビナーを開催しました。

 本ウェビナーでは、NASAのギャビン・シュミット上級気候顧問代行と、JAXA地球観測研究センター(EORC)参与の早坂忠裕教授を招き、パネルディスカッションを実施しました。両氏からは、各機関の現在と将来の気候ミッションについて報告がなされるとともに、気候変動への対応に向けての国際パートナーシップの重要性が議論されました。

 本ウェビナーの録画を以下のサイトにて公開しましたので、この機会に是非ご覧ください。(全編英語となります)

JAXA地球観測研究センター 早坂参与(左上)、NASA ギャビン・シュミット上級気候顧問代行(右上)、JAXAワシントン駐在員事務所 小野田所長(下;モデレータ)

JAXA地球観測研究センター 早坂参与(左上)、NASA ギャビン・シュミット上級気候顧問代行(右上)、
JAXAワシントン駐在員事務所 小野田所長(下;モデレータ)

2021年7月19日 更新
研究提案募集(RFP):革新的将来宇宙輸送プログラム共創体制 in 宇宙探査イノベーションハブ第7回研究提案募集

宇宙へ人や物を運ぶ宇宙輸送システムの敷居を下げていくため、国と民間が協力した宇宙輸送費の抜本的な低コスト化の取り組みにより、革新的な宇宙輸送システムの実現を目指すロードマップを文部科学省が策定しました。

このロードマップでは、地上産業用の部品活用や新技術採用による革新を目的に非宇宙分野の企業とオープンイノベーションの共創体制を構築し、大幅な低コスト化を実現した宇宙輸送システムの実現を目指しております。

宇宙への輸送費が高くなっている要因の一つとして、宇宙用として特殊仕様の製品を開発し、受注生産に近い少量の製品を利用している点があります。これまでの基幹ロケット開発でも民生の製品を活用する取り組みを行ってきましたが、世界の宇宙輸送システムと比べると、まだ特殊仕様の製品が多く活用されている状況にあります。そこで、本プログラムでは、非宇宙含めた革新的な技術/部品を広く募集しこれまでの宇宙用と比較して安く製品化する活動を追加しました。地上市場とのDual Utilizationを考慮することにより、全体での出荷数を確保して、宇宙用としては安い価格の製品利用を推進したいと考えております。

非宇宙含めた革新的な技術を広く募集するため、民間企業・研究機関・大学の方々から広く情報提供を行って頂き、その情報を基に共同研究テーマを設定しました。今回は、非宇宙の方々も含め幅広い方々を対象とし、応募頂いた中から選定を行います。なお、共同研究の成果は地上産業/市場への活用を促進するため、知的財産に関しての配慮もしております。本オープンイノベーションでは、スピード感のある開発体制となる様に、参加者のモチベーションを重視したく、地上市場/民間宇宙市場に技術を供給する際の課題と共有化を図るJAXAの探査ハブの考え方を採用しました。

募集する研究テーマは、現状の革新的将来宇宙輸送システムに関して情報提供要請(RFI)した結果を参考に、リファレンスシステムの実現に向けた課題を設定しました。今回のRFP募集にあたり、JAXAの要求に合わせるだけでなく、是非、個々の企業・大学の方が抱えている地上産業・市場への解決も合わせて考えて頂き、宇宙と地上双方に活用の方向性のある研究提案をして頂ければ幸いです。

★将来輸送のロードマップについて、文科省主体に協議を進めてきました。当該事業の詳細については、下記ウェブサイトをご参照ください。
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/kaihatu/024/index.html 外部リンク

★革新的将来宇宙輸送プログラム情報提供要請(RFI):
https://www.kenkai.jaxa.jp/pickup/rfi-2021.html

★ JAXA宇宙探査イノベーションハブ:
https://www.ihub-tansa.jaxa.jp/

2021年7月16日 更新
国連宇宙部(UNOOSA)とJAXAによるKiboCUBEプログラム第7回公募開始のお知らせ

 JAXAと国連宇宙部(UNOOSA)は、KiboCUBEプログラムの第7回公募を開始しました。KiboCUBEは、選定された機関に対し国際宇宙ステーション「きぼう」日本実験棟からの超小型衛星の放出機会を提供するプログラムで、発展途上国等の宇宙関連技術向上への貢献等を目指し、国連宇宙部とJAXAが共同で実施しています。本プログラムでは、これまで計6機関を選定しており、このうち3機関の衛星を「きぼう」日本実験棟の超小型衛星放出機構を用いて放出しました。
 本プログラムが対象とするのは、1Uキューブサットと呼ばれる約10cm3の超小型衛星です。より大型の衛星と比較して開発が容易かつ予算を低く抑えられることから、教育、人材育成、技術実証等に広く活用されています。このような超小型衛星の意義を踏まえ、JAXAと国連宇宙部は今回の公募に合わせ、超小型衛星の開発に関するオンライン教育プログラム「KiboCUBEアカデミー」を実施します。超小型衛星の技術、開発プロセス等に関する講義・インタラクティブセッション等を通じ、選定される機関にとどまらず、広く発展途上国の能力向上に貢献していきます。

本件の詳細については、以下の国連宇宙部のHPをご覧ください。

https://www.unoosa.org/oosa/en/ourwork/access2space4all/KiboCUBE/KiboCUBERounds.html外部リンク
超小型衛星「MIR-SAT1」

「きぼう」から放出される、KiboCUBE第3回で選定された超小型衛星「MIR-SAT1」(2021/06/22)

超小型衛星「MIR-SAT1」

モーリシャス学術研究イノベーション会議が開発した超小型衛星「MIR-SAT1」

2021年7月15日 更新
世界の気象リアルタイムNEXRAと「しずく」衛星による梅雨前線に伴う大雨解析結果

6月下旬から7月上旬にかけて日本各地で梅雨前線に伴う大雨が観測され、この大雨により日本各地で災害が発生し、多数の被害者・犠牲者が出ました。被害を受けられた方々に対し、謹んでお見舞い申し上げます。本報告では、この期間の梅雨前線とそれに伴う大雨の特徴をJAXAにおける気象解析データを用いて解説します。

6月下旬から7月上旬にかけての梅雨前線に伴う大雨を、JAXAで2018年11月より公開している「世界の気象リアルタイムNEXRA」のデータを用いて解析した結果をお知らせします。2020年にJAXAはJSS2(JAXA Supercomputer System Generation 2)に代わる新たなスーパーコンピュータシステムであるJSS3(JAXA Supercomputer System Generation 3)を稼働しました。

2021年7月1日から10日までの高解像度NEXRAにより示された梅雨前線の変化。

図1. 2021年7月1日から10日までの高解像度NEXRAにより示された梅雨前線の変化。各初期値から24時間後の予測実験の結果を示す。矢印は高度10mの風(m/s)、色は積算水蒸気量(kg/m2)、赤で示す領域は雨量が10 mm/hour以上の領域。

2021年7月13日 更新
第2回「きぼう」ロボットプログラミング競技会(2nd Kibo-RPC)日本国内予選とプログラミング決勝大会のお知らせ

JAXAは、第2回「きぼう」ロボットプログラミング競技会の日本国内予選とプログラミング決勝大会を7月18日に開催いたします。大会の様子は、YouTubeで配信しますので、ぜひご覧ください。

開催日時:12:00 – 13:05 日本国内予選
15:00 – 16:00 プログラミング決勝大会

第2回「第2回Kibo-RPC予選開催

2021年7月9日 更新
TE-Japanによる東海・関東南部の土壌水分モニタリング

2021年7月1日~5日頃にかけて、活発化した梅雨前線が日本列島付近に停滞し、東海・関東南部を中心に甚大な被害が発生しました。被害を受けられた方々に対し、謹んでお見舞い申し上げます。

JAXAでは、全球降水観測計画(GPM)主衛星や衛星全球降水マップ(GSMaP)など、宇宙から雨の状況を観測しているデータを用いて解析を実施し、速報記事として「活発化した梅雨前線に伴って東海・関東南部で発生した大雨の観測」として掲載いたしました。

Today’s Earth ? Japan(TE-Japan)とは?

今回の大雨は、7月3日午前に静岡県熱海市で土石流発生を引き起こすなど、大きな被害をもたらしました。こうした土砂災害が起こる主な要因の一つとして、災害の前から土壌中に多量の水分が蓄えられていたことが推測されます。
JAXAでは、陸上の水循環をより詳細に把握するために、陸域水循環シミュレーションシステム「Today’s Earth - Japan(TE-Japan)」を東京大学と共同で開発・運用しています。TE-Japanででは、降雨によってもたらされた水が、陸上のどこにどの程度集まるのかを推定することができ、河川流量や地上からの蒸発散量、土壌中の水分量など、陸上の水に関わる多くの物理量の現況をどなたでもウェブページ経由で閲覧することが可能です。
また、同システムに気象庁の気象予報データを入力することで、およそ30時間後までの予測シミュレーションを定常的に行うことも可能となっています※1。予測精度に関しては、顕著な災害事例を中心に評価を行っており、関東を中心に広い範囲で被害が出た2019年台風19号の事例では高い精度を確認し、東京大学と合同でプレスリリースを行いました

TE-Japanが推定した7月初旬の大雨による土壌水分量の変化

TE-Japanは、日本全土について約1kmの空間解像度で1時間毎に計算しており、地面の下方向にも図1左に示すように、土壌の各層(計6層)について土壌水分量を推定することが可能となっています。JAXAではこのデータを用いて、今回の災害が発生する前にこれらの地域で土壌水分量がどのような状況であったのかを解析しました。
図1右は、2021年6月28日から7月3日にかけてTE-Japanが推定した日本全土の土壌水分量の平年値※2からの偏差※3を示した図です。7月に入った時点で、太平洋側ではそれまでの長雨により土壌が平年に比べかなり湿った状態にあったことが分かります。

(左)TE-Japanが表現する陸上での水収支のイメージと土壌の各層の厚さ
TE-Japanが推定した土壌第2層における土壌水分量の平年からの偏差(世界標準時6月28日~7月3日)

図1.(左)TE-Japanが表現する陸上での水収支のイメージと土壌の各層の厚さ
(右)TE-Japanが推定した土壌第2層における土壌水分量の平年からの偏差(世界標準時6月28日~7月3日)

※1:気象業務法により、予測情報は共同研究機関にのみ公開しています。

※2:TE-Japanが推定した土壌水分量の2007年から2020年までの平均値。

※3:各時刻で推定された土壌水分量から平年値を引き、2007年から2020年までの分散で除した値。おおよそ0に近いと平年通り、1~3で平年に比べやや多い、3以上で平年に比べ非常に多い土壌水分が推定されていたことを示す。

2021年7月5日 更新
活発化した梅雨前線に伴って東海・関東南部で発生した大雨の観測

2021年7月5日現在、活発化した梅雨前線が日本列島付近に停滞し、東海・関東南部を中心に甚大な被害が発生しています。被害を受けられた方々に対し、謹んでお見舞い申し上げます。

JAXAでは、降水状況の把握に関する情報提供の観点から、全球降水観測計画(GPM)主衛星や衛星全球降水マップ(GSMaP)など、宇宙から雨の状況を観測しているデータを用いて解析を実施いたしました。

図1は衛星全球降水マップ(GSMaP)による7月1日~3日(世界標準時)の平均降水量(図1左)と、過去21年分のGSMaPの統計から算出した2021年7月1日~3日の豪雨指標(図1右)の分布を示しています。6月末に日本南海上にあった梅雨前線は7月に入ってから北上し、太平洋側を中心に大雨となりました。図1左に示した衛星による降水情報では、土砂災害などの被害が報告されている東海・関東南部を中心に3日間の平均で50 mm/dayを超える大雨が続いていたことがわかります。
図1右には、過去21年間のGSMaP統計値から算出した2021年7月1日~3日の豪雨指標を示しており、濃いピンクの領域が、2021年の7月1日~3日(世界標準時)が過去21年分の7月1日~7月3日(世界標準時)の平均雨量と比較して、どの程度極端に雨が多い事例であったか示しており、東海・関東を中心に強い豪雨傾向が捉えられています。

衛星全球降水マップ(GSMaP)

図1. 2021年7月1日~3日(世界標準時)の衛星全球降水マップ(GSMaP)による
平均日降水量 [mm/day](左)と豪雨指数(90, 95, 99パーセンタイル値)(右)
濃いピンクは、過去21年の7月1日~3日の平均降水量のうち上位1%の降水強度
(99パーセンタイル値)以上に相当する降水があった領域を示しています。

2021年7月2日 更新
2021年度 宇宙教育シンポジウム開催報告WEBサイトの公開について

2021年度宇宙教育シンポジウムは、6月19日(土)、20日(日)にオンラインにて開催し、多くの皆様にご参加いただきました。
このたび、同シンポジウムの開催報告WEBサイトを公開できる運びとなりましたのでお知らせいたします。参加できなかった方、もう一度ご覧になりたい方はもちろん、どなたでもアクセスできますので、普段から宇宙教育活動を実践されている方ばかりではなく、「宇宙教育」とはどのようなものか知りたい方、ICTの教育への活用、導入をお考えの方なども、この機会にぜひご覧ください。
公開期間:8月31日(火)まで

2021年7月2日 更新
ArtemisI搭載JAXA超小型探査機に関する米国航空宇宙局(NASA)との了解覚書の締結について

国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2021年7月2日、米国航空宇宙局(NASA)と、NASAのアルテミス計画初号機ArtemisIに搭載されるJAXAの超小型探査機2機の打上げ及びデータの交換等に関する協力に合意し、JAXA 國中均 理事/宇宙科学研究所長およびNASAカレン・フェルドスタイン国際局長が了解覚書に署名しました。

JAXA 國中均 理事/宇宙科学研究所長

アルテミス計画の初号機(ArtemisI)では、新型ロケット(Space Launch System、SLS)による無人のOrion(オリオン)宇宙船の打上げが予定されています。
ロケットの余剰能力をいかして超小型探査機を相乗りさせ、将来の探査につながる様々な技術実証・科学観測を実施することが計画されており、日本からEQUULEUS(EQUilibriUm Lunar-Earth point 6U Spacecraft)およびOMOTENASHI(Outstanding MOon exploration TEchnologies demonstrated by NAno Semi-Hard Impactor)の2機の搭載が選定されています。EQUULEUSは月のラグランジュ点への航行を通じた技術実証や地球磁気圏プラズマ観測等を、OMOTENASHIは月面へのセミハード着陸の実証や地球・月周辺の放射線環境測定を予定しています。

関連リンク

ウェブサイト(ISAS):
https://www.isas.jaxa.jp/feature/eq-om/

EQUULEUS:
https://www.space.t.u-tokyo.ac.jp/equuleus/外部リンク

Artemis:
https://www.nasa.gov/artemisprogram外部リンク

2021年6月

2021年6月30日 更新
GIGAスクール特別講座~君も宇宙へ!~

文部科学省と宇宙航空研究開発機構(JAXA)が連携して、GIGA スクールと宇宙飛行士が連携した教育活動「GIGA スクール特別講座~君も宇宙へ!~」を行います。
JAXA油井亀美也宇宙飛行士や現在国際宇宙ステーションで船長を務める星出彰彦飛行士とともに「宇宙での水や食べ物の動き方と食事の仕方」について学びましょう!
以下のYouTubeチャンネルにて視聴できます。

放送日時:2021年7月6日(火) 17:35~18:20

GIGAスクール構想とは

2021年6月30日 更新
JAXA機関紙「JAXA's」の84号を発刊しました

今号は、今年度中に試験機1号機の打ち上げを目指すH3ロケットを特集。描きおろしのイラストも必見です!そのほか、現在国際宇宙ステーションの船長として活躍している星出彰彦宇宙飛行士のインタビュー(WEB版のみ)、JAXA’sアンケートのなかで要望が多かった「JAXAで働く人について知りたい」という声にお応えしたページ(タブロイド版のみ)など、盛りだくさんの内容でお届けします!

2021年6月28日 更新
月面推薬生成プラントの構想検討に係る連携協力協定の取り交わしについて

 JAXA有人宇宙技術部門は日揮グローバル株式会社と、2021年6月21日に、「月面推薬生成プラントの構想検討に係る連携協力協定」をオンラインで取り交わしました。協力期間は一年間です。
 この連携協力は、月の水資源を利用して、月近傍および月面において推薬(水素や酸素)の供給を可能とする月面推薬生成プラントの実現に必要な技術要素、研究課題の洗い出しおよび研究開発計画の検討を目的としています。
 JAXAは、2040年代以降の月面での持続的な探査活動の実現を目指してまいります。

連携協力協定の取り交わしを実施(左;JAXA酒井有人宇宙技術センター長、右;日揮グローバル株式会社阪本バイスプレジデント)

連携協力協定の取り交わしを実施
(左;JAXA酒井有人宇宙技術センター長、右;日揮グローバル株式会社阪本バイスプレジデント)

詳しくはこちら(JAXA有人宇宙技術部門HP)
https://humans-in-space.jaxa.jp/biz-lab/news/detail/001513.html

2021年6月25日 更新
JAXAと英国宇宙庁(UKSA)間の協力覚書の締結について

 JAXA山川理事長および英国宇宙庁(UNITED KINGDOM SPACE AGENCY:UKSA)ターノックCEOは、本日、平和目的のための航空宇宙協力に関する協力覚書を取り交わしました。署名式には、ロングボトム駐日英国大使、林駐英日本国大使にご臨席いただきました。

 本協力覚書は、過去の協力実績及び将来の協力強化の必要性に基づき、航空宇宙研究・開発、宇宙科学・探査、地球観測・衛星利用、及び軌道環境の持続的かつ安全な利用という広範な分野において協力を促進するものです。

 また、本協力覚書では、UKSAが承認した英国の実施主体機関が、本枠組みの下でJAXAと実施取決めを策定できることとしており、最初の協力として、英国国防科学技術研究所(DEFENCE SCIENCE AND TECHNOLOGY LABORATORY:Dstl)との宇宙状況把握(SSA)に関する技術的・科学的な協力に関する実施取決めを同日締結しました。

 JAXAはUKSAとのMOC締結を通して、英国の研究所、大学、産業界との間で国際的な関心・課題に貢献できるよう、様々な協力及び成果が創出していきます。

ロングボトム駐日英国大使、JAXA山川理事長、UKSAターノックCEO、林駐英国特命全権大使、Dstlホワイトリー宇宙グループリーダー、JAXA小川追跡ネットワーク技術センター長

(左から)
ロングボトム駐日英国大使、JAXA山川理事長、UKSAターノックCEO、林駐英日本国大使、Dstlホワイトリー宇宙グループリーダー、JAXA小川追跡ネットワーク技術センター長

2021年6月14日 更新
JAXAとフィリピン宇宙庁(PhilSA)間の協力覚書の締結について

 JAXA山川理事長およびPhilSAマルシアーノ長官は、本日、宇宙開発利用に係る協力覚書を取り交わしました。署名式には、ラウレル5世駐日フィリピン大使、越川駐フィリピン特命全権大使にご臨席いただきました。また、署名式の終わりにはフィリピン科学技術省(DOST)のデラペニャ大臣がご出席くださいました。

 JAXAはPhilSA設立以前よりフィリピンにおける防災関係の研究推進や、2016年のフィリピン国産第1号となる超小型衛星「DIWATA-1」の「きぼう」からの放出、また、2018年の超小型衛星「DIWATA-2」のH-IIAロケットでの打ち上げ等を通じて緊密な協力関係を構築してきました。

 本協力覚書の締結により協力関係を一層推進・発展させ、新たな協力創出にむけて取り組みを進めてまいります。

JAXA山川理事長(左上)、PhilSA マルシアーノ長官(右上)、越川駐フィリピン特命全権大使(左下)、ラウレル5世駐日フィリピン大使(右下)

JAXA山川理事長(左上)、PhilSA マルシアーノ長官(右上)、
越川駐フィリピン特命全権大使(左下)、ラウレル5世駐日フィリピン大使(右下)

2021年6月8日 更新
フランス国立宇宙研究センター(CNES)との会談の実施について

JAXA山川宏理事長は、2021年6月7日にCNESのフィリップ・バティスト総裁とオンライン会談を行いました。
山川理事長とバティスト総裁の初の会談となった今回の場では、両機関の多岐にわたる協力関係について触れられ、またこの協力関係を今後も維持発展させていくことで一致しました。

JAXA 山川理事長とCNES フィリップ・バティスト総裁

2021年6月4日 更新
第7回研究提案募集(RFP)

宇宙探査イノベーションハブでは、宇宙探査オープンイノベーションフォーラム、課題設定ワークショップ等を通じて様々な分野の企業(団体等を含む)や大学等(公的研究機関を含む)と交流、 意見交換してきました。また、情報提供要請(RFI: Request for Information)にて企業・大学等が保有する技術情報や研究開発ニーズの提供を受け、 これまでに6回の研究提案募集(RFP: Request for Proposal)を実施しました。その結果、多種多様な企業・大学等と連携した研究開発に取り組んでおります。

この度、これまでRFIに提供いただきました技術情報を基に、本事業において着手すべき研究課題を絞り込み、第7回研究提案募集(RFP、以下「本RFP」)を実施します。

本RFPは、RFIに対して技術情報をご提供いただいた方のみならず、広く皆様からのご応募をお待ちしております。 また、公募説明会※の開催を予定しております。募集内容をご説明するとともに、募集課題に関する質疑を受け付けますので、研究提案をお考えの方に限らずご参加をお待ちしております。

また、6月9日(水)に公募説明会(要事前申込)もありますので、そちらも合わせてご参加ください。

2021年6月2日 更新
JAXA宇宙探査イノベーションハブ webサイトリニューアルのお知らせ

2015年から公開してきたJAXA宇宙探査イノベーションハブ webサイトですが、2021年6月1日よりリニューアルオープンしました。
これまでご案内してきた情報提供要請(RFI)、研究提案募集(RFP)の他に今後は企業や各組織との共同研究成果を掘り下げてご紹介いたします。

2021年5月

2021年5月21日 更新
古川宇宙飛行士向け「Pre宇宙日本食」の搭載希望の募集について

2021年5月21日 更新
アメリカ航空宇宙局(NASA)との会談実施について

JAXA山川宏理事長は、井上信治内閣府特命担当大臣(宇宙政策)及び萩生田光一文部科学大臣とともに、2021年5月21日にビル・ネルソンNASA長官とオンライン会談を行いました。5月3日ネルソン長官就任後、国際パートナーとの初会談となりました。会談では、日米宇宙協力の重要性及び緊密な協力関係を更に発展させることを再確認しました。

オンライン会談の様子(写真位置の説明 左上:萩生田文部科学大臣(Minister HAGIUDA)、右上:JAXA山川理事長(Dr. YAMAWAKA)、左下:NASAネルソン長官(Sen. Nelson)、右下:井上内閣府特命担当大臣(Minister INOUE))

オンライン会談の様子(左上:萩生田文部科学大臣、右上:JAXA山川理事長、
左下:NASAネルソン長官、右下:井上内閣府特命担当大臣)

2021年5月12日 更新
JAXAの防振特許技術を活用した輸送時の振動・搬送物の揺れを低減させる装置が開発されました

輸送時の振動や揺れから搬送物を守るため、振動を常に抑制する技術が求められています。
JAXAの防振特許技術と多摩川精機の無揺動化技術を組み合わせ、振動のみならず、車両の傾きの影響や加減速・右左折による揺れも低減する無揺動防振装置が開発されました。
低減効果を定量的に確保した輸送品質を実現し、精密機器をはじめ医薬品など特に振動や揺れに弱い物の輸送への応用が期待されています。

本実用化開発は、科学技術振興機構(JST)研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)企業主導フェーズNexTEP-Bタイプの開発課題「輸送事業向け無搖動防振装置」において、実施されたものです。

<参考リンク>

無揺動防振装置の外観と無搖動化動作検証の様子©多摩川精機

2021年5月11日 更新
革新的将来宇宙輸送プログラム共創体制 in 宇宙探査イノベーションハブ第7回研究提案募集(RFI)と説明会のご案内

革新的将来宇宙輸送プログラム共創体制 in 宇宙探査イノベーションハブ第7回研究提案募集(RFI)と説明会のご案内

JAXAでは「革新的将来宇宙輸送プログラム」の実現に向け、ユーザーを含む産学官の幅広い実施主体が参画するオープンイノベーションでの共創体制を構築すべく、皆様からの情報提供要請をスタートしました。
この新しい取り組みをご理解頂くため、説明会を5/19 16-18時にWEBにて行います。
積極的なご参加をお待ちしております!

2021年4月

2021年4月19日 更新
2021年度 宇宙教育シンポジウムの開催について

2021年度 宇宙教育シンポジウムの開催について

JAXA宇宙教育センターでは、2021年6月19日(土)~20日(日)に、宇宙教育シンポジウムを開催いたします。
普段から宇宙教育活動を行っている方や宇宙教育に関心のある方など、多くの皆様にご参加いただきたいと考えております。
また、実践されている宇宙教育について発表していただくポスターセッションの場を設けますので、ふるってご応募ください。
ご参加の皆様が、このシンポジウムを通して、宇宙教育とICT活用の現状に触れていただき、ツールとしてのICTへの理解を深めていただければと思います。多くの皆様のご参加をお待ちしております。

2021年4月2日 更新
地球が見える 2021年 スエズ運河座礁船と船舶渋滞を観測(続報:3月31日観測を追加)(続報:4月6日及び4月9日観測を追加)

スエズ運河では2021年3月23日午前7時40分(現地時間、標準時では5時40分)頃に大型コンテナ運搬船の座礁事故が発生し、船舶が通航できずに渋滞する状況が続いていましたが、現地時間29日夕方に座礁船の離礁が成功し、通航が再開しました。
一時は422隻の船舶が運航を待つ状態で足止めされていましたが、4月4日の報道等によると、4月3日にその全てが運河を通過したとのことです。ただ、その後も運河の入口に到着した船も多く、完全な渋滞解消には時間がかかるようです。
JAXAでは陸域観測技術衛星2号「だいち2号」(ALOS-2)によるスエズ運河の観測を3月26日、3月31日、4月6日、4月9日に行い、座礁船と渋滞船舶の様子を確認しました。
事故当日は砂嵐があったとの報道がありましたが、気候変動観測衛星「しきさい」(GCOM-C)観測によるエアロゾル(砂塵)についても紹介します。

3月26日 10時23分(標準時)の「だいち2号」搭載の合成開口レーダ(PALSAR-2)画像。a) スエズ運河付近、b) a)座礁船付近を拡大したもの。

3月26日10時23分(標準時)にだいち2号に搭載された合成開口レーダ(PALSAR-2)で観測した、座礁したコンテナ運搬船付近の画像を示します。この座礁船は全長400mあり、運河の幅よりも長いため、完全に運河を塞いでいることがわかります。座礁船の周りには、タグボート等と思われる船舶も見ることができます。

2021年4月1日 更新
JAXA有人宇宙技術部門ウェブサイトリニューアルのお知らせ

2021年3月

2021年3月31日 更新
JAXA機関紙「JAXA's」の83号を発刊しました

今号は「はやぶさ2」を大特集!! JAXAsならではの切り口で「はやぶさ2」の成果や裏話、そしてこれから(サンプル解析)も含め掲載しています!
そのほか、H3ロケット試験機1号機とH-IIAロケットが、工場内で並んで横たわっている貴重なカットや、数式を通してJAXAの活動を垣間見るページなど、盛りだくさんの内容でお届けします!

2021年3月24日 更新
オーストラリア宇宙庁(ASA)との会談の実施について

JAXA山川理事長およびASAパレルモ長官は2021年3月22日にオンラインで会談を行いました。
会談では、双方の今後の計画について情報を共有するとともに、国際宇宙探査や宇宙科学分野での協力可能性について意見交換しました。
昨年7月のJAXA・ASA間の協力覚書の締結以降、両国間の宇宙協力は首脳会談でも話題に取り上げられており、「はやぶさ2」カプセル回収ミッションにおける協力を経て、今後ますますの協力促進を図り、自由で開かれたインド太平洋実現に共に貢献していくことを確認し、会談を終了しました。

ASAパレルモ長官 JAXA山川理事長

2021年3月22日 更新
極低温点検(F-0)を終えて

H3ロケット

ファーン・ファーン、また管制室内にアラームの音が響き渡る。今度は液体酸素の予冷が進まずにロケットへの燃料充填を行っている制御システムが止まったようだ。ロケットに燃料を充填する際は、徐々に注入し配管を少しずつ冷やしていく必要がある。燃料充填が止まったのは何度目だろうか。技術者達がデータの確認に走る、素早くホワイトボードに要点をまとめて、充填方法の見直しを指示した。計画ではロケットに燃料が満タンになっている時刻なのに、まだ1滴も入っていない。初めての機体に極低温の燃料を入れるのは難しいと覚悟していたが、ここまで苦戦するとは思っていなかった。このまま試験を進めることができるのか、焦りを感じていた。再試験となっては開発スケジュール、コスト共にプロジェクトに与える影響は甚大だ。

その後も、何度か手順の修正を経てなんとか燃料の充填を完了させ、ロケットの機能確認を進めることができた。次はメインイベントである打上げ240秒前からの自動カウントダウンシーケンスだ。打上げに向けて燃料タンクの加圧、電源の外部から内部電池への切り替え、打上げによる噴煙から設備を守る注水の開始等を事前に設定した順番、時刻に自動で行い、ロケットと地上設備の最終準備をする大切な作業だ。初めての機体と初めての設備の組み合わせではここにも難しさがある。

“240、239、238”カウントダウン音声が管制室内に流れる、現場の緊張感も増し全員無言になった。“10、9、8、7、緊急停止”今回はメインエンジン点火である7秒前に緊急停止をかけるのが正規の手順だ。奇跡的に初めてのシーケンスを一発で全て流しきることができた。事前の確認を入念に行ったことが功を奏したようだ。これについては満点だ。計画通りにデータを取得することができたため、カウントダウンの検証としての再実施は不要と判断して2回目のカウントダウン作業はスキップし、発雷の予報も出ている限られた残り時間の中で推進薬充填時にしか確認できない他の検証試験へと進んだ。

組立棟を出発する直前の機体

組立棟を出発する直前の機体

試験後の機体返送

試験後の機体返送

全ての試験を終えた機体が36時間ぶりに大型ロケット組立棟(VAB)に戻ってきた。試験を終えた機体はいつもより頼もしく見える。試験で壊れた個所も見た限りなさそうだ。我々エンジニアも試験を通じて少し成長できたのではないだろうか。

JAXAロケット班長 S.M.

2021年3月22日 更新
佐賀県との連携及び協力に関する協定の締結について

 JAXA山川理事長と佐賀県山口知事は、2021年3月22日に連携及び協力に関する協定を締結しました。
 この協定はJAXAと佐賀県が宇宙技術を利活用して地域課題の解決等を図ることを目指して連携・協力することを目的としています。
主な事項は次の通りです。
(1)連携企画の検討に関すること
(2)教育普及に関すること
(3)人材育成に関すること

今回の協定の締結を機に、佐賀県と協力して地域における宇宙技術の利活用に関するベストプラクティスの構築、また、宇宙教育プログラムや宇宙科学館を通じ、子どもたちの夢を育み、将来の宇宙人材輩出や裾野拡大に取り組んでまいります。

2021年3月19日 更新
JAXA有人宇宙技術部門ウェブサイト(宇宙ステーション・きぼう広報・情報センター)リニューアル作業中のお知らせ

2021年3月16日 更新
地球が見える 2021年 今後の防災活動について

2011年3月の東日本大震以降、2016年4月の熊本地震災害、2018年7月の7月豪雨災害、2019年10月の東日本台風災害や令和2年7月の令和2年7月豪雨災害等の大規模災害など、数多くの大規模災害に見舞われました。
JAXAでは、防災関係機関からの要請に基づき、陸域観測技術衛星2号機(ALOS-2, 以下「だいち2号」という)による緊急観測を実施し、観測データより得られた被災情報の提供を行なってきました。
これからは、「だいち2号」だけでなく、打上げ予定の「だいち3号」や「だいち4号」、海外宇宙機関への支援要請や提供される観測データの管理・解析など、防災機関へより多くの情報を迅速かつ効率的に提供することで、防災活動の支援を強化していきます。また、発災後の対応だけでなく、人工衛星の降雨情報やそこから得られた災害予測情報を求め、発災前からの準備により災害時の対応をより効率的な運用とすることで減災の実現を目指していきます。
ここでは、人工衛星による防災関係のシステムや、防災に活用される地球観測衛星について紹介します。

防災IFのシステム概要図

防災IFのシステム概要図

2021年3月15日 更新
インド宇宙研究機関(ISRO)との会談の実施について

JAXA山川理事長およびISROシヴァン長官は2021年3月11日にオンラインで会談を行いました。
会談では、双方の活動や今後の計画について情報を共有するとともに、豪雨監視や水稲作況見通しなどに活用することを目指した地球観測衛星データ利用協力や、月面での持続的な活動につなげるための重要な一歩となる水資源調査を目的とする月極域探査共同ミッションなど、協力案件の進捗を確認しました。JAXA・ISRO間の協力覚書の締結から5年目を迎え、両機関の相互理解が深まり、協力が拡大してきていること、今後も更に協力を深めていくことを両者で確認し会談を終了しました。

JAXA山川理事長 ISROシヴァン長官

また、この会談の機会を捉え、水稲の作付面積把握と大気環境監視データの相互比較に関する実施取決めに署名しました。アジアの主食であるコメ(水稲)の収量と環境課題の一つであるエアロゾルの把握精度向上の研究を共同で行います。

実施取決め署名の様子	(JAXA寺田理事、ISROシャンタヌー地球観測プログラム長)

実施取決め署名の様子
(JAXA寺田理事、ISROシャンタヌー地球観測プログラム長)

2021年3月15日 更新
パラグアイ宇宙機関(AEP)との意向表明書の締結について

JAXA山川理事長とAEPディアス長官は、2021年3月14日に宇宙活動における協力に係る意向表明書(LOI)を締結しました。

これは、パラグアイ共和国初となる小型衛星「GUARANISAT-1」が、国際宇宙ステーションの日本実験棟「きぼう」から無事放出された機会を捉えて署名されたものです。

本LOIに基づき、JAXAとAEPは、両国の相互利益のため、宇宙分野における協力可能性を検討するための対話を行っていきます。

意向表明書署名の様子(AEPディアス長官、JAXA山川理事長)

意向表明書署名の様子(AEPディアス長官、JAXA山川理事長)

2021年3月12日 更新
地球が見える 2021年 東日本大震災後の人工衛星の防災活用について

2011年3月11日に発生した東日本大震災では、宇宙航空研究開発機構(以降、「JAXA」)は、多くの人工衛星による被災地域の観測やその観測画像より求められた推定被害地図などの情報を、自治体をはじめとする関係機関へ複数チャンネルを通して提供し災害対応の支援を行いました。以降、2014年5月に陸域観測技術衛星2号機「だいち2号」(以降、「だいち2号」)が打ち上げられ、この人工衛星の目的の一つである防災利用として災害発生時に多くに活用されています。ここでは、東日本大震災以降のJAXAにおける人工衛星による防災利用実証活動および今後の取組みについて紹介します。

図1. 「だいち2号」による国内・国外の緊急観測対応

図1. 「だいち2号」による国内・国外の緊急観測対応
(緊急観測対応数は、同じ災害で複数の緊急観測要請があっても1カウントとしています)

2021年3月11日 更新
東日本大震災10年 知見をいかし未来へつなぐ

東日本大震災から10年が経ちました。JAXAにおいても筑波宇宙センターなどで大きな被害がありました。当時の被害に関わる資料や情報を再整理した10年前の振り返りとともに、施設部での将来に向けた防災減災の取組みをご紹介します。

2021年3月10日 更新
地球が見える 2021年 震災から10年を迎えて ~宇宙から見た復興状況~

前回掲載の「東日本大震災-JAXA地球観測の記録」では震災当時、JAXAの災害対応現場ではどのような活動を行っていたか、またその後の防災活動に関する取組みの概要などをまとめました。今回は、震災から10年を迎える機会に、地球観測衛星データの解析結果から見る復興・復旧の様子をご紹介します。

図1. 解析対象地域

2021年3月10日 更新
地球が見える 2021年 東日本大震災-JAXA地球観測の記録

2021年3月11日、東日本大震災から10年を迎えます。改めて、東日本大震災の被害を受けられた地域の皆様に、謹んでお見舞い申しあげます。震災当時の地球観測、災害観測の現場を改めて記録に残すべく、振り返ってみたいと思います。本日から連載で、当時の記録や宇宙から見た復興10年間の様子、10年間のJAXAの防災の取り組みについてご紹介していきます。

図1. 「だいち」が観測した震災前(右)と後(左)の東北地方の沿岸の様子(紺色に変化した部分は津波で浸水した地域。植物のある部分は赤で示されています。津波により海に流出したと思われる漂流物も確認できます)

図1. 「だいち」が観測した震災前(右)と後(左)の東北地方の沿岸の様子
(紺色に変化した部分は津波で浸水した地域。植物のある部分は赤で示されています。津波により海に流出したと思われる漂流物も確認できます)

2021年3月4日 更新
GSMaPが台風委員会の地域の洪水予測に大きく貢献し「キンタナール賞」を受賞!

水災害・リスクマネジメント国際センター(ICHARM)、国際建設技術協会(IDI)とJAXAのジョイントチームが「キンタナール賞」を受賞しました。

キンタナール賞とは、国際連合アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)と世界気象機関(WMO)の下に、台風による被害を軽減するべく設立された政府間組織である「台風委員会(Typhoon Committee)」の活動に大きく貢献した機関を対象に、年1回授与されます。

JAXAは、衛星全球降水マップ(GSMaP)※を開発・提供しており、このGSMaPが台風委員会の地域の洪水予測に大きく貢献しました。「キンタナール賞」の受賞は、気象庁を除く、日本の機関としては初となります。

受賞スピーチを行うICHARM小池センター長

2021年2月23~25日に日本の主催によりオンラインで開催された
台風委員会第53回総会にて受賞スピーチを行うICHARM小池センター長

衛星全球降水マップGSMaP

2021年3月3日 更新
JAXA機関紙「JAXA's」アンケートについて【ご協力いただいた方にオリジナルファイルをプレゼント!!】

77号にフルリニューアルして以降、現在82号まで発行しているJAXAの機関紙「JAXA's(ジャクサス)」。
リニューアルのポイントは、これから10年先を見据えた宇宙航空コミュニティの開拓です。宇宙航空コミュニティが科学と技術の分野から、日常の生活、文化や芸術の世界まで、さまざまなジャンルにつながっていくことを目指し、毎号さまざまな企画を立て発行しています。
本アンケートは、より皆さまに読んでいだくための編集に役立てることを目的としています。
アンケートにご協力いただいた方の中から抽選で「JAXA’sオリジナルファイル」をプレゼントさせていただきますので、何卒ご協力のほどよろしくお願いいたします。

【アンケート】ご回答はこちらをクリック外部リンク

【回答締め切り】 2021年3月10日(水)

【設問数】36問(個人情報の記入欄を除く)

【JAXA'sオリジナルファイル概要】クラフト紙製、A4サイズ相当、中袋12枚

【JAXA'sオリジナルファイル当選人数】 100名様
(※当選者の発表はファイルの発送をもってかえさせていただきます)

アンケート対象のJAXA's(82号~77号)

アンケート対象のJAXA's(82号~77号)

JAXA'sオリジナルファイル(イメージ)

JAXA'sオリジナルファイル(イメージ)

2021年3月2日 更新
天体表層で水はシンプルに作られる

天体表層で水はシンプルに作られる

仲内 悠祐氏(JAXA)率いる研究チームは、太陽から放出されている水素イオンが月や小天体表層で珪酸塩鉱物(地球,月や小天体の主要構成鉱物)に衝突することで水分子(H2O)が生成されることを実験から実証しました。

2021年2月

2021年2月26日 更新
フランス国立宇宙研究センター(CNES)との会談の実施について

JAXA山川理事長およびCNESルガル総裁は、2021年2月25日にオンラインで会談を行いました。
会談では、山川理事長から昨年12月に小惑星探査機「はやぶさ2」の再突入カプセルが無事地球へ帰還し、小惑星「リュウグウ」のサンプルが確認できたことが伝えられるとともに、CNESから回収したサンプルを分析するキュレーション設備に組み込む赤外分光顕微鏡(MicrOmega)の提供などで貢献いただいたことへの感謝を述べました。
その他、地球観測、宇宙科学、宇宙輸送など、広範にわたる両機関間の協力案件の進捗が確認されるとともに、引き続き協力関係を維持・発展させていくことが合意されました。

JAXA 山川理事長とCNES ルガル総裁

2021年2月26日 更新
VOS(Vehicle On Stand)作業を振り返って

H3ロケット

工場出荷から11日目の2021年2月6日、ついにH3ロケット試験機1号機が移動発射台(ML5)に据え付けられました。大型ロケット組立棟(VAB:Vehicle Assembly Building)内にそびえ立つ機体は雄々しくも愛着の持てる存在です。そんな機体に見入りながら、VOS(Vehicle On Stand)作業を振り返ってみます。

島間港に到着した1段機体

島間港に到着した1段機体

種子島の港に到着した巨大なコンテナを目の当たりにすると「いよいよ射場作業が始まる!」という興奮と共に、不安がよぎります。新しいことだらけのVOS作業。設計通りにうまくいくだろうか。出鼻をくじくように発生した島内輸送中の立ち往生事象や、VAB搬入口をギリギリでかわして入棟するコンテナが、そんな私の不安を増大させました。
しかし、不安に思っていても仕方がない、あとは現場で何とかするしかない。そういう境地に至るべきということは、経験豊富な先輩たちや現場作業員の方々の凛々しい目が語っていました。各自が今できることに集中して自分の頭で考え、かつ関係者が柔軟に連携することでVOS作業を無事に終えられると信じ、意を決して作業に臨みました。

1段VOS作業

1段VOS作業

新しいことだらけのH3ロケットのVOS作業では、新しいのは機体だけでなく、機体を組み立てるために必要な装置・設備もまたしかりです。しかも機体サイズはこれまでで最大のH-IIBロケットより更に大きくなっているのに対し、VOS作業を行うVABは大きさ変更の改修をしていません。そのため、これまで以上に「狭いところで大きなものをハンドリングする」ということとなり、「干渉リスクが高い」状況を必然的に生んでいます。

移動発射台に据え付けられた1段機体

移動発射台に据え付けられた1段機体

2段VOS作業

2段VOS作業

設計段階からわかっていたそのような厳しい作業条件に対し、事前に入念な確認をして臨んだものの、想定通りの作業ができない事態が幾度も発生しました。H3ロケットは時間にも追われる開発です。VOS作業もスケジュール遅延は避けなければなりません。そんなプレッシャーがある一方で、ひとつのミスが文字通り命取りになる可能性があるのがロケット開発です。事前に設定した作業ができないときにはまずしっかり立ち止まり、新しい作業案を関係者一同で確認するという基本動作を徹底し、時間と争いながらも慎重に、安全第一で作業を進めました。

固体ロケットブースタ(SRB-3)VOS作業

固体ロケットブースタ(SRB-3)VOS作業

初めて尽くしの現場では、上手くいかないことも含めてたくさんの発見がありました。多忙を極める現場でしたが、そんな合間を縫って作業者・技術者が入り混じっての改善検討が自然発生的かつ積極的に行われたことに、感動を覚えました。「このH3ロケットを、さらに”次”のロケットを、より良くしたい」現場にはそんな思いがたくさんあった気がして、次世代を担うべき一人として嬉しく、やや興奮しながら議論を交わした経験はとてもありがたいものでした。

そんなこんなで無事にVOS作業を終えたH3ロケット試験機1号機。作業者の方がとても丁寧に機体を扱われていたのが印象的で、すみずみまでとても美しく仕上がっている機体を見ると、疲れも吹き飛びます。とは言え、今後も機器や装置を搭載し、機能を確認していく作業が待っています。射場作業は始まったばかり。引き続き気を引き締めて頑張ります。

JAXA構造系担当 長福 紳太郎

2021年2月22日 更新
小惑星探査機「はやぶさ2」帰還カプセル公開【相模原市立博物館・国立科学博物館】

このたび、相模原市立博物館・国立科学博物館にて、小惑星探査機「はやぶさ2」が地球へ届けた再突入カプセルを公開いたします。
カプセルの各部パーツを展示するとともに、「はやぶさ2」が成功させた6年間にわたるミッションの軌跡をご紹介します。

クーバーペディの火球

2021年2月22日 更新
観測ロケット実験CLASP2による太陽大気磁場測定:太陽表面からコロナ直下に迫る

石川遼子助教(国立天文台)とJavier Trujillo Bueno教授(カナリア天体物理学研究所)を中心とした国際研究チームは、ロケット実験CLASP2と「ひので」衛星による観測を組み合わせ、太陽表面からコロナ直下に至る磁場構造を世界で初めて明らかにしました。CLASP2は、日米仏が共同開発した観測装置で、NASAの観測ロケットにより2019年4月に打ち上げられました。そして、約6分半の間、太陽表面上空に広がる彩層からの紫外線の偏光観測に成功しました。同時に、宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所が国内外の研究機関と協力して運用する「ひので」は太陽表面の磁場を精密に観測しました。これにより、太陽表面に点在して見られる磁束管が、彩層で急激に膨張し互いにひしめき合っていくという、今まで想像のみであった太陽磁場の彩層での姿が明らかになりました(図1)。本研究成果は、太陽物理への新しい知見をもたらすとともに、太陽観測研究に彩層磁場の測定という新しい窓を切り拓きました。

本研究成果は、2021年2月19日(アメリカ東部標準時)に米国科学振興協会が発行するScience系雑誌「Science Advances」に掲載されました。

研究概要

太陽大気は表面(6千度)よりも、その上層にある彩層(1万度)、さらにその上層に広がるコロナ(100万度)の方が温度がはるかに高く、いかなる仕組みでこのように高温な大気層が作られているのかよくわかっていません。また、彩層はコロナに比べて密度が高く、コロナを加熱・維持するよりも多くのエネルギーが必要であることが知られています。これを「彩層・コロナ加熱問題」と呼び、観測と理論の両面からさまざまな研究が活発に行われ、太陽表面とコロナの間に位置する「彩層」が重要な役割を果たしていると考えられています。しかし、加熱に必要な大気の運動やエネルギー輸送の担い手である「磁場」の彩層での様子はこれまでほとんど明らかになっておらず、その理解を阻む大きな障壁となっていました。

彩層・コロナ加熱問題解明に大きな一歩をもたらすべく、彩層の磁場測定を目的とした新たな観測装置の開発が世界中で活発に行われています。このような世界的情勢の中で、国立天文台をはじめとした日米欧研究チームが着目したのが、近年の理論研究により磁場測定が可能であることが示唆された「紫外線の偏光」です。紫外線は宇宙からの観測が必須となること、またその偏光を精度良く測る観測装置の開発も極めて困難であることから、「紫外線の偏光」は長らく未踏の領域となっていました。これに挑戦したのが、観測ロケット実験CLASP(2015年打ち上げ)、そしてCLASP2(2019年打ち上げ)です。

今回、石川遼子(国立天文台)とJavier Trujillo Bueno(カナリア天体物理学研究所)が率いる国際研究チームが解析を行ったのが、観測ロケット実験CLASP2で取得されたデータです。CLASP2はその飛翔中、活動領域を2分半にわたって観測し、電離マグネシウム線(波長280nm)近辺の紫外線偏光スペクトルを世界で初めて取得しました(図2)。そして驚いたのが、CLASP2打ち上げ前からの標的であった電離マグネシウム線(図2右でMg II k, Mg II hと表記)に加え、その近傍にある2つのマンガン線(図2右でMn Iと表記)にも、ゼーマン効果によって有意な円偏光が検出されたことです。電離マグネシウム線はコロナ直下の彩層中〜最上部から放射される一方、マンガン線は彩層底部から放射されます。これら複数の偏光情報により、彩層底〜中〜最上部の連続した磁場情報を得ることができるのです。さらにCLASP2は、太陽表面の磁場を測定する「ひので」衛星との共同観測にも成功しました(図2左下)。

このようにCLASP2と「ひので」の観測を組み合わせて得られたのが、太陽表面から彩層底部、彩層中部、そしてコロナ直下の彩層上部に至る活動領域の磁場の様子です(図3)。図3の緑線で示された、大きく変動した空間分布は、太陽表面ではキュッとすぼまったチューブ状の「磁束管」が、互いに少しずつ離れて分布していることを示しています。一方の彩層では(図3の青、黒、赤の丸)その振る舞いは大きく異なり、[1]太陽表面に比べて急激に磁場強度が弱まること、[2]彩層の中でも上空に行くに従って徐々に磁場が弱くなっていること、[3]太陽表面で磁場が弱い場所でも彩層では比較的強い磁場が存在すること(例えば図3の黒矢印で示した場所)、がわかりました。これらのことから、磁束管が彩層で急激に膨張し互いにひしめき合っていくという、これまで太陽研究者が想像するも、その証拠が得られなかった彩層磁場の様子が初めて観測から明らかになったのです(図1)。

さらに、電離マグネシウム線の強度スペクトルから彩層上部のエネルギー密度(電子密度と温度の積)を求めたところ、彩層上部の磁場(図3の赤丸)と非常に高い相関が得られました。これは、彩層加熱が磁場起因であること、さらにはその加熱機構に迫る上で太陽表面の磁場情報では不十分であり、彩層上部での磁場測定が必須であることを明瞭に示しました。今後、CLASP2で明らかになった太陽表面からコロナへ連なる磁束管の姿を元に、磁場がどのようにして太陽大気層を結合させているのか、異なる大気層間でどのようにエネルギーが伝達されていくのか、といった研究が進んでいくと期待されます。

今回のCLASP2は、NASAの観測ロケットに搭載され、米国ホワイトサンズ砂漠にて打ち上げられました(図4)。CLASP2観測装置は観測終了後、パラシュートで砂漠に無傷で帰還し、現在NASAマーシャル宇宙飛行センターに保管されています。CLASP2チームは、この観測装置をもう一度飛翔させるCLASP2.1計画を進めています。CLASP2の観測はスリットを固定して行ったため、スリットに沿った磁場情報しか得られませんでした。CLASP2.1計画ではスリットを少しずつ横に動かすことで、(空間2次元+高さ=)3次元の磁場マップの取得を目的としています。観測ロケットを使った実験は、計画立案から実施まで迅速に進めることが可能であり、将来の太陽衛星計画につながるような挑戦的な研究やそれを可能にする技術実証を行うことができます。また、将来の太陽衛星計画などで装置開発を主導して活躍できる若手研究者や大学院学生を育てる機会としても、有効な機会となっています。今後、CLASP2以外にも、SUNRISE-3気球実験やハワイで科学観測が始まりつつある巨大太陽望遠鏡DKIST(Daniel K. Inouye Solar Telescope)など、世界中の様々な観測装置での彩層磁場観測への挑戦は続きます。

最後に忘れてならないのが、彩層〜コロナの温度、ダイナミクスの詳細な観測により加熱の現場を捉えるということです。これに取り組むのが、日本が中心となって欧米と開発を進めている次期太陽観測衛星Solar-C (EUVST)です。CLASP2では、電離マグネシウム線(波長280nm)近辺の紫外線スペクトルに着目し、観測装置の光路内にて波長板を精密に一様回転させることを実現させ、そのスペクトルの偏光を精密に測定しました。一方EUVSTは、偏光計測は行いませんが、さらに波長が短い真空紫外線(波長17nmから120nm)に存在する彩層〜コロナの温度を起源とする様々なスペクトル線を高分解能に観測します。これにより、エネルギーが輸送され加熱が起きる現場を初めて詳細に捉えることができると期待されます。

用語説明

・磁場の測定と彩層磁場
スペクトル線に生じる偏光(光の偏り)を観測することで、磁場の測定を行う。これまで、太陽表面の磁場は、ひので衛星や地上望遠鏡などによって精力的に観測が行われ、その性質がとても詳しく調べられてきた。しかし、彩層の磁場は太陽表面の磁場に比べて弱く、また、偏光が発生する過程もより複雑であるために、生じる偏光の検出は容易ではない。近年、彩層磁場観測に最適なスペクトル線や観測技術の開拓がはじまった。

・CLASP (Chromospheric Lyman-Alpha Spectro-Polarimeter)
CLASP2の前身。2015年に打ち上げを行った観測ロケット実験で、彩層中の水素が出すライマンアルファ線(波長122nm)の偏光分光観測を行った。理論的に予測されていた散乱偏光及び磁場による散乱偏光の変化(ハンレ効果)の観測に世界で初めて成功し、大きな成果を挙げた。また、3次元太陽大気モデルを用いた模擬観測との比較により、彩層上部が、これまで考えられていたよりも複雑な大気構造を持つことも明らかとなった。一方で、ベクトル磁場情報を得るのに重要なゼーマン効果による円偏光は、ライマンアルファ線には生じないため、直線偏光のみの観測であった。

・CLASP2 (Chromospheric LAyer Spector-Polarimeter)
日本、アメリカ、フランス、スペインが共同で開発を進めた観測ロケット実験。電離マグネシウム線(波長280nm)の観測を行えるよう、CLASP打ち上げ後無事回収した観測装置を日本へ持ち帰り、改造を施した。国立天文台先端技術センターにあるクリーンルームで組み立てと性能評価試験を行った後は、アメリカ合衆国に輸出し、2019年4月11日ホワイトサンズミサイル実験場にて打ち上げられた。

・活動領域
黒点などの強い磁場が集中した領域。今回CLASP2が観測したのは、活動領域の中でもプラージュと呼ばれる明るくて磁場が比較的強い場所。

・ゼーマン効果
磁場によってスペクトル線が分離する量子力学的効果。黒点のように磁場が強い場所であれば、スペクトル線の分離を容易に検出することができる。また、分離が顕著でなくても、磁場強度に応じた偏光が発生することを利用し、CLASP2では各スペクトル線の円偏光から視線方向の磁場強度を導出した。

宇宙探査時代の新たな宇宙飛行士選抜への挑戦

図1観測ロケット実験CLASP2と「ひので」衛星の共同観測から明らかになった、太陽表面から彩層最上部に至る磁束管の様子。4つの高さ(太陽表面、彩層低・中・最上部)で磁場を観測した。©国立天文台

図1観測ロケット実験CLASP2と「ひので」衛星の共同観測から明らかになった、太陽表面から彩層最上部に至る磁束管の様子。4つの高さ(太陽表面、彩層低・中・最上部)で磁場を観測した。©国立天文台

図2:本研究で用いた観測データ。CLASP2は緑実線で示されたスリットの位置での偏光スペクトル(右側の上下のパネル)を得た。スリットを当てていた位置とその周辺の太陽彩層の様子は、CLASP2に同じく搭載された撮像カメラ(SJ)で示されている(左上のパネル)。太陽表面磁場の詳細は、ひので衛星に搭載された可視光望遠鏡から得られた(左下のパネル)。白黒がN極, S極で磁場の強いところを表している。背景は、SDO衛星で観測された太陽彩層の全面像。©国立天文台, IAC, NASA/MSFC, IAS

図3: 太陽表面からコロナ直下に至る磁場分布。CLASP2のスリット(図2の緑線)に沿った各高さでの磁場強度を示す。©国立天文台, IAC, NASA/MSFC, IAS

図3: 太陽表面からコロナ直下に至る磁場分布。CLASP2のスリット(図2の緑線)に沿った各高さでの磁場強度を示す。©国立天文台, IAC, NASA/MSFC, IAS

図4:  観測ロケットCLASP2の打上げ。Credit: US Army Photo, White Sands Missile Range

図4: 観測ロケットCLASP2の打上げ。Credit: US Army Photo, White Sands Missile Range

論文情報

タイトル:“Mapping Solar Magnetic Fields from the Photosphere to the Base of the Corona”
掲載雑誌:Science Advances, 19 Feb 2021: Vol. 7, no. 8, eabe8406 (2021年2月19日出版)
DOI: 10.1126/sciadv.abe8406 外部リンク

共同研究グループ

石川 遼子 自然科学研究機構国立天文台 助教
Javier Trujillo Bueno カナリア天体物理学研究所(スペイン)
Tanausú del Pino Alemán カナリア天体物理学研究所(スペイン)
岡本 丈典 自然科学研究機構国立天文台 NAOJフェロー
David E. McKenzie NASAマーシャル宇宙飛行センター(米国)
Frédéric Auchère フランス宇宙天体物理学研究所(フランス)
鹿野 良平 自然科学研究機構国立天文台 教授
Donguk Song 自然科学研究機構国立天文台 特任研究員
吉田 正樹 自然科学研究機構国立天文台/総合研究大学院大学 博士課程
Laurel A. Rachmeler アメリカ海洋大気庁(米国)
小林 研 NASAマーシャル宇宙飛行センター(米国)
原 弘久 自然科学研究機構国立天文台 准教授
久保 雅仁 自然科学研究機構国立天文台 助教
成影 典之 自然科学研究機構国立天文台 助教
坂尾 太郎 宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所 准教授
清水 敏文 宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所 教授
末松 芳法 自然科学研究機構国立天文台 准教授
Christian Bethge コロラド大学 (米国)
Bart De Pontieu ロッキードマーチン太陽天体物理研究所 (米国)
Alberto Sainz Dalda ロッキードマーチン太陽天体物理研究所 (米国)
Genevieve D. Vigil NASAマーシャル宇宙飛行センター (米国)
Amy Winebarger NASAマーシャル宇宙飛行センター (米国)
Ernest Alsina Ballester ロカルノ太陽研究所(スイス)
Luca Belluzzi ロカルノ太陽研究所(スイス)
Jiri Stepan チェコ科学アカデミー天⽂学研究所(チェコ)
Andrés Asensio Ramos カナリア天体物理学研究所(スペイン)
Mats Carlsson オスロ大学(ノルウェー)
Jorrit Leenaarts ストックホルム大学(スウェーデン)

研究助成

CLASP2の開発は、国立天文台、宇宙航空開発機構・宇宙科学研究所(ISAS/JAXA)、アメリカ航空宇宙局マーシャル宇宙飛行センター(NASA/MSFC)、フランス宇宙天体物理学研究所(IAS)、カナリア天体物理学研究所(IAC)他の共同で行いました。

本研究を含む日本でのCLASP2の研究開発は以下の研究資金で進めました。

  • 2019〜2021年度 JSPS科研費 JP19K14771(若手研究 研究代表者:石川遼子)
  • 2019年 国立天文台若手研究者海外派遣プログラム(石川遼子)
  • 2017〜2019年度 JAXA 宇宙科学研究所小規模計画「小規模太陽観測プロジェクト(CLASP2+SUNRISE-3)」
  • 2016〜2018年度 JSPS科研費 JP16H03963(基盤研究(B) 研究代表者:石川遼子)
  • 2016年度 国立天文台共同開発研究(研究代表者:石川真之介)
  • 2015年度 宇宙科学研究所国際共同ミッション推進経費(研究代表者:石川遼子)
  • 2013〜2017年度 JSPS科研費 JP25220703(基盤研究(S) 研究代表者:常田佐久)

また、国外でのCLASP2の開発は、

  • NASA Award 16-HTIDS16_2-0027(アメリカ, 研究代表者: David McKenzie)
  • The European Research Council (ERC) under the European Union’s Horizon
    2020 research and innovation programme (Advanced Grant agreement No. 742265, スペイン, 研究代表者: Javier Trujillo Bueno)
  • 2CNES funds CLASP2-13616A and 13617A(フランス, 研究代表者:Frédéric Auchère)

で進めました。

関連リンク

各共同発表機関のプレスリリース

各共同発表機関へのリンク

2021年2月15日 更新
第2回「きぼう」ロボットプログラミング競技会参加チームの募集開始について

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、国際宇宙ステーション(ISS)・「きぼう」日本実験棟において、ISS船内ドローンを使用した第2回「きぼう」ロボットプログラミング競技会を2021年度に開催します。この度、参加チームの募集を開始しましたのでお知らせします。

【募集詳細と参加申し込み】
【募集締切】

2021年5月16日 午後11時59分(日本時間)まで

2021年6月6日 午後11時59分(日本時間)まで延長します

【募集対象】

日本を含むKibo-ABC加盟国の大学院生までの学生によるチームであること

第2回「きぼう」ロボットプログラミング競技会

2021年2月10日 更新
アルファヒーム駐日アラブ首長国連邦大使表敬について

2021年2月8日、JAXA山川理事長、石井理事が昨年12月に着任されたアルファヒーム駐日UAE大使を表敬訪問しました。
JAXA山川理事長からは、昨年7月にJAXA種子島宇宙センターからH-IIAロケットにより打上げた火星探査機「HOPE」が、UAE建国50周年の記念すべき年に火星に到達することへの祝意を伝えるとともに、今後の宇宙分野における両国の協力可能性について意見交換を行いました。

アルファヒーム駐日UAE大使(右)と山川理事長(中央)、石井理事(左)による意見交換(出典:UAE大使館)
JAXAメダル贈呈

アルファヒーム駐日UAE大使(右)と山川理事長(中央)、石井理事(左)による意見交換

(出典:UAE大使館)

2021年2月10日 更新
【オンライン配信】宇宙飛行士候補者の募集等に向けたイベント情報

 日本人宇宙飛行士の月面での活躍が想定される2020年代後半以降に向けて、約13年ぶりの日本人宇宙飛行士候補者の新規募集を今年秋頃に開始予定です。今回の募集では、より多くの方からのご応募や日本中からの応援につなげるために様々なプレーヤーと連携した新たな取り組みにも挑戦したいと考えております。このような背景を踏まえ、本イベントではこれからの時代に求められる飛行士の資質や新たな選抜プロセスの可能性について様々な業界の多様な視点から議論いただきます。

宇宙探査時代の新たな宇宙飛行士選抜への挑戦

2021年2月9日 更新
JAXAのアルゴリズムとエムティーアイの航空気象情報を活用し航空気象システム『ARVI』での被雷予測エリアの可視化に成功

 JAXA航空技術部門と株式会社エムティーアイ(以下、エムティーアイ)は、2019年11月より航空機の被雷回避に向けた共同研究を実施しています。
 今回、JAXAが研究する「被雷危険性予測技術」から算出されるアルゴリズムの誘発雷の検出率85.1%※1のデータに気象状況を加え、エムティーアイが企画・開発した航空気象システム『ARVI(アーヴィー)』上で被雷予測エリアの可視化に成功しました。
 本共同研究の結果は、2021年1月10日から1月15日(現地時間)に行われた「第101回アメリカ気象学会年次大会(The American Meteorological Society 101st Annual Meeting)※2」にて発表されました。

『ARVI』被雷エリアの比較画像

(株)エムティーアイ提供※『ARVI』被雷予測エリアの比較画像

※1:冬季の小松・庄内エリア、夏季の羽田・成田エリアにおいて、過去の航空機被雷事例の一部を活用した検証結果。

2021年2月5日 更新
欧州宇宙機関(ESA)との会談の実施について

JAXA山川理事長およびESAヴァーナー長官は、2021年2月4日にオンラインで会談を行いました。
会談では、地球観測、宇宙科学・探査など、広範にわたる両機関間の協力案件の進捗状況を確認するとともに、今年3月にESA長官に就任される予定のアッシュバッカー地球観測局長も同席されていたところ、引き続き両機関間の協力関係を維持・発展させていくことを確認しました。

また本会談の機会をとらえ、ESAの二重小惑星探査計画(Hera)及びJAXAの火星衛星探査計画(MMX)の各協力に関する協定が締結されました。

Hera協定署名の様子

Hera協定署名の様子
(JAXA山川理事長、ESAヴァーナー長官) 

MMX協定署名の様子

MMX協定署名の様子
(JAXA國中理事、ESAハシンガー局長) 

ESA主導で行われるHeraは、米国航空宇宙局(NASA)の小惑星衝突機「DART」が二重小惑星ディディモスの衛星に衝突後、Heraにより当該小惑星の詳細観測等を行うという国際共同ミッションです。今回、JAXAが熱赤外カメラを提供することのほか、サイエンスを通じて本ミッションに貢献することが合意されました。
MMXは、火星衛星の一つであるフォボスからのサンプルリターンを行うJAXAのミッションです。今回、ESAが探査機に搭載する通信機器を提供すること、地上局による追跡管制支援を行うことのほか、サイエンス協力を通じて本ミッションに参画することが合意されました。

2021年1月

2021年1月28日 更新
試験機1号機用機体を工場から出荷しました

H3ロケット試験機1号機出荷

2021年1月26日、試験機1号機の1段、2段機体が三菱重工業株式会社飛島工場での製造と試験を終え、打上げ射場である種子島宇宙センターに向けて出荷の日を迎えました。
ロケットを構成する多くの機器が次々と開発を完了し、飛島工場で組み上げられて機能試験を開始したのが2020年6月上旬。大小様々、数多くのトラブルに遭遇し、それらを一つ一つ解決して万全の状態を整えるために、約7カ月を要したことになります。
更に思い起こせば、私が担当する電気系システムの試験をこの飛島工場で開始し、試験立会を始めたのが2018年2月。この時から多くのトラブルに見舞われ、1件1件コツコツと解決してきた結果、3年の月日が流れました。
3年前、まだ開発途中だった技術試験用の電気系機器を組み上げてシステム試験を開始した時は、H3の製造に向けて飛島工場内に増設途中だった真新しくも殺風景なエリアにミカン箱サイズ程の機器十数個を並べて、機器と機器の間のネットワーク通信のデータインタフェースを確認する試験(本当に地味で映えない試験)から着手しました。そこから3年間の時を経て、見上げるような大きさの格好良いロケットに仕上がったことに感慨無量です。

新型コロナの影響で、世の中が大きな変革の時を迎えています。我々JAXAをはじめ、ロケット全体の設計を取りまとめていただいている三菱重工業や、機器の設計、製造を担当されているメーカの技術者の方々とは、ネットワーク越しの設計資料の送受信やWEB会議という代替手段によって、これまでのやり方に劣らない設計やレビューを進め、開発を継続することができましたが、ロケットの製造は現場での人の手に代る手段がありません。Beforeコロナ時代と変わらない多くの製造のプロや技術者がこの飛島工場で7カ月間、夜間休日を問わず奮闘してきました。変わりゆく日常の中で、変わらないパフォーマンスを発揮し続ける製造現場のチームの方々にいつも感心するとともに、世の中が変革しても失ってはいけないことがこの現場にはあると強く感じていました。そしてこの飛島工場での立会の日々は私にとっては、新しい知見と経験と多くの同志を得る貴重な機会となりました。

多くの人々に支えられて仕上がったこの1段、2段機体ですが、工場を出荷して射場に搬入された以降も、まだまだ、総合システムとしての検証という長い道のり、険しい道のりが待ち構えていることでしょう。でも不安やネガティブな感情は殆ど感じなくて、この機体を眺めていると、ワクワク感や「全て乗り越えてやるぜ!」という感覚がみなぎってきます。打上げ成功というゴールに向かって、気持ちを新たに立ち向かいたいと思います。

JAXA電気系担当 Y.K.

出荷に向けて1段機体、2段機体をコンテナに入れている様子(2021年1月24日撮影)

出荷に向けて1段機体、2段機体をコンテナに入れている様子(2021年1月24日撮影)

2021年1月28日 更新
深宇宙探査技術実証機「DESTINY⁺」システム担当企業の選定

深宇宙探査技術実証機「DESTINY⁺」システム担当企業の選定

DESTINY⁺チームは、システム要求審査(SRR:System Requirement Review, 2020年7月1日実施)の結果を踏まえ、2020年8月~12月にかけて探査機バスシステム開発を担当する企業の選定を行いました。

2021年1月27日 更新
射場の電力基盤におけるD&3E確立 ― 種子島宇宙センター 大容量電力貯蔵システム ―

大容量電力貯蔵システム導入の背景

 種子島宇宙センターにおいては、打上げ整備作業に必要な電力を自ら保有する複数の自家用発電機により、24時間365日発電し、センター内施設に送配電しています。また、落雷や台風等の自然災害が多く発生することから、事業継続のため、複数機を用いた冗長運転を行い電力の安定供給に努めています。
 今回、電力システムの更なる信頼性向上、将来のスマート射場化を見据え、先ず発電機故障停止時のバックアップ運転、更に既存発電機運転の高効率化、信頼性向上を目的として大容量電力貯蔵システムを導入することとなりました。各協力会社との連携により仕様と運用方法の最適化を図り2021年4月より本格運用を開始する予定です。

大容量電力貯蔵システム導入の背景

イメージ図

2021年1月20日 更新
宇宙飛行士募集にかかるRFIとパブコメ募集

宇宙飛行士候補者の募集・選抜・基礎訓練に関する情報提供依頼(RFI)と意見募集(パブリックコメント)を開始します。詳しくは下記のリンクをご参照ください。

2021年1月19日 更新
オーロラ粒子の加速領域は超高高度まで広がっていた -オーロラ粒子の加速の定説を覆す発見-

 今城峻特任助教(名古屋大学宇宙地球環境研究所)を中心とする国際共同研究グループは、宇宙航空研究開発機構のジオスペース探査衛星「あらせ」(以下、「あらせ」)搭載の高角度分解能低エネルギー電子分析器(LEPe)を含む包括的な宇宙空間観測機器と米国THEMISチームの展開する高時間空間分解能の地上全天カメラを用いたオーロラ協調観測によって、オーロラアーク上空の高度約3万km以上もの超高高度までオーロラ電子が加速されている領域が広がっていることを発見しました。過去50年にわたり、オーロラの電子は高度数千kmで加速されると信じられてきましたが、電子がその十倍もの高さから加速を受けていることを示した今回の発見は、この定説を大きく覆すものです。
 本研究成果は、2021年1月18日付(日本時間1月18日19時)に、Nature系学術誌「Scientific Reports」オンライン版に掲載されました。

研究概要

1.背景
 明るく東西に長くのびるオーロラアークは、夜側極域において一般的に見られるオーロラの形態であり、その美しさで多くの人々を惹き付けてきました。オーロラアークは、U字型の電位構造を持った磁力線に平行な準静電的電場が形成されるオーロラ加速域に於いて数キロ電子ボルト(keV)程度に加速された磁気圏の電子が、高度100km程度の地球の超高層大気に降り込み、中性大気との衝突による励起・緩和によって発光していると考えられています。この高いエネルギーを持った降り込み電子は、地球の磁気圏(宇宙空間)と電離圏(超高層大気)を電磁力学的に結合する上向きの電流を担い、宇宙空間に形成される巨大な電気回路の一部をなします。そのため、電子を加速する準静電的平行電場は、単にオーロラ発光にとって大切というだけではなく、宇宙空間と地球の超高層大気を繋ぐ結合システムの重要な物理過程の要素の一つです。
 過去50年間にわたるロケットや人工衛星の観測から、オーロラ加速域は低い高度の冷たいプラズマと高い高度の熱いプラズマが混じり合う高度数千kmの領域を中心とすることがわかっています(高度2万km以下まで存在しうるが、加速への寄与は小さいと考えられている)。高度数千km以下の低高度の加速域は、日本の「あけぼの」衛星や「れいめい」衛星、米国のS3-3衛星やFAST衛星により、その典型的描像を明らかにしてきました。オーロラ加速域の準静電的平行電場の形成メカニズムは、1970年代初頭より研究が進み、磁気ミラー力抵抗、プラズマ不安定性による電気抵抗、電気二重層、運動論的アルフベン波など、様々な仮説が提唱されていますが、どのプロセスが最も重要なものなのか、未だにはっきりと特定されていません。
 これまで提唱された準静電的平行電場理論は、背景のプラズマ密度や磁場強度に左右されます。プラズマ密度・磁場強度は高度によって大きく変化するため、電子がどの高度で加速されているかを知ることは、準静電的平行電場形成の謎を解く重要な鍵です。しかし、準静電的平行電場の生成を説明するこれまでの様々な理論は、加速領域が高度数千kmに存在することを前提として考えられてきたものです。一方で、高度2万km以上の高高度側では加速全体への寄与は小さいと考えられていることから、高高度領域における加速についてはほとんど検討されていませんでした。したがって、今回の発見は、従来の低高度を中心とした加速域形成の考え方の大きな見直しを迫る結果になります。

図1:典型的なオーロラ加速域の描像。加速電場はU字型の電位構造をもっている。衛星が横切ると、下向き加速された電子、上向き加速されたイオン、上向き電流の作る磁場変動、中心に収束する電場、プラズマ密度の低下が見られる。(Credit: ERG science team)

2.研究手法
 「あらせ」は軌道傾斜角が約31度という独特な軌道により、過去の人工衛星があまり観測を行ったことがない、オーロラ発生頻度の高いオーロラ帯の上空、高度約3万km付近領域を飛翔しています。「あらせ」は地球の放射線帯の高エネルギー電子の加速・消失メカニズムの解明を主なターゲットとした衛星ですが、非常に高い角度分解能を持った電子観測機器を搭載しているほか、総合的な宇宙プラズマの観測機器を搭載しているため、オーロラ加速域に特徴的な電磁場、粒子の振る舞いを高い精度で検知することもできます。
 共同研究チームは、これまで数百から数千kmの低高度で観測されてきた典型的な加速域の特徴と非常によく似た粒子や電磁場の変動が高度3万km付近もの超高高度でも観測されることに気がつきました。これまで低高度に於ける観測でよく知られてきた典型的なオーロラ加速域の描像を図1に示します。U字型の電位構造を持つ加速電場を衛星が横切ると、地球に向かって(下向き)加速された電子と地球から遠ざかる向き(上向き)に加速されたイオン、これらのイオンと電子の運動が作る上向き電流が発生させる磁場変動、U字型電位構造の中心に向かって収束する電場変動、プラズマ密度の低下をみることになります。共同研究チームは、観測された現象が、超高高度まで広がったオーロラ加速域である可能性を疑い、「あらせ」と地上のTHEMISの高空間分解能オーロラ全天カメラとのオーロラ協調観測から、「あらせ」の飛翔する超高高度でも電子が十分に加速され、加速された電子が実際にオーロラの発光領域まで降り込んでいるかどうかの検証を試みました。
 「あらせ」の軌道が夜側で地上カメラの充実した北半球を通る期間は日照時間が長い2017年の夏期(5から9月)であるため、オーロラとの同時観測可能な時間は限られました。しかし、そのような状況でも、北米全体を20点もの観測点でカバーするTHEMIS全天カメラネットワークとの協調観測によって、オーロラアークに繋がる磁力線を「あらせ」が高度3万km付近にて、降り込み電子の高角度分解観測を行うことができました。超高高度における加速領域の存在を検証するためには、地上からオーロラアークを観測すること、同時に上空を「あらせ」が通過すること、そのタイミングで電子の高角度分解観測が実施可能であること、これらの条件がすべて揃う必要がありますが、そのような観測結果を得られたことは非常に幸運なことでした。

3.結果
 同時観測が行われた2017年9月15日の事例を解析した結果を図2に示します。前述のように、低高度におけるオーロラ加速域で見られる、全ての特徴が現れていることがわかります。特に、単一エネルギーのU字型分布を持った下向きの電子が観測された一方で、正の電荷を持った下向きイオン(陽子)は観測されなかったことは、衛星より上側での上向き静電場による加速の強い証拠です。また、「あらせ」が取得した様々な物理量データから衛星の周りから下側にかけても加速域が存在していることが裏付けられます。加速域では電子だけではなく同時にイオンも電子とは逆向きに加速されますが、観測されたイオンは衛星より下側から飛んできており、数keVまで加速されていました。観測された磁場は、オーロラ電子が運ぶ上向きの電流があるときの周りの磁場変動と一致しました。加速域のU字電位構造を横切ったときに見られる、加速域中心を向く電場も観測されました。加速域の内部はプラズマ電子密度の低下が起こりますが、衛星電位の観測から、プラズマ電子密度がオーロラアーク中にあるときに低下していることがわかりました。

図2:オーロラの緯度分布と「あらせ」観測の時系列データ。粒子、電場、磁場の特性はこれまで低い高度で観測された典型的なオーロラ加速域の描像(図1)と整合する。(Credit: ERG science team)

 これらの結果からわかることは、超高高度の加速域は下側の加速域から続いて広がっているということです。電子とイオンの持つエネルギーから、衛星の上側と下側と加速電位差を推定すると、上側の加速電位差のみでもオーロラの発光に十分な数keVに電子を加速するだけの電位差があり、そのオーロラ発光域までの加速全体への寄与は20から45%にも及ぶことが分かりました。
 さらに、「あらせ」の低エネルギー電子分析器(LEPe)のもつ高角度分解能チャンネルにより、下向きに加速された電子がオーロラ発光高度で消失し、対応する上向き電子が欠損する様子を高高度で初めて捉えました。図3は磁力線に対する電子速度の分布を示します。電子速度の向きが磁力線に平行であるほど電子は降り込み易くなりますが、高い高度ではより磁力線に平行な電子だけがオーロラ発光領域に降り込むことができます。LEPeはその高い角度分解能により、幅の狭い降り込み可能な速度幅内にある約1keVの加速電子を特定しました。通常、磁気圏の電子は磁力線に沿って南北の極域の間を往復運動していますが、オーロラを発光させた地球大気に電子は失われ、再び磁気圏に戻ることはありません。降り込み可能な速度幅内に対応する上向きに戻る電子の欠損が観測され、その幅は図中青線で示される理論からの予測とも一致していたことから、高度3万km以上から加速された電子が実際に降り込み、オーロラ発光に寄与していることが明らかです。
 これらの結果から、図4で示すように、これまで考えられていた高度より遙かに高い高度にわたりオーロラ加速域が広がっており、非常に高い高度から加速されてきた電子が観測されたオーロラの発光領域まで降り注いでいることを初めて明らかにすることができました。

図3:図2の(1)の時刻での、電子の位相空間密度の速度分布と、衛星より下側の加速から予測される降り込み可能な領域の境界(青線)。下向き加速された電子が、降り込み可能な領域の内側で観測され、さらに対応するオーロラ発光高度での消失による上向き電子の欠損が観測された。(Credit: ERG science team)

4.成果の意義
 図4で示したように、本研究の結果は、高度数千kmの領域を中心とした加速域の高度方向の広がりの定説を覆し、低い高度を前提とした加速域の考え方の見直しを迫るものです。「あらせ」の高度では、典型的な加速域の高度での背景のプラズマ・磁場の状態が大きく異なることから、これまで提唱されてきたどの加速領域生成メカニズムでも今回発見された高度3万km以上の加速領域の広がりを説明することはできません。したがって、本研究成果は、「高度3万km以上の超高高度加速域を含む幅広い高度域にわたって、なぜ、どのように電子を加速する準静電的平行電場が存在しうるのか?」という新たな大問題を提起しています。
 本成果は「あらせ」のユニークな軌道と高い性能により実現した、本来の目的を大きく越えた予想外の成果でした。オーロラは木星や土星など磁場を持った天体に普遍的に見られる現象です。超高高度加速域の発見から生まれた新たな謎を解き明かすことは、これらの他惑星磁気圏や、パルサー磁気圏など、異なるプラズマ環境を持った太陽系や天体磁気圏における準静電的電子加速メカニズム過程の解明にも大きく貢献することが期待されます。
 今回のような超高高度の加速域とオーロラアークと同時観測が行える事例は稀ですが、共同研究チームは「あらせ」のみの観測で超高高度の加速域をしめす観測例を10例以上発見しており、複数事例の解析から今後超高高度の加速域の詳細な描像が明らかになっていくことが期待されます。さらに、低高度衛星との同時観測、電位構造の数値シミュレーションにより超高高度まで加速域が形成される物理メカニズムを追究します。

図4:本研究のまとめ。高高度の「あらせ」と地上の全天カメラにより、オーロラ加速領域は「あらせ」の上側にまで広がり、超高高度から加速された電子がオーロラ発光領域まで降り注いでいることが示された。(Credit: ERG science team)

用語説明

オーロラ(電子)加速領域/加速域
 ディスクリートオーロラと呼ばれる、明るく境界のはっきりしたオーロラ(オーロラアークもその一種)を光らせるもととなる電子を加速する静電場のある領域。中心に向かうほど電位の低いU字型の電位構造を持っている。電子を下向きに加速する上向き電場があるのは、主に高度数千kmの領域とされる。この電場が生成される仕組みには多くの仮説があり、今のところはっきりとはしていないが、典型的な加速域高度では性質の異なるプラズマが混じり合うことで生じる局所的な電子とイオンの分離(ダブルレイヤー)が有力な説の一つとされる。

電子ボルト
 エネルギーの単位で、eVと表示される。1ボルト(V)の電位差により加速された電子の運動エネルギーに相当するため、もともと電子が持つエネルギーが低い場合には、例えば1キロeVに加速された電子の上流側には1キロVの電位差があると推定できる。

LEPe(low-energy particle experiments–electron analyzer):
 台湾Academia Sinicaの研究グループによって開発された「あらせ」搭載機器の一つで、19eVから19keVの電子を観測する。内部磁気圏の赤道面付近で、プラズマ波動によって電子がその運動の方向を変えられて地球に向かって降下できるようになる過程を観測するために、約5度もの高い角度分解能を持つ「fine channel」が密に配置されている(標準的な電子観測器の角度分解能は20度程度)。本研究ではこの高角度分解能を準静電的加速によって高高度から降り込む電子の観測に活用した。

共同研究グループ
今城 峻 名古屋大学宇宙地球環境研究所 特任助教
三好 由純 名古屋大学宇宙地球環境研究所 教授
風間 洋一 Academia Sinica 客員研究員
浅村 和史 宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所 准教授
篠原 育 宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所 准教授
塩川 和夫 名古屋大学宇宙地球環境研究所 教授
笠原 禎也 金沢大学総合メディア基盤センター 教授
笠羽 康正 東北大学惑星プラズマ・大気研究センター 教授
松岡 彩子 京都大学地磁気世界資料解析センター 教授
Shiang-Yu Wang Academia Sinica 主任研究員
Sunny W. Y. Tam National Cheng Kung University 教授
Tzu‑Fang Chang National Cheng Kung University 客員助教
Bo‑Jhou Wang Academia Sinica 補助研究員
Vassilis Angelopoulos カリフォルニア大学ロサンゼルス校 教授
Chae-Woo Jun 名古屋大学宇宙地球環境研究所 特任助教
小路 真史 名古屋大学宇宙地球環境研究所 特任助教
中村 紗都子 名古屋大学宇宙地球環境研究所 特任助教
北原 理弘 名古屋大学宇宙地球環境研究所 特任助教
寺本 万里子 九州工業大学工学部 助教
栗田 怜 京都大学生存圏研究所 准教授
堀 智昭 名古屋大学宇宙地球環境研究所 特任准教授
論文情報

雑誌名:Scientific Reports
論文タイトル:Active auroral arc powered by accelerated electrons from very high altitudes
DOI: 10.1038/s41598-020-79665-5 外部リンク

2021年1月12日 更新
農林水産省『農業気象情報衛星モニタリングシステム(JASMAI)の公開について』

JAXAとの連携協定(農林水産分野における地球観測衛星データ等の利用の推進に関する協定)に基づき、農業気象情報衛星モニタリングシステム(以下、「JASMAI」という。)が農林水産省で構築され、2021年1月15日(金)14時から一般公開されます。※1

JASMAIは、JAXAによる農業気象データ(土壌水分量、日射量、降水量など)や作物の生育状況(植生指標)をWeb上で準リアルタイムに閲覧することができるシステムの研究開発成果を利活用したものです。(参考:JAXAが運用しているアジアの水稲作況判断のためにカスタマイズした農業気象データに関するシステム「JASMIN」※2

なお、JASMAIは、JAXAと米国航空宇宙局の衛星観測データを活用し、海外の主要穀物生産地帯における穀物・農作物の生育に関わる情報を地図やグラフ形式で提供します。
この情報は、主要穀物の作況判断のための補助情報として国内外での官民での活用が見込まれます。

JAXAにおいては、引き続き農林水産省との協力の推進によるJAXA衛星データおよびそれから得られた知見を活用した社会課題解決への貢献を進めていく予定です。

関連リンク:※1 農林水産省プレスリリース外部リンク
-農業気象情報衛星モニタリングシステム( J A S M A I )の公開について-
JASMAI閲覧サイト外部リンク
※JASMAIについては、1月15日(金曜日)14時以降に公開されます。

※2 JAXA「JASMIN」
- JAXA's Satellite based MonItoring Network system for FAO AMIS Market Monitor -

PAGE TOP