2021年(令和3年)7月理事長定例記者会見

理事長定例記者会見

山川理事長の定例記者会見のトピックスをお伝えします

日時:2021年(令和3年)7月9日(金) 13:30-14:15

場所:オンライン会見

司会:広報部長 佐々木 薫

海外宇宙機関との協力覚書の締結について

 先月6月11日に、フィリピン宇宙庁と宇宙開発利用に関する協力覚書を取り交わしました。署名式には、越川駐フィリピン特命全権大使、そしてラウレル5世駐日フィリピン大使にもご臨席をいただきました。フィリピン宇宙庁は、大統領府直属の政府機関として2019年に設立され、2020年から同国の宇宙に関する活動を開始しておりまして、今回のJAXAとの協力覚書はフィリピン宇宙庁にとって初の海外宇宙機関との協力覚書の締結となったと聞いております。
 JAXAは、フィリピン宇宙庁の設立以前より、フィリピンの政府機関や大学等と防災関係の研究の推進や、フィリピン初の国産衛星「DIWATA-1」の「きぼう」日本実験棟からの放出、そして2号機となる「DIWATA-2」のH-IIAロケットでの打上げなど、協力関係を構築してまいりました。
 今年は、日本とフィリピンとの国交正常化65周年にあたり、また両国での「戦略的パートナーシップ」に関する共同声明が発表されてから10年目にあたります。JAXAも今回の協力覚書の締結を通じて宇宙開発利用における協力関係を一層発展させてまいりたいと考えております。

 また、6月25日には、英国宇宙庁とも航空宇宙協力に関する協力覚書を取り交わしました。駐英大使館および駐日大使館を会場とさせていただき、林駐英国特命全権大使、そしてロングボトム駐日英国大使にもご臨席をいただきました。本協力覚書では、英国宇宙庁との協力促進に加え、英国宇宙庁が承認した英国の実施主体機関であれば、本覚書を適用してJAXAと実施取決めを策定できることが特徴の一つです。その最初の協力として、英国国防科学技術研究所(DSTL)との宇宙状況把握に関する技術的および科学的な協力に関する実施取決めについても同日締結いたしました。
 JAXAは国際的な関心や課題に貢献できるよう、英国宇宙庁や英国の研究所、大学、産業界との間においても、さまざまな協力及び成果を創出してまいりたいと考えております。

宇宙法制イニシアティブによる国連への報告書の提出について

 文部科学省殿とJAXAは、宇宙関連の国際会議であります「アジア太平洋地域宇宙機関会議(APRSAF)」を毎年開催しておりますが、2019年より初の法政策分野として、宇宙法制イニシアティブ(NSLI)を立ち上げて活動をしております。
 この国際会議「APRSAF」では、アジア太平洋地域での宇宙法政策への関心の高まりに応じまして、2017年よりアジア太平洋地域の宇宙政策実務家のコミュニティを形成し、情報交換を通じて各国の宇宙法政策能力の向上を目指した取り組みを進めてまいりましたが、宇宙法制イニシアティブはこれを一歩進めて、実務家間の共同作業の機会を提供するものです。
 この宇宙法制イニシアティブの下、アジア太平洋諸国から実務家が参加して、この度、各国内の宇宙法制に関する報告書をとりまとめました。そして、本年5月31日から6月11日までの会期で開催されました国連宇宙空間平和利用委員会(COPUOS)の下に設置されております法律小委員会に、宇宙法制イニシアティブの参加9か国から本報告書の共同提出を行いました。報告書には、参加9か国の宇宙活動の進展や国際枠組みへの参加状況、そして国内法制整備状況などがまとめられております。
 国連は、国内宇宙法制の整備や情報交換を奨励しております。今回の報告書の提出は、このような法律小委員会の議論に直接貢献し、これから宇宙法制を整備しようとしている国々に実例を紹介することで、広く宇宙活動に関するルール形成を支援するという意義があります。また、宇宙法政策を通じたアジア太平洋地域の国際協力モデルとして、将来的なアジア太平洋地域の共通課題解決のためのプラットフォーム作りやプレゼンスの向上に寄与するものとなりました。法律小委員会からも謝意が示され、アジア太平洋諸国が協働してこのような報告書を提出するのは初の成果と聞いております。
 そのほか、法律小委員会の初日には、今回の報告書の提出と、法律小委員会の議長に慶應義塾大学青木教授が就任されたことなどを記念して、日本政府と国連宇宙部が共催して、参加国の政府が協賛したサイドイベントも開催されました。
 なお、今年の第27回APRSAFは12月に開催を予定しておりますが、宇宙法制イニシアティブの成果が報告されるほか、これまでの経験を踏まえて新たに設置されました宇宙法政策の分科会も初めて開催する予定です。JAXAは、今後もAPRSAFの枠組み通じて、アジア太平洋地域の宇宙法政策を担う実務家の能力向上や地域協力を通じたルール形成に貢献してまいりたいと考えております。

星出宇宙飛行士のISS軌道上活動状況について

 星出宇宙飛行士に関するトピックスとしまして、6月18日から高品質タンパク質結晶生成実験を開始しております。今回のこの実験のサンプルは、JAXAが新規に開発しました真空断熱容器に入れて、電力を使用せずに20℃に温度維持して地球に持ち帰る予定です。2018年に実施しました、宇宙ステーション補給機「こうのとり」7号機搭載の小型回収カプセル技術をさらに高度化そして小型化して、新たに試料輸送用として開発したものでありまして、本容器の開発によって、NASAの冷蔵輸送サービスに頼ることなく、JAXAが自前で温度維持を行うことが可能となりましたので、実験サンプルの往来の選択肢を大幅に拡大することができます。真空断熱容器に入れた実験サンプルは、7月初旬にドラゴン補給船で地上にて回収する予定です。
 また、6月22日には、JAXAの小型衛星放出機構による小型衛星の放出が行われました。この放出では、JAXAと国連宇宙部による超小型衛星放出機会の提供に関する連携協定(KiboCUBE)の第3回にて選定されました、モーリシャス共和国の超小型衛星「MIR-SAT1(ミーアサット・ワン)」が無事放出されました。その際、モーリシャス国内では、プラヴィン・クマール・ジャグナット モーリシャス共和国首相、そして川口周一郎駐モーリシャス日本国大使をはじめとして、多くの関係者に衛星放出のライブ中継をご覧いただきました。今回得られる衛星開発の経験、そして画像取得および地上との通信の技術実証で得られる知見が、同国の今後の更なる宇宙活動の発展につながることと思いますが、日本及びJAXAが貢献できたことを嬉しく思います。
 星出宇宙飛行士の活動としてその他には、アジア・太平洋地域の若手研究者や青少年に、「きぼう」日本実験棟での宇宙実験や宇宙環境利用研究について学ぶ機会を提供するためのプロジェクトであります、アジア・太平洋地域のハーブ種子を利用した植物実験プロジェクト「Asian Herb in Spaceプログラム『アジアの種2020-21』のミッション2」を開始して、ドラゴン補給船運用21号機、そして22号機でISSまで運ばれたハーブ種子の状態確認やサンプル撮影等を実施しました。先般、野口宇宙飛行士が3月に実施しました「ミッション1」に続くミッションとなりまして、アジア太平洋の12の国と地域の種子を宇宙飛行させた後、各地に返還をして、参加各機関において教育そして研究活動に利用します。日本でも、今年秋の参加者募集に向けて宇宙飛行したバジルの種子を用いた子供向けの教育プログラムを準備中です。
 さらに、先日7月6日には、文部科学省殿が取り組むGIGAスクール構想とJAXA宇宙飛行士が連携しました教育活動「GIGAスクール特別講座」を実施しました。今回は「宇宙での水や食べ物の動き方と食事の仕方」をテーマとして、星出宇宙飛行士が「微小重力環境でコーヒーと牛乳を混ぜるとどうなるか」などについて「きぼう」日本実験棟で実証を行いました。小学生は事前課題として予想を立てていましたが、地上と違う混ざり方に驚きが隠せない様子でした。私も配信会場から様子を見守りましたが、小学生の皆さんが食い入るように見ていることが印象的でした。これをきっかけに探求心を持って、学校の授業や自己学習に励んでもらえればと期待しております。

野口宇宙飛行士の一時帰国について

 野口宇宙飛行士は、5月2日に地球に帰還して以降、米国ヒューストンでのリハビリを実施していました。この度、順調にリハビリが進んだため、6月中旬より、日本に一時帰国しております。一時帰国は7月下旬までの予定でありまして、政府や自治体等の関係者へのミッション完了報告等を行います。
 野口宇宙飛行士の軌道上でのミッションは終わりましたが、滞在時の運用や実験等の成果は、地上の研究者そして技術者に引き継がれ、日本の有人宇宙技術として蓄積することが重要となります。また、宇宙飛行士としての経験と技術も、新しい日本人宇宙飛行士にも継承していくことが必須と考えております。
 改めまして、野口宇宙飛行士ISS長期滞在ミッションにご支援、ご尽力をいただいた関係者の皆様に、御礼申し上げます。今後、広く皆様にもご報告をさせていただく機会を作れればと考えております。

「はやぶさ2」帰還カプセルの全国巡回展示の決定について

 小惑星探査機「はやぶさ2」帰還カプセル全国巡回展示にご協力いただける団体の皆様について募集を行っておりました。この度、ご応募いただきました28団体の中から、今年度に展示を実施いただく21団体が決まりましたのでご報告をいたします。全国からご応募をいただき、引き続き「はやぶさ2」に高いご関心をお寄せいただいていることを実感しているところです。なお、今年度につきましては展示スケジュールの都合上、ご応募いただきました全ての皆様を展示計画に反映できなかったこと、また新型コロナウイルス感染状況などの制約によりましてご応募を見合わせた団体もいらっしゃると聞いておりますので、次年度以降の巡回展示も検討してまいります。
 今年度の巡回展示は、9月から開始して、来年2022年3月までの計画となります。9月の関東地方を皮切りに、以降、九州・鹿児島から北海道にかけまして巡回展示をしてまいります。それに先立ちまして、東京スカイツリータウンにおきまして、内閣府殿及び国立研究開発法人海洋研究開発機構殿が共同で主催します「Society5.0科学博」が開催されます。この科学博においても、7月15日から28日に帰還カプセル展示を行います。帰還カプセルを実際にご覧いただく機会を通じて、「はやぶさ2」ミッションが成し遂げた数々の工学的成果そして科学的成果などについても皆様に体験いただきたいと考えております。

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