2021年(令和3年)9月理事長定例記者会見

理事長定例記者会見

山川理事長の定例記者会見のトピックスをお伝えします

日時:2021年(令和3年)9月10日(金) 13:30-14:15

場所:オンライン会見

司会:広報部長 佐々木 薫

令和4(2022)年度予算概算要求について

 令和4(2022)年度のJAXAに関連する概算要求につきまして、約2,152億円を文部科学省殿から要求していただきました。
 主な項目には、米国が提案します国際宇宙探査「アルテミス計画」参画に向けた研究開発、また、我が国の基幹ロケットでありますH3ロケット開発や抜本的な低コスト化を目指した将来宇宙輸送システム研究開発プログラム、さらに広域・詳細な地球観測により防災・減災等に資する先進レーダ衛星(ALOS-4)の開発、そして、世界に先駆けて火星圏からのサンプルリターンを目指す火星衛星探査計画(MMX)の開発、さらに、次世代の航空科学技術の研究開発などの推進に必要となります予算を要求していただきました。
 今回の概算要求における「アルテミス計画」関係経費としては、月周回有人拠点の中核的機器の開発、開発中の新型補給機(HTV-X)をGateway補給機としても活用するための開発、さらに小型月着陸実証機(SLIM)の開発、火星衛星探査計画(MMX)の開発、月極域探査計画、国際宇宙探査に向けた開発研究、宇宙探査オープンイノベーションの研究、そして、新たな日本人宇宙飛行士の募集を行う国際宇宙探査に向けた人材確保として、合計約381億円を要求していただきました。
 H3ロケットにつきましては、現在、今年度の試験機初号機打上げを目指して開発を進めているところです。試験機初号機の打上げを経て、来年度は、エンジンの技術試験を実施し、その結果を踏まえて、2号機の確実な打上げを実施する予定です。そのための関連予算として、約205億円を要求していただきました。
 また、本年6月策定されました「革新的将来輸送システムロードマップ」に基づき、「基幹ロケット発展型」及び「高頻度往還飛行型」の二本立ての宇宙輸送システムの研究開発を来年度から開始する予定です。例えば、産官学共創体制でのエンジン推進効率向上や、部品あるいは材料等の低コスト化の実現に向けた要素技術等の研究開発の推進に必要な予算として、約20億円を要求していただきました。
 また、先進レーダ衛星(ALOS-4)につきましては、現在、衛星バスそしてミッション機器のプロトフライトモデル(PFM)の製作・組立及び地上設備の適合性試験等を実施しております。来年度も引き続き、それらの製作・整備・試験等を実施し、確実に打ち上げるための予算として、約96億円を要求していただきました。
 火星衛星探査計画(MMX)につきましては、2024年度の打上げ、2029年度の地球帰還に向けて、火星圏(火星衛星)からのサンプルリターンを確実に進めるための開発予算として、約92億円を要求していただきました。
 そして、次世代航空科学技術の研究開発予算としましては、航空分野の脱炭素化の早期実現に向けて、航空機の燃費を大幅に低減する抵抗低減技術と軽量化技術の研究開発、及びエミッションフリー(電動推進)航空機に搭載する電動ハイブリット推進システムの研究開発、新たな市場開拓に向けた静粛超音速旅客機の実現に向けた低ブーム実証計測技術の研究開発などの推進のため、約40億円を要求していただきました。
 これらのプロジェクトに加えまして、日本初の衛星レーザ高度計システムであります「ISS搭載ライダー(MOLI)」、官民連携による大型衛星と小型衛星コンステレーションが連携した技術開発を行う「衛星コンステレーションによる革新的衛星観測ミッション共創プログラム」、さらに月周回有人拠点(ゲートウェイ)への搭乗や月面での活動機会を見据えた新たな日本人宇宙飛行士の募集を行う「国際宇宙探査に向けた人材確保」、及び、太陽の大気の温度を高感度で観測します「高感度太陽紫外線分光観測衛星(Solar-C)」に必要な予算を、新規に要求していただきました。
 宇宙基本計画、そしてJAXAの第4期中長期目標に則り、我々に与えられました役割と責務を自覚し、皆様のご期待に応えるべく、研究開発を引き続き推進してまいりたいと思います。

革新的衛星技術実証2号機/イプシロン5号機の打上げについて

イプシロンロケット5号機による革新的衛星技術実証2号機の打上げを2021年10月1日(金)に、内之浦宇宙空間観測所から行う予定です。イプシロンロケットの打上げは2019年1月の4号機以来、約2年9か月ぶりとなります。
 今回打ち上げます「革新的衛星技術実証2号機」は、日本の優れた技術やアイデアを、衛星単位だけではなく、部品やコンポーネント単位でも軌道上実証の機会を提供する革新的衛星技術実証プログラムの2号機です。2019年1月に打ち上げました「革新的衛星技術実証1号機」に搭載した実証テーマにおきましては、すでに複数のテーマで軌道上実証の成果を踏まえた事業化が進んでおります。今回の2号機でも、企業や大学のほか、初めて高等専門学校の学生が開発した衛星も含めまして、9機の衛星、14の実証テーマを搭載いたします。今回は1号機より2機多い9機の衛星を打ち上げますので、これらに対応できるようにイプシロンロケットの複数衛星搭載構造を改修し、より多くの衛星の組み合わせに対応できるようになりました。イプシロンロケットは1段モータを6月5日に内之浦宇宙空間観測所に搬入し、その後、10月1日の打上げに向けた射場での作業を順次進めてきているところです。
 先日、8月22日に9機のうち3機の超小型衛星、そしてイプシロンロケットの構成品であります複数衛星搭載構造(ESMS)、キューブサット放出機構(E-SSOD)を公開いたしました。現在、ロケットの全段を結合し、点検する作業を進めております。また全9機の衛星のロケットへの搭載作業を進めております。今回の打上げも無事成功させ、宇宙利用の拡大につながる成果が得られるように進めてまいります。

災害救援航空機情報共有ネットワーク(D-NET)による東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会・警察庁警備業務への技術協力について

 東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会では、警察庁殿が中心となって実施された警備業務のうち、特に制限空域内での航空機の運航監視において、警察庁殿からの要請に基づきまして、JAXAは災害救援航空機情報共有ネットワーク(D-NET)の技術協力、及び運用支援を行いました。
 オリンピック・パラリンピックにおける制限空域は、旅客機用に整備された管制システムではカバーできない空域であるため、この空域を飛行する警察庁、消防庁、海上保安庁等の政府機関の航空機、そして民間機等の飛行状況等をリアルタイムに監視することが課題でありました。そこで、災害や危機管理時に活動する各防災機関の航空機の動態情報を一元的に管理・共有することを目的に開発しましたD-NETを導入することで、制限空域内の飛行状況の一元化での把握が可能となり、安全かつ円滑な警備体制の構築と運営に貢献することができました。警察庁殿からも、オリンピック・パラリンピックにおけるD-NETの導入が有効であったとの評価を頂いております。
 D-NETによる技術支援の最近の主な事例では、災害対応分野では令和2年7月豪雨や令和元年台風19号災害におきまして、また、危機管理分野におきましては、G20大阪サミットや即位行事での導入実績があります。D-NETを導入した現場では、防災機関等が個別に運用しているヘリコプターの運行管理に要する調整が、従来の手法に比べ、より効率的かつ安全な対応が可能になった点を高く評価いただいております。
 今後、空飛ぶクルマや空の道など新たな空の領域におきまして、多種多様な機体が安全に空を飛ぶことを可能にする運航統合技術の実現に向けてD-NETがそのコア技術となるよう、引き続き研究開発を進めてまいります。

星出宇宙飛行士の船外活動について

 星出宇宙飛行士は、9月12日午後9時30分頃から翌日13日午前4時頃にかけまして、船外活動を実施する予定です。これまで星出宇宙飛行士は、2012年の国際宇宙ステーション(ISS)第32次/第33次長期滞在期間中に3回の船外活動を実施しており、今回で通算4回目となります。
 今回の船外活動では、新型太陽電池アレイ(パネル)の設置に向けた準備となります、基礎部分の架台取り付けを行う予定です。これは今年3月に野口宇宙飛行士が船外活動で実施した作業と同じ内容となります。その他の作業には、浮動電位測定装置(FPMU:Floating Potential Measurement Unit)の交換作業を実施いたします。この装置は、ISSの電位を測定する装置で、ISSの太陽電池アレイや構造体の表面における帯電や放電対策に必要なデータを計測そして取得するための装置です。これらの装置は、ISSの運用に欠かせないものであり、大事な任務を任されていると認識しております。JAXA宇宙飛行士として的確に任務をこなしてくれると信じております。

野口宇宙飛行士の長期滞在ミッション報告会について

 昨年11月から今年5月までの約5か月半、166日にわたりますISS長期滞在での任務を完了して、地球に帰還しました野口宇宙飛行士の成果等を皆様にご報告する長期滞在ミッション報告会を、9月29日(水)に、YouTubeのJAXAチャンネルにてライブ配信いたします。
 野口宇宙飛行士自身から、4度目の船外活動や、「きぼう」日本実験棟におきます様々なミッションについて紹介、そして解説をいたします。また、今回のミッションがさまざまな意味で挑戦であったこと、今後の低軌道における有人宇宙活動の展望などにつきまして、ゲストの皆様を交えて、議論を深めていきたいと考えております。是非ご視聴いただければと思います。

PAGE TOP