2022年(令和4年)6月理事長定例記者会見

理事長定例記者会見

山川理事長の定例記者会見のトピックスをお伝えします

日時:2022年(令和4年)6月10日(金) 13:30-14:15

場所:オンライン会見

司会:広報部長 佐々木 薫

 今年も早いもので6月となりました。
 1972年6月1日に筑波宇宙センターが開設され、今年は50周年となる節目の年を迎えました。これまで日本の宇宙開発の中心的な拠点として、主に人工衛星の開発運用、観測画像の解析、ロケット・輸送システムの開発、技術基盤確立のための研究推進、有人宇宙技術開発および宇宙環境利用事業を展開し、成果を積み重ねてきたと自負しております。これらの成果はもちろん、筑波宇宙センターを50年間運用してこられたことは、地元地域の皆様のご協力、ご理解の上に成り立っているものであり、つくば市、茨城県の皆様には、この場をお借りし、改めて感謝の意を申し上げます。

 その筑波宇宙センターを拠点に、26年間にわたり活躍した野口聡一宇宙飛行士が、6月1日にJAXAを退職されました。野口飛行士は、2005年、2009年、2020年の3回の宇宙飛行で、いずれも難しいミッションを完遂するなど、日本の有人宇宙活動を牽引した功労者として大変素晴らしく、私としても誇りに思っております。また、野口飛行士のこれからの新たな挑戦にエールを送りたいと思います。

1.「はやぶさ2」のサイエンス成果論文発表

 小惑星探査機「はやぶさ2」が取得した小惑星リュウグウ試料の分析は、国内外の研究者によって進められておりますが、本日6月10日には2つの成果論文が学術誌に掲載されました。

 リュウグウ試料分析の進め方につきまして、簡単におさらいをさせて頂きます。
 最初に、2020年12月から2021年6月頃までの6か月程度の期間、Phase-1キュレーション活動として、サンプルの取り出し、仕分け、そして基本的な状態等の解析を実施しました。
 そして2021年6月から現在にわたり、6つの分析チームからなる「はやぶさ2初期分析チーム」と、岡山大学および海洋研究開発機構(JAMSTEC)高知コア研究所の2 つの「Phase-2 キュレーション」機関において、それぞれ分析を進めてまいりました。
 初期分析チームの6つの各チームは、①化学分析、②石の物質分析、③砂の物質分析、④揮発性成分分析、⑤固体有機物分析、⑥可溶性有機物分析で構成されておりまして、6つの大学の研究者がそれぞれリーダーとなって研究をとりまとめております。
 初期分析、Phase-2キュレーションでは、リュウグウの試料全体5.4グラムのうち、初期分析に6%、Phase-2キュレーションには4%の試料を分配し、日本の研究者、そして研究機関が持つ英知と技術力をまさに結集して行っております。
 本日掲載された2つの論文は、一つは、初期分析の化学分析チームによる研究成果で科学誌「Science」に掲載され、もう一つは、Phase-2キュレーション機関・岡山大学の研究成果で、日本学士院紀要に掲載されています。
 各論文の詳細につきましてはここでは割愛いたしますが、それぞれが試料に対して化学的な分析・解析を行い、例えば、化学分析チーム論文では、リュウグウの試料が太陽系の標準物質とされているイヴナ型炭素質隕石(CI隕石)と同じ化学組成比等であり、最も始原的な特徴を保持していていること、また、地球上に9つしか発見されていない貴重なCI隕石は地球環境の汚染で変化していることも判明し、リュウグウの試料が最も新鮮な状態の太陽系標準物質であることなどが示されています。

 その他のチームにおいても、それぞれ研究成果を取りまとめている最中であり、今後、論文として成果が公表されるタイミングでお知らせする予定です。また、初期分析及びPhase-2キュレーションによる初期成果が全て公表されたのち、改めて「はやぶさ2」サイエンスの全体の総括のご報告をさせていただくことも検討しております。
 この後に続く研究成果にも非常に期待しており、待ち遠しく感じています。

 一方で、世界中の研究者の方々による特徴的な視点での研究提案を募集している国際研究公募においては、今年1月にリュウグウ試料のカタログを公開し、3月から研究提案の受付を開始しましたところ、予想を上回る多くのご提案が届いております。選定された研究提案者への試料配布は、6月中を目途に行う予定です。

 こうして国内外の研究者に参画いただくことで、更に分析、研究が進み、惑星の起源だけでなく、水の起源や生命の原材料の謎の解明につながる研究成果が多く報告されることを期待しております。

2.線状降水帯の機構解明に関する気象庁気象研究所との共同研究に基づく集中観測や衛星データ提供の開始

 線状降水帯では積乱雲が次々と発生し、顕著な大雨となって、近年、建物や人への甚大な災害が頻発しています。
 この線状降水帯の発生等のメカニズム解明研究を加速するため、6月より、気象庁を中心として、14の大学研究機関が連携し、九州を中心とした西日本において集中観測が開始されました。
 線状降水帯は、気象庁の用語解説によりますと、「次々と発生する発達した雨雲(積乱雲)が列をなした、組織化した積乱雲群によって、数時間にわたってほぼ同じ場所を通過または停滞することで作り出される、線状に伸びる長さ50~300km程度、幅20~50km程度の強い降水をともなう雨域(雨の区域)」とされています。
 このような線状降水帯の特徴に対し、地上と宇宙の双方から観測するというJAXAの強みを活かすことで、線状降水帯のメカニズム解明と予測精度の向上に貢献が可能と考えております。

 集中観測に先立ち、5月にはJAXAと気象庁気象研究所(以下、気象研)は、線状降水帯の機構解明及び予測技術向上に資する研究の推進に関する協定、および共同研究「全球降水観測計画(GPM)等の衛星データと地上観測測器による線状降水帯の機構解明に関する研究」について締結いたしました。

 JAXAの具体的な取り組みとしては、今年の梅雨期に、熊本地方気象台及び長崎大学に地上観測測器を設置し、線状降水帯を構成する降水粒子を観測します。
 さらに、GPM主衛星やしずく衛星、しきさい衛星等の地球観測衛星プロダクトと、地上観測測器の観測データを、気象研が運用する線状降水帯データベースに提供し、気象研をはじめ集中観測に参加する大学・研究機関に配布します。
 またこれらの観測データをほぼリアルタイムで画像化し、広く皆様にご覧いただける「JAXA線状降水帯集中観測モニタ」をJAXAウェブサイトで公開しました。これは各機関が線状降水帯に関する現在の状況を把握することが目的の一つではありますが、一方で、JAXAが実施している観測状況の「見える化」にも役立つのではないかと考えております。

 この他、海上では、船舶や航空機を使って線状降水帯の発生・維持に影響を及ぼす環境場を把握するための観測等を行います。今回のJAXAと気象研との協定、共同研究の範囲外ではありますが、気象庁が実施している船舶GNSS観測では(補足:Global Navigation Satellite System/全球測位衛星システム)、JAXAが開発した測位衛星の軌道クロック精密推定ソフトウェアを用いて生成された準天頂衛星システム「みちびき」からの補正情報が活用されています。これにより、線状降水帯発生に大きく寄与する東シナ海海上での水蒸気量を、リアルタイムに監視することが可能となり、予測精度の向上貢献が期待できます。このようにJAXAの人工衛星技術が一層、社会インフラに実装されるよう取り組んでいきたいと思います。

 最後に改めてとなりますが、地上での集中観測データや、宇宙からの地球観測衛星プロダクトの提供、さまざまな人工衛星技術を通じて、各機関との連携の下、線状降水帯のメカニズム解明研究と予測精度の向上に貢献してまいります。

3.H3ロケット第1段エンジン燃焼試験の状況

 H3ロケットの第1段エンジンとして新たに開発を進めているLE-9エンジンについて、開発状況をお知らせします。

 ターボポンプで発生しました配慮すべき事項への対応策の検証を行うための翼振動試験、及び、コスト削減を目指してH3ロケットの試験機2号機以降で使用する3D造型噴射器の機能・性能を検証するための技術データ取得を種子島宇宙センターにて実施しています。
 試験は、これまでに5月17日、5月24日、6月2日の3回実施しております。これらにより取得したデータにつきましては、現在、詳細評価を進めているところです。

 また、従前より並行して、検討を進めていました他の対応策の検証のために、ターボポンプの単体試験を角田宇宙センターにて、6月下旬以降に実施する予定です。

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