理事長定例記者会見
山川理事長の定例記者会見のトピックスをお伝えします
日時:2022年(令和4年)7月15日(金) 13:30-14:15
場所:オンライン会見
司会:広報部報道・メディア課長 岸 晃孝
1. 観測ロケット2機(S-520-32号機、S-520-RD1)の実施状況
観測ロケットS-520-32号機におきましては、7月10日に打上げを予定しておりましたが、搭載観測機器において、技術的に確認すべき事象が発生し、その原因究明に時間を要することから、当初の打上げ期間としていた7月10日から17日までの期間での打上げは行わず、延期をいたしました。新たな打上げ日は、観測ロケットS-520-RD1の打上げ後に設定いたします。
なお、32号機延期に伴いまして、S-520-RD1打上げにつきましても、7月23日から、翌日の24日に変更いたしました。打上げ射場である内之浦宇宙空間観測所において、共通の射場設備を使用していることなどを踏まえての措置となります。一連の変更におきまして、地元地域をはじめ関係各所の皆様にはご迷惑をお掛けしてしまいますが、改めてお詫びを申し上げますとともに、ご理解を賜りますようお願い申し上げます。
JAXAとして、所定の目的を達成するために全力を尽くしてまいります。
2. H3ロケット第1段エンジン燃焼試験の状況
H3ロケットの第1段エンジンとして新たに開発を進めているLE-9エンジンについて、開発状況をお知らせします。
ターボポンプで発生しました配慮すべき事項への対応策の検証を行うための翼振動試験、及び、コスト削減を目指してH3ロケットの試験機2号機以降で使用する3D造型噴射器の機能・性能を検証するための技術データ取得を種子島宇宙センターにて6回実施し、本試験シリーズは終了しました。
これまでの試験結果を踏まえ、7月20日以降にLE-9エンジンの認定燃焼試験を種子島宇宙センターにて実施し、試験機1号機で用いるLE-9エンジンの対応策を確定するとともに、認定試験の結果を踏まえて今後の打上げ計画を具体化していく予定です。
また、種子島での翼振動試験で検証を行った対応策と並行して検討を進めていました他の対応策について、その検証のためのターボポンプ単体試験を角田宇宙センターにて実施しております。
こちらはこれまでに7月3日と7月9日の2回を実施し、これらにより取得したデータにつきましては、現在、詳細評価を進めているところです。
3. 革新的将来宇宙輸送システム研究開発プログラム 第2回研究提案募集(RFP)選定結果について
将来の我が国の宇宙輸送システムの自立性確保と、新たな宇宙輸送市場の形成・獲得に向けて、抜本的低コスト化等を含めた革新的技術を用いた将来宇宙輸送システムを実現し、我が国の民間事業者による主体的な事業展開を切り拓くことを目的として、「革新的将来宇宙輸送研究開発プログラム」を行っています。
本プログラムでは、産学官の幅広い実施主体が参画するオープンイノベーションでの共創体制の下、研究開発を進めております。宇宙分野での技術開発の課題と、地上における多種多様な分野での技術開発課題を、共通課題として取り組むことで、スピード感をもって技術開発を進めるとともに、双方を融合させて得られた成果から、宇宙と地上の両方で活用可能な技術構築を目指しております。この度、第二回研究提案募集(RFP:Request for Proposal)を今年3月1日から5月6日まで行っておりましたところ、応募いただいたご提案の中から 15件のテーマを選定しましたので、報告いたします。
第二回の募集では、キー技術の一つとなるタンク等大型構造物や極低温に耐える部品を、軽量かつ低コストで製造する技術について、3段階ある研究ステップそれぞれで募集しました。3段階のステップの最初は、挑戦的な技術の適用性を深める「チャレンジ型」、二つ目のステップは革新的な技術を活用し、課題解決の成立性と市場への活用に向けたアイデアの実現性を検討する「アイデア型」。そして3つ目は、今回の募集から設定いたしました、技術課題の具体的な解決を目指す「課題解決型」となっています。この「課題解決型」は、研究終了から概ね 2 年以内に事業化構想達成の見込みがあることを応募条件としております。共同研究期間は最長3年以内としていますので、その後2年以内、つまり5年後の実用化を目指し取り組むものになります。
結果、「課題解決型」研究枠において、「炭素繊維強化プラスチック(CFRP)による 大型極低温推進薬タンク製造技術」と「3次元金属積層造形(Additive Manufacturing)による大型極低温推進薬タンク製造技術」のテーマに関して3件を選定いたしました。いずれも、課題解決につながっていく研究として期待しております。
なお第1回では、再使用輸送機への活用可能性を持つ「新規要素技術」のフィージビィリティ研究として21件を選定しておりまして、再使用輸送機の地上での運用整備における航空機整備技術の活用や、機体の洋上回収に向けた船舶技術の活用など、異業種の技術を活用した研究開発がすでに進んでおります。これらとあわせ、合計36件の共同研究を進めてまいります。
本プログラムの活動を進めるなか、これまで宇宙輸送技術の開発と関連性のなかった事業分野や業種の企業の方々も含め、技術研究に参画を要望しているプレーヤーが増加していることを実感しております。今後さらに、様々な分野の企業や大学との共創体制を構築し、将来宇宙輸送システム実現に資する成果につなげ、宇宙利用の拡大に貢献したいと考えております
4. 海外宇宙機関との対話
6月から7月にかけて海外の宇宙機関との対面での会談を行いました。
6月末には、フランス国立宇宙センター(CNES)総裁一行が、同機関創立60周年のイベントを日本科学未来館で開催するため、来日しました。この機会をとらえて、機関間会合を実施いたしました。
CNESとJAXAとは1980年代から協力関係があり、現在においても多くのミッションで協働を行っています。主なものには、双方の温室効果ガス観測衛星データの精度向上を目的とした協力、火星衛星探査計画(MMX)におけるCNESの開発機器等の搭載、CNES及びドイツ航空宇宙センター(DLR)との3機関協力でのロケット第1段の再使用化を目指すCALLISTOプロジェクト等があります。
今回実施したCNESとの機関間会合では、両機関の現在および将来の協力に関する意見交換のほか、新たな協力を見出すための仕組み等について議論しました。
また、私自身も6月30日に日本科学未来館で開催された記念イベントに参加し、CNESとの将来的な協力と国際社会への貢献に対する期待について発言いたしました。
7月初旬には、英国宇宙庁(UKSA)が、機関間の定期会合のため来日しました。この会合は両者で昨年6月に締結した協力覚書に基づくもので、初めての会合となります。
昨年の協力覚書締結後、英国では9月に国家宇宙戦略(2021年9月)が制定され、その中でJAXAは、持続的協力関係を構築するグローバルパートナーとしてNASAとともに特記されるとともに、今年1月には、私が英国議会での意見招請を受けるなどの強固な信頼関係の構築を進めております。
協力覚書の下で、既に開始されている英国国防科学技術研究所(Dstl:DEFENCE SCIENCE AND TECHNOLOGY LABORATORY) との宇宙状況把握(SSA)に関する技術的・科学的な協力に加え、今後も、英国宇宙庁がファンディングする英国の産業界や研究所などとJAXAとの間で、協力案件の創出を図っていきたいと考えています。