2022年(令和4年)11月理事長定例記者会見

理事長定例記者会見

山川理事長の定例記者会見のトピックスをお伝えします

日時:2022年(令和4年)11月11日(金) 13:30-14:15

場所:オンライン会見

司会:広報部長 佐々木 薫

 前回の定例記者会見は9月でしたので2か月ぶりとなります。
 その間いくつかのミッションの重要なイベントを実施してまいりましたが、改めまして、イプシロンロケット6号機の失敗につきまして、国民の皆様のご期待に沿うことができず、深くお詫び申し上げます。
 JAXAと致しまして、早期に原因究明を行うべく、総力をあげて取り組んでいるところでございます。
 また、イプシロン6号機搭載の衛星を開発した民間企業、高専、大学の皆様には、お詫びをさせて頂き、今後に向けてJAXAとして何ができるか対話を進めているところでございます。
 更には、H3ロケットや衛星プロジェクト等を着実に実施するとともに、果敢に取り組んで参りたいと存じます。

1.若田宇宙飛行士の長期滞在

 若田宇宙飛行士は、10月6日にクルードラゴン宇宙船5号機(Crew-5)に搭乗し、翌10月7日からISSでの長期滞在を開始いたしました。10月24日には、若田宇宙飛行士の宇宙空間での累積滞在期間が365日となり、日本人で初めて宇宙滞在期間が1年を越えました。経験豊富なベテラン宇宙飛行士の一人であり、大変誇らしく思います。

 若田宇宙飛行士のISS滞在期間中には、「きぼう」日本実験棟を利用した様々な宇宙実験が予定されております。従前より多くの実績を持つ、微小重力下という環境を利用して医薬品の開発や工業的な利用などの成果を目指している高品質タンパク結晶生成実験や、地上では不可能な超高温領域の物性測定が可能な静電浮遊炉。宇宙フライトが及ぼす加齢への影響を、線虫を用いて調べる実験。さらに、将来の月や火星での有人宇宙探査活動に向けたシステム設計に資する、低重力環境下における液体挙動データ取得ミッションなど、チャレンジングな実験に数多く取り組んで行く予定です。
 ISS到着後の約1ヶ月の間に、高品質タンパク質結晶生成実験の11月末の実施に向けた準備、静電浮遊炉の試料ホルダ交換、世界の参加チームによる第3回「きぼう」ロボットプログラミング競技会の軌道上決勝大会を実施しました。加えて、ISSの機器交換や「きぼう」ロボットアームの点検作業なども行いました。

 若田宇宙飛行士は、これまでの宇宙飛行の経験を生かし、これらのミッションを確実に遂行してくれるものと期待しております。また、探査も含め将来ミッションで日本が更に貢献・活躍していけるように蓄積した経験や技量、国際的信頼関係を継承してくれるものと思います。
 引き続き皆様のご支援をいただけますと幸いです。

2.OMOTENASHI/EQUULEUSの打上げ準備状況と変形型月面ロボットの打上げ予定

 日本も参画する「アルテミス計画」の最初のミッションであるArtemisⅠについては、9月のハリケーンの影響で、ロケットの整備組み立てを行う整備組立棟、いわゆるVABに戻されていたSLSロケットが、11月4日に再度射点に移動されました。現時点でNASAは、日本時間の11月16日を打上げ予定日、11月19日をバックアップの打上げ候補日と公表しています。

 同ロケットには、JAXAが開発したOMOTENASHI、および東京大学とJAXAが開発したEQUULEUSという、どちらも約11センチ×24センチ×37センチの超小型探査機が搭載されます。両探査機につきましては、VABにおいて10月13日にバッテリーの補充電が行われ、当初予定されていた11月14日の打上げに向けて準備を進めておりましたが、熱帯暴風雨の影響で新たな打上げ日が11月16日に設定されたことを受け、打上げ日変更に伴う対応、準備に各担当が全力を注いで取り組んでおります。OMOTENASHIの月面着陸は、打上げから5日~6日後を予定しております。

 OMOTENASHIは超小型探査機での月面着陸を目指しており、精密な軌道決定、固体ロケットを用いた減速技術、衝撃吸収、超小型通信機など着陸を実現するための個々の技術を実証する計画です。
 EQUULEUSは超小型探査機での太陽・地球・月圏での軌道操作技術の実証のため、月や太陽の重力を利用しつつ、少ない推進剤で効率的に飛行し、月のラグランジュ点を目指します。この技術を実証することによって、将来の月周辺への打上げ機会を活用して、超小型衛星で本格的な科学ミッションや技術実証ミッションを可能にすることを狙っています。

 月を目指すミッションとしてもう一つ、11月22日以降に打上げを予定している変形型月面ロボットのミッションがあります。変形型月面ロボットは、JAXA、および株式会社タカラトミー、ソニーグループ株式会社、同志社大学の4者が共同開発した直径約8センチのロボットです。株式会社ispaceの月着陸船により月面に輸送され、ロボットが月面を走行してレゴリスの挙動データや月面での画像等を取得し、地上に送信します。取得したデータは、将来の有人与圧ローバの開発等に生かしていく予定です。

 これらは、非常にチャレンジングなミッションでありますが、将来の技術開発につながる成果が得られるように進めてまいります 。

3.H3ロケット第1段エンジン燃焼試験の状況

 H3ロケットの第1段エンジンとして新たに開発を進めているLE-9エンジンについて、開発状況をお知らせします。

 H3ロケット試験機1号機の打上げに向けた開発試験の一環として、11月6日から11月7日にかけて1段実機型タンクステージ燃焼試験(CFT)を種子島宇宙センターにおいて実施し、実機タンクを用いた1段推進系システムの総合確認を終了しました。

 CFTと並行して、LE-9エンジンの認定燃焼試験の後半を、10月から11月にかけて4回実施しました。試験は計画通り終了しており、現在取得したデータの詳細評価を進めています。

 これらの試験の結果等を踏まえ、今後、試験機1号機の打上げ時期について見極めていく予定です。

 また、H3ロケット試験機2号機以降に向けたLE-9エンジンについて、最適な仕様を選定するためのデータ取得を行うターボポンプ単体試験を、9月29日に角田宇宙センターにて実施しました。試験は計画通り終了し、取得したデータの解析を進めています。今後、その結果も踏まえ、試験機2号機以降に向けたLE-9エンジンの開発を進めてまいります。

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