2023年(令和5年)11月理事長定例記者会見

理事長定例記者会見

山川理事長の定例記者会見のトピックスをお伝えします

日時:2023年(令和5年)11月17日(金) 13:30-14:15

場所:JAXA東京事務所 B1F プレゼンテーションルーム

司会:広報部長 佐々木 薫

1. H3開発状況

 H3ロケット試験機2号機に搭載するLE-9エンジンの領収燃焼試験を10月15日と10月26日に実施し、取得したデータを評価した結果、当該エンジンを領収いたしました。今後、LE-9エンジンタイプ1Aの認定燃焼試験の後半を実施する予定です。
 また、これらの進捗も踏まえ、H3ロケット試験機2号機は今年度の打上げを目指したいと考えており、種子島宇宙センターでの射場作業など、確実な打上げに向けた準備を進めています。

2. 最近の有人宇宙活動

今週11月14日および15日に発表させていただきましたとおり、大西宇宙飛行士の国際宇宙ステーション(ISS)長期滞在が決定いたしました。大西宇宙飛行士は、2016年に続き、2回目のISS滞在となります。また、油井宇宙飛行士につきましても、2024年頃に予定しておりましたISS長期滞在時期が2025年頃に変更されましたこともお知らせいたします。

古川宇宙飛行士はISSでの長期滞在を開始してから約3ヶ月が経ちました。現在も順調に軌道上実証実験など、多くの業務に取り組んでおります。

 軌道上での成果の一つをご紹介いたします。
 ISSでの宇宙飛行士の活動を支援する船内ドローンロボット「JEM自律移動型船内カメラ(通称Int-Ball)」の後継機、「Int-Ball2」の実証実験における大きな山場を、11月7日に無事に越えたとの報告を受けております。この実証は、地上と連携し、古川宇宙飛行士が行いました。
 現在、「きぼう」日本実験棟内での写真・動画撮影は、宇宙飛行士自らがカメラを設置して行っています。Int-Ball2は、地上からの遠隔操作で「きぼう」船内を移動し、宇宙飛行士の代わりに必要な時に必要な角度から撮影出来るロボットになります。
 「3次元空間を自由に飛行できる技術」、「空中での完全静止技術」といった初号機から引き継いできた実証実験に加え、2号機では初めて「充電ポートとの自動ドッキング・リリース技術」を実現することができました。宇宙飛行士の撮影作業負担ゼロに向けて大きく前進しました。

 11月1日、NASAのオハラ宇宙飛行士とモグベリ宇宙飛行士が船外活動(EVA)を実施しました。古川宇宙飛行士は他のクルーと協力して、船外活動服着用支援など船外活動開始までの準備の進行管理を行いました。準備を滞りなく進めることは、船外活動を安全かつ計画通りに実施するうえで必須となります。準備の中でも最も重要な手順の一つである、減圧症を防ぐための脱窒素に係る作業などを、古川飛行士の医師としてのバックグラウンドも踏まえて、一つひとつ丁寧、かつ着実にこなしたと報告がありました。船外活動実施前後にわたる一連の長時間作業に対して、他極からも感謝の言葉があったと聞いております。

10月24日には、軌道上交信イベント「古川宇宙飛行士にプレゼン!宇宙好き大学生の『推しミッション』」が行われました。ISSと地上を結んだ軌道上交信イベントの実施目的の一つには、教育・広報の観点がございます。
 今回は、公募で選ばれた宇宙に関心が高い大学生4名が、「きぼう」で実施しているミッションの中から「推しミッション」を選び、古川飛行士をはじめライブ配信視聴者の皆さまにプレゼンテーションを行う形式で実施いたしました。「きぼう」ミッションの内容を説明する際は、得てして技術的な難しさなどが中心になりがちですが、大学生4名は各自が選んだ「推しミッション」について、それぞれの重要性、可能性などを、自身の言葉で分かりやすくプレゼンをしてくれました。例えば、「宇宙で実施するライフサイエンス実験」への期待を発表した学生は、ご家族の介護体験を交えながら、微小重力環境の下で宇宙飛行士に起こる筋萎縮・骨量減少のメカニズムなどの解明が、地上における寝たきり状態での病態の予防や治療法の開発、高齢化社会の課題解決につながる点などを解説してくれました。参加した4名は「事前予習を通じてミッションに対する理解を深めることができた」と話してくれており、その成果がプレゼンで発揮できたのだと思います。
イベントの模様は、YouTube 「JAXAチャンネル」にアーカイブされていますので、ぜひご覧ください。
 ISS滞在中は限られた期間の中で非常に多くのタスクを実施する必要がありますが、古川飛行士は、地上の管制官や研究者とも連携を密にして、引き続き、軌道上での仕事を一つひとつ丁寧、かつ着実に取り組んでくれることを信じています。

最後に

 最後は、11月下旬から12月にかけて開催予定のシンポジウムなどをご紹介いたします。
 既にJAXA公式ウェブサイトでご案内しておりますが、まず11月25日にJAXAシンポジウム2023を開催いたします。「挑戦への情熱」をテーマに、研究開発の最前線で取り組む現場の熱量を感じていただきたいと考えております。今年もYouTubeでライブ配信となりますので、ぜひご視聴ください。

 次に航空技術部門が主催するオープンフォーラムが2つございます。
 1つ目は、11月29日に開催する、航空機ライフサイクルDXコンソーシアムの第1回オープンフォーラムです。航空機ライフサイクルDXコンソーシアムは今年6月に発足し、デジタルトランスフォーメーション(DX)による我が国の航空産業の裾野拡大・国際競争力強化と将来の航空産業のDXを担う人材の育成という目的の達成に向けて、将来ビジョンの策定を進めております。将来ビジョン策定に向けた取り組みや具体的な取り組みを開始した研究開発などをご紹介いたします。
 2つ目は、12月5日の気象影響防御技術WEATHER-Eyeコンソーシアム第8回オープンフォーラムとなります。航空機事故及び運航遅延などの原因となる、雪氷・雷・火山灰等の特殊気象による航空機運航への影響は日本において特に問題となりやすく、これまでもさまざまなテーマに対し課題解決に必要な技術開発に取り組んでおります。それらの紹介はもとより、航空ユーザーの皆様の潜在的なニーズの掘り起こしや、さまざまな課題の解決にご参画いただける新たなパートナーの発掘などにもつなげていきたいと考えております。

 また、宇宙航空分野におけるSDGsの取り組み状況を紹介するJAXA SDGsシンポジウムを12月8日に開催いたします。JAXAのSDGs達成に向けた取り組みとして、主に地球観測衛星による貢献、カーボンニュートラルに向けた航空技術研究などを紹介するとともに、SDGs研究の専門家やSDGsに関する取組が盛んな民間企業からもご登壇いただき、宇宙と航空のSDGsに関心を深めていければと思います。
 年末も近づき多忙な時期ではございますが、ぜひご参加のほどよろしくお願いいたします。

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