2023年(令和5年)12月理事長定例記者会見

理事長定例記者会見

山川理事長の定例記者会見のトピックスをお伝えします

日時:2023年(令和5年)12月8日(金) 13:30-14:15

場所:JAXA東京事務所 B1F プレゼンテーションルーム

司会:広報部長 佐々木 薫

1. H3およびイプシロンS開発状況

 H3ロケット試験機2号機以降に向けたLE-9エンジンタイプ1Aについて、認定燃焼試験の後半を実施しており、これまでに11月17日から12月6日の間に4回を実施し、現在取得したデータの詳細評価を進めるとともに、次回の試験準備を進めております。
 引き続き、認定燃焼試験の結果も踏まえ、H3ロケット試験機2号機の確実な打上げに向けて準備を進めていきます。

 イプシロンSロケット第2段モータ地上燃焼試験における爆発・火災事故の原因調査につきまして、原因の絞り込みのため、解析と試験による検証を進めてまいりました。これら原因調査の結果を、12月12日に予定されております、文部科学省の宇宙開発利用部会にてご報告をさせて頂く予定です。

2. 小型月着陸実証機(SLIM)の月面着陸

 2023年9月7日にH-IIAロケット47号機で打ち上げた小型月着陸実証機(SLIM)については、12月5日の記者説明会でもご説明しましたとおり、2024年1月20日、日本時間の午前0時20分頃、月面に着陸する予定です。
 SLIMは、これまで順調に運用を続けており、10月には月遷移軌道への投入に成功し、年内には月周回軌道に入る予定です。また、月面着陸の直前には、搭載している2機の小型プローブ(LEV-1、LEV-2)を分離します。着陸後には、SLIMのマルチバンド分光カメラによる科学観測も実施します。

 国内外の月着陸機の精度が数km~10数kmである中、SLIMの着陸精度は100mであり、挑戦的な着陸技術実証ミッションになります。
 SLIMによるピンポイント着陸の実現により、これまでの月探査における「降りやすいところに降りる」時代から、「降りたいところに降りる」という新たな時代を切り開くことを目指しています。これにより、有人月面探査における水資源の調査などを効果的、効率的に行うことや、サイエンスとして興味深い着陸点へのアプローチが可能となります。
 また、月周回衛星「かぐや」などの観測画像をもとにしたクレータのデータベースとSLIMが撮影したクレータ画像とを比較・照合することで自己位置を測定・修正する着陸運用や、傾斜地に適した二段階着陸方式といった新たな技術を実証します。

 引き続き探査機を着実に運用し、ミッションの実現に向けて全力を尽くして参ります。

3. 国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)

 国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)が、アラブ首長国連邦・ドバイを会場に、先月30日より始まり、今月12日まで開催されます。COPは、国連の気候変動枠組条約(UNFCCC)の197か国におよぶ締約国による年次会合です。今回28回目の会合では、パリ協定の目標達成に向けて、気候変動対策の強化に焦点が当てられています。

 私は、12月3日から5日まで出席してまいりました。4日には、世界の宇宙機関約20機関が参加した「Space Agency Leaders’ Summit」が開催されました。この会議は、UAE宇宙庁からの呼びかけにより、気候変動の緩和や適応に対する地球観測の貢献を宣言することを目的としたものです。私からは日本が40年近く地球観測衛星の開発及び運用を続けており、今後も宇宙からの観測の目を途切れることなく継続すること、そして、国際パートナーをはじめ、多様なステークホルダーや民間セクターと連携し、人工衛星による地球観測を実効的なアクションへつなげていくことの重要性について発言しました。NASAやESAをはじめとした世界の宇宙機関(約20機関)がステートメントを述べたとともに、成果文書として宣言文がまとめられ、採択されました。宣言文には、気候変動への対応における宇宙技術の活用や包括的な観測の重要性、データ共有や気候変動研究の推進などが盛り込まれています。

 その他には、今回のCOP28の機会をとらえて、フランス国立宇宙研究センター(CNES)との間で温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」に関する協力延長協定に署名をおこないました。CNESとの協力協定は2017年に締結しましたが、CNESによる「いぶき」の観測データ利用は、「いぶき」を打ち上げた2009年から開始されており、長年、研究に活用されております。またブラジル環境・気候変動省と会談の場を持ちました。同省よりブラジル国内の森林法施行のために基準となるデータとして、陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)のデータを使用したいとのご要望をいただき、JAXAからデータを提供することといたしました。ブラジルの皆さんとは、国際協力機構JICAとJAXAで連携し、2009年から2012年にかけて取り組んだアマゾン森林保全・違法伐採防止のためのだいち画像利用プロジェクトや、その成果をもとに構築した「JICA-JAXA熱帯林早期警戒システム(JJ-FAST)」の運用などでも協力してまいりました。今回いただいたご要望は、良好な協力関係の構築によるものと考えております。

 今回、COPの場では、企業やさまざまなステークホルダーの方にお会いして、気候変動問題解決における宇宙技術への期待感を、改めて実感いたしました。今後も、JAXAの地球観測分野における成果を、世界各国の方々に利用いただく機会につなげてまいりたいと思います。
 なお、COPにおけるJAXAの主催および登壇イベントにつきましては、JAXAウェブページをご参照ください。

最後に

 今年は、報道メディアの皆様とも、こうして対面で直接対話をさせていただく機会が戻り、さまざまな観点でのご質問等から改めて気づきをいただくことも多く、非常に有意義であったと感じております。一年間大変お世話になり、ありがとうございました。
 少し早いですが、良いお年をお迎えください。

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