2021年(令和3年)5月理事長定例記者会見

理事長定例記者会見

山川理事長の定例記者会見のトピックスをお伝えします

日時:2021年(令和3年)5月14日(金) 13:30-14:15

場所:オンライン会見

司会:広報部長 佐々木 薫

野口宇宙飛行士の帰還、星出宇宙飛行士の長期滞在開始について

 野口宇宙飛行士は、2020年11月16日にクルードラゴン宇宙船(Crew-1)で打ち上げられ、11月17日から国際宇宙ステーション(ISS)での滞在を開始して、今年の2021年5月2日に地球に帰還し、約5か月半にわたるミッションを終了しました。現在は米国のヒューストンにてリハビリを行っております。地球の重力環境への適応は順調に進んでおり、日常生活は概ね支障がない程度に回復していると聞いております。
 野口飛行士は、日本人宇宙飛行士としては初めてとなりますクルードラゴン宇宙船の運用初号機搭乗や、またISS滞在中には、再生医療につながるiPS細胞実験などの各種実験、そして超小型衛星放出や、自身4回目そして日本人として最多となります船外活動を実施しました。船外活動では、ISSの電力増強を図る新型太陽電池アレイの基礎架台取り付けなどを実施しました。
 ミッション期間中、重要な任務を着実に遂行してくれたことを改めて誇りに思います。またこの場をお借りしまして、野口宇宙飛行士ISS長期滞在ミッションにご支援、ご尽力をいただきました関係者の皆様に、御礼を申し上げます。

 また星出宇宙飛行士は、先般4月23日にクルードラゴン宇宙船(Crew-2)で打ち上げられまして、4月24日から長期滞在を開始いたしました。4月28日には、ISSの船長に就任し、これから約5か月間、ISS搭乗クルーを統括そして指揮してまいります。ISSの船長として、これまでの宇宙活動の実績に加えまして、地上での日々の業務や訓練等にて培ってきましたリーダーシップを十分に発揮することを期待しております。その一つの例を紹介したいと思います。昨晩の日本時間5月13日夜ですが、ISSで緊急時の対応訓練が行われました。クルーがそれぞれの帰還船に退避する訓練です。星出船長のリーダーシップのもと、地上要員とも連携した複雑な対応をスムーズに進めて実りある訓練になったと聞いております。
 また、星出宇宙飛行士も、ISS滞在期間中に「きぼう」日本実験棟を利用した様々な宇宙実験を行う予定です。例えば、次世代の水再生システムに関する技術実証や、高品質タンパク結晶生成実験などがありますが、いずれも、地上にいる各テーマの研究者や管制官等との連携が重要であり、星出飛行士がISSに到着した際に言っておりましたワンチームの精神を発揮して取り組んでくれると信じております。
 現在、星出宇宙飛行士は、6月に打上げが予定されておりますドラゴン補給船運用22号機の到着に備えまして「きぼう」日本実験棟内の物品の整理や、また静電浮遊炉(ELF)実験の開始など、早速、ISSのメンテナンスや実験などの軌道上作業を順調に遂行しているところです。引き続きのご支援を賜りますようよろしくお願い申し上げます。

 また今年の秋頃には、13年ぶりとなります日本人宇宙飛行士の新規募集が始まります。野口宇宙飛行士そして星出宇宙飛行士はもとより、JAXA宇宙飛行士7名の活動は応募を検討している方々から常に注目されていると思います。日本を代表する宇宙飛行士としての自負を持って、それぞれ業務を遂行していってもらいたい、と考えております。

国際宇宙ステーション「きぼう」高品質タンパク質生成実験事業の民間パートナー企業選定について

 JAXAは、国際宇宙ステーションの「きぼう」日本実験棟の利用に関しまして、地球低軌道の利用拡大そして事業化促進の方針のもと、「きぼう利用戦略」を制定して「きぼう」の利用事業の民間等による事業の自立化(民間への移管)を推進しているところです。
 これまで例えば、“超小型衛星の放出”および“「きぼう」船外プラットフォームを利用した軌道上利用”、この2つの分野におきまして民間企業を事業者として選定し、事業の移管を実施してまいりました。これらの事業移管後、民間企業によって超小型衛星は6機放出されておりますし、また同じく事業移管後の「きぼう」船外プラットフォームの利用に関しましては、スペインの宇宙ベンチャー企業が開発しました超小型衛星搭載用の地球観測カメラを日本実験棟の中型曝露実験アダプター(i-SEEP)に取り付けて、軌道上の実証試験を実施するなど運用が進んでいるところです。
 そして今回3つ目の分野としまして、微小重力環境では密度差などによる対流が起こらないことに着目して品質の高いタンパク質結晶を生成します、“高品質タンパク質結晶生成実験”におきましても、利用サービス提供事業をJAXAと協力しながら実施いただく民間パートナーを公募し、その結果としてSpace BD株式会社殿を選定いたしました。
 高品質タンパク質結晶生成実験では、タンパク質の取り扱いには高い技術力が必要になる点や、また地上技術との競争なども考慮しまして、ノウハウの移転や市場開拓には時間を要すると考えられます。そこで、まず民間パートナー企業には、JAXAが所掌します宇宙実験の作業の請負を通じまして複雑な実験システムや実験技術について習得いただきながら、そして段階的な移管を通じて、民間主体での持続的な利用サービスの提供構築を検討してまいりたいと考えております。
 さらに今回の特徴として、企業独自のアイティアを基に事業化の実現性検討を行っていただけるよう、JAXAの軌道上実験枠を民間パートナー枠として一部提供します。この枠を活用して企業自身が顧客に対して有償によるサービス提供を行います。創薬研究のほか、今回選定したSpaceBD株式会社殿では、幅広い分野、例えば新しい農薬開発支援(創農薬)、あるいは産業用酵素などでの利用も検討されていると聞いております。
 JAXAとしては、引き続き「きぼう」の利用を通じまして、さらなる宇宙産業の裾野の拡大を目指して民間企業との連携を進めていきたいと考えております。

「はやぶさ2」帰還カプセル全国巡回展示の協力団体募集について

 小惑星探査機「はやぶさ2」は、打上げから6年にわたる宇宙の旅を経て、昨年12月に小惑星リュウグウのサンプルを収めたカプセルを無事に地球に届けました。採取されたサンプルにつきましては初期分析を連携、協力関係にあります研究機関等とともに進めているところです。
 さて、このような価値の高いサンプルをもたらした「はやぶさ2」の帰還カプセルをご覧いただく企画展を、去る3月には相模原市立博物館、続いて東京上野の国立科学博物館で開催いたしましたが、より多くの国民の皆様に直接ご覧いただく機会をご提供すべく、現在は全国巡回展示の協力団体を募集しているところです。
 この帰還カプセルは、実際に宇宙を旅して、地球に帰ってきましたフライト品、本物でありまして、世界的にも大変貴重な成果の象徴といえます。この本物を国民の皆様にご覧いただくことは、ご支援をいただいた御礼をJAXAとしてお伝えする機会ととらえております。また、「はやぶさ2」ミッションが成し遂げました数々の成果、例えばですが、世界初となります、着陸精度60cmの実現や人工クレータ作成とその過程の観測、さらに地球圏外の天体の地下物質へのアクセスなど7つの工学的成果や観測データ等に基づく科学的な成果も紹介して、特に日本の将来を担う次世代の皆様に、宇宙の謎を探求することやチームワークでミッションに挑戦する楽しみ、さらにミッションを成し遂げるためには地道な準備が重要であることなどについて、是非とも実感いただきたいと考えております。
 既に多くのお問い合わせをいただいているところと聞いてはおりますが、是非、全国各地の皆様に本物をご覧いただく体験をご提供できればと考えております。新型コロナウイルス感染症の影響が大きい状況の中、感染防止対策の徹底など展示時の工夫などをご検討いただくことになりますが、以前、約10年前になりますが、はやぶさ初号機のカプセル公開時にご覧になった方もそうでない方にも、是非とも今回の巡回展示を体験いただきたいと考えております。

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