理事長定例記者会見
山川理事長の定例記者会見のトピックスをお伝えします
日時:2023年(令和5年)1月27日(金) 15:30-16:15
場所:オンライン会見
司会:広報部長 佐々木 薫
「人を対象とする医学系研究に関する不適合事案」の調査結果に基づきまして、研究機関の長として、今回の事態を招いたことの責任を重く受け止め、私自身の処分をはじめ関係の役員、職員に対する処分を、1月10日付で行いました。
同じく10日には、全役職員に向けて、服務規律の順守と、高い倫理観をもって業務に取り組むよう指示いたしました。
JAXA側の問題によって、重大な事態を招き、共同研究機関の企業や大学の研究者の皆さまに多大なご迷惑をおかけしてしまったこと、そして、研究にご協力頂きました研究対象者の方々、ご助言をくださった外部有識者の方々をはじめ多くの皆さまからの信頼を損ねる結果となってしまったことに対しまして、改めて深くお詫び申し上げます。
皆さまからの厳しいご指摘やご意見を頂戴していることを私自身もしっかりと受け止め、組織として再発防止に誠心誠意、全力をあげて取り組んでまいります。
なお、共同研究機関の皆さまからは、各機関が行った研究においては医学系指針に抵触するような不適切な行為はなかった旨のご報告をいただいておりますこと、申し添えさせていただきます。
1.H3ロケット試験機1号機による先進光学衛星「だいち3号」(ALOS-3)の打上げ準備状況
昨年末、12月20日の説明会でお知らせしましたとおり、H3ロケット試験機1号機は、1段実機型タンクステージ燃焼試験(CFT)やLE-9エンジンの認定試験、イプシロン6号機の水平展開の結果などを総合的に評価し、打上げに向けた開発は概ね完了したと判断いたしました。関係機関とも調整させていただき、昨日のH-IIAロケット46号機の打上げを受けて1日延期しましたが、2月13日を打上げ予定日とし、SRB-3結合やロケットの機能点検など、打上げに向けた準備を進めております。
ALOS-3は、種子島にて、打上げに向けた最終準備作業を進めており、今後、ロケットへ引き渡され、ロケットと結合される予定です。
引き続き確実に準備を進め、試験機1号機及びALOS-3の打上げに臨みたいと思います。
2.若田宇宙飛行士のISS軌道上活動状況
昨年10月より国際宇宙ステーション(ISS)に長期滞在中の若田宇宙飛行士は、本日(1/27)時点で、これまでの累計での宇宙滞在日数が461日を超え、日本人としての宇宙滞在記録を更新し続けています。
また、1月20日(金)夜から翌日21日(土)未明にかけては、米国のニコール・マン宇宙飛行士と共に、船外活動(EVA)を実施し、新型の太陽電池アレイ設置のための架台を取り付けました。
なお、今回は若田宇宙飛行士にとって初めての船外活動でしたが、これまでの訓練の成果を十分に発揮し、15年の設計寿命を超えて運用されてきた既存の太陽電池アレイの補完に貢献するとともに、5回目の宇宙飛行においても新たなことに果敢に挑戦していることを大変誇らしく思います。
なお、今回のEVA実施結果を踏まえ、さらに作業を進めるべく、現在、若田宇宙飛行士と米国のニコール・マン宇宙飛行士による2回目のEVAの実施を検討しているとの報告を受けています。若田宇宙飛行士による2回目のEVA実施が決まりましたら、あらためてお知らせいたします。
次に宇宙実験についてもご紹介したいと思います。最近の活動としては、1月11日に、インドネシアのスーリヤ大学が初めて開発した超小型衛星をはじめ3機の超小型衛星を、「きぼう」日本実験棟から無事放出しました。これらの超小型衛星は、国連宇宙部との連携プログラム「KiboCUBE」の第3回公募で選定されたものです。
また、月・火星探査にもつながる技術開発として、低重力環境での液体の動きを調べる実験を行いました。取得したデータは、有人与圧ローバの設計など、将来、月や火星における探査に用いる装置の開発に役立てていきます。
さらに、1月17日には、若田宇宙飛行士による青少年向け簡易宇宙実験(Asian Try Zero-G 2022)を行いました。8つの国と地域から、480名、201件の応募があり、各地での一次選考を通過した6つの実験テーマが実施されました。参加された学生の皆さんや若手技術者の皆さんには、今回の貴重な経験を生かして、さらに活躍頂きたいと思います。
若田宇宙飛行士が行っている「きぼう」日本実験棟を利用した様々な宇宙実験の内容は、「若田宇宙飛行士 軌道上活動レポート」として特設サイトにて随時ご紹介しておりますのでそちらもぜひご参照ください。
若田宇宙飛行士には、残る滞在期間中、引き続き確実にミッションを遂行してくれることを期待しております。
3.日・米宇宙協力に関する枠組協定や国際宇宙探査に向けた取り組み
1月13日に米国・ワシントンにあるNASA・米国航空宇宙局本部にて、岸田内閣総理大臣立会いの下、林外務大臣及びブリンケン米国国務長官が「日・米宇宙協力に関する枠組協定」に署名しました。私と星出宇宙飛行士も現地で署名式に立会う機会をいただきました。
本協定は、日米間の宇宙協力の更なる促進及び効率性の向上を目指して、日米両国が平和目的の宇宙協力を行う際の基本事項を定めるものであり、JAXAにとって非常に重要なものです。
これまで日米の二国間の宇宙協力は、原則として、個別の協力ごとに政府間で国際約束を締結し、その下で協力の実施機関であるJAXAはNASA等の米国の実施機関と機関間の取決めを取り交わしてきました。
今後は、本協定の基本事項に従って機関間の取決めを取り交わすことが可能となります。私としてもアルテミス計画を含む日米間の宇宙協力を一層促進するものと期待しています。
国際協力の中で日本がプレゼンスを発揮するためには、日本国内での連携も推進していかなければなりません。
宇宙探査イノベーションハブでは、宇宙分野の枠にとらわれず、これまで宇宙分野と関連性のなかった事業分野や業種の皆様とも協働を進めていることは、これまでも折に触れご紹介してきました。
さまざまな企業、研究機関や大学のご参画の下、共同研究、研究提案募集を2015年から続けており、今年度は、第9回目の研究提案公募を昨年9月から11月にかけて実施しました。今回の公募では、アルテミス計画の動向などを見据えて、宇宙飛行士の月面での活動を支援するための技術や、月面での科学探査を支えるための技術に重点を置くなど、今後必要となる分野等を見据え、工夫を重ねて実施しています。
これまでの共同研究の取り組みにおいては、3Dイメージを瞬時に撮影する超高感度のフラッシュライダー(Flash LIDAR)の新型宇宙ステーション補給機(HTV-X)への搭載や、月面の微量な水分を計測するセンサの月極域探査ミッション(LUPEX)への搭載が予定されるなど、具体的な成果にもつながっております。また、2023年4月末には、変形型月面ロボットを月面で走行させ、有人与圧ローバの開発に必要なデータを取得する予定です。
今回の公募では、32件の応募の中から15件を選定し、本日公表いたしました。選定された主な例をあげますと、宇宙機自らが最適な経路を予測しながら月表面を移動するための技術、宇宙飛行士の長期間滞在に必要な水や空気を再生する技術などがございます。詳しくはJAXAウェブサイトに掲載しておりますので、ご参照ください。
今後も年2回の頻度で研究提案募集を行う予定です。
引き続き日本の総力を挙げた共創体制を継続し、日本の産業界への貢献に役立てていただくことに加えて、国外での日本のプレゼンス向上につなげてまいります。