2023年(令和5年)7月理事長定例記者会見

理事長定例記者会見

山川理事長の定例記者会見のトピックスをお伝えします

日時:2023年(令和5年)7月28日(金) 16:00-16:45

場所:JAXA東京事務所 B1F プレゼンテーションルーム

司会:広報部長 佐々木 薫

1.イプシロンSロケット開発状況、H3に関する原因究明状況など

7月14日に能代ロケット実験場にて実施いたしましたイプシロンSロケット第2段モータ地上燃焼試験における爆発・火災事故におきまして、地域住民の皆様、地元地域をはじめ関係者の皆様に多大なご迷惑をお掛けすることとなり、改めまして深くお詫び申し上げます。
 現在、取得した計測データ等について詳細調査を実施しており、予断を持つことなく原因調査を進めております。また、実験場の損傷した施設設備については、2次被害を防ぐため危険な箇所の撤去作業を行っております。
 原因調査の状況につきましては、7月31日に開催される文部科学省 調査・安全小委員会にてご報告いたします。

 H3ロケット試験機1号機に関する原因究明につきましても、引き続き鋭意検証、調査を進めております。最新の調査状況につきましては、7月31日の調査・安全小員会にてご報告いたします。

 H3ロケット試験機2号機以降の当面の打上げに対応するLE-9タイプ1Aエンジンについて、最適な仕様を選定するためのデータ取得を行うための燃焼試験を、種子島宇宙センターにおいて6月1日と6月11日の2回実施しました。試験は計画通り終了し、現在、取得したデータの詳細評価を進めています。
 また、恒久対策仕様を適用するタイプ2エンジンについて、最適な仕様を選定するためのデータ取得を行うためのターボポンプ単体試験を、角田宇宙センターにおいて、7月13日、19日、25日の3回実施しました。試験は計画通り終了し、現在、取得したデータの詳細評価を進めています。

2.古川聡宇宙飛行士ISS長期滞在・クルードラゴン宇宙船 (Crew-7)打上げ

 7月27日のプレスリリースでもお伝えさせていただきましたとおり、古川宇宙飛行士が搭乗するクルードラゴン宇宙船(Crew-7)は、8月17日(木)19時56分(日本時間)の打上げを目標に準備を進めることを国際間で合意いたしました。
 今回2回目の飛行となる古川宇宙飛行士は、過去のフライトをはじめ、彼の豊富な実績と経験を活かし、他国のクルー達と協力し、Crew-7搭乗及びISS長期滞在ミッションを確実に遂行してくれるものと期待しております。

古川宇宙飛行士のISS滞在中のミッションについて、JAXAは、これまでに構築してきた「きぼう」日本実験棟の船内、船外の実験技術等を活用して、ライフサイエンス分野の新たな研究プラットフォーム構築の準備、Gateway運用開始を見据えた「次世代水再生技術実証」や国際宇宙探査へ貢献する「宇宙火災安全技術研究」などの技術実証や研究などを進め、「きぼう」の新たな価値創出に向けた多様な利用を推し進めていきます。
 また、人材育成でのSDGsへの貢献として、30の国・地域から1,685人が参加応募している「きぼう」ロボットプログラミングチャレンジや青少年向けの簡易宇宙実験を行うアジアントライゼロGなども行う予定であり、「きぼう」での国際貢献も進めてまいります。

 古川宇宙飛行士を含む日本人宇宙飛行士のISS長期滞在は日本と国際パートナーとの強い結びつきを象徴するものであり、その日本人宇宙飛行士の活動を通じて、有人宇宙開発及び国際宇宙探査において、今後も日本が更に貢献・活躍し、国際的な協力関係を構築していけるように、取り組んでいきたいと考えております。

3.衛星測位分野、地球観測分野の最近のトピックス

JAXAと国土地理院が国際GNSS事業に軌道情報を提供

6月30日にプレスリリースと国交省国土地理院主催の記者会見にてお伝えいたしましたが、JAXAと国土交通省国土地理院は、GPS衛星をはじめとする測位衛星の精密な軌道情報を算出する体制を構築しました。 この軌道情報の算出には、JAXAが開発し、長年改良を続けてきた「MADOCA」と呼ばれる国産の軌道解析ソフトウェアが使用されています。この取組が衛星測位に関する国際機関である「International GNSS Service(通称IGS)」に認められ、国内では初めて同事業に軌道情報を定常的に提供することとなりました。

 提供する軌道情報は、現在の衛星測位分野において最も精度が高いとされているIGSの軌道情報の算出に活用される予定です。これまで海外機関に依存していた我が国の位置の基準を、より自律的・安定的に維持・管理できることが見込まれるほか、測地・測位分野の研究活動の促進が期待されます。

 今後は、我が国の測位衛星である「みちびき」を含む精密暦の精度改善、公開環境の整備を行い、高精度測位時代における位置情報の基盤の整備・更新を着実に進めていきたいと考えております。

地球観測研究センター長のNASA Administrators Agency Honor Awards日本人初受賞

 第一宇宙技術部門・地球観測研究センターの沖 理子センター長に対しまして、NASA長官より「Exceptional Public Service Medal」が授与され、2023年7月11日に在日米国大使館において授賞式が行われました。

 「Exceptional Public Service Medal」は、NASAが実施するミッションに対して、優れた業績を収めた個人に贈られるものです。沖センター長は、日米の共同ミッションである「TRMM(熱帯降雨観測衛星)」の研究担当を務め、続く「GPM(全球降水観測)計画及び主衛星」を立ち上げ、またTRMM及びGPMの日本側のプログラムサイエンティストとして降水観測に関する研究に携わるなど、長年にわたり日米の衛星による降水観測協力を主導してきました。TRMM、GPM主衛星に搭載したJAXAの降水レーダは、雨の三次元構造を高精度で観測することができ、世界中の降水状況を準リアルタイムに推定する衛星全球降水マップGSMaPの実現につながりました。このGSMaPはアジア太平洋など世界各国で活用されています。今回、これらの業績が高く評価されて、栄誉ある賞を受ける初めての日本人となりました。個人の受賞ではあるものの、宇宙における日米協力のシンボルの一つが「地球科学である」とNASAトップレベルが示したものです。

 さらに、JAXAではNASAが計画している次世代の地球観測ミッションであるAOS(Atmosphere Observing System)への参加を前提とした降水レーダ衛星(PMM)が計画され、その開発を着実に進めるためにJAXAはプロジェクトを発足させました。沖センター長はPMM計画の立ち上げにも携わっています。JAXAとして今後も地球観測分野における日米協力を継続的かつ発展的に進めてまいります。

4.宇宙探査イノベーションハブ第10回研究提案募集(RFP)の選定結果

 宇宙探査イノベーションハブは、宇宙分野の枠にとらわれず、これまで宇宙分野と関連性のなかった事業分野や業種の皆様とも協働を進めており、さまざまな民間企業や大学も巻き込んだ共同研究によって、将来の月、火星等における探査技術の開発と、民間企業による地上や宇宙でのビジネス創出の双方に重点を置いた「Dual Utilization」をコンセプトとして、2015年から研究提案募集(RFP)を続けて参りました。今年度は、日本も参画しているアルテミス計画の動向などを見据え、宇宙探査イノベーションハブにおいても、宇宙飛行士の月面での活動を支援するための技術や、月面での科学探査を支えるための技術に重点的に取り組むほか、幅広い領域で技術開発を行っています。

 そのような中、第10回目の研究提案公募を今年3月から5月にかけて行い、12件を選定し、本日公表いたしました。今回は、将来の国際宇宙探査に資する技術として、重力天体離着陸用推進系(ロケットエンジン関連)、サンプルリターンのための要素技術など早期に実証が期待される技術の研究提案を選定しております。

 昨年度より年2回の頻度で研究提案の募集を予定しており、現在、今年2回目の第11回研究提案募集に向けて準備を進めております。引き続き、多くの方々の参画をお願いいたします。宇宙分野の枠にとらわれない民間企業や大学、機関等との共創体制の拡張を継続することで、国際宇宙探査だけではなく、日本の産業界への貢献に繋げてまいりたいと考えております。

5.最後に

 8月は、古川宇宙飛行士打上げのほかにも、X線分光撮像衛星(XRISM)と小型月着陸実証機(SLIM)の打上げが予定されています。XRISMおよびSLIMはそれぞれ、種子島において打ち上げに向けた準備作業を実施しております。プロジェクトメンバーはじめ関係者一同、引き続き気を引き締めて準備作業にあたってまいります。また衛星・探査機を搭載するH-IIAロケット47号機につきましても、三菱重工業株式会社をはじめ関係企業と連携をとりながら、JAXAでも射場安全監理業務の準備を進めているところです。8月26日の打上げにむけて着実に取り組んでまいりたいと思います。

PAGE TOP