2024年(令和6年)2月理事長定例記者会見

理事長定例記者会見

山川理事長の定例記者会見のトピックスをお伝えします

日時:2024年(令和6年)2月9日(金) 13:30-14:15

場所:JAXA東京事務所 B1F プレゼンテーションルーム

司会:広報部長 佐々木 薫

1. 令和6年能登半島地震への対応

 令和6年能登半島地震の発生から1か月が経ちました。犠牲になられたすべての方々に深く哀悼の意を表するとともに、被災された方、そのご家族および関係者の皆様に心よりお見舞い申し上げます。
 また、被災者の救済と被災地の復興支援のために尽力されている方々に深く敬意を表します。

 JAXAでは、国土交通省等の要請に基づき、陸域観測技術衛星2号「だいち2号」による観測を1月1日夜間と1月2日の昼間の2回実施し、被災地域のほぼ全域を観測しました。その後も、国土交通省および国土地理院の要請により1月3日から26日までの間、「だいち2号」の緊急観測を実施し、データを提供しました。
 観測したデータは、国土交通省による土砂災害の把握に利用されています。また、国土地理院では、観測データから確認された地殻変動や沿岸部の隆起などの解析結果について公表されております。さらに、1月5日からはJAXAのウェブサイト上で「だいち2号」の観測データの無償公開を開始し、その後1月15日までの複数の観測データを追加で公開しています。

「だいち2号」による観測データ

 JAXAでは、「だいち2号」のほかに、気候変動観測衛星「しきさい」でも被災地域を観測しております。被災地域で発生した火災が検出されており、検出結果は国土交通省国土技術政策総合研究所、国立研究開発法人建築研究所による現地調査に利用されました。衛星による観測結果と地上調査の比較によって、被災地の火災状況の全体像をより精緻に把握することが期待されます。

気候変動観測衛星「しきさい」(GCOM-C)の観測画像

 地震発生の翌日には、国際的な防災枠組みである「センチネルアジア」および「国際災害チャータ」に支援要請も行い、それぞれの枠組みに加盟する各国の地球観測衛星23衛星が撮像した観測画像などを提供いただきました。また、それらの解析結果から推定された被害情報を内閣府および国土交通省に提供しております。

 災害対策に対するJAXAの取り組みは、地球観測衛星データの提供等を通じて、災害の把握、復興および事後処理等に貢献することを目的としています。防災関係機関と人工衛星の防災活動への利用について日頃より緊密に対話・連携していたことにより、今回の災害発生時に「だいち2号」による緊急観測を実施することができ、観測データやそれにより得られた被害情報を提供することができたと考えております。今後は「だいち2号」だけでなく、打上げ予定の「だいち4号」を含めた観測体制の強化などにより、防災関係機関の活動をより効果的に支援してまいります。

 あらためまして、被災地の皆様の安全と、一日も早い復興をお祈り申し上げます。

2. 最近の取り組み、成果など

●XRISMファーストライト観測/SLIM月面着陸・月面活動

 昨年9月にH-IIAロケット47号機で打ち上げたX線分光撮像衛星(XRISM)小型月着陸実証機(SLIM)SLIMは、その後順調に運用を続けてきました。
 現在のXRISMは、初期機能確認運用期間が続いており、衛星全体および搭載されているミッション機器等の機能確認を実施しています。その間に、ミッション機器によるファーストライト画像を取得し、先月公開しました。現在もさまざまな天体の観測を続けており、引き続き科学的な成果が得られるよう、着実な運用を行ってまいります。初期機能確認が順調に進めば、今月中には定常運用段階への移行も検討してまいります。
 SLIMに関しては、プレスリリースなどでもお知らせしていますとおり、ピンポイント着陸することができました。また、SLIMの電力回復後、搭載していたマルチバンド分光カメラ(MBC)により10バンドの分光観測を行うことができました。さらに、小型プローブのLEV-1、LEV-2に関しても、月面での活動が行われたことを確認しました。
 SLIMと小型プローブの月面着陸・月面活動にあたっては、国内外の関係機関、三菱電機様、三菱重工様、明星電気様、IHIエアロスペース様、シャープ様、古河電池様、コイワイ様、タカラトミー様、ソニーグループ様、会津大学様、立命館大学様、東京農工大学様、中央大学様、同志社大学様をはじめとする企業や大学研究機関の皆様方、応援してくださった多くの国民の皆様、メディアの皆様に改めて感謝をお伝えしたいと思います。ありがとうございました。

小型月着陸実証機(SLIM)/小型プローブ(LEV1・LEV2)主な参加企業・大学研究機関など

●雲エアロゾル放射ミッション「EarthCARE」衛星の機体公開(ドイツ)

 日本と欧州宇宙機関(ESA)が共同開発している雲エアロゾル放射ミッション「EarthCARE」衛星の報道機関向け機体公開が、今月2月1日、ドイツのエアバス社の衛星工場にて、開催されました。
 EarthCARE衛星には、JAXAが情報通信研究機構(NICT)と共に開発した、雲の内部構造を高感度で観測するとともに、世界で初めて人工衛星から雲の上下方向の速度を計測する雲プロファイリングレーダ(CPR)が搭載されています。機体公開当日は、欧州を中心に日本を含む多くのメディアの方にご参加いただき、EarthCAREミッションの意義・成果等についてお示しできたと考えています。EarthCARE衛星は、このあと打上げのある米国カルフォルニア州のヴァンデンバーグ基地へと輸送され、今年の5月、Space X社のファルコン9ロケットで、いよいよ打上げ予定です。

●古川宇宙飛行士の軌道上活動状況

 続いて古川宇宙飛行士の軌道上活動状況についてお伝えします。
 古川宇宙飛行士は、昨年8月末から国際宇宙ステーション長期滞在をスタートし、約5か月が経過しました。これまでに、将来の国際宇宙探査を見据えた船内ドローンロボット「JEM船内可搬型ビデオカメラシステム実証2号機(Int-Ball2)」の実証や、大学生や高校生が開発した超小型衛星2機の「きぼう」日本実験棟からの放出を地上運用チームと協力して行うなど、さまざまなタスクを着実に遂行してきました。また、小学生から社会人までの多様な層との軌道上交信イベントも多く実施し、イベントを通じてさまざまなバックグラウンドの方々に対し「きぼう」での利用・運用の意義価値の発信にも努めてまいりました。
 古川宇宙飛行士の地球帰還日に関しましては、2月中旬に予定されているCrew-8の打ち上げ後に、国際調整を踏まえ決定される予定です。

3. 商業デブリ除去実証CRD2フェーズIミッション

 宇宙空間の持続的な利用のためには、軌道上の宇宙ゴミ(スペースデブリ)問題への対策が必須となります。
 JAXAは、宇宙空間の持続的利用と、我が国の国際競争力確保を目的として、大型デブリの除去を目指す商業デブリ除去実証CRD2のフェーズIミッションを、民間事業者の活力を利用したパートナーシップ型の取り組みとして実施してまいりました。この取り組みは、民間事業者の事業化、国際競争力の向上に貢献するための試みで、民間事業者が独自に立案する事業戦略に基づいた宇宙機開発・技術実証に対して、JAXAが技術的な支援や連携を行うものとなります。
 具体的には、JAXAは今回のフェーズIに関しまして、ランデブ技術に関する知見の提供と、ランデブに関する試験設備や試験ノウハウの提供などを通じた技術支援を行っております。

 そしてこの度、商業デブリ除去実証CRD2のフェーズIミッションを行う、株式会社アストロスケールより商業デブリ除去実証衛星「ADRAS-J」が、2月18日(日本時間)にRocketLab社のElectronロケットにより打ち上げられるとの発表がありました。なお打上げは、ニュージーランドのマヒア半島にあるRocketLab社の打上げ射場にて行われる予定です。

 CRD2における技術実証は段階的に進める計画であり、今回のフェーズIでは、大型デブリへの接近、近傍制御を行い、世界的にも情報の少ない軌道上に長期間放置されたデブリの運動や損傷・劣化がわかる映像を取得します。これらデブリ除去に必要なキー技術を実証したあと、得られた技術、知見等を踏まえて、次のCRD2フェーズIIミッションにおいて、大型デブリ除去の軌道上実証にチャレンジする計画です。

 まずはCRD2フェーズIミッションの達成に向け、JAXAも引き続き、共に取り組んでまいります。

4. H3ロケット試験機2号機打上げ準備状況

H3ロケット試験機2号機は、2月15日の打上げに向けて、現在種子島宇宙センターにて射場整備作業が進められています。これまでに各種点検整備作業の他、ロケット性能確認用ペイロード(VEP-4)および小型副衛星のフェアリングへの格納、ロケットへの衛星フェアリング結合作業が完了しています。今後、最終機能点検やリハーサルなどを経て2月15日の打上げに臨みます。
 引き続き、H3ロケット試験機2号機の確実な打上げに向けて準備を進めてまいります。

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