理事長定例記者会見
山川理事長の定例記者会見のトピックスをお伝えします
日時:2025年(令和7年)11月14日(金) 13:30-14:15
場所:JAXA東京事務所 B1F プレゼンテーションルーム
司会:広報部長 佐々木 薫
1. 最近のプロジェクト、事業等の取り組み
● 大阪・関西万博の閉幕
今年4月から約半年にわたり開催された大阪・関西万博が、10月13日に閉幕いたしました。JAXAでは、「月に立つ。その先へ、」と題した常設展示をはじめ、日本館における小惑星イトカワ、リュウグウの試料やSLIM着陸脚試験品等の展示協力、空飛ぶクルマとドローンの運航状況把握に必要な運行管理システムの提供など多くの協力を実施いたしました。常設展示には、国内外問わず、大変沢山の方々にご来場をいただき、特に没入感のある『超高精細大型LEDカーブビジョン』による映像、体験型コンテンツなどを通じて、宇宙探査を中心に日本の宇宙航空の現状と将来像に触れていただける機会となったと考えております。また期間中には、多くのJAXA職員が説明員として携わり、来場者の方々とのコミュニケーションを通じ、様々なご意見に触れることができた貴重な機会ともなりました。
なお、このLEDカーブビジョン映像は、11月より筑波宇宙センター展示館「スペースドーム」内に移設しまして、通常見学としてご覧いただけます。
● 「いぶきGW」(GOSAT-GW)定常運用段階移行
今年6月29日に打ち上げました「いぶきGW」は、初期機能確認運用を終了し、10月9日に、定常運用段階へと移行いたしました。定常運用段階では、まずセンサの精度確認やデータ補正等を行う初期校正検証運用を実施いたします。そして打上げから約1年後を目安に、定常的な観測運用に移行し、観測データの提供開始を目指しております。引き続き、プライムメーカの三菱電機株式会社様や、衛星運用に携わる企業、機関の皆様とともに連携して、着実な運用に取り組んでまいります。
● H3ロケット7号機・HTV-X1打上げ~HTV-X1のISS把持・結合完了
10月26日には、H3ロケット7号機による『新型宇宙ステーション補給機1号機(HTV-X1号機)』の打上げ、また『HTV-X1号機』は、10月30日に国際宇宙ステーション(ISS)に到着、結合まで無事に実施いたしました。油井宇宙飛行士の活動状況の項目でも、その後の状況などについて触れたいと思います。
● 今後打上げを予定しているミッション
12月7日には、H3ロケット8号機による準天頂衛星システム「みちびき5号機」の打上げがございます。
年内には、「革新的衛星技術実証プログラム」の4号機となる「革新的衛星技術実証4号機」のうち、「小型実証衛星4号機(RAISE-4)」の打上げも計画しています。RAISE-4には、企業等の皆様からご提案いただいた8つの実証テーマ機器が搭載されており、ロケット・ラボ社のロケット「エレクトロン」にて、ニュージーランドから打ち上げられます。
いずれも、関係企業の皆様と一丸となり、打上に向けた準備作業を一つひとつ確実に進めてまいります。
● 宇宙戦略基金(第二期公募)
宇宙戦略基金の第二期24テーマについて、5月から順次公募を開始し、11月6日をもってすべての公募を終了いたしました。たくさんのご応募をいただき、誠に有難うございました。順次、審査を進めておりますが、10月10日に2つの技術開発テーマについて、また11月7日には1つの技術開発テーマそれぞれの実施機関の決定をいたしました。
残るテーマについても審査を進めており、今年度内を目途に、順次、実施機関を決定していくとともに、引き続き、産学官の結節点としての役割を果たすべく、着実な運営を進めてまいります。
2. 油井宇宙飛行士のISS長期滞在活動状況
『HTV-X1号機』は、10月30日、ISS長期滞在中の油井宇宙飛行士が操作するロボットアームによって把持され、ISSに結合いたしました。
なお、搭載していた実験機器や生活用品などの物資は、クルーによって順次運び出されています。
『HTV-X』の役割の一つである「ISSへの物資輸送」の成功は、油井宇宙飛行士はもちろんのこと、地上のHTV-X運用管制員や関係者による周到な準備と、準備に基づいた着実な運用の結果であり、日本の高い技術力を示すことができたと自負しています。
そして、今回の『HTV-X1号機』には、将来の有人宇宙探査を見据えた二酸化炭素除去技術の実証装置「DRCS」が搭載されており、今後、「きぼう」日本実験棟に設置される予定です。本装置は、将来の月面・火星探査などで、宇宙飛行士が長期滞在するための生命維持システムとして不可欠な技術であり、実証成果が将来の探査活動に向けた重要な一歩となります。
ISSは、11月2日で、宇宙飛行士の滞在開始から25年の節目を迎えました。
日本は、「きぼう」日本実験棟を通じて、これまで多くの科学実験を行い、数々の成果を積み重ねてまいりました。2008年に「きぼう」で初めて実施された「マランゴニ対流実験」に使用された流体物理実験装置が、先日、油井宇宙飛行士によって取り外され、そのスペースには、先ほど申し上げたDRCSが設置される予定です。
このように、「きぼう」を利用した実験も世代交代を迎えています。今後も、「きぼう」の環境を最大限に活用した、科学的・技術的利用を推進してまいります。
3. 地球観測プログラム戦略室の設置および重点テーマの設定
第一宇宙技術部門の『地球観測研究センター(EORC)』は、1995年に設立され、衛星データの解析と利用に係る取り組みを本格的に開始してから、今年で30年が経過いたしました。
地球観測衛星の特徴である、「広域性」、「継続性」、「即時性」を活かし、衛星データは、「気候変動」、「防災」、「農林水産」、「インフラ監視」、「国土保全」などの分野で日常的に活用され、社会課題の解決に不可欠なものになりつつあります。
現状の地球観測分野においては、スタートアップ企業等の参入増加やニーズの多様化、産学官の連携および戦略的なミッションの創出が求められるなど、環境が大きく変化しています。その中、2022年には衛星地球観測コンソーシアム(CONSEO)が発足し、産学官が結集して活発な議論が進められていると認識しております。
これらを踏まえ、今年度からスタートした『第5期中長期計画』では、
■産学官連携により、獲得を狙う便益(リターン)を明確化すること、
■新たな衛星開発やソリューション開発も含め、JAXAが取り組むべき先進的な研究開発や国際連携等の活動を同定し、戦略的に推進すること
を盛り込み、方針を明確にしました。
特に「便益(リターン)の明確化と実現」に向けては、4つの「重点テーマ」として具体的に方向性を定めて取り組んでいきます。
重点テーマは以下の4つとなります。 ■自然資本の把握とクレジット創出 ■海洋状況把握 ■水災害・水資源管理 ■インフラ管理・防災DX
これらの取り組みを加速し、戦略的にけん引していくため、9月には『地球観測プログラム戦略室』を設置しました。今後は、当戦略室を中心に、衛星地球観測による多様な価値を創出、新たな衛星開発利用が拡大する好循環の実現を目指すとともに、宇宙基本計画の地球観測分野に示されている、「国土強靭化」、「地球規模課題への対応」、「イノベーションの実現」、そして「宇宙安全保障の強化」に貢献してまいります。
4. ドローンを活用した大規模イベント警備における航空機の運航安全システム(DOERシステム)の有効性を実証
JAXAでは、「D-NET」と呼んでいる既存の『災害救援航空機情報共有ネットワーク』の研究開発、またそれを発展させた、有人の航空機と、ドローン等の無人機との連携を可能とするシステムの研究開発に継続的に取り組んでいます。
「D-NET」は、これまでも災害発生時や、総務省消防庁・自治体等の消防防災ヘリコプター、ドクターヘリの運航管理の場で活用されております。そしてさらに、より広い分野での利用を見据え、警備・警戒機能の開発にも取り組んできました。2019年の大阪G20、2021年の東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会でも活用され、期間中の安全な警備活動に貢献いたしました。
一方で、大規模イベントの警備等では、有人機と無人機の双方が活用される機会が増えており、それぞれが異なるシステムで管理されているため、双方を一元的にリアルタイムで監視することや、突発的な事象に対応することが難しいなどの課題への対応も急務となっています。
この課題、つまり有人機と無人機を、安全かつ統合的に管理運用することを目指し、『災害・緊急時等に活用可能な運航安全管理システム(DOERシステム)』の研究開発を、JAXAが中心となって進めています。
先月10月2日から10日にかけて、大阪・関西万博の機会を活用し、『DOERシステム』の有効性実証実験を行いました。
11月7日にプレスリリースいたしましたとおり、今回の実証は、株式会社ウェザーニューズ様、株式会社NTTデータ様、テラドローン株式会社様と共同で実施しています。
万博会場近くに模擬的な運航調整所を設置し、「飛行前日の調整」、「飛行当日の運航監視」、「飛行当日に発生した緊急任務を有人機・無人機に割り当てる任務割当」等について、運用手順や発生事象シナリオに基づいた対応等のシミュレーションを行い、システム自体や運航者間の情報共有、連携などの運用性に関するデータ蓄積、評価分析を実施しました。
実証実験後には、ユーザーとなる省庁や自治体から、「社会実装をめざすために必要な機能・性能を満たしている」との評価も得られました。
JAXAでは、来年度に予定している『DOERシステム』の災害対応実証実験に向け、今回の実証で得られた知見をもとに、さらなる機能改良を進めていきます。その後さらに、遠隔地における災害・警備への適用拡大をめざし、研究開発を進めてまいります。







