輸送システムの研究開発と運用 H3ロケット

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H3ロケットとは

H3ロケット

H3ロケットは日本の新しい基幹ロケットです。「柔軟性」、「高信頼性」、「低価格」により徹底したユーザ視点で開発することで「使いやすいロケット」を目指します。JAXAは日本の企業と共に総力を結集して、開発に取り組んでいます。

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2024年4月1日 更新

試験機2号機打上げ、そしてその先へ

管制室に掲げられた「平常心」の暖簾

種子島宇宙センターから打上げられたH3ロケット試験機2号機

種子島宇宙センターから打上げられたH3ロケット試験機2号機

2024年2月17日、H3ロケット試験機2号機を打上げました。全て計画どおりに飛行しましたので、H3ロケットが宇宙に行けるシステムであることを実証することができ、また、託された2基の小型副衛星を無事に軌道に届けることができ、心の底から安堵しました。
試験機2号機で得られた飛行データからは、これまでのところ次の打上げに影響するような課題は見出されていませんが、待ちに待った貴重な飛行データですので、H3ロケットを更に洗練させるために引き続き詳細な分析を続けます。

ここで、少し、打上げ当日の様子をお伝えしたいと思います。
打上げの十数時間前、大型ロケット組立棟で準備が整ったロケットを、発射台ごと射点に移動させます。この時はH3ロケットに関わってきたエンジニアやオペレータ達が一緒に歩いて見送るのですが、試験機1号機失敗の原因究明・対策を徹底して臨んだ今回の打上げでは、誰の表情も清々しく、「やり切ったぞ」という気持ちが溢れていたことがとても印象的でした。おそらく私も同様だったと思います。
射点に到着した後は、数時間かけて燃料を充填します。また、これと並行してロケット機体や設備などを組み合わせた状態で最終的なチェックを行います。これらの作業スケジュールには、打上げ時刻を守るため、トラブル対処などに備えた予備時間を設けてあります。この予備時間は、作業が順調ですと待ち時間になります。
今回はかなり順調だったため、この待ち時間に色々なことを考えてしまいました。考えれば考えるほど緊張が高まります。そこで、今回の打上げライブ中継で最後に流れたエンドロール(打上げ以降のシーンはもちろん入っていません)を何度も観て、成功をイメージしました。まるで、試合前のモチベーションアップ動画のようでした。(余談ですが、このエンドロールは、プロジェクトチームと連携するJAXA広報スタッフによる丹精を込めた手作りです。)
そして、打上げ10分前の最終カウントダウン。ふと手元のスマートウォッチを見ると心拍数は130/分を超えていました。この時は、1994年のH-IIロケットの打上げから30年間、管制室で打上げを見守ってくれている「平常心」の暖簾(のれん)が気持ちを落ち着かせてくれました。
最終的にロケットが目標の軌道に到達し衛星を分離した時には、特に開発が難局にあったこの3年の間ずっと挑み続けていた山頂までの急峻な道のりを遂に登り切ったのだ、という気持ちが一気に溢れてきました。

試験機2号機が成功したことで、この10年ほど取り組んできた開発に一区切りつきました。しかし、プロジェクトはさらに前進を続けます。LE-9エンジンを最終的に目指す姿まで仕上げ、また固体ロケットブースタのないH3-30形態の打上げを行うことを含め、10年前に思い描いたH3ロケットを実現し、日本の宇宙計画を支え世界中の方から使っていただけるよう磨きをかけます。
これに取り組むにあたり、H3プロジェクトチームも新たな体制で臨むことになりました。新しいプロジェクトマネージャは、これまで私と二人三脚で開発を進めてきて、かつチームメンバが全幅の信頼を寄せている有田誠サブマネージャです。挑戦を続けるH3ロケットとプロジェクトチームに、ぜひご期待ください。

H3ロケット試験機2号機およびこれまでの開発を見守っていただき、本当にありがとうございました。そして、これからもよろしくお願いします。

2024年3月31日
岡田 匡史

H3ロケット主要諸元

試験実施と結果について

国産ロケットの系譜

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