H3ロケット トピックス

トピックス一覧

2024年4月1日更新
試験機2号機打上げ、そしてその先へ

管制室に掲げられた「平常心」の暖簾

種子島宇宙センターから打上げられたH3ロケット試験機2号機

種子島宇宙センターから打上げられたH3ロケット試験機2号機

2024年2月17日、H3ロケット試験機2号機を打上げました。全て計画どおりに飛行しましたので、H3ロケットが宇宙に行けるシステムであることを実証することができ、また、託された2基の小型副衛星を無事に軌道に届けることができ、心の底から安堵しました。
試験機2号機で得られた飛行データからは、これまでのところ次の打上げに影響するような課題は見出されていませんが、待ちに待った貴重な飛行データですので、H3ロケットを更に洗練させるために引き続き詳細な分析を続けます。

ここで、少し、打上げ当日の様子をお伝えしたいと思います。
打上げの十数時間前、大型ロケット組立棟で準備が整ったロケットを、発射台ごと射点に移動させます。この時はH3ロケットに関わってきたエンジニアやオペレータ達が一緒に歩いて見送るのですが、試験機1号機失敗の原因究明・対策を徹底して臨んだ今回の打上げでは、誰の表情も清々しく、「やり切ったぞ」という気持ちが溢れていたことがとても印象的でした。おそらく私も同様だったと思います。
射点に到着した後は、数時間かけて燃料を充填します。また、これと並行してロケット機体や設備などを組み合わせた状態で最終的なチェックを行います。これらの作業スケジュールには、打上げ時刻を守るため、トラブル対処などに備えた予備時間を設けてあります。この予備時間は、作業が順調ですと待ち時間になります。
今回はかなり順調だったため、この待ち時間に色々なことを考えてしまいました。考えれば考えるほど緊張が高まります。そこで、今回の打上げライブ中継で最後に流れたエンドロール(打上げ以降のシーンはもちろん入っていません)を何度も観て、成功をイメージしました。まるで、試合前のモチベーションアップ動画のようでした。(余談ですが、このエンドロールは、プロジェクトチームと連携するJAXA広報スタッフによる丹精を込めた手作りです。)
そして、打上げ10分前の最終カウントダウン。ふと手元のスマートウォッチを見ると心拍数は130/分を超えていました。この時は、1994年のH-IIロケットの打上げから30年間、管制室で打上げを見守ってくれている「平常心」の暖簾(のれん)が気持ちを落ち着かせてくれました。
最終的にロケットが目標の軌道に到達し衛星を分離した時には、特に開発が難局にあったこの3年の間ずっと挑み続けていた山頂までの急峻な道のりを遂に登り切ったのだ、という気持ちが一気に溢れてきました。

試験機2号機が成功したことで、この10年ほど取り組んできた開発に一区切りつきました。しかし、プロジェクトはさらに前進を続けます。LE-9エンジンを最終的に目指す姿まで仕上げ、また固体ロケットブースタのないH3-30形態の打上げを行うことを含め、10年前に思い描いたH3ロケットを実現し、日本の宇宙計画を支え世界中の方から使っていただけるよう磨きをかけます。
これに取り組むにあたり、H3プロジェクトチームも新たな体制で臨むことになりました。新しいプロジェクトマネージャは、これまで私と二人三脚で開発を進めてきて、かつチームメンバが全幅の信頼を寄せている有田誠サブマネージャです。挑戦を続けるH3ロケットとプロジェクトチームに、ぜひご期待ください。

H3ロケット試験機2号機およびこれまでの開発を見守っていただき、本当にありがとうございました。そして、これからもよろしくお願いします。

2024年3月31日
岡田 匡史

2024年2月1日更新
再挑戦。

種子島宇宙センターから朝日を望む(1月26日)

 2024年1月半ば、種子島に向かう飛行機の機内でこの文章を書き始めています。

 約1年前の2023年3月7日。
 「SELI(第2段エンジン推力立ち上がり)が来ない...。」打上げ失敗を目の当たりにしたこの時ほど、自分の無力さを感じたことはありません。H3ロケットで日本の宇宙輸送を変えて宇宙利用を支え、より豊かで幸せな社会を築きたい、宇宙を切り拓きたい。その思いをカタチにすることに専念してきた10年。万全を期して臨んだ試験機1号機の打上げは失敗に終わり、搭載していた大切な衛星「だいち3号」をも失ってしまいました。いくら念じても過去は変えられないどころか、朝起きると現実が日増しに厳しく感じられるようになりました。

 打上げ失敗の当日から10月まで、原因究明には約7か月を費やしました。

 原因究明は、数多くある可能性の中から、網をかけるようにして真の原因に絞り込んでゆく作業です。「もしかしたら、絞り込んだ候補の他に本当の原因があるのではないか?」という不安に襲われることもありました。この不安を打ち消すためにも、様々な再現実験やシミュレーションを繰り返し、時には網をかけ直し、結論に確信が持てるまで徹底的に検討を続けました。

 出口がなかなか見えない時期が4か月ほど続き、暗闇の中で時間だけがどんどん流れてゆく感覚もありました。その間、私の気持ちを支えてくれていたのは、ひたすら技術に向き合い原因究明を続けるJAXAとメーカの仲間の姿でした。
 約20年間成功が続いていたため大半のメンバには失敗経験がなく、失敗に直面したショックもかなり大きい様子でした。ですが、エンジニア達の心は折れなかった。「自分たちが立ち止まってしまっては、日本の宇宙の未来は閉ざされてしまう。」そのような思いがH3ロケットの開発に関わってきたどのメンバにもあったのだと思います。また、H3プロジェクトの外からも、例えばJAXAやメーカの研究者、かつてのロケットエンジニアの方々などから多くの知見をいただき、技術面だけではなく精神面からも支えられました。

 そして、8月。
 「3つのシナリオ以外には失敗原因はあり得ない」という結論に至った時、未来への光がようやく見えた気がしました。
 3つのシナリオのうち2つはH-IIロケットから長年使い続けた機器に関するものであり、残り1つはH3で新たに開発した機器に関するものでした。前者については「枯れた技術を使い続けることの難しさ」、後者については「大規模で複雑なシステムを構築する際に、あらゆることを想定して設計することの難しさ」を痛感しました。10月にはこの失敗原因シナリオ全てに対策を講じる道筋が見え、試験機2号機に向けて前進することになりました。
 打上げの失敗は決して許されるものではないのですが、この試験機1号機の経験を通じてエンジニアは本当に強くなったと思います。

 現在、私は種子島宇宙センターにいます。

 原因究明を終えた直後の10月末から、種子島では、3つの失敗原因への対策実施を含めた試験機2号機の打上げ準備作業を進めています。ひとつひとつの作業はどれも大切で、それらを丁寧に積み上げて、「できることは全てやり尽くした」と納得してロケットを打上げができる状態に整えてゆきます。ロケットの先端には、”RTF”の文字を入れました。Return to Flight(飛行再開フライト)という意味なのですが、H3にとっては試験機の再挑戦なのでRetry of Test Flightと読み替えてもよいかも知れません。

 たくさんの方からいただいたメッセージをRTFの文字の中に刻み、私達は、磨きのかかったH3ロケットと強くなったロケットエンジニアで、再び試験飛行に臨みます。

 H3ロケットで日本の宇宙輸送を変えて、宇宙利用を支えたい。その思いは10年前も今も変わりません。

2024年2月1日
岡田 匡史

2022年12月27日更新
1段実機型タンクステージ燃焼試験(CFT)を終えて

射点に立つ CFT後のTF1機体

CFT LE-9エンジン燃焼中の様子

開発の最終段階と位置付けてきた、1段実機型タンクステージ燃焼試験(試験機1号機の機体を射点に運び、LE-9エンジン2基を作動させる試験)、通称CFTを完了し、H3ロケット試験機1号機の打上げ日を2023年2月12日とすることが発表されました。いよいよ、本当のラストスパートのときを迎え、その準備作業に入っています。 今日はその前に、CFTの様子を振り返りたいと思います。

私はCFT開始予定日のちょうど1か月前の10月6日に種子島宇宙センターに入りました。

燃焼中のエンジンを初め機体の各部からたくさんのデータを得るため、機体からはフライト時には無いたくさんの計測配線が出ていて、光ケーブルを通して3km離れた発射管制棟(LCC)に繋がれ、大幅に増えたデータを取得、監視します。
また、燃焼試験のために設定する条件(例えば、着火できる状態までエンジンを極低温に冷やし込む温度や、異常が発生した時に安全装置を働かせる圧力などの値)も膨大な量になり、その設定を間違えていると、エンジンの着火に至れなかったり、正常な燃焼を途中で止めてしまったりすることになりかねません。若手を中心とした技術者たちが、それぞれの専門分野の全ての項目を丹念にチェックし、全体の会議での議論も積み重ね、条件設定表を練り上げました。

他にもこの紙面では語り尽くせないほどの入念な準備を行って、いよいよ11月6日、試験の当日を迎えました。極低温点検では天候の急変に遭遇しましたが、今回は3日間にわたる試験の期間中、幸いにも安定した好天が予想されています。

まだ日の高い14:30に作業開始を判断。18:35には移動発射台に乗った機体の移動を開始、34分後に射点に設置。その後、射点周辺約2kmからの総員退避を完了し、日付の変わった7日の0:30から液体酸素と液体水素の機体への充填をほぼ予定通り開始しました。そして、機体のタンクに推進薬が入り始めた午前3時頃、思いもよらない知らせが入りました。移動発射台の中にある特別計測のための装置が適切に設定されていない可能性があることが分かったのです。

このまま試験を実施してもCFTの意義が損なわれる恐れがあり、装置を確認しに射点に行きたいのですが、安全を確保するためには充填した推進薬を一旦抜かなければなりません。そのためには数時間を要し、予備時間の中で燃焼試験を完遂できなくなる恐れが高まります。悩みに悩み、様々な可能性を検討した結果、一旦排液することが6:33に決まりました。
排液を完了し、安全を確保した9:42には隊員が射点に向かい、計測装置が正常な状態になったことを確認して、11:00から推進薬の充填を再開しました。エンジン点火の予定時刻は9時間遅れとなることを余儀なくされましたが、復旧に尽力してくれたクルーに感謝しています。

その後、作業はほぼ順調に進み、14:20から機能点検のデータレビューを行い、燃焼試験への移行に問題ないことを確認しました。そして、最終カウントダウンは中断することなく16:30に2基のLE-9エンジンに点火、25秒間の燃焼を無事に終えました。カウントアップの声に同期して小気味良く駆動するエンジンのジンバリング(首振り)が印象的でした。実際より長く感じた燃焼が終わった直後、LCC内は大きな拍手に包まれました。私も少し目頭が熱くなりました。

極低温点検のときもそうでしたが、この1号機機体、本番前はぐずるのですが、いざ本番となると一発で決めるという星の下に生まれているようです。一方、入念な準備を行ってきたつもりでいましたが、結果として大幅な時間遅れを招いたことは次に活かすべき私達の大きな反省点です。約9年にわたる開発の成果を凝縮したこの機体と設備の真価を打上げでも発揮させるとともに、今回のCFTの結果を踏まえた改善を着実に行い、JAXA及びMHIを初めとする各社のメンバーの心をひとつにして本番に臨みたいと思っています。

H3ロケット試験機1号機打上管制隊 ロケット主任
H3プロジェクトチーム サブマネージャ  有田 誠

2022年10月19日更新
開発の最終段階に臨むにあたって

領収燃焼試験(私たちはAT:Acceptance Testと呼んでいます)は、実際の打上げに使うエンジンが全て期待どおりに動作することを確認し、ロケットへ搭載できるかどうかを最終判断するための燃焼試験です。
H3ロケット試験機1号機ではLE-9エンジンを2基搭載しますが、このうち2基目のエンジンについて10月3日にATを行いました。そして得られたデータを評価した結果、「ロケットへ搭載可」と判断しました。

長かった。

このLE-9エンジンは、2020年5月末、開発の総仕上げとして臨んだ認定燃焼試験で2つの課題が生じました。ひとつはエンジンの推進力を発生させる燃焼室の課題、もうひとつは燃焼室に燃料を送り込むターボポンプの課題でした。私たちの目の前に技術の壁が大きく立ちはだかりました。
以来2年半。エンジンの中で起きている複雑な物理現象について「それがなぜ起きているのか、どう改良したら抑えられるのか?」燃焼試験を繰り返しながら理解を深め、少しずつ前に進みました。この間に行った試験は、約30回、合計試験時間は4,000秒を超えました。
改良した成果が十分得られず、時には後戻りや回り道をすることもありました。その時に思い浮かべたのは、試験機1号機とその先のH3ロケットで搭載予定の衛星ミッション関係の皆様、H3プロジェクトに直接的・間接的に関わっていただいている皆様、そしてこれまでH3開発を見守り応援してきてくださった多くの皆様のことです。

「これ以上、打上げ計画を見直すわけにはいかない」と焦りました。

一方で、技術は、厳格で正直で、曖昧なことは許されません。一点の曇りもなくH3ロケットを打ち上げるべし、という考えが私たちロケットエンジニアの根底にあります。 このようにふたつの相反する思いがいつもありました。先ほど「長かった」とお伝えしましたが、これは振り返ればであって、持ち時間は、常に、本当に短かったです。

H3プロジェクトには、JAXAと企業の皆さんを含めとても多くの人が関わっています。 LE-9エンジンの担当エンジニアは、先ほどのとおり、時に心が折れそうになりながらも必死になって壁を乗り越えてきました。エンジニアは困難があると本能的に奮い立ち対峙するのですが、その度をはるかに越えていたと思います。他方、LE-9エンジン以外の試験機1号機の機体はほぼ完成し、待機状態となっていました。
LE-9エンジン担当にとっても、その他の担当にとっても、モチベーションを維持するのがなかなか難しいこのような状況の中で、あるチームメンバの呟きが心に刺さりました。それは「開発を始めた頃はサッカーやラグビーのようなチームプレーをしていたが、いつの間にかマラソンやトライアスロンのように独りで戦っているように感じる時がある」という言葉でした。このままではまずい。

しかし、それぞれの役割が異なり今はやむなく個人競技になっていたとしても、私たちはひとつのゴールを目指すチームです。そして、プロジェクトを成功させるためにはチームワークが不可欠です。開発の最終段階に臨むにあたって、このチームワークを揺るぎないものにしていかなければならない、と気を持ち直して今に至ります。さらに言えば、「プロジェクトは独りにして成らず」です。プロジェクトチームを越え、JAXA内外の多くの方々と共にひとつのゴールを目指したいと思っています。

これから私たちはあらためて態勢を整え、種子島宇宙センターのロケット発射台に試験機1号機を据えつけた状態でLE-9エンジンを燃焼させる大規模な試験、開発の最終段階としてのチームプレーに臨みます。

引き続き、どうか厳しくそして温かい目でH3を見守っていただければ幸いです。

H3プロジェクトチーム 岡田匡史

試験機1号機の第1段に取付けられた2基のLE-9エンジン

試験機1号機の第1段に取付けられた2基のLE-9エンジン

2021年3月22日更新
極低温点検(F-0)を終えて

H3ロケット

ファーン・ファーン、また管制室内にアラームの音が響き渡る。今度は液体酸素の予冷が進まずにロケットへの燃料充填を行っている制御システムが止まったようだ。ロケットに燃料を充填する際は、徐々に注入し配管を少しずつ冷やしていく必要がある。燃料充填が止まったのは何度目だろうか。技術者達がデータの確認に走る、素早くホワイトボードに要点をまとめて、充填方法の見直しを指示した。計画ではロケットに燃料が満タンになっている時刻なのに、まだ1滴も入っていない。初めての機体に極低温の燃料を入れるのは難しいと覚悟していたが、ここまで苦戦するとは思っていなかった。このまま試験を進めることができるのか、焦りを感じていた。再試験となっては開発スケジュール、コスト共にプロジェクトに与える影響は甚大だ。

その後も、何度か手順の修正を経てなんとか燃料の充填を完了させ、ロケットの機能確認を進めることができた。次はメインイベントである打上げ240秒前からの自動カウントダウンシーケンスだ。打上げに向けて燃料タンクの加圧、電源の外部から内部電池への切り替え、打上げによる噴煙から設備を守る注水の開始等を事前に設定した順番、時刻に自動で行い、ロケットと地上設備の最終準備をする大切な作業だ。初めての機体と初めての設備の組み合わせではここにも難しさがある。

“240、239、238”カウントダウン音声が管制室内に流れる、現場の緊張感も増し全員無言になった。“10、9、8、7、緊急停止”今回はメインエンジン点火である7秒前に緊急停止をかけるのが正規の手順だ。奇跡的に初めてのシーケンスを一発で全て流しきることができた。事前の確認を入念に行ったことが功を奏したようだ。これについては満点だ。計画通りにデータを取得することができたため、カウントダウンの検証としての再実施は不要と判断して2回目のカウントダウン作業はスキップし、発雷の予報も出ている限られた残り時間の中で推進薬充填時にしか確認できない他の検証試験へと進んだ。

組立棟を出発する直前の機体

組立棟を出発する直前の機体

試験後の機体返送

試験後の機体返送

全ての試験を終えた機体が36時間ぶりに大型ロケット組立棟(VAB)に戻ってきた。試験を終えた機体はいつもより頼もしく見える。試験で壊れた個所も見た限りなさそうだ。我々エンジニアも試験を通じて少し成長できたのではないだろうか。

JAXAロケット班長 S.M.

2021年2月26日更新
VOS(Vehicle On Stand)作業を振り返って

H3ロケット

工場出荷から11日目の2021年2月6日、ついにH3ロケット試験機1号機が移動発射台(ML5)に据え付けられました。大型ロケット組立棟(VAB:Vehicle Assembly Building)内にそびえ立つ機体は雄々しくも愛着の持てる存在です。そんな機体に見入りながら、VOS(Vehicle On Stand)作業を振り返ってみます。

島間港に到着した1段機体

島間港に到着した1段機体

種子島の港に到着した巨大なコンテナを目の当たりにすると「いよいよ射場作業が始まる!」という興奮と共に、不安がよぎります。新しいことだらけのVOS作業。設計通りにうまくいくだろうか。出鼻をくじくように発生した島内輸送中の立ち往生事象や、VAB搬入口をギリギリでかわして入棟するコンテナが、そんな私の不安を増大させました。
しかし、不安に思っていても仕方がない、あとは現場で何とかするしかない。そういう境地に至るべきということは、経験豊富な先輩たちや現場作業員の方々の凛々しい目が語っていました。各自が今できることに集中して自分の頭で考え、かつ関係者が柔軟に連携することでVOS作業を無事に終えられると信じ、意を決して作業に臨みました。

1段VOS作業

1段VOS作業

新しいことだらけのH3ロケットのVOS作業では、新しいのは機体だけでなく、機体を組み立てるために必要な装置・設備もまたしかりです。しかも機体サイズはこれまでで最大のH-IIBロケットより更に大きくなっているのに対し、VOS作業を行うVABは大きさ変更の改修をしていません。そのため、これまで以上に「狭いところで大きなものをハンドリングする」ということとなり、「干渉リスクが高い」状況を必然的に生んでいます。

移動発射台に据え付けられた1段機体

移動発射台に据え付けられた1段機体

2段VOS作業

2段VOS作業

設計段階からわかっていたそのような厳しい作業条件に対し、事前に入念な確認をして臨んだものの、想定通りの作業ができない事態が幾度も発生しました。H3ロケットは時間にも追われる開発です。VOS作業もスケジュール遅延は避けなければなりません。そんなプレッシャーがある一方で、ひとつのミスが文字通り命取りになる可能性があるのがロケット開発です。事前に設定した作業ができないときにはまずしっかり立ち止まり、新しい作業案を関係者一同で確認するという基本動作を徹底し、時間と争いながらも慎重に、安全第一で作業を進めました。

固体ロケットブースタ(SRB-3)VOS作業

固体ロケットブースタ(SRB-3)VOS作業

初めて尽くしの現場では、上手くいかないことも含めてたくさんの発見がありました。多忙を極める現場でしたが、そんな合間を縫って作業者・技術者が入り混じっての改善検討が自然発生的かつ積極的に行われたことに、感動を覚えました。「このH3ロケットを、さらに”次”のロケットを、より良くしたい」現場にはそんな思いがたくさんあった気がして、次世代を担うべき一人として嬉しく、やや興奮しながら議論を交わした経験はとてもありがたいものでした。

そんなこんなで無事にVOS作業を終えたH3ロケット試験機1号機。作業者の方がとても丁寧に機体を扱われていたのが印象的で、すみずみまでとても美しく仕上がっている機体を見ると、疲れも吹き飛びます。とは言え、今後も機器や装置を搭載し、機能を確認していく作業が待っています。射場作業は始まったばかり。引き続き気を引き締めて頑張ります。

JAXA構造系担当 長福 紳太郎

2021年1月28日更新
試験機1号機用機体を工場から出荷しました

H3ロケット試験機1号機出荷

2021年1月26日、試験機1号機の1段、2段機体が三菱重工業株式会社飛島工場での製造と試験を終え、打上げ射場である種子島宇宙センターに向けて出荷の日を迎えました。
ロケットを構成する多くの機器が次々と開発を完了し、飛島工場で組み上げられて機能試験を開始したのが2020年6月上旬。大小様々、数多くのトラブルに遭遇し、それらを一つ一つ解決して万全の状態を整えるために、約7カ月を要したことになります。
更に思い起こせば、私が担当する電気系システムの試験をこの飛島工場で開始し、試験立会を始めたのが2018年2月。この時から多くのトラブルに見舞われ、1件1件コツコツと解決してきた結果、3年の月日が流れました。
3年前、まだ開発途中だった技術試験用の電気系機器を組み上げてシステム試験を開始した時は、H3の製造に向けて飛島工場内に増設途中だった真新しくも殺風景なエリアにミカン箱サイズ程の機器十数個を並べて、機器と機器の間のネットワーク通信のデータインタフェースを確認する試験(本当に地味で映えない試験)から着手しました。そこから3年間の時を経て、見上げるような大きさの格好良いロケットに仕上がったことに感慨無量です。

新型コロナの影響で、世の中が大きな変革の時を迎えています。我々JAXAをはじめ、ロケット全体の設計を取りまとめていただいている三菱重工業や、機器の設計、製造を担当されているメーカの技術者の方々とは、ネットワーク越しの設計資料の送受信やWEB会議という代替手段によって、これまでのやり方に劣らない設計やレビューを進め、開発を継続することができましたが、ロケットの製造は現場での人の手に代る手段がありません。Beforeコロナ時代と変わらない多くの製造のプロや技術者がこの飛島工場で7カ月間、夜間休日を問わず奮闘してきました。変わりゆく日常の中で、変わらないパフォーマンスを発揮し続ける製造現場のチームの方々にいつも感心するとともに、世の中が変革しても失ってはいけないことがこの現場にはあると強く感じていました。そしてこの飛島工場での立会の日々は私にとっては、新しい知見と経験と多くの同志を得る貴重な機会となりました。

多くの人々に支えられて仕上がったこの1段、2段機体ですが、工場を出荷して射場に搬入された以降も、まだまだ、総合システムとしての検証という長い道のり、険しい道のりが待ち構えていることでしょう。でも不安やネガティブな感情は殆ど感じなくて、この機体を眺めていると、ワクワク感や「全て乗り越えてやるぜ!」という感覚がみなぎってきます。打上げ成功というゴールに向かって、気持ちを新たに立ち向かいたいと思います。

JAXA電気系担当 Y.K.

出荷に向けて1段機体、2段機体をコンテナに入れている様子(2021年1月24日撮影)

出荷に向けて1段機体、2段機体をコンテナに入れている様子(2021年1月24日撮影)

2020年10月29日更新
H3開発計画見直しにあたって

2020年5月。H3ロケットの第1段エンジン(LE-9)の認定燃焼試験を種子島宇宙センターで行っていました。この認定燃焼試験では、実際の打上げに用いるエンジンと同じ設計と製造方法による試験用エンジンで10回を超える過酷な燃焼試験を行い、全ての試験を無事クリアすると打上げ用エンジンの設計が確定します。

5月26日の燃焼試験を終えた時点で合計8回、1098.5秒に到達。試験機1号機の打上げに向けた最終段階の緊張感に包まれながら次の試験に臨もうとしていたところ、翌27日の朝に一本の電話がかかってきました。それは試験後のエンジン内部点検に立ち会っていた開発リーダからでした。

「燃焼室の内面に変化がみられるため、詳細に観察したい」

このような思わぬ現象は開発には付き物なので、常に冷静に正確な状況を把握するように努めていますが、その時の私の声はいつもよりこわばっていたと思います。

以来約3ヶ月、もうひとつ出現した液体水素ターボポンプ・タービン部の疲労破面と合わせ、2つの課題の原因究明と対応策の検討に総力を挙げてきました。なんとか2020年度内に確実に打ち上げる対応策を見出だしたいという思いで、様々な可能性を検討しました。原因究明の一環として、毎秒700回転するタービンにセンサを貼りつけて実際に運転しデータを取得するという新たな試験にもチャレンジしました。検討を深め現象が解明されるに従って対応策は具体化できましたが、その対応策には腰を据えて取り組むべきと考えるに至りました。

プロジェクトを実行する際のマネジメントでは時間と費用と製品の質のバランスを常に考え、日々舵を取り軌道修正します。しかし、どうしてもバランスが取れない場合には条件を変えなければならないことが(本来あってはならないのですが)あります。何を一番大切に考えるか究極の判断を迫られる時です。

そして9月11日。課題への対応を確実に行うために試験機1号機を2020年度内に打ち上げることが極めて難しくなったとして、打上げ計画の見直しを発表しました。

この見直しにより、打上げを試験機に託していただいた衛星ミッション関係の皆様、プロジェクトに直接的・間接的に関わっていただいている皆様、そしてこれまで見守って来てくださった多くの皆様に本当に申し訳ない思いでいっぱいです。私たち自身もとても悔しいです。

しかし、技術は厳格で正直で曖昧なことは許されない。ですから、目の前に立ちはだかる技術の壁には正面から向き合うしかありません。納得のゆく対応をして、一点の曇りもなくH3ロケットを仕上げることが私たちの使命と考えています。

もうひとつお話したいことがあります。今回の計画見直しに際しては、JAXA内外からとても多くの方々に支えていただきました。JAXAには「全ての者はそれぞれの職務に応じて、プロジェクトの成功のために最大限の努力を尽くさなければならない」という理念がありますが、今回ははるかにそれを超え、「プロジェクトは独りにしてならず」ということを心の底から実感しました。この「独り」は「人ひとり」ではなく「プロジェクト関係者のみ」という意味です。近くから遠くから支えてくださった皆様、本当にありがとうございました。

今、私たちH3プロジェクトチームは、企業の皆さんと共にあらためて体勢を整え、これからの計画を綿密に立てているところです。9合目まで登った山を8合目まで引き返したことで時間は余計にいただきましたが、確実に山頂に立てるよう一歩一歩前進したいと思います。

どうか、これからも厳しくそして温かい目で見守っていただければ幸いです。

2020年10月29日
JAXA H3プロジェクトチーム
岡田 匡史

2020年7月27日更新
H3ロケット試験機1号機の機能試験

H3ロケット試験機1号機用・1段機体

H3ロケット試験機1号機用・2段機体

愛知県にある三菱重工業株式会社飛島工場では、H3ロケット試験機1号機用1段機体と2段機体がその姿を現し、機能試験を実施しています。

(左写真)堂々と横たわっているのはH3ロケット試験機1号機の1段機体です。大きさは直径5.2m/長さ約37mあり、山手線の2両分に相当します。横に長く延びる筒状のクリーム色の部分が燃料を搭載する液体水素タンクと液体酸素タンクです。手前に見える下部には2基の1段エンジンLE-9を搭載しています。

(右写真)H3ロケット試験機1号機の2段機体です。クリーム色の部分が液体水素タンクで、H-IIAロケットでは直径4mでしたが、H3ロケットでは直径5.2mになります。銀色の断熱材を巻かれた液体酸素タンクと、LE-5B-3エンジン(ノズルは未装着)が結合されています。2段機体には、燃料タンクを支える構造部材や、燃料をエンジンに導く配管、機体を制御するための電気機器が搭載されています。

これまで苦労して完成させたコンポーネントが実際に打ち上げる機体として組みあがっている姿を初めて目にして、達成感を得ると同時に、打上成功に向けてより気が引き締まりました。

現在進めている機能試験とは、数多あるロケットの機能を一つ一つ丁寧に確認していく作業です。各機器へ電力を分配する機能が正しいか確認する試験や、各種センサからの信号が正しく出力されているか確認する試験、燃料を通す配管に漏れはないか、バルブは正しく動いているかなどを確認する試験を実施した後、1段機体と2段機体を電気的に結合して打上げ時と同じシーケンスを流して、各機器やバルブを動かし、信号が適切に出ているかを確認する試験を行います。

H3ロケットは今回が初めての機能試験です。機能試験を始めてみると思い通りには進まない部分があり、それを一つ一つ解決しながら前に進めています。機体の見た目こそ堂々とはしていますが、中身は生まれたての小鹿のように足元がおぼつかない状態です。最初に実施する電力分配の試験では、数百ある項目のスイッチを1点ずつ入れて、そのラインの電圧出力を確認して行くのですが、スイッチが見つからないといった簡単なトラブルから、機器間の信号がほんのわずかに時間がずれていてうまく通信できないなど、様々なトラブルが発生します。工場を出荷するまでには一人前のロケットとして送り出せるようにしたいと思います。

過去のロケット打ち上げ失敗事例では、この工場での機能試験で見いだせたはずのものがいくつかあります。見落としをしないよう、焦らず丁寧に確認作業を進めたいと思います。工場での機能試験を無事に完了すれば、いよいよ試験機1号機の機体を種子島宇宙センターに運んで機体を組み上げ、地上設備とのインタフェースの確認を行う総合システム試験が行われます。試験機の打ち上げに向けて、いよいよ山の頂が見えてきました。引き続き、気を引き締めて挑みます。

2020年5月25日更新
LE-9エンジン燃焼試験

It always seems impossible until it’s done.
(何事も成功するまでは不可能に思えるものだ)

Nelson Mandela
(ネルソン マンデラ)

ロケットの開発はいつのときも困難を極める。ロケットは大小様々な構成品からなっており、その部品点数は一般的におよそ100万点。それらのほぼ全てに対して厳しい検証試験が行われる。試験は上手く行くときもあれば行かないこともあるが、ロケット開発では上手くいかないことの方が多い。そしてロケットの開発試験の中でも最も困難を極めるのがエンジンの燃焼試験である。

ロケットを人間に例えると、エンジンはそのエネルギーを生み出す心臓と言える。エンジンはマイナス200℃程度の極低温の液体酸素と液体水素を1秒間にドラム缶約5本分を吸い込み、約3000℃の高温ガスへと燃焼させてそれを超音速で噴射し、ロケットが宇宙に到達するために必要な推進力を生み出す。このためその内部は極低温と超高温が存在し、超高圧、過酷な振動が負荷される。それゆえエンジンは故障を起こしやすく、世界のロケットの失敗原因の多くがエンジンまたはそれに関連する部分に起因している。またエンジン開発は故障との格闘の連続であり、エンジンの燃焼試験はロケット開発の中で最も困難と言われる。

LE-9エンジンの燃焼試験はJAXA種子島宇宙センターで行われている。H-IIA/Bに搭載されているLE-7Aエンジンの開発に使用した燃焼試験スタンドをLE-9用に改修して使用している。この燃焼試験スタンドはロケットの打ち上げ射点から数百mの目と鼻の先にしか離れておらず、エンジン燃焼試験とロケット打ち上げというリスクの高いもの同士が近接する、世界的にも珍しい試験スタンドである。前述のとおりエンジンは1秒間にドラム缶約5本分の推進薬を燃焼させる。LE-9の推進薬は酸素と水素なので、燃焼して出来るのは水蒸気である。燃焼試験で発生する大量の水蒸気は空中に舞い上がり、時として美しい虹をつくる。種子島の美しい海をバックに現れる虹は、関係者しか知らない絶景である。

エンジンの燃焼試験を開始する瞬間、コントロールルームは何とも言えない緊張感に包まれる。時には数年かけて行った様々なシミュレーションや要素実験を元にエンジンを設計/製造するが、燃焼試験でその努力が正しかったのかどうかが試される。闘牛の世界に「真実の瞬間」という言葉がある。闘牛士が闘牛に向かって最期の一撃を加える瞬間のことで、エンジンの燃焼試験はまさに真実の瞬間と言える。多くの関係者が長い年月かけて行った努力が正しかったのかどうか、成否を分かつ瞬間である。燃焼試験は何度経験しても慣れない。いつも寿命の縮む思いがする。

燃焼試験の結果が残念ながら設計意図とは異なっていることはよくある。酷いときにはエンジンの一部が破壊して緊急停止せざるを得ないような重大な故障が発生することもある。故障が発生するたびに関係者は頭を抱え、夜通し対策を検討する。自分が頑張って自信をもって設計したものほど、故障が発生したときには解決は不可能に感じる。しかし諦めずにそれらを1つ1つ解決していく。そうして、LE-9の燃焼試験は現在までのところ38回行ってきた。試験機1号機用エンジンの開発完了まであと6回、試験機2号機用エンジンの開発完了まで更にあと24回。まだまだゴールは遠く、無事開発を完了する姿をまだまだイメージできない。しかし必ずやり遂げられると信じて今日もまた真実の瞬間を迎える。

It always seems impossible until it’s done.

JAXA LE-9担当 H.K.

2020年4月17日更新
“Test as You Fly, Fly as You Test”~試験機1号機の打ち上げを目指して~

LE-9エンジン燃焼試験場。「それでは、燃焼試験シーケンスを開始します。3、2、1、0...シーケンスがスタートしました。」張りつめた空気の中、試験エンジニアの声が響く。彼はモニターを凝視し緊急停止ボタンに手をかけている。何度も何度も手順を確認し知り尽くした試験エンジニアの平常心が、メンバーの高まる心を落ち着かせてくれる。

“Test as You Fly, Fly as You Test”(飛ぶように試験し、試験したとおりに飛ばせ)
世界中でロケットエンジニアに語り継がれてきた言葉だ。過酷な試験を成功させるため、設計を審査し、あらかじめシミュレーションで確認し、想像し、打てる手は全て打った。それでもロケット開発には魔物が潜んでいて、姿を現し、牙をむくことがある。

2014年4月、H3プロジェクトが始動しました。それから約2,200日が経ち、山登りに例えれば、私たち(多くの企業の方々とJAXA)は今8合目を過ぎ、遠くに山頂が見え始めたところを進んでいます。

H3は、大きく変化を続ける社会、そしてその中での人々の安心で豊かな生活を宇宙から支え続けたい、また、宇宙や地球への探求を支え続けたい、という思いを実現するためのシステム(ロケットと設備の集合体)です。さらに、宇宙への輸送サービスとして日本だけでなく世界中の人たちに使ってもらうことを狙ったシステムです。

H3はこのように使命(ミッション)がはっきりしていますので、「使命を果たすために全体はどのような役割で動作するのか?また、それをどう使うか?」を最初に考えました。このため、トリセツもあらかじめ作りました。

次に、大きなシステムの役割を、それを構成するいくつかの小さな要素の役割に配分しました(これを人に例えると、体を頭、胴、手、足の要素に分けて考えるということ)。この時、「それぞれの要素に役割をどう配分するか?その関係(インタフェース)をどうするか?」などを注意深く決めてゆきました(人では頭で考え、手で物をつかむが、ロボットだと手で考えることもできる。システム全体のどこにどのような役割を持たせるかを、一から考えることが大切)。このようにして、それぞれの企業やエンジニアが分担できるようにした上で、設計し、試作し、要すれば基礎的なテストも繰り返してきました。

ひとまとめにお伝えしましたが、それぞれの要素には、これまで経験のない新しい技術と十分に経験がある技術が入り混じっていて、ハードルの高さとそれを越える時間も様々です。思ったように行かなくて立ち止まったり、戻ったりすることもあります。なかなか答えが見つからずに迷路に迷い込んだこともありました。また、要素と要素のインタフェースには人と人との意思疎通がとても大切ですが、お互いの理解が違っていて途方に暮れたこともありました。

そして今。

高いハードルを越えた要素がひとつずつ完成し、システムとして統合されつつあります。オール電化制御の1段エンジンLE-9では制御装置がエンジン本体に、そのLE-9が燃料タンクに、固体ロケットブースタが第1段ロケットに、精密な加速度センサが搭載コンピュータに、搭載送信機が地上の新しい追跡局に、発射台が移動台車に、...。

打ち上げまでに残された時間は、あと1年ほどです。私たちはシステムの統合を続けながら、大きな規模の試験に挑み、山の頂を目指してこれまでよりずっと急峻な坂を登ってゆきます。まだ見ぬ試験機1号機は、製造工場で少しずつ姿を現しつつあります。

種子島宇宙センターH3発射管制室、通称LCC。「それでは、H3ロケット試験機1号機 打ち上げ最終カウントダウンのシーケンスを開始します。...シーケンスがスタートしました。」

試験機1号機がリフト・オフするまで、H3プロジェクトの様子をよりきめ細かに、そして、リアルに皆さんにお伝えしてゆきたいと思っています。
どうか、厳しくそして温かい目で見守っていただければ幸いです。それが、私たち開発チームにとって何にも代えがたい大きな原動力なのです。

JAXA H3プロジェクトチーム
岡田 匡史

2019年12月27日更新
フェアリング分離放てき試験

試験画像1
試験画像2

年の瀬も押し迫った2019年12月17日、兵庫県の川崎重工業株式会社播磨工場でフェアリング分離放てき試験が実施されました。フェアリングはロケットの先端に位置し、ロケットが大気中を飛行する間に大気によって生じる力や、空力加熱によって生じる熱からペイロードを保護するための役割を果たしています。分離放てき試験は実際のフライトと同様に分離機構を作動させ、フェアリングが設計どおりに分離し機体から離脱(放てき)されることを検証するための試験です。また、約4年に渡ったH3フェアリング開発の最後を飾る試験でもあります。
当日は朝から時折雨が降るあいにくの空模様でしたが、早朝から始まった試験準備は順調に進み、予定どおり試験を実施することができました。これまで国内で開発された中で最大となる全長16.4m・直径5.2mのフェアリングを結合している数百本のボルトが分離信号とともに火薬で瞬時に切断され、バネの力で左右に分離していく様は正に圧巻の一言でした。分離された左右のフェアリングは美しい円弧を描きながら同時にクッションに着地し、関係者の拍手が沸き上がりました。

H3フェアリングは、これまでH-IIA/Bおよびイプシロンロケットで成功を積み重ねてきた技術を活用するとともに、新しい技術の導入にも積極的に挑戦しています。実績のある設計を採用した代表例は分離機構です。分離機構はH-IIA/Bやイプシロンから大きな設計変更はしておらず、フェアリングにとって最も重要な信頼性が維持される設計になっています。一方、新規に採用した技術としては、主構造(ハニカムパネル)の表面の材料をアルミから炭素繊維強化プラスチック(CFRP)へ変更した点が代表例として挙げられます。材料の変更に併せて製造方法も最新化しており、ハニカムパネルを製造する際にCFRPのシートを機械で自動的に積層できる装置を新規導入しました。ハニカムパネル1枚毎のサイズも大型化し、最終の組立工程でつなぎ合わせるパネル点数を大幅に削減することで、製品全体の製造コストを低減できるようにしています。またCFRPを適用することにより、今まで以上に容易に複雑な形状を作ることが可能になったため、フェアリング全体の形状を滑らかな流線形上の曲面で成形することができました。形状を変更したことで、空力抵抗が低減されて打上げ能力が向上するとともに、フェアリング周りの空気の流れも安定し、振動環境の低減にも貢献しています。併せて、フェアリングを熱から防護する断熱材については、イプシロンで打上げ実績のある貼付式の断熱材を適用し、吹き付け式の断熱材に必要だった専用の塗装ブースを不要とし、シンプルな製造設備で断熱材施工ができるようにしています。

フェアリングは、ロケットのお客様(カスタマー)であるペイロードを宇宙に届けるまでやさしく包み込み護るという役割があり、カスタマーに一番近いサブシステムです。カスタマーサービスを重んじるH3ロケットにとって非常に重要なサブシステムであることから、先に述べた新規技術などによってカスタマーの要望(例えば、ペイロードにアクセスするためのドアの取り付け位置や、その位置決めの時期)に柔軟に対応できるようになったと考えています。
2020年度の打上げに向けて、今回の分離放てき試験で取得したデータ評価を含め、これまでの開発結果をしっかり確認し、開発の総仕上げをしていきます。そして、H3を国際的に競争力のあるロケットとして世の中に送り出せるよう、気持ちを新たに関係者一丸となって試験機の打上げ成功を目指したいと思います。

2019年10月10日更新
SRB-3認定型モータ地上燃焼試験(その1)を実施しました

2019年8月28日、固体ロケットブースタのSRB-3の認定型モータ地上燃焼試験(その1)を種子島宇宙センターで実施しました。この試験は、実際のフライトに使うモータの設計及び製造・検査工程を確定することが目的です。試験は、計画通り点火後約100秒間の燃焼を行い、良好に終了しました。今後、取得したデータ及び燃焼終了後のモータを詳細に評価します。

SRB-3として2回目となる今回の燃焼試験は、試験場へのモータの移動予定日に種子島を台風が襲撃するという試練からのスタートとなりました。当初、8月16日の早朝に移動を行う計画でしたが、15日に台風が種子島を襲撃し16日朝も影響が残ることが予想されたため、半日遅れの16日夕方に試験場への移動を行うこととしました。たとえ相手が台風であっても、開発スケジュールは1日も無駄にできません。現場で作業を進めている方の努力はもちろん、各関係者と調整を円滑に進めることで、数日後には台風の影響による遅れをなんとか挽回することができました。

試験場への移動後は、試験設備にモータを組付けての最終的な準備作業や、設備の準備・点検を進めていきました。試験場での準備開始から試験当日に向け順番に関係者が集まってくる感じから、「いよいよ」という雰囲気が高まっていきました。そして、予定通り8月28日11:00に点火を行い、計画した約100秒の燃焼が終了しました。データを評価するまでは設計通りかの判断もできないため、打上げと異なり燃焼が終了しても歓声はなく、試験が無事終了したことに安堵しつつ後処置が進められていました。

実は、種子島宇宙センターで固体ロケットモータの燃焼試験を実施する試験場の歴史は古く、種子島宇宙センターの開設と同じ約50年前に建設されています。計測の要となる基礎や主要な設備は当時作られたものを現在も使用しています。普段はJAXA職員であってもなかなか訪れることのない試験場ですが、日本の大型ロケットに使われてきた固体ロケットモータの開発の歴史を見届けてきた重要な場所の一つです。ここに、今まさにSRB-3の歴史が加えられている日々です。
この規模でのロケット開発はそう度々ありません。そのためH-IIA/Bロケット用固体ロケットモータ(SRB-A)の開発が終わり設備は約10年の眠りについていました。SRB-3の開発のため復旧作業を続け昨年から再び使用しています。古い設備ゆえに苦労することもありますが、今回の試験も無事終了することができ安堵しています。

試験成功の達成感に浸るも束の間、次の試験に万全の態勢でのぞむために、今回試験結果の評価、次回試験の計画、試験設備の点検、試験用モータの準備と忙しい日々に戻ります。

SRB-3地上燃焼試験(Ground Firing Test for New Solid Rocket Booster)

2019年8月6日更新
~縁の下の力持ち~ ロケット運搬台車について

移動発射台(Movable Launcher:通称「ML」)は、種子島宇宙センターで最終的にロケットを組み立てる際の台座で、打上げ当日には大型ロケット組立棟から射点までロケット機体を運び、遠隔での燃料充填や、打上げ直前まで最終点検を行う際に使われます。また打上げ時、発射台の役割も担います。JAXAでは、H3ロケット専用のMLを新しく開発しており、2018年11月上旬に工場で製作・試験・検査を終えた後、7回に分けて種子島宇宙センターに海上輸送し組立を行いました。その後、様々な整備・点検を経て、2019年6月から大型ロケット発射場にて、運搬台車(通称「ドーリー」)と組み合わせた走行試験をしています。

6月中旬から数日かけて行われた初めての走行試験では、2機のドーリーが新しいMLを持ち上げ、射点に入る動作や、大型ロケット組立棟から射点間の約500mを走行する試験をおこないました。続いて6月下旬に行われた試験では、H3ロケット本体と同じ重さのウェイト(おもり)を載せた状態で走行試験を行いました。現在、ML内部の電気系設備の点検をしており、今後、他の設備との組み合わせた状態での機能・性能試験を実施して、機体と組み合わせた総合システム試験に臨む予定です。

今回新しく開発したMLとドーリー、それぞれの特徴を解説します!

ここが凄いぞ!~新型移動発射台(ML)~

現在使用されているH-IIBロケットのMLと比較して詳しく見てみましょう。

H3用MLは、H-IIB用MLと比較して、大きく3つの違いがあります。

  1. ロケット機体の移動時など、MLのマストなどに当たった風の後流れの影響で機体が揺れることがあります。この揺れを最小限に抑えるため、マストの上部の断面形状を変更するとともに、ふたつのマストと連結するオーバーブリッジを削除しています。
  2. 液体ロケットエンジン、固体ロケットブースタの煙(噴流)が流れるMLの開口部を大きくしています。H-IIB用MLでは各噴流に対して小さい開口部を5つ設けているのに対し、H3用MLでは大きな開口部を1つにしました。

H-IIBロケット用ML

H3ロケット用ML

これは次の3つの狙いがあります。

打上げ時の熱損傷を減らす

現行のH-IIA/B用MLから開口部を広く取ることで、打上げ時の噴流の熱などによる構造体の損傷を抑えます。また、上部デッキにあった推進薬や高圧ガス、水などの配管や機体固定台を無くすことで打上げ後の補修が容易になり、打上げ間隔を短縮することができます。

打上げ時の音響を低減する

射点には、打上げ時に発生する音響を抑えるために注水システムを備えています。現行のH-IIA/BロケットではMLにも注水装置がありますが、H3ロケットでは、ML開口部を大きくすることで発生する音を小さくすることで注水量を減らし、注水システムの簡素化を図っています。また、MLにあったものを地上に移すことでMLが射点に到着した後の水配管の接続作業が不要となり、運用性を向上しています。

H-IIBロケット

H3ロケット

ロケットの支え方が違う!

H-IIA/B用MLでは上面に設置した台座4か所でロケット機体を支えています。一方、H3用MLでは大きくなった開口部の側面に取り付けられた可動式の支持部4か所でロケット機体を支える方式が採用しています。H-IIBロケットより全長が6.4m高くなったH3ロケットを既存の大型ロケット組立棟で組み立てられるようにしています。また、支持部をMLの構造内に退避させることで噴流による損傷を防ぎ、打上げ後の補修作業を短縮します。

H-IIBロケット

H3ロケット

このように様々な工夫を施すことで、打上げ後の設備補修にかかる期間を大幅に短縮することができ、従来約2か月必要であった打上げ間隔を1か月以下に抑えることが出来るようになります。

③ H-IIA/Bロケットとは異なり、H3ロケットでは、固体ロケットブースタがなく液体ロケットエンジンだけで飛ぶ機体形態(H3-30形態)があります。これまでのH-IIA/Bロケットでは、液体ロケットエンジンが正常に立ち上がった状態でも固体モータが「おもり」となり、固体モータが点火するまでは機体は飛び上がりません。しかし、H3-30形態ではおもりとなる固体ロケットブースタがないため、液体ロケットエンジンが立ち上がるまでの間、機体が飛び上がらないにように押さえつける(ホールドダウンする)必要があります。そのために、H3用MLではホールドダウン・システムを採用しています。これにより、液体ロケットエンジンが正常に立ち上がったことを確認した上で打ち上げることで、高い信頼性を確保します。

ここが凄いぞ!~新型ドーリー~

ロケットを搭載したMLを大型ロケット組立棟から打上げ射点まで運ぶ役割を担うのが移動発射台運搬台車、通称「ドーリー」です。ドーリーは組立・整備を終えたロケットを移動発射台ごと持ち上げ、走行路に埋設されたマグネットを検知して自動で走行・停止します。1台に56輪のタイヤがあり、2台でMLを持ち上げます。時速2kmという人が歩くよりもゆっくりしたスピードで慎重にロケットを運びます。
現在使用されているH-IIA/Bロケット用のドーリーと比較して詳しく見てみましょう。

信頼性の向上

今回新たに開発したドーリーでは万一の故障した際にも30分以内に復旧して作業を継続できるようになりました。

維持費の低減

汎用部品を多用すること、また従来定期的に点検をしていた項目の一部において、セルフチェック機能を導入や健全性データのモニタにより必要な時に必要な点検を行うことなどにより、年間のメンテナンス費を半減以下にできるようになりました。

運用性の向上

H-IIA/Bロケットでの運用経験を活かし、メンテナンスしやすいよう部品を配置するなど工夫を施しています。また、H3ロケットだけではなくH-IIA/Bロケットにも使うことができます。

H-IIA/Bロケット

H3ロケット

このようにロケットの打上げに不可欠な地上設備においても、2020年度の試験機1号機の打上げに向けて、着々と準備が進んでいます。

New Movable Launcher for H3

2019年6月18日更新
SRB-3実機大分離試験

青々と茂る草木が初夏の様相を呈し、今すぐにでも蝉が鳴き出しそうなほど暑い5月の群馬県富岡市。その山中に位置するIHI Aerospace(IA)富岡事業所の試験場内に、大きな白い塔が鎮座していた。試験開始を黙々と待ち構えている白い巨塔は“SRB-3”、H3ロケットの固体ロケットブースターだ。

IAが主となり開発を行っているSRB-3の分離試験がIA富岡事業所で行われる。この分離試験はSRB-3とH3のコア機体が設計通り分離できるかを確認する試験だ。現行のロケットであるH-IIA/BのSRB-AとSRB-3それぞれのコア機体への接続方法は異なり、H-IIA/BはSRB-Aからコア機体にスラストストラットとブレスが伸び、コア機体に抱き着くような接続方法になっているのに対し、H3はピンでコア機体に引っ掛ける接続方法になっている。ピンでコア機体に接続するというシンプルな方法になることからコスト低減、ロケットの整備作業時間の削減に貢献しているのだ。

5月22日、翌日の試験にむけ試験本番と同じ動きを模擬する、いわゆるリハーサルを行った。リハーサル自体は問題なく終了したが、試験の成功確率を限りなく上昇させるため、リハーサル後試験隊の各班は当日に起こりうる事象を想定ししらみ潰しに列挙し、議論を行っていた。隊員の額は汗で濡れ、長時間の準備作業に疲労はにじみ出ていたが、それぞれの目は輝きで満ちており士気は高い。天候さえ問題なければ試験は実施できる、確実に成功するという確信を抱きリハーサルは終了した。隊員達が去った試験場には明日の快晴を予感させる燃えるような夕日が差し、SRB-3の白い巨塔を真っ赤に染め上げていた。

5月23日、試験当日は早朝からミーティングが行われた。リハーサル時には感じられなかった緊張感が試験場内に充満している。試験手順の確認を行い、午前10時20分、工程を開始した。準備時間は何十時間、試験時間は数秒。一瞬の試験に向けて膨大な労力をかけ試験の準備を行う。試験計画を立案、各種確認会を実施し試験実施に問題ないことを確認した。雑草が生い茂る現場には人の足によって道ができた。人事は尽くした。あとは天命を待つのみだった。
カウントダウンが始まる。心臓の鼓動が激しく刻まれる中、分離の瞬間がやってきた。となった。「シューーー」という推進薬の音が鳴り、約1秒後SRB-3が地面に落ちた低音が試験場に響いた。試験は大成功だった。予想していた通りの分離の動きだった。緊張に満ちていた隊員達の顔はほぐれ、まぶしいほどの笑顔を見せていた。
この日H3ロケットの開発は確かに一歩進んだのである。

分離の瞬間を待つSRB-3供試体

分離後の様子

SRB-3実機大分離試験

2019年4月16日更新
第1段厚肉タンクステージ燃焼試験について


世界遺産で有名な白神山地の近く、秋田県大館市の田代岳に向かう林道を奥へ奥へと進むと三菱重工業(株)の田代試験場があります。ここでは、今まさにH3ロケットの1段推進系開発の山場である燃焼試験が行われています。この燃焼試験は「第1段厚肉タンクステージ燃焼試験」と言います。ステージ燃焼試験とは、推進薬タンクとエンジンを組み合わせ飛行時の圧力や温度を地上で模擬した総合的な燃焼試験です。厚肉タンクという名称は、実機のアルミ合金製タンクではなくステンレスの頑丈な推進薬タンクを用いるため、こう呼ばれています。英語名はBattleship Firing Testと言い、直訳すると軍艦(のように丈夫なタンクを用いた)燃焼試験です。関係者は頭文字をとってBFT(ビーエフティー)と呼んでいます。

種子島で行われているLE-9エンジンの燃焼試験は「エンジン単体(1基)」の燃焼試験ですが、BFTではタンク以外は実機と同じ構成部品を使用し、LE-9エンジンは実機と同じ2基もしくは3基を束ねる(「クラスタ」と呼びます)大規模な燃焼試験です。2019年1月からH3ロケットのエンジン2基形態のBFTが始まりました。試験全体を取りまとめる三菱重工業(株)名古屋航空宇宙システム製作所(通称、「名航」)、エンジン・ターボポンプ開発を担う三菱重工業(株)名古屋誘導推進システム製作所(通称、「名誘」)、および(株)IHIの3社を主体とし、多くの関係業者や地元企業の協力の下、試験を進めています。試験当日は深夜から作業を開始し、推進薬タンクに液体水素と液体酸素を充填するところから始まります。さながら実際のロケット打上げと同じ長時間での作業です。燃焼試験ではクラスタしたLE-9エンジンを同時に着火させ、燃焼中はフライトと同様にエンジンからもらうガスを利用してタンクの圧力を制御します。また、電動アクチュエータを用いてロケットが進みたい方向にエンジンの姿勢を変える(ジンバル)試験もBFTで初めて検証します。これらH3ロケットで刷新された新たな推進系の構成部品の準備に苦労しましたが、現在はBFTを一歩一歩着実に進めています。

BFTは大規模試験が故に中身の濃い試験内容になるため、ひとつのミスが大きな事故につながりかねない緊張の中で試験が行われます。関係者にとっては、プレッシャの中で平常心を保ちつつ作業を進行していくロケット打上げに向けた修練の場でもあります。土地柄、冬季は深い深い雪に覆われる場所ですので、作業者はロケットの整備作業だけでなく雪かきも行います。まさに精神的にも体力的にもタフな作業を遂行しています。ロケット開発は関係者のひたむきな努力と地道な作業の積み重ねがあってのものです。2019年4月12日に2基形態の最終試験である4回目のBFTが無事に終了し、今後は入念に試験結果を評価した後、エンジンを1基追加し、3基形態の試験へと開発を進めていきます。一連のBFTシリーズを乗り切ることで、ロケットも人も成長した姿で次の開発ステップに進むことができます。


燃焼試験スタンドの概要


燃焼試験時の様子

2019年3月8日更新
LE-5B-3エンジン開発試験完了!

2019年2月18日、宮城県の角田宇宙センターにある高空燃焼試験設備の計測制御棟内に声が響きます。「燃焼開始後130秒が経過しました。
まもなく燃焼を停止します。5、4、3、2、1、燃焼停止」。H3ロケットの第2段エンジンであるLE-5B-3エンジン(以下、「上段エンジン」)の開発試験が終わった瞬間です。計測制御棟内には、JAXAだけではなく、エンジンの製造・開発会社、試験設備の運用会社、試験の安全管理を支援する会社など、H3ロケットの開発担当者が30名ほど集まっています。しかし、歓声や拍手やガッツポーズはありません。張り詰めていた緊張がほぐれるような、ふ~っという安堵の息です。

上段エンジンの開発は、2017年3月から10月までの第1試験シリーズで1台のエンジンの試験、2018年11月から2019年2月までの第2試験シリーズでもう1台の試験を行うという、2台のエンジンの試作試験で構成されています。それぞれ15~20回、累積約50分間の燃焼を行い、エンジンの設計が正しいことを見極めていきます。試験期間中は毎日が真剣勝負です。ロケットエンジンは高圧・高温で作動しますので、不注意があれば大事故につながります。もしそうなれば、試験シリーズのやり直しとなります。このため、開発担当者は、毎回、丁寧に試験の条件を決めて、慎重に試験を行い、細かく試験の結果を吟味します。特に試験シリーズの最後の方になるほど、これまでの試験結果を無駄にしたくないので、より丁寧に、より慎重に、より細かく行動することになります。気を抜かない。絶対に成功させる。そういう緊張感が最高潮に達すると、試験が成功した後は、安堵の息しか出ません。

上段エンジンの開発試験は終わり、これから上段エンジンをロケットに装着した状態での試験(実機型タンクステージ燃焼試験(CFT))や試験機1号機の打ち上げという、次の段階へ進んでいきます。まるで、運動会のリレーで、自分の出番を走りきって、次の人にハイッとバトンを渡すような感じです。でも、ゴールするまでは、ずっとバトン(上段エンジン)を見守り、支えます。気を抜かない。絶対に成功させる。そういう人達がH3ロケットの開発を行っています。

認定試験終了後の関係者集合写真
(角田宇宙センター)

試験の様子(MHI田代燃焼試験場)

液体水素ターボポンプの試験の様子(IHI相生事業所)

2019年2月12日更新
H3ロケット用新型ドーリーの整備が種子島宇宙センターで進んでいます

前回、H3ロケット用の移動発射台(以下、「ML」)について紹介しましたが、そのMLの移動に用いる、とても力持ちな「移動発射台運搬台車(通称「ドーリー」)」を紹介します。
ドーリーの役割は組立・整備を終えたロケットをMLごと持ち上げ、ロケットを打ち上げ射点に運搬することです。全長25.4m、1つの車両に56輪のタイヤを持ち、2台のドーリーでMLを持ち上げ、時速2kmほどのゆっくりとした速度で、地面に埋められたマグネットにより自動制御で走行し、決められた位置に誤差25.4mm以内の範囲で無衝撃・無振動で正確に停止することができます。この新型ドーリーはH3ロケットだけではなく現行のH-IIA/Bロケットにも使用することができます。万一故障により停止しても30分以内に復旧することが可能であったり、セルフチェック機能の充実化などにより、維持費を半減できたりと様々な工夫がなされています。現在運用されているH-IIA/Bロケット用のドーリーは緑色でしたが、H3ロケット用の新型ドーリーは外観も一新し、白・青・黒の3色でカラーリングされています。

ドーリーの上の構造物はMLを模擬したもの

プレス公開の様子

今回、この新型ドーリーを製造したのは日本車両製造株式会社で、新幹線をはじめとする鉄道車両の製造で有名な企業が、今回初めて宇宙関連設備の開発に携っています。12月5日(水)には三菱重工業(株)と共同で、愛知県半田市の工場内にて新型ドーリーをメディアの皆様に公開しました。前日まで雨が降っていましたが、公開当日はほぼ快晴という抜群の天気の下、全国から18社36名のメディアの方々にお越し頂きました。

プレス公開後、ドーリーを打上げ発射場がある種子島へ輸送します。とても大きく重い構造物であるため、それぞれを3分割にし、かつ一部の車輪を取り外し、船や特殊な車両で運びます。年が明けた1月14日(月)に打上げ発射場がある種子島の島間港に到着しました。種子島島内の移動はロケット機体同様、夜におこなわれます。分割したドーリーを載せた6台のトラックがゆっくりと種子島宇宙センターを目指します。現在は種子島宇宙センターで最終的な組立整備作業が行われており、今後、ドーリーとMLを組み合わせた試験等を予定しています。H3ロケットの「打上げ」を支える設備の開発も着実に進んでいます。

日本車両の工場出発の様子

島間港で船から下ろされるドーリーの一部

もっと詳しく

新型ドーリー種子島へ行く

2018年12月5日更新
H3ロケット用移動発射台(ML)が種子島宇宙センターに到着しました!

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種子島宇宙センターにおいて、ロケットを大型ロケット組立棟(Vehicle Assembly Building:VAB)で組み立てるとき、その台座として使用するのが移動発射台(Movable Launcher:ML)です。また、移動発射台は、ロケット打上げの当日、機体を射点まで運び、遠隔でロケット機体への推進薬充填や点検などを行う役割も担います。現在、JAXAでは、H3ロケット専用の移動発射台を新しく開発しています。

新しい移動発射台では、ロケット機体を支える仕組みがこれまでとは異なります。H-IIA/H-IIBロケット用の移動発射台は上面に機体を乗せて支えていましたが、H3ロケットでは機体全体が入る大きな穴(開口部)を設け、その側面に取り付けられた可動式の支持部で機体を支えます。これにより、全長が高くなったH3ロケットを既存の大型ロケット組立棟で組み立てられるようにしました。また、開口部を大きくすることでロケットエンジンの噴流が流れやすくなるため、打上げ時に発生する音響環境の低減、打上後の補修作業の軽減にも寄与します。この可動式支持部は、打上げ当日の最終カウントダウンにおいて、液体エンジンが正常に起動するまでの間、機体が飛び上がらないように押さえ込むための仕組みを設けています。さらに、開口部の側面に引き込み格納できるようになっており、上昇していく機体にぶつからないようにするとともに、支持部自身をロケットエンジンの噴流から守るようにしています。これらの機構は確実な作動が求められるため、工場において数多くの作動試験を実施しました。

移動発射台本体は、11月上旬に工場における製作・試験・検査を終えました。その後、7回に分けて種子島宇宙センターに海上輸送し、11月25日、合計約700トンのすべての部品を無事運び終わりました。
今後、種子島宇宙センターでは、2019年にかけて、移動発射台の再組立、検査、試験を実施していきます。

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2018年10月1日更新
H3ロケット推進系開発試験の進捗について

H3ロケットはH-IIAロケットと同様に液体水素と液体酸素をエンジンで燃焼させることにより推力を得ます。各推進薬タンクからエンジンに液体水素と液体酸素を供給するために必要となる配管やバルブ、センサなどの機器類の開発と、推進薬タンクを加圧し、エンジンへ液体水素と液体酸素を供給してエンジンを作動し、得られた推力によりロケット全体を飛行させる一連の推進系システムを開発するのが、推進系開発です。

配管やバルブ、センサなどの各機器類は液体水素の温度である-253℃と非常に低温な状態となり、更にロケット飛行中に生じる振動や音響による環境に晒されることから、そのような環境下でも正常に機能・性能が発揮できることを極低温作動試験や振動試験などの各種試験の中で確認しています。

2018年度後半には、推進系システムの確認として各機器類、エンジン、及び試験用の頑丈な厚肉タンクを組み合わせて行う厚肉タンクステージ燃焼試験(BFT:Battleship Firing Test)を計画しています。更に2019年度以降にはロケットの1段機体及び2段機体を用いた実機型タンクステージ燃焼試験(CFT:Captive Firing Test)といった実際のロケットに近い形での燃焼試験を行い2020年度の打上げに向けて段階的に開発試験を行っていく計画です。


2018年8月30日更新
SRB-3実機型地上燃焼試験を実施しました!!

SRB-3実機型地上燃焼試験を実施しました!!

H3ロケット用固体ロケットブースタ(SRB-3)の初めての地上燃焼試験が平成30年8月26日(日)に種子島宇宙センター固体ロケット試験場で実施されました。今回の試験は実機型モータの燃焼試験で、これまでの開発で設計してきた仕様で試験を行い、着火特性、燃焼推進特性、断熱材性能等のデータを取得することが目的でした。試験は当初予定していた8月25日(土)には気象条件が整わず実施できず、翌日の16時に再設定されました。試験では、点火後約100秒の燃焼により良好にデータを取得することができました。今後は、得られたデータを分析し、設計の妥当性を評価して、必要応じてフライト用の設計に反映する計画です。

当日はライブ中継による映像配信を行い、着火とともに音と噴煙が広がる様子を視聴者の皆様に向けて、リアルタイムで届けしました。また、併せて開催したプレス公開では8社13名のメディアの来訪があり、試験場から約900m離れた竹崎展望台から撮影頂きました。

SRB-3の開発計画では、今回の試験結果を反映したフライト仕様のモータを用いて来年度に2回の認定型地上燃焼試験を予定しています。


2018年7月3日更新
LE-9試験用エンジンの燃焼試験公開

LE-9試験用エンジンの燃焼試験公開

2018年6月25日、種子島宇宙センターの液体エンジン燃焼試験場においてLE-9実機型エンジン(試験用エンジン)の燃焼試験を報道陣の皆様に公開しました。梅雨明け前の激しい雨と雷の影響で、当初の予定より1日延期しましたが、試験当日は快晴に恵まれました。

LE-9実機型エンジンの燃焼試験は2017年4月から実施しており、その目的は、推力などの作動条件を変えた試験を繰り返し実施することで 様々なデータを取得し、機能・性能・耐久性などが設計意図通りであるかを確認することです。今回の試験では、2式目の試験用エンジンを約220秒燃焼させ、今回を含めこれまでに計8回、約1,350秒の燃焼実績を積み重ねることができました。燃焼試験場から約550m離れた取材場所では、バリバリという大きな音と振動とともに、大量の水蒸気が発生し、燃焼試験場があっという間に真っ白な煙に包まれました。

2式目のエンジン燃焼試験では、初めて100%の推力を達成し、また実際の打ち上げとほぼ同じ275秒間燃焼させるなど、LE-9エンジン開発にとって、大きな一歩を進めることができました。今後も試験用エンジンの燃焼試験を続け、その後、実際のフライトで用いるエンジンと同等の方法で設計・製造された「認定型エンジン」による試験をおこない、2020年度のH3ロケット初号機打ち上げを目指します。

なお、今回の試験では、初の試みとしてライブストリーミングによる実況中継を行いました。風向きが思わしくなく画面は白煙に包まれてしまいましたが、今後も色々な方法で開発現場の様子を皆様にお伝えしたいと考えています。


2018年5月31日更新
H3ロケットエンジン部構造強度試験の様子

H3ロケットエンジン部構造強度試験の様子

ロケットは、燃料タンク、各タンクを結合する構造、第1段と第2段を結合する構造、エンジンおよび固体ロケットブースタの発生する推力を受ける構造などで構成され、打ち上げ時の厳しい荷重や振動、熱などの環境に耐えることが求められます。H3ロケットでは、これらの構造の設計や製造に新たな技術を取り入れて、より低コストで、軽量かつ信頼性の高い構造を目指して開発を進めています。これらの構造が正しく設計されて打ち上げ時の厳しい環境に耐えることを検証するために、実物のロケットと同等の構造体を試作し、地上で荷重を負荷する強度試験を行います。

その第1弾として、2018年4月からエンジン部構造の強度試験を実施中です。エンジン部構造は機体の後端に位置し、打ち上げ前はロケットの燃料を含めた機体全体の質量を支えるとともに、飛行中はエンジンおよび固体ロケットブースタの発生する全ての推力を受けるため、非常に大きな荷重が複雑に負荷されます。
強度試験ではこれらの荷重を慎重に負荷しながら、構造の変形や歪を詳細に計測し、設計どおりであることを確認しています。
今後は、各構造の試作および強度試験を順次実施していく予定です。


2018年4月24日更新
H3ロケット用の発射管制棟が完成

H3ロケット用の発射管制棟が完成

種子島宇宙センターでは、H3ロケットの打ち上げに向けて、施設や設備の開発が始まっています。その一環として、今年の3月に「竹崎発射管制棟」(略称LCC)の建屋が完成しました。発射管制棟とは、ロケット打上げまでの作業に対する指揮・作業を遠隔操作で行う建屋です。H-IIAロケットの発射管制棟は射点近くの吉信地区にありますが、H3ロケットでは射点から約3km離れた竹崎地区に移しました。

H3の竹崎発射管制棟(LCC)は、全体指揮を司る竹崎総合指令棟(RCC)と隣接させて連携を取りやすくすること、発射管制を行う人員をH-IIAロケットに比べ1/3~1/4に減らすことを目指しました。これにより、管制室はとてもコンパクトになり、また、建設にあたっては、射点の眺望を阻害しないことも考慮しました。
竹崎発射管制棟(LCC)では、今後、発射管制装置や通話・放送等共通設備の設置が行われ、2020年度に種子島宇宙センターで行われるH3ロケットの総合試験や試験機打上げに使用されます。

2018年4月5日更新
H3ロケット電気系システム試験(その1)の様子

H3ロケット電気系システム試験(その1)の様子

ロケットには姿勢制御を行うためのセンサや計算機、地上との通信機器など多くの電気系機器が搭載されます。
H3ロケットではこれらの搭載機器について、コスト低減のための自動車用電子部品の適用や、信頼性向上のための冗長化、運用性向上のための機体内ネットワーク化などの新たな技術を取り入れて開発を進めています。
2018年2月から、これらの搭載機器の主要な機能をMHI飛島工場に集めて電気系システム試験(その1)を開始しました。この試験では、開発中の各搭載機器がネットワークや電源の基本仕様を満たしていることを確認しています。
今後は、今回の試験結果を反映して試験用の機器を試作し、電気系システム試験(その2)を実施予定です。

2018年1月29日更新
H3ロケット詳細設計結果について

H3ロケット詳細設計結果について

2017年12月にH3ロケットの総合システム詳細設計審査が行われ、総合システムとして詳細設計を完了し、製作・試験フェーズへの移行が可能であると判断されました。総合システムは、ロケット本体、種子島でのロケットの組立・打ち上げに用いる設備、飛行中のデータを受信する国内・海外の追跡管制局などの集合体です。
詳細設計審査の中では、変化を続ける世界中の人工衛星やロケットの動向を見極めながら、H3ロケットが国際競争力の高いロケットとして設計できたか?また、今後の試験でその設計をどのように確認するか?確認した結果をいかにフィードバックするか?残された課題は何か?など、プロジェクトの目標達成に向かって熱心な議論が重ねられました。
これからは、引き続きLE-9エンジンの燃焼試験やSRB-3の燃焼試験など大規模な試験を進めながら、試験機の製造を順次開始します。たくさんの要素の開発の中には、清々と進むものもあれば技術の壁を乗り越えながら進むものもあります。2020年度の打ち上げを目指し、これらの要素を統合し、慎重にひとつのシステムに仕上げて行きます。2014年度から始まった開発は5合目を過ぎ、まさに佳境に入ってきました。JAXAと関連企業で一体となって、高い山の頂を目指したいと考えています。

2017年12月28日更新
H3ロケットアンテナパターン試験の様子

H3ロケットアンテナパターン試験の様子

ロケットを打ち上げる際、重要な要素のひとつが「地上との通信を確保すること」です。
H3ロケットには地上とロケットとの通信をつなぐ重要な役割を果たすアンテナが数多く搭載されており、それらを通じて地上の管制官が飛行状況や安全性の確認を行います。
通信を成立させるために重要なのが、どの方向の電波がつながりやすいかを表す「アンテナパターン」と呼ばれる通信性能です。
アンテナパターンはロケットの管制や飛行経路設計において、とても大切なパラメータとなっています。

H3プロジェクトでは2017年7月~12月の間、筑波宇宙センター電波試験設備にてH3ロケット搭載予定の各種アンテナの性能試験を実施しました。
試験では実際の飛行状態を模擬するため、約10mのロケットのモデルにアンテナを搭載しました。
試験は順調に完了し、アンテナは設計通りの性能を満たすことが確認されました。
この結果は今後ロケットとの通信回線設計、飛行経路設計に順次反映されていきます。

2017年11月22日更新
LE-9試験用エンジン記者公開

LE-9試験用エンジン記者公開

2017年11月14日、種子島宇宙センターにおいてLE-9試験用エンジンの記者公開を行いました。当日はあいにくの雨模様でしたが、全国より多くのマスメディアの皆様にご参加いただき、燃焼試験場に取り付けられたLE-9エンジンや計測制御室をご覧いただきました。
LE-9エンジンは、H3ロケットの1段エンジンとして新しく開発している液体ロケットエンジンです。2017年4~7月におこなわれた1基目の試験用エンジン(実機型#1)を用いた燃焼試験では、起動/停止シーケンスの確認や各コンポーネントの性能データを取得することに重点を置きながら試験を進めました。今回公開されたLE-9エンジンは2基目の試験用エンジン(実機型#2)で、現在、実機型#1エンジンの試験結果を反映しつつ、燃焼試験に向けた準備を進めています。


2017年10月12日更新
H3 音響サブスケール試験 “HARE” の様子

H3 音響サブスケール試験 “HARE” の様子

ロケットの打ち上げ時には大型旅客機のエンジン100基分のエネルギーに相当する極めて大きな音が発生します。この音はロケットに搭載されている人工衛星やロケット本体にも影響を与えます。そのためH3ロケットでは、世界最高レベルに音響低減した環境を提供することを目指しています。その一環として、2017年4月~9月に能代ロケット実験場(秋田県)において、音響サブスケール試験(H3 scaled Acoustic Reduction Experiments: HARE)を実施しました。
これまでのロケット開発では、打ち上げ時にどれぐらいの音響が生じているかを調べるため、簡易な試験や数値解析により、音響低減のための地上設備(注水装置や遮音板など)を設置して対策をしてきました。H3ロケットでは、今回、ロケット機体と打ち上げ設備を1/42スケールで模擬した試験を実施し、打ち上げ時に発生する音響の強さや音響低減のための設備をより良いものにするために必要なデータ、さらに、固体モータ着火時に発生する急激な圧力上昇に関するデータを取得しました。
今後、これらの試験データのほか、数値解析、H-IIA、H-IIBロケット打ち上げの機会を活用した実環境データなどを用いて、打ち上げ時の音響発生・低減のメカニズムの解明を図り、H3ロケットの機体、地上設備の設計に反映していく予定です。



2017年9月4日更新
H3ロケット立体パネルの前で記念撮影してみませんか!?

H3ロケット立体パネルの前で記念撮影してみませんか!?

今月、JAXAの施設では、各地で特別公開を実施しています。
9月30日(日)には、筑波宇宙センターの特別公開日があります。
筑波宇宙センターの特別公開日当日は、総合開発推進棟(C-1)1階にH3ロケット立体パネルを設置する予定です。
角度を調整して撮影すれば、飛び出すH3ロケットと一緒に宇宙遊泳する写真が撮影できるかも!?
ぜひ、パネルを探して記念撮影してください。当日はH3ロケットのミニ講演の他、水ロケット工作や打ち上げ、H-IIロケットツアーなどにおいても、H3プロジェクトのメンバーが皆様をお待ちしています。お近くの方は遊びに来てくださいね。



2017年8月8日更新
LE-9エンジン用ターボポンプ単体試験の様子

LE-9エンジン用ターボポンプ単体試験の様子

JAXA角田宇宙センターでは、LE-9エンジンに使われるターボポンプの単体試験が行われています。ターボポンプはエンジンに燃料(液体水素)と酸化剤(液体酸素)を供給する重要な構成品です。液体水素ターボポンプでは、1秒間に約750リットル(ドラム缶約4個分)もの液体水素をエンジンの燃焼室に送り込みます。ターボポンプの単体試験では、エンジンに組み込まれた状態を模擬してターボポンプの機能・性能を確認しています。試験に用いた液体水素は、バーンポンドと呼ばれる未燃の水素を処理する装置を用いて燃焼させて、安全に処理しますが、その火柱は約50mにも達します。『「使いやすい」ロケットを目指して~LE-9ターボポンプ単体試験~』では、この液体水素ターボポンプ単体試験の現場の様子を交えて開発の概要を映像で紹介しています。



2017年6月30日更新
H3ロケット用第2段エンジンLE-5B-3の開発状況

H3ロケット用第2段エンジンLE-5B-3の開発状況

LE-5B-3エンジンは、H3ロケットの第2段エンジンとして開発が進められている液体ロケットエンジンで、H-IIA/H-IIBロケットの第2段に用いられているLE-5B-2エンジンの改良型です。十分な実績と高い信頼性を持つLE-5B-2エンジンに対し、H3ロケットの大型化に伴い、より低燃費で、より長時間の作動が可能となるよう改良を加えています。
2016年8月までに改良設計を終え、2016年12月~2017年1月にかけて、燃料の液体水素をエンジンの燃焼室に送り込む液体水素ターボポンプ(人間で言えば心臓の役割を担う)の試験に成功しました。
2017年3月にはこの液体水素ターボポンプを搭載した認定型(その1)エンジンが完成し、同月より燃焼試験を開始しています。試験は順調に進んでおり2017年9月までに改良した設計が適切であることを確認する予定です。



2017年6月15日更新
H3ロケット用固体ロケットブースタSRB-3の開発状況

H3ロケット用固体ロケットブースタSRB-3の開発状況

SRB-3はH3ロケット用の固体ロケットブースタとして開発が進められている固体燃料を使った補助ロケットです。2本または4本のSRB-3を装着することで、H3ロケットの打ち上げ能力は段階的に引き上げられ、特徴の1つである柔軟性(High flexibility)の実現に貢献しています。開発では、H-IIA/H-IIBで使用されているSRB-Aで培った技術を活用しつつ、結合方式などを簡素化し、低コスト化を追求しています。モータのサイズはSRB-Aとほぼ同じで、将来はイプシロンロケットの第1段にも適用される計画です。
これまでの設計検討の結果を受けて、2017年4月からは実機大のモータケースを使用した強度試験を開始しました。今後、地上燃焼試験や分離試験など各種試験を実施する予定です。



2017年4月28日更新
H3ロケットCG映像公開

H3ロケットCG映像公開

2020年度の打ち上げに向けて開発が進められている「H3ロケット」のCG映像が公開されました。
雲を突き抜けて宇宙へ上昇していくシーンから始まるこのCGでは、現在開発中のH3ロケットのイメージを約1分で紹介しています。
開発が佳境に入るなか、新しいロケットの完成に向けて、ぜひH3ロケットを一緒に応援してください。



2017年3月31日更新
H3ロケット用LE-9エンジン完成、種子島での燃焼試験へ

H3ロケット用LE-9エンジン完成、種子島での燃焼試験へ

試験用のLE-9エンジンが完成しました。エンジンは2017年3月31日に宇宙航空研究開発機構種子島宇宙センターにおいて、液体ロケット試験場のスタンドに設置され、燃焼試験の準備作業が行われています。
LE-9エンジンは、これまでのエンジン開発で得られた知見、数値シミュレーション、各種要素試験などで高い信頼性を保つための設計手法を導入することにより、開発に伴うリスクを低減しつつ開発を進めています。JAXAは開発を担当している三菱重工業株式会社及び株式会社IHIと協力して、引き続き慎重に開発を進めていきます。
エンジン燃焼試験の計画は、決まり次第以下のホームページに掲載します。



2017年2月22日更新
H3ロケット用LE-9エンジンのターボポンプ単体試験(その1)の結果について

H3ロケット用LE-9エンジンのターボポンプ単体試験(その1)の結果について

2016年12月27日付でお知らせしましたH3ロケット用LE-9エンジンのターボポンプ単体試験(その1)を実施しましたので、結果をお知らせします。
本試験は、LE-9エンジン用ターボポンプの機能・性能等に関するデータの取得を目的としており、2017年2月20日までに行われた一連の試験において所期のデータを取得しました。今後得られたデータを詳細に評価するとともに、一部分解を伴う点検を行い、損傷など異常がないことを確認します。
その後、本ターボポンプをエンジンに組み込み、宇宙航空研究開発機構 種子島宇宙センターにおいてLE-9実機型エンジン燃焼試験(その1)を実施する予定です。

2016年7月20日更新
記者説明会を実施しました

記者説明会を実施しました

2016年7月20日(水)、基本設計を終えて詳細設計を実施中のH3ロケットについてJAXA東京事務所にて記者説明会を実施し、その目指す姿やシステム概要、基本設計結果などに関して説明しました。
説明会にはH3プロジェクトチームプロジェクトマネージャ岡田匡史、サブマネージャ有田誠が登壇しました。
説明会の模様は、インターネット録画配信にてご覧いただけます。

2016年7月7日更新
H3ロケット開発のロゴマーク

H3ロケット開発のロゴマーク

H3ロケット開発のロゴマークを作成しました。H3ロケットの開発担当者が心をひとつにしてゴールを目指すために作成したシンボルマークです。
「これからの日本の宇宙開発を支えるH3ロケットが力強く宇宙に向かってゆく姿」をシンプルに表現するため、幾何学的なラインで構成しています。オレンジはH3のイメージカラーです。その両脇の白は、固体ロケットブースタと噴煙を表しています。

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