平成31年2月理事長定例記者会見

理事長定例記者会見

山川理事長の定例記者会見のトピックスをお伝えします

日時:平成31年2月8日(金) 13:30-14:30

場所:JAXA東京事務所 B1F プレゼンテーションルーム

司会:広報部長 鈴木 明子

革新的衛星技術実証1号機 小型実証衛星1号機(RAPIS-1)の軽量太陽電池パドル(TMSAP)展開について

 先月1月18日に打ち上げられました小型実証衛星1号機(RAPIS-1)はクリティカルフェーズを終えまして、現在初期運用を続けています。
 小型実証衛星1号機(RAPIS-1)に搭載しましたJAXA実証テーマであります「軽量太陽電池パドル(TMSAP: Thin Membrane Solar Array Paddle)」の展開実験を昨日行いましたので、ご報告させていただきます。
 衛星の高機能化に伴いまして、例えばオール電化衛星などの大電力化のために太陽電池パネルの軽量化と高出力化が求められています。これに応えるために、JAXAは約10年をかけまして、従来の1/3という大幅軽量化を実現します「薄膜3接合太陽電池セルアレイシート」と出力質量比、質量あたりの出力という意味ですが、150w/kgの性能を持ちます軽量太陽電池パドルの開発を行ってまいりました。軽量化を実現するために、薄膜3接合太陽電池セルアレイシートとそれを保持しますフレーム型パネル、太陽電池パネルの展開用ヒンジとそしてその保持解放機構のすべての部品を新規開発しまして、この機構を小型実証衛星1号機(RAPIS-1)にて搭載し、軌道上で5枚のパネルの展開実験を行っています。この軽量太陽電池パドルが正常に展開完了するかどうか、そしてパドル展開後に正常に太陽電池からの電力が供給されるかどうかを実証します。

 昨日2月7日にTMSAP展開動作を実施しまして、搭載している展開モニタスイッチ、および「展開確認用モニタカメラ」(CMRD2)にて撮像した画像にて正常に展開していることを確認いたしました。また、太陽電池からの発生電力について正常であることも同時に確認が取れております。
 今後、ミッション終了まで太陽電池の出力をモニタしてまいります。

小型実証衛星1号機(RAPIS-1) 軽量太陽電池パドル(TMSAP)が展開する様子(展開確認用モニタカメラ(CMRD2)にて撮像)

はやぶさ2のリュウグウへのタッチダウン運用について

 「はやぶさ2」は現在、小惑星リュウグウ近傍での観測活動を行っています。今週、リュウグウへのタッチダウンの運用計画と場所を発表いたしましたが、着陸は、地上時刻で日本時間2月22日(金)8時頃になる予定です。今回のタッチダウンでは、すでに投下済みのターゲットマーカを頼りに着陸して、リュウグウ表面物質の採取を試みる予定です。
 タッチダウンの場所は約6メートル幅の領域でありまして、高い着陸精度が要求されます。この3ヶ月間、高精度な着陸実現のため、小惑星モデルの高精度化、自律制御のためのチューニング、着陸時の姿勢の工夫など「はやぶさ2」プロジェクトチームの総力を挙げて検討してきました。大学を含むサイエンスチームが総力を挙げ、タッチダウン場所付近の地形について10cm精度の地図を作成し、エンジニアリングチームが「はやぶさ2」探査機の性能を徹底的に追求し、数mという高精度な航法誘導を実現しました。運用も日々の訓練を重ねており、その技術を熟練させてまいりました。サイエンスチームとエンジニアリングチームの叡智を結集し、この難関に挑みたいと考えております。
 また、海外宇宙機関の協力も頂いており、臼田局と海外局を連携した運用局体制を確保して、タッチダウンへ向けた作業を進めているところであります。
 今月2月は、小惑星リュウグウが太陽から一番、その軌道上から遠いところにある遠日点付近にありまして、太陽からより離れた位置にあるため、熱的環境も緩和され、約1時間程度の低高度での運用が可能とも聞いております。
 2月期の第2回目「はやぶさ2」記者説明会として、2月20日(水)に、タッチダウンに向けた質疑応答中心の記者説明会を行う予定です。タッチダウン当日の22日は、JAXA相模原キャンパスにプレスセンターを開設します。このJAXA東京事務所もテレビ会議接続をしますので、ぜひご参集ください。タッチダウンの前後1時間は管制室の様子について、解説を入れたWeb配信も行う予定です。
 現在、準備は整い,あとはその時を待つだけという状況になっております。私としては「はやぶさ2」プロジェクトチームを信じており、その成功を確信しているところでございます。

温室効果ガス観測技術衛星2号「いぶき2号」(GOSAT-2)の定常運用へ移行について

 昨年、平成30(2018)年10月29日に打ち上げられました、環境省(MOE)、国立研究開発法人国立環境研究所(NIES)およびJAXAの3機関による共同プロジェクトであります温室効果ガス観測技術衛星2号「いぶき2号」(GOSAT-2)は、打上げ翌日のクリティカル運用終了後に、搭載する2つのセンサの初期機能確認を行っていました。
 初期機能確認におきまして、昨年末から、自動で雲を避けて観測するインテリジェントポインティング機能を持つ温室効果ガス観測センサ2型(TANSO-FTS-2)(タンソ-エフティーエス-ツー)と、雲やエアロソルの観測能力を強化するために搭載されている「雲・エアロソルセンサ2型(TANSO-CAI-2)(タンソ-カイツー)」の、初画像の取得や初観測の結果について報告してまいりました。
 「いぶき2号」(GOSAT-2)では、「いぶき」の観測対象であります二酸化炭素、メタンの観測精度を高めるとともに、新たに一酸化炭素の吸収・排出源の特定をすることも目的としています。一酸化炭素を測定することで、人為起源の温室効果ガス排出量を推定できるようになります。これらの二酸化炭素とメタンの観測精度が大きく向上したこと、そして一酸化炭素を測定できることも確認できました。
 先月末までの「いぶき2号」の初期運用フェーズにおける活動結果を審査し、定常運用に必要な機能・性能を満足しており、地上システムも正常に運用されていること、そして今後の運用計画やプロジェクトチームの体制が適切であることを確認して、「いぶき2号」は今月から「定常運用フェーズ」へ移行しました。
 今後、我々がレベル1プロダクトと呼んでおります二酸化炭素やメタン等の大気中の量を求めるための元データとなりますTANSO-FTS-2センサで測定されましたスペクトルデータやTANSO-CAI-2センサで測定されました輝度データの6か月後の公開を目指し、初期校正作業を進めてまいります。また、各種データの公開に向けまして、環境省、国立環境研究所との更なる連携に努めてまいりたいと考えております。

健康長寿社会実現への貢献を目指した「きぼう」利用に係る東北大学東北メディカル・メガバンク機構との連携協定の締結について

 先ほど冒頭、説明がありましたが、本日14時15分から、東北メディカル・メガバンク機構(ToMMo、トモ)にて、ToMMo-JAXA共同での記者説明会を開催いたします。健康長寿社会実現への貢献を目指しまして、相互に連携して取り組むための基本協定を締結する予定です。本会見後にJAXA東京事務所から東北大学の記者会見会場をテレビ会議システムで接続いたしますので、引き続きご参加いただければ幸いです。

 このToMMoは、未来型医療を築いて東日本大震災被災地の復興に取り組むために作られました機構です。
 ToMMoは、被災地の方々の健康を継続的に調べて、バイオバンクを作り、そこへ集まる試料や医療情報とゲノム情報などから遺伝子の研究を発展させることを目指しており、また未来型医療を支える人々を育て、世界にさきがけた新世代の医療を創り出す活動を目指しております。ToMMoは、日本最大規模の三世代の地域住民コホートの生体試料と健康情報を蓄積しているとのことで、この日本最大規模というのは約15万人規模と聞いております。特定の人々の集団を一定期間にわたって追跡した結果に基づく複合バイオバンクを構築することで、生活習慣などの環境要因・遺伝的要因などと疾病発症の関係を解明する研究である、いわゆるコホート研究に大きな実績を上げています。
 詳細については、この後14時15分からの記者説明会に譲りますが、東日本大震災からの復興や国の健康医療の向上を支える機関とJAXAとの協力は、新たなイノベーションを生み出す非常に良い取り組みだと考えております。

国際宇宙ステーション「きぼう」利用シンポジウム~拡がる「きぼう」利用の未来~の開催について

 来週2月12日と13日の2日間にわたって、東京都中央区日本橋におきまして、有人宇宙施設である国際宇宙ステーション「きぼう」日本実験棟における利用の取組み・成果の発信と利用促進を目的とした、国際宇宙ステーション「きぼう」利用シンポジウム、サブタイトルとして、~拡がる「きぼう」利用の未来~を開催します。
 「きぼう」を利用された企業や大学等の利用者に、取り組み状況や成果、今後の展望などをご発表いただきまして、ご来場者の方へのネットワーキングの場にもなっております。
 1日目は「きぼう」利用における成果発表として、JAXAが力を入れております「きぼう」の民間利用の拡大や国の科学技術イノベーションへの貢献の観点から、3つの話題でパネルディスカッションを中心に開催する予定です。
 初日は、①健康に暮らす社会に向けた宇宙の活用、②宇宙を新薬設計に役立てる、③活動領域を広げる実践場としての宇宙空間、この3つのパネルディスカッションとなります。
 シンポジウムの2日目はJAXA/NASAジョイントワークショップのほか、ISS利用の将来展望などに関する若田理事とNASA HQ ISSプログラムのDirectorとの対談をはじめとした基調講演、国内外の民間企業とのパネルディスカッションなどを予定しております。
 ISS、として「きぼう」利用にご関心のある民間事業者も多く参加されると伺っておりますので、ぜひとも足をお運びいただければと思います。

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