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国際宇宙ステーション「きぼう」日本実験棟を利用した
高品質タンパク質結晶生成実験(有償利用)の実験結果速報、並びに
戦略的なパートナーシップ契約の締結について

平成29年6月9日

ペプチドリーム株式会社
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構

 ペプチドリーム株式会社(代表取締役社長 窪田 規一、本社:東京都目黒区、東証第一部)、以下「ペプチドリーム」)および国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(理事長 奥村 直樹、以下「JAXA」)は、国際宇宙ステーション「きぼう」日本実験棟を利用した高品質タンパク質結晶生成実験(以降、JAXA PCGという)において、現在の有償契約からさらに取扱う試料数を6倍増加させ、協力関係を発展させた戦略的なパートナーシップ契約(締結期間:平成29年8月~平成32年8月)を締結しました。

 ペプチドリームとJAXAは、平成28年2月に有償利用契約を締結して、結晶化条件の最適化などを行ってまいりました。平成29年2月から3月にかけて、第1回目の宇宙実験を実施し、ペプチドリームから提供を受けた標的タンパク質(HER2)と特殊環状ペプチド(以下、候補化合物という)を「きぼう」で結晶化し、X線結晶構造解析したところ、地上では得られなかった高い分解能で標的タンパク質と候補化合物の結合様式を明らかにすることに成功しました。さらに、明らかになった結合様式は、これまでに知られていない極めてユニークなものであることも判明しました。
 この精密な3次元構造の決定は、標的タンパク質に対する詳細な新薬設計を後押しするものであります。

 ペプチドリームとJAXAの互いの強みを生かした協力関係に基づく戦略的なパートナーシップ契約の締結により、「新薬設計支援プラットフォーム」としての「きぼう」利用を通して、より短期間で効率的に創薬標的タンパク質と医薬品候補化合物の構造情報を取得し、さらには日本発・世界初の医薬品創成の早期実現に挑戦します。

1. 実験結果概要

  • 実施期間:平成29年2月24日~3月18日
  • 実験計画:JAXA PCG 「4℃での結晶化実験(第1回実験)」で実施
  • 仕組み:ペプチドリームとJAXAの有償利用契約(平成28年2月22日締結)に基づく

 地上で行った結晶化実験では、低品質の結晶を得るにとどまり、特殊環状ペプチドとの結合状態を決定できませんでした。今回、「きぼう」日本実験棟を利用した4℃結晶化実験によって、革新的なペプチド-薬物複合体の創出を目指した特殊環状ペプチドの構造を決定可能な高品質な共結晶を得ることに成功し、分解能2.5Åで構造決定できました。
 ペプチドリームでは、今回得られたタンパク質と特殊環状ペプチドの詳細な3次元構造を用いて、新薬設計につなげていく予定となっています。本実験の結果を受け、ペプチドリームとJAXAの契約を、これまでの有償利用契約からさらに一歩進展させた戦略的なパートナーシップ契約へと移行させます。

JAXA PCGに関する事項は以下を参照ください。
http://iss.jaxa.jp/kiboexp/theme/first/protein/

2. 有償利用契約の背景

 ペプチドリームは、平成27年9月、国際宇宙ステーションの「きぼう」日本実験棟で行われる高品質タンパク質結晶生成実験 第2期シリーズ 民間利用促進コース(トライアルユース)に応募し、JAXAへの委託契約を締結しました。その後、トライアルユースの結果に基づき、平成28年2月に複数試料を対象とした有償利用契約を締結しました。JAXAでは、有償契約に基づき、タンパク質試料生産に係るコンサルティング、タンパク質の高純度精製、結晶化条件検討、宇宙実験、回折データ取得、構造解析まで一連の作業を実施しており、本年8月に契約期間を終了する予定となっています。

前回の有償利用契約に関するプレスリリースは以下を参照ください。
http://www.jaxa.jp/press/2016/02/20160224_protein_j.html

3. 戦略的なパートナーシップ契約の締結について

 本契約は、これまでの有償利用契約を更に発展させることで、対象期間を1.5年間から3年間に、取扱う試料数を従来の6倍に増やし、戦略的パートナーとして協力関係をより強化させるものです。世界の大手製薬企業とアライアンスを構築し、創薬のハブ企業となっているペプチドリームが保有する複数の創薬ターゲットを対象に、JAXAが試料生成への技術的助言から宇宙実験、構造解析までの一連の作業を受託する包括的な契約内容であり、ペプチドリームの研究状況に応じた迅速かつ柔軟な宇宙実験の実施を可能とします。

 特殊環状ペプチドによる創薬開発プラットフォームシステムという世界に類を見ない技術で創薬研究開発の分野をリードするペプチドリームと、微小重力環境という稀有な研究環境を活用した高品質タンパク質結晶化技術を有するJAXAが包括的に連携することにより、より短期間で効率的に創薬標的タンパク質と医薬品候補化合物の構造情報を取得し、さらには日本発・世界初の医薬品創成の早期実現に挑戦します。

【ペプチドリーム株式会社 常務取締役 リード・パトリック及び取締役研究開発部長 舛屋 圭一のコメント】

 今回のHER2と特殊環状ペプチドの「高品質タンパク質結晶生成実験」の結果に大変興奮し、満足しております。JAXAでは、地上での繊細かつ困難な結晶化条件検討を行っていただき、最終的に「きぼう」での4℃結晶化実験成功へとつなげた高い技術力に感服しております。
 創薬研究の初期・後期に関わらず、高分解能での3次元構造解析は、ヒット化合物からリード化合物へ、またリード化合物から最終医薬品候補化合物への最適化には大変重要であり、得られることによる研究開発の加速効果は絶大であります。ペプチドリームでは今回の結果を最大限に活用し、HER2を標的としたペプチド-薬物複合体の最適化を加速し、早期の臨床開発入りを目指します。


【参考】

ペプチドリーム株式会社について

 ペプチドリーム株式会社は、「日本発、世界初の新薬を創出し社会に貢献したい」という現社長 窪田規一と現社外取締 役菅裕明(東京大学大学院教授)の共通の夢から、平成18年7月に設立されました。独自の創薬開発プラットフォームシステム:PDPS(Peptide Discovery Platform System)を用いて、極めて広範囲にわたる特殊ペプチドを多数(数兆種類)合成し、高速な評価を可能にすることで、創薬において重要なヒット化合物の創製、リード化合物の選択、並びに創薬標的タンパク質と医薬品候補化合物の相互作用様式(ファーマコフォア)の理解を極めて簡便に、かつ、効率的に行えるようにしました。ペプチドリーム株式会社は、特殊ペプチドを用いた創薬企業の世界的なリーダーとして世界中の病気で苦しんでいる人々に画期的新薬を提供することを使命として、研究開発に取り組んでおります。

HER2とは

 HER2タンパク質は受容体型チロシンキナーゼです。HER2タンパク質は心臓や神経の発達や維持に関与し、その他の細胞でも細胞増殖、分化などの調節に関与しています。HER2遺伝子に異常が発生するとガン遺伝子として働くことが知られており、HER2タンパク質に阻害化合物を結合することで、その働きを抑え、細胞の悪性化を抑制することが期待されています。

特殊環状ペプチドとは

 特殊環状ペプチドとは20種類の天然アミノ酸と非天然(化学合成品を含む。)の特殊アミノ酸を結合させて創成した「特殊ペプチド」の両端を結びつけて環状にしたものです。本技術の開発により、体内でより長く安定した構造を維持することが可能となり、従来のペプチド医薬品ではなしえなかった安定した構造を持つ特殊環状ペプチドを容易・迅速・安価・大量に創り出すことが可能となりました。

国際宇宙ステーション(ISS)

特殊ペプチドとタンパク質の結合


4℃結晶化実験とは

 JAXAはこれまで20℃での結晶化実験を進めてきましたが、新たな結晶化手法を技術開発することで米国便を使った4℃結晶化実験が可能となり、平成29年2月から第1回実験を開始しました。これにより扱える結晶化温度帯が増え、取り扱いが可能となるタンパク質の種類が増えました。
 4℃結晶化実験のほか、打上げ・回収手段をこれまでのロシア(ソユーズ宇宙船・プログレス補給船)のみから、日米露の輸送船による打上げ・回収手段に選択肢を拡大し、利用者の求める結晶化実験を国際宇宙ステーションでタイムリーに実施することが可能となりました。また、ユーザーの多様性・拡大を目指して、搭載試料の高密度化や保冷性能向上に向けた結晶化容器の新規開発に引き続き取り組んでまいります。

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