2025年(令和7年)9月理事長定例記者会見

理事長定例記者会見

山川理事長の定例記者会見のトピックスをお伝えします

日時:2025年(令和7年)9月12日(金) 13:30-14:15

場所:JAXA東京事務所 B1F プレゼンテーションルーム

司会:広報部長 佐々木 薫

1. 最近のプロジェクト、事業等の取り組み

● いぶきGW」(GOSAT-GW)搭載TANSO-3およびAMSR3による初観測

 JAXA、環境省様および国立環境研究所様が、共同で開発した温室効果ガス・水循環観測技術衛星「いぶきGW」(GOSAT-GW)は、今年6月29日に打ち上げられ、現在、初期機能確認運用を実施しています。
 これまで、7月中旬には、同衛星に搭載したセンサのうち、『温室効果ガス観測センサ3型(TANSO-3)』による初観測を実施いたしました。また、8月中旬からは、同衛星に搭載した、もう一つのセンサである『高性能マイクロ波放射計3(AMSR3)』の観測を開始し、それぞれの初観測結果についてプレスリリースを行っております。
 「いぶきGW」の初期機能確認運用期間は、打上げ後約3か月間を予定しており、まもなくセンサの精度確認やデータ補正等を行う初期校正検証運用に移行、この初期校正検証は打上げから約1年後頃までを目安に実施し、その後、定常的な観測運用へ移行する予定です。引き続き、プライムメーカの三菱電機株式会社様をはじめ衛星運用に携わる企業、機関等の皆様とともに、定常運用までのステップを着実に行ってまいります。

● 大西宇宙飛行士の帰還、油井宇宙飛行士の活動状況

8月10日に地球に帰還した大西卓哉宇宙飛行士は、現在、NASAジョンソン宇宙センターにて、JAXAのフライトサージャン管理のもと、リハビリトレーニングを順調に実施しており、健康状態も良好と報告を受けています。

 今回の約5か月に渡る国際宇宙ステーション(ISS)長期滞在で培った経験を活かし、今後も、我が国の宇宙開発と国際協力のさらなる発展に向けた様々な場面で活躍してくれると考えております。

 大西宇宙飛行士からたすきを受け取った油井亀美也宇宙飛行士は、ISS長期滞在を開始してから約1ヶ月が経過し、軌道上での科学実験などに精力的に取り組んでいます。

 最近の活動としては、宇宙環境が植物の細胞分裂に与える影響を調べるPlant Cell Division実験において、油井宇宙飛行士が実験の準備とサンプル設置を行い、実験を開始しました。その他にも、静電浮遊炉を使用した高融点材料の性質を調べる実験でのデータ取得開始や、宇宙環境での火災安全性向上に向けたFLARE実験も継続的に実施しております
 さらに、衛星地球観測コンソーシアム(CONSEO)および防災科学技術研究所様と連携し、油井宇宙飛行士による地球の撮影と、人工衛星による地球観測や災害・防災に関連する情報とを連動させる取り組みである「地球を共に感じようプロジェクト」の発信にも、精力的に取り組んでいます。

● 新型宇宙ステーション補給機1号機(HTV-X1号機)/ H3ロケット7号機の10/21打上げに向けた射場作業

 また、ISSに物資等を届ける『新型宇宙ステーション補給機1号機(HTV-X1)』の10月21日打上げに向けて、種子島宇宙センターでは、『HTV-X1号機』と、打上げロケットである『H3ロケット7号機』ともに、それぞれ射場整備作業が進んでいます。両プロジェクトメンバーをはじめ、関係企業の皆様と連携を密にし、より一層集中して取り組んでまいりたいと思います。

● 地球に接近する小惑星アポフィス探査計画RAMSESへの参画

 国際的に活発になってきている、地球接近天体からの脅威に備えるプラネタリーディフェンスの活動に対してJAXAも対応していくために、昨年4月に、プラネタリーディフェンスチームを設置し、その活動を進めてまいりました。

 2024年11月に、JAXAと欧州宇宙機関(ESA)との将来大型協力に関する共同声明において、ESAのRAMSES計画との協力可能性の検討について言及させていただいたことを受け、具体的には、『熱赤外カメラ』、『薄膜軽量太陽電池パドル』、『打上げ機会』の3アイテムの提供に向けた検討を加速いたしました。
 2024年12月改訂の宇宙基本計画工程表、および今年5月の宇宙基本計画工程表改訂に向けた重点事項においても、「小惑星Apophis接近に対する国際協力の枠組みへの参画の検討」について政府に言及いただいております。
 RAMSESへの参画に対し、日本の強みを活かすことにより、国内の産官学への大きな波及効果が期待できること、また、『熱赤外カメラ』、『薄膜軽量太陽電池パドル』、『H3ロケットによる打上げ』に関して技術的な成立性の見込みを得ることができましたので、先月8月22日の第98回宇宙開発利用部会において、これら3アイテムを提供するJAXAとしての意思を表明いたしました。
 ESAとの正式な連携に向けて、11月に開催予定のESA閣僚級会合の結果も踏まえて、具体的な取り決め事項を定めるべく、現在、調整を行っております。

● 宇宙戦略基金(第二期公募)

宇宙戦略基金の第二期24テーマにつきましては、5月から順次、公募を始め、既に23テーマの募集を行っております。本日、この記者会見終了後、最後の1テーマの公募を開始いたします。これをもちまして、第二期24テーマ全ての公募が開始されたこととなります。
 公募に向けた取り組みとしては、24テーマ全ての技術開発テーマについて公募開始時期の目安を公表するとともに、全国各地から各種イベントでの講演機会をいただくなど、周知活動に力を入れてきました。これらの活動にご協力いただいた関係者の皆様に、この場をお借りして感謝申し上げます。
 今後も多くの方々にご関心・ご検討をいただき、よいご提案をいただけることを期待しております。

2. 高校生から大学院生を対象にした体験的学習機会の提供

 今年5月に、設立20周年を迎えたJAXA宇宙教育センターでは、高校生から大学院生を対象に、体験的学習機会の提供を行っています。
 本日は、高校生向けの「エアロスペーススクール」と、大学生・大学院生向けの海外派遣プログラムについてご紹介します。

 まず、「エアロスペーススクール」は、JAXAの事業所を会場として、高校生が協力して「宇宙・航空ミッション」に取り組む宿泊型教育プログラムです。
 航空宇宙分野の第一線で活躍するJAXA職員や専門家から講義を受け、実習・見学・グループワークを行い、科学技術への探求心を育み、将来への手がかりを見つけてもらうことを目的としています。
 「エアロスペーススクール」は2014年度から開催しており、卒業生は今年度までの11年間で、1,100人超えました。
 今年度も7月~8月の夏休み時期に合わせて、JAXA事業所がある角田、大樹、調布、筑波でそれぞれ開催いたしました。北は北海道、南は沖縄まで、全国の高等学校、中等教育学校、高等専門学校から、志望動機の作文により選ばれた合計75人が参加しました。
 参加者の多くは、宇宙や科学技術に特に興味を持ち、進路や将来を検討するために参加しています。参加している生徒は理科系文科系問わず、航空宇宙関連の職業を目指している生徒もいれば、まだ進路を検討中の生徒も含まれています。
 普段周りに宇宙好きがいないとか、話す仲間がいないという生徒も、「エアロスペーススクール」では同じ興味を持つ仲間に出会い、これまで聞いたことのない専門的な話やホンモノ体験に触発され、将来への視野を広げられたようです。また、夢を語り合っていく中で、自分は何がしたいのか信念の核の部分を見つけることができた生徒もいたと聞いています。

 次に、体験型教育プログラムの国際版として、「ISEB学生派遣」を紹介します。
 ISEBとは、International Space Education Boardの略で、欧州宇宙機関ESA、アメリカ航空宇宙局NASA、カナダ宇宙庁CSAとJAXAが中心となり構成されている国際宇宙教育会議です。

 この枠組みにおける活動の1つが「ISEB学生派遣」であり、学生が国際宇宙会議で研究発表を行い、世界中の専門家や学生との交流を通じて知見を深め、国際理解を育み、将来の宇宙活動を担う人材を育成することを目的として実施しています。
 「ISEB学生派遣」は、1999年より実施しており、これまで卒業生400人以上を輩出しています。
 今年も日本からは、論文により選抜された大学生・大学院生10名を、9月28日から6日間、オーストラリア・シドニーで開催される本プログラムに派遣する予定です。

 以上、2つのプログラムをご紹介しましたが、これらの卒業生は、航空宇宙関連分野で活躍しています。JAXAは、今後も引き続き、航空宇宙関連分野で活躍する人材の育成に尽力してまいります。

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