理事長定例記者会見
山川理事長の定例記者会見のトピックスをお伝えします
日時:2026年(令和8年)1月23日(金) 13:30-14:15
場所:JAXA東京事務所 B1F プレゼンテーションルーム
司会:広報部長 佐々木 薫
1. 最近のプロジェクト、事業等の取り組み
● H3ロケット8号機に関する原因調査
先日1月20日に宇宙開発利用部会の調査・安全小委員会にて、現在の進捗状況をご報告いたしました。今後もロケット関係機関に加えて、搭載衛星関係機関にもご協力をいただき、取得データ等を踏まえて発生事象を紐解くべく、あらゆる可能性を考慮して、引き続き調査を進めてまいります。
● 革新的衛星技術実証4号機
12月には、「革新的衛星技術実証プログラム」の4回目の実証となる「革新的衛星技術実証4号機」のうち、公募によりご提案いただいた8つの軌道上実証テーマ機器を搭載した「小型実証衛星4号機(RAISE-4)」が、ロケット・ラボ社のロケット「エレクトロン」によってニュージーランドから打ち上げられました。RAISE-4は現在、初期機能確認運用を行っております。なお、「革新的衛星技術実証4号機」は、RAISE-4のほかに、同じく公募によりご提案いただいたキューブサット8機で構成されております。このキューブサット8機も、「エレクトロン」での打上げを目指し、各キューブサットの関係機関・企業の皆様と連携して、打上げに向けた準備作業を一つひとつ進めております。打上げ時期等については調整でき次第、お知らせいたします。
● 日本人宇宙飛行士及び有人宇宙活動
1月15日、クルードラゴン宇宙船Crew-11に搭乗した油井亀美也宇宙飛行士を含む4名のクルーが、国際宇宙ステーション(ISS)での長期滞在を終了し、無事に地球に帰還いたしました。計画を前倒しての帰還となりましたが、長期滞在クルーが互いに支え合い、協力しながら課題を乗り越えたことは、ISS運用はもとより、未来の宇宙探査に向けた強固な絆を示すものと考えています。この連携と助け合いに基づく関係者の迅速な対応に心から感謝するとともに、アメリカ航空宇宙局(NASA)をはじめISS国際パートナーの皆様、国内関係機関の皆様、国民の皆様に改めまして御礼申し上げます。
油井宇宙飛行士は現在、NASAジョンソン宇宙センターでリハビリを順調に行っていると聞いております。また油井宇宙飛行士に続いて、諏訪 理(すわ まこと)宇宙飛行士を2027年頃のISS長期滞在員に指名し、1月9日に公表いたしました。
諏訪宇宙飛行士は、今回初めての宇宙飛行となりますが、これまで日本が「きぼう」日本実験棟やISS運用において培ってきた有人宇宙技術を基盤として、襷を引継ぎ、しっかりと役割を果たしてくれることと信じています。
JAXAでは引き続き政府・関係府省・関連企業等と一丸となって、「きぼう」日本実験棟、ISSを最大限活用し、利用成果の創出を図るとともに、有人与圧ローバーをはじめとする国際宇宙探査に資する技術実証、国際協力の強化、民間企業等との連携拡大に取り組んでまいります。
● アジア・太平洋地域宇宙機関会議(APRSAF-31)
少し時間が経ちましたが、昨年11月18日から21日の4日間、フィリピンにて、アジア・太平洋地域宇宙機関会議(APRSAF-31)が、フィリピン宇宙庁(PhilSA)と文部科学省、JAXAの3者共催により実施いたしました。40の国と地域から約500名以上が参加し、今回のテーマである“宇宙エコシステムの活用を通じて地域に力を与える”を踏まえて活発な議論を行いました。今後のAPRSAFの活動拡大、多様化を見据え、外部機関である国際協力機構(JICA)様が取り組んでいる、地球規模課題や開発途上国の課題解決に資する「宇宙人材育成」をテーマとした新たな分科会運営に着手するなど、創意工夫も行っています。
今回の成果の一つに、フィリピンのフェルディナンド・マルコス・ジュニア大統領の会議参加が挙げられます。APRSAFの公開記録上、初めての国家元首来訪となり、フィリピン国営メディアによるライブ中継が行われるなど、APRSAFの意義を広く発信する機会となりました。マルコス・ジュニア大統領のスピーチでは、『宇宙技術は科学者、技術者だけのものではなく、我々の生活の一部となっている』という発言や、『APRSAFは30年以上にわたりこの地域における宇宙協力の最も重要な会合の一つとして中心的な役割を果たしてきた』という発言からも、フィリピンはじめアジア・太平洋地域において、APRSAFが重要な位置づけとなっていることを、改めて実感いたしました。
次回のAPRSAFは、今年2026年10月にタイのバンコクにて開催予定です。続く2027年は、8年振りの日本開催となり、福岡県で開催を予定しています。
今回の成果を踏まえ、JAXAは、引き続き、アジア太平洋地域の宇宙協力を強化し、持続可能な宇宙活動の発展に貢献してまいります。
● EarthCARE衛星搭載・雲プロファイリングレーダ CPR観測データを活用した研究成果
定常運用に移行して約1年が経ちましたEarthCARE衛星(はくりゅう)に関する研究成果をご紹介いたします。
EarthCARE衛星には、JAXAと情報通信研究機構(NICT)が共同開発した雲プロファイリングレーダ「CPR」が搭載されております。CPRによる観測の特徴を一つあげると、これまで観測されていなかった、雲の内部で動く雲粒子の上昇・下降速度を、地球全球スケールで観測できるようになる点です。
このCPRによる実際の観測データと、東京大学が中心となって開発した「高解像度全球雲解像モデル」を用いた数値シミュレーションデータとの比較解析により、雲や大気の鉛直運動に関するメカニズムを明らかにすることを目的とした共同研究を、東京大学大気海洋研究所を中心に、九州大学応用力学研究所、JAXAで実施してまいりました。実測データを用いて評価することで、このモデルの精度向上に寄与する知見が得られております。研究成果をまとめた論文は、Nature系科学誌『Scientific Reports』に掲載されました。論文概要につきましては、1月20日付プレスリリースをご参照いただければと思います。
EarthCARE衛星には、CPRのほか、欧州宇宙機関ESAが開発した3つのセンサを搭載しており、これら4つのセンサを組み合わせた、複合的な観測データの提供が可能です。引き続き、観測データの提供などを通じて、将来の気候変動予測の改善や精度向上、気候変動対策等に貢献してまいります。



