2021年(令和3年)12月理事長定例記者会見

理事長定例記者会見

山川理事長の定例記者会見のトピックスをお伝えします

日時:2021年(令和3年)12月10日(金) 13:30-14:15

場所:オンライン会見

司会:広報部長 佐々木 薫

「小型実証衛星2号機」の運用状況について

 先月11月9日に、「革新的衛星技術実証2号機」を、イプシロンロケット5号機によりまして内之浦宇宙空間観測所から打上げて、所定の軌道に投入しました。

 「革新的衛星技術実証2号機」は、日本の優れた技術やアイデアを、衛星単位だけではなくて、部品やコンポーネント単位でも、軌道上実証の機会を提供するという「革新的衛星技術実証プログラム」として取り組んでいるものでございます。2号機となります今回は、企業や大学のほか、初めて高等専門学校の学生が開発した衛星も含めまして、9機の衛星、そして14の実証テーマを搭載しております。

 JAXAでは、部品や機器の実証テーマ6つを搭載しました「小型実証衛星2号機」(RAISE-2)の運用を担当しております。11月22日にプレスリリースさせていただきましたとおり、電源・通信系の正常動作を確認するクリティカルフェーズを終了して、現在は、初期運用に移行しております。初期運用では、6つの実証テーマ機器の動作確認を行っているところであります。

 このRAISE-2は、これから約1年間かけまして、各実証機器の軌道上実証を行う予定でございます。
 また、来年度には、「革新的衛星技術実証3号機」の打上げを予定しております。3号機は15の実証テーマ、9機の衛星で構成されておりますが、このうち、部品そしてコンポーネント・サブシステムの7つの機器については、すでにフライトモデルの引き渡しを受けておりまして、これらを搭載する「小型実証衛星3号機」の開発も進んでおります。
 引き続き、本プログラムを通じまして、宇宙利用の拡大と日本の宇宙産業の発展に繋げていけるように、取り組んでいきたいと考えております。

「しきさい」等地球観測衛星による洋上の軽石分布観測について

 8月に発生した小笠原諸島南方の海底火山であります福徳岡ノ場(ふくとくおかのば)の噴火によりまして、噴出された軽石が漂流して、沖縄、九州ほか伊豆諸島等への漂着が発生しております。私自身、今回のような自然活動に起因する事象が、社会環境に大きな影響を与えてしまう点を、改めて実感しておりまして、今回の災害で被害にあわれた方々にお見舞いを申し上げます。

 JAXAでは、この洋上を漂流します軽石について、現在運用中の「しきさい」、そして「だいち2号」による観測画像、さらには欧州の光学衛星「Sentinel-2」の観測画像をもとに軽石の分布を解析して、関係の防災機関や公的機関に情報提供を行っております。
 また、広範囲にわたる影響が懸念されていることから、広く情報発信することを目的に、今回の軽石に関する衛星情報をまとめた特設サイトを10月29日から公開し、継続的にレポートを掲載しております。
 「しきさい」は観測幅が広くて、衛星の進む方向と直交する1,150kmの幅を観測できます。また、海は陸上と比べまして太陽光の反射が少ないのですが、「しきさい」は海面を高精度に観測できる性能をもっているために、今回の軽石のような広域の海洋の状況を観測することに強みをもっております。
 一方で、雲がかかってしまう日には、残念ながら雲の下の様子は見えません。
 そこで、「しきさい」とは異なるタイミングで観測した「Sentinel-2」の画像も用いることで、洋上の状態を確認できる頻度を増やす工夫を行っております。
 さらに、レーダ衛星であります「だいち2号」も、今回の軽石の漂流、漂着を受けて、緊急観測を行っております。レーダ衛星は雲を透過した観測ができるために、天候に左右されない観測手段となります。
 このように人工衛星それぞれが持つ利点を生かしまして、組み合わせて観測することで、さまざまな分野での課題解決に地球観測データが役立つように、利用範囲の拡大に取り組んでおります。

 今回の「しきさい」、そして「Sentinel-2」観測画像から判読した軽石の位置情報を利用している事例を、一つご紹介いたします。
 海洋研究開発機構(JAMSTEC)殿が行っております「漂流予測シミュレーション」に、衛星による最新の軽石位置情報が取り込まれております。軽石漂流への対策を講じるためには、その軽石がいつどこに漂流、漂着するのかといった見通しが重要となります。そのシミュレーションの精度向上に、衛星で観測した位置情報が役立てられております。JAMSTEC殿からも、衛星からの判読データを取り込んだことによりまして「シミュレーションの計算結果も向上し、実際の漂流確認結果と近づいた」とのお話を伺っております。

 今回のように、広範囲で、かつ時間的にも長時間にわたる状況の把握には、宇宙からの人工衛星による観測が有効と考えております。さまざまな場面、より多くの利用者に役立つ情報を提供することが大事な役割と考えておりまして、JAXA単独ではなくて関連機関との連携を促進することで、利用者が使いやすい衛星観測情報を提供する工夫を図ってまいりたいと考えております。

第27回 アジア・太平洋地域宇宙機関会議(APRSAF-27)の開催結果

 11月30日から12月3日までの4日間、ベトナム科学技術院、文部科学省およびJAXAの共催によりまして、「多様なパートナーシップで宇宙イノベーションを拡げよう」をテーマとしまして、第27回目のアジア・太平洋地域宇宙機関会議(APRSAF-27)を初めてオンラインで開催いたしました。48の国と地域から、843名の参加登録がありまして、オンラインの効果もあって多くの方にご覧いただけました。
 昨年の開催を延期したため、分科会を含めた4日間の会議の開催は2年ぶりとなります。

 前半の2日間で行う分科会では、アジア・太平洋地域のニーズに応えて取り扱う分野を広げ、また、これまで4つの分科会だったものから、宇宙法政策分科会を新規に設置して、合計で5つの分科会を開催しました。
 これらの分科会では、例えば、気候変動適応等への衛星データ利用について、多国間での展開を引き続き実施することを確認しました。また、ロボットプログラミングコンテストや植物栽培実験などの企画を通じて、国際宇宙ステーション(ISS)「きぼう」日本実験棟の利用を促進するKibo-ABCイニシアティブの加盟機関が飛躍的に増加していること、具体的には従来と比べて7機関増えて19の機関になっておりますが、アジア・太平洋地域における「きぼう」利用への期待の高まりが見られ、国際宇宙ステーション(ISS)の重要性が再認識されました。
 そして、地域の宇宙法政策への関心の高まりに応えるために、今回新設しました宇宙法政策分科会では、アジア・太平洋地域の最新の宇宙法政策に関する議論が行われるとともに、「宇宙法制イニシアティブ(NSLI)」の期間延長が合意されて、第二フェーズが開始されました。NSLIというのは、宇宙法政策分野に特化したイニシアティブ、取り組みでございまして、2019年の名古屋開催時に立ち上げた後に、慶応義塾大学の青木教授が議長を務めます国連宇宙空間平和利用委員会(COPUOS)法律小委員会に、国内宇宙法制に関する報告書を、参加9か国から共同提出するなどの活動を行ってきました。

 後半2日間では、全体会合に先立って、宇宙産業ワークショップをAPRSAFとして初めて開催しました。関係府省のご支援の下、民間機関と共催する形で執り行い、アジア・太平洋地域の宇宙産業振興の現状と目指すべき方向性を議論いたしました。パネリストには、政府機関に加えまして、欧米の機関投資家及びアジア地域で活躍するスタートアップ企業の代表者等を招きまして、従来にない多様な観点で活発な議論が展開されました。

 そして、全体会合の初日には、「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」において「人間の活動によって地球温暖化が起きていることは疑いの余地がない」と言明されました「気候変動」に関しまして、ベトナム、オーストラリア、インド、フランス、そして日本の研究者とともに、衛星データによる解析でこれからも貢献していくことを確認いたしました。

 さらに、「宇宙空間の持続的な利用」に関するパネルディスカッションでは、民間による宇宙活動が急速に拡大する中で、事業者の責任ある活動を確保するとともに、商業活動をさらに促進していく観点からも、宇宙デブリ、宇宙ごみに関連するルール作りを進めていくことが重要であるとの認識が共有されました。
 また、「宇宙イノベーション」に関するパネルディスカッションでは、全体会合前に行われました産業ワークショップでの議論を受けまして、宇宙産業は社会経済の発展に必要であり、宇宙イノベーションのために、政府機関の役割の進化、そして官民パートナーシップが重要であることが共有されました。

 最後に、15ヵ国の宇宙機関長(または代理)が出席して宇宙機関長、リーダーによるラウンドテーブルを行いました。ここでは今回のテーマやAPRSAFに関するコメントをいただくとともに、2019年に設定しました「名古屋ビジョン」、これは次の25年間を見据えた今後10年間の取組みなのですが、設定から2年を経てその取り組みが進捗していること、そしてビジョンで掲げた4つの大きな目標、つまり、一つ目「広範な地上課題の解決の促進」、二つ目「人材育成や科学技術力の向上」、三つ目「地域の共通課題に対する政策実施能力の向上」、四つ目「地域のニュープレイヤーの参画促進と多様な連携の推進」、これらの4つの大きな目標は依然として重要であること、そして、引き続き目標の達成に向けて地域で協力することの重要性を再認識して、共同声明をまとめて終了しました。
 APRSAFは、来年はベトナムでの現地開催、再来年はインドネシアでの開催を予定しています。
 全体会合及び宇宙産業ワークショップについては、アーカイブ映像をご覧になることができますので是非ともご覧いただければと思います。

「はやぶさ2」地球帰還から1年

 昨年(2020年)12月6日に、小惑星探査機「はやぶさ2」が地球に小惑星リュウグウのサンプルを届けてから、1年が経ちました。
 サンプルの分析作業につきましては、昨年12月から今年6月までの間、「キュレーション活動Phase-1」として、サンプルの取り出し、仕分け、そして基本的な状態等の解析を実施した後に、今年の6月より、基本的な情報等が整理されたサンプルの一部において、「高次キュレーション活動Phase-2」と呼んでおりますが、この活動として、サンプルの高次詳細記載データ取得及びより高度なキュレーション技術開発を行うとともに、6つの分析項目に区分して「初期分析」を実施してまいりました。この6つの分析項目を具体的に申し上げますと、①化学分析、②石の物質分析、③砂の物質分析、④揮発性成分分析、⑤固体有機物分析、⑥可溶性有機物分析で構成されております。これらの分析は予定通り進んでおりまして、研究成果をとりまとめて、来年の春頃を目標に論文等にて報告すべく、JAXA内外の研究者による内容の精査が進められているところであります。

 またNASAとの連携協力のもとで、小惑星リュウグウのサンプルの一部をNASAに提供することになっておりましたが、先日11月30日にNASAのジョンソン宇宙センターにおきまして、無事に、そのサンプルの引き渡しを行いました。ジョンソン宇宙センターは、地球外物質のキュレーション設備を有しておりまして、アポロ計画以降、解析、研究が行われてきた知見もあることから、私も今後の解析に期待しているところであります。

 来年(2022年)の6月頃には、世界中の研究者に向けてサンプル研究の国際公募を行います。その準備も着々と進めておりまして、年明け1月中には、国際公募に供するサンプルのカタログを公開する予定であります。

 また、「はやぶさ2」が持ち帰りましたリュウグウのサンプルについては、研究者のみならず、多くの皆様にご覧いただく機会を設けて、宇宙科学、宇宙探査に関する興味関心を膨らませていただくこともJAXAの役割の一つと考えております。現在、日本科学未来館殿及び相模原市立博物館殿のご協力を得まして、サンプルを公開しております。日本科学未来館殿からは、12月4日と5日の両日合計で約1,800名もの方々にご来場いただいたとのご報告を頂きました。日本各地の皆さまにもご覧いただく機会を設けるべく、今後も検討してまいりたいと思います。

 「はやぶさ(初号機)」及び「はやぶさ2」で培った日本のサンプルリターン技術をさらに磨いて、太陽系形成の理解へと迫る小天体探査における世界からの期待に答えるためにも、今後、火星衛星探査計画MMXをはじめ、小型月着陸実証機SLIM、さらにアルテミス計画など、国際宇宙探査計画への貢献を引き続き果たしてまいりたいと考えております。

今年一年間の活動総括

 今年は、日本人宇宙飛行士が国際宇宙ステーション(ISS)に連続して滞在し、また、新型宇宙船のISSへの往来や、民間商業飛行も活発化するなど、有人宇宙活動が一年を通じて注目された年でありました。JAXAにおいては、野口宇宙飛行士が昨年11月から今年5月まで、そして星出宇宙飛行士が今年の4月から11月までISSに長期滞在して、様々な任務を遂行しました。ISSでの実験や船外活動、日本人2人目のISS船長就任、そして地上の皆様との交信イベント等、日本人宇宙飛行士の活動による国際的な貢献も果たせたものと考えております。
 また、10日後の12月20日からは、13年振りとなります新たな宇宙飛行士候補者募集のエントリー開始を予定しております。今後、人類の活動領域が地球周回低軌道から月そして火星へと拡大することに向けて、JAXAとしても国際パートナーや産業界との連携のもと、取り組んでまいりたいと思います。

 安全・安心な社会の実現への貢献という側面では、JAXAの地球観測衛星による災害への貢献が挙げられます。先ほど申し上げました軽石に加えまして、台風、集中豪雨、洪水、土砂災害、火山噴火、地震、森林火災、津波などの災害時において、内閣府殿や国土交通省殿などの政府関係機関、そして地方公共機関等からの要請を受けまして、緊急観測に対応してまいりました。一方で、防災の観点からの研究成果としましては、東京大学殿との共同研究で研究開発を進めております、日本中の河川の流量やその氾濫域の推定結果をリアルタイムでモニタリングが可能な「Today’s Earth-Japan」、このシステムにおきまして、過去の台風事例にもとづいて堤防の決壊に関して早期の警戒情報を発信できる可能性を確認するなど、システムをより効果的に利用するべく取り組んでいるところでございます。

 ロケット打上げの観点では、人工衛星等の打上げのほか、打上げを利用した実証機会提供も行ってまいりました。具体的には、深宇宙探査用のデトネーションエンジンステムの宇宙飛行実証を行った観測ロケットS-520-31号機、そしてノルウェーのスバルバードロケット実験場からは、高緯度電離層におけるプラズマの流出現象の観測を目的としたSS-520-3号機、さらにイプシロンロケット5号機による革新的衛星技術実証2号機の打上げ、そしてH-IIAロケット44号機によります準天頂衛星「みちびき」初号機の後継機の打上げと、全て成功裡に実施し、日本のロケット技術の信頼性向上に寄与できていると考えております。12月21日には、H-IIAロケット45号機によります英国通信衛星の打上げを控えておりますが、気を緩めることなく打上げに向けた射場作業を実施してまいります。

 宇宙科学・探査分野では、「はやぶさ2」の成果のほか、水星磁気圏探査機「みお」も、水星に向けた航行を順調に行っております。この10月には初めて、太陽に一番近い惑星である水星の重力を利用したスイングバイを行って、併せて水星の観測を行いました。
 「はやぶさ2」については、2つの小惑星を目指す拡張ミッションとして、2026年頃に小惑星2001CC21への到達、また2031年頃に小惑星1998KY26に到達するべく、運用を継続して行っております。

 航空分野では、空港周辺の騒音低減を目指して研究開発を進めております機体騒音低減技術FQUROHにおいて、実用化に向けて中型旅客機での実証連携体制を構築したほか、さらに超音速機研究開発でも、実用化に向けた国内産業界との連携体制を構築するなど、推進を図っております。さらに災害救援航空機情報共有ネットワークD-NETにおいては、災害に加えまして、さらに大規模イベントでの警備・警戒での活用を進めており、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会で警察庁殿が主導します警備体制の構築、運用にも貢献いたしました。

 今年も新型コロナウイルス感染症の影響が続くなか、ウィズコロナの観点から、JAXAは関係各方面の皆様と工夫をしながら、この一年間の事業に取り組んでまいりました。
 ご協力いただきましたすべての方々に心より感謝申し上げます。
 また、多くの皆様からお寄せいただきましたご意見、そして激励は、私たちの力の源となりました。あらためて皆様のご支援に御礼申し上げます。
 報道メディアの皆様にも多くの報道ニュース等によりましてJAXAの話題を発信していただきました。一年間大変お世話になりありがとうございました。引き続きご理解ご協力のほどをお願いいたします。
 少し早いですが、良いお年をお迎えください。

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