宇宙科学の研究 科学観測用大気球

科学観測用大気球とは

大気球は、人工衛星や観測ロケットと並ぶ、科学観測と宇宙工学実験のための飛翔体です。
極薄のポリエチレンフィルムで作られた気球にヘリウムガスを詰めて、飛行機の3~4倍の高度の成層圏に実験装置を運びます。
大気球実験では搭載機器の大きさや重量に対する制限が緩く、飛翔機会も多いため、最新鋭の実験装置を用いた野心的な実験が数多く行われています。
また回収される実験装置に少しずつ改良を加えながら新しい成果を生み出すこともできます。
気球実験で実績を積んだ搭載装置は、人工衛星での実験に利用されることもあります。
そして大気球実験で萌芽的な研究をスタートさせた多くの若手研究者が、後に最先端の宇宙科学研究をリードしてきました。

1971年以来2007年まで、400機以上の大気球が岩手県大船渡市三陸町から打ち上げられ、さまざまな実験が行われてきました。
2008年からは北海道広尾郡大樹町で、幅広い大気球実験を展開しています。
また、南極での白夜を利用した長時間飛翔や、ブラジルでの南天の天体観測実験など海外での実験も進めています。

新たな宇宙科学を切り拓く飛翔体として、より重い搭載機器をより高くより長時間飛翔させるための次世代気球の開発も進めています。
数ヵ月にわたる飛翔を可能にするスーパープレッシャー気球や、成層圏を越え中間圏での飛翔を可能にした超薄膜高高度気球など、世界最先端の技術開発を行っています。
200年以上前に人類を初めて空に飛翔させた気球は、今なお進化し、宇宙科学、宇宙開発の最前線に位置する飛翔体として活躍しています。

トピックス

一覧
2020年7月25日 更新

大気球実験B20–04の実施終了について [マルチクロックトレーサーによる大気年代の高精度化]

国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、2020年7月25日(土)午前3時57分に、成層圏における大気サンプリングを目的として、2020年度気球実験の2号機を、連携協力拠点である大樹航空宇宙実験場より放球しました。この気球は満膨張体積100,000m3(直径約64m)の大型気球で、毎分およそ300mの速度で上昇しました。
気球は、放球2時間25分後に大樹航空宇宙実験場東方約42kmの太平洋上において高度35kmで水平浮遊状態に入りました。その後午前6時52分に指令電波により切り離された気球及び大気サンプラーは、大樹航空宇宙実験場南東約30kmの海上に緩降下し、午前7時38分までに回収船によって回収されました。

放球時の地上気象状況は、天候:霧雨、風速毎秒1m、気温:摂氏16度でした。

※実験概要
成層圏大気科学において現在最も注目されているものの一つである大気年代は成層圏大気輸送の重要な指標であり、特に地球温暖化に伴う成層圏大気力学過程の応答を検出できると期待されています。これまで「クロックトレーサー」と呼ばれる二酸化炭素(CO2)または六フッ化硫黄(SF6)を観測し、その濃度から大気年代を決定する研究が行われてきました。しかし、その長期変化の傾向は近年の数値シミュレーションの結果と異なっており、また必ずしもCO2とSF6の両者から決定した年代は一致しません。そこで、本研究では、CO2とSF6に加えて、新たな「クロックトレーサー」として炭素同位体(13C)、O2/N2比とハロカーボン類の濃度を計測して独立に大気年代を決定し、これまでの大気年代研究の妥当性を検証し、同時に大気年代決定の高精度化・重層化を図ります。大気年代の決定と同時に、成層圏大気の過去30年間にわたる温室効果気体濃度のモニタリングに最新のデータを加え、成層圏における物質循環の長期変動を解明することも目的としています。

放球直前の大気球B20-04号機
©JAXA

プレスリリース

一覧

科学観測用大気球の特徴

次世代気球の開発

気球をより高高度で飛翔させるためには、気球自体の重量を軽くしなければなりません。
超薄膜型高高度気球は、気球用に開発された非常に薄いポリエチレンフィルムで製作されています。
2003年には膜厚1000分の3.4ミリの気球が高度53kmまで到達し、世界最高気球到達高度を30年ぶりに更新しました。
現在では中間圏でのオゾン観測などで使われています。

スーパープレッシャー気球は、わずかな内圧をかけることで夜間にガスが冷えてもしぼまないために浮力が安定し、数ヶ月にわたり一定高度で飛翔を続けることができます。
皮膜にかかる大きな力を支える構造やその実現方法の研究を行っています。

PAGE TOP