人工衛星で宇宙から地球を守る・利用する 全球降水観測計画/二周波降水レーダ「GPM/DPR」

後期運用中

全球降水観測計画/二周波降水レーダ「GPM/DPR」とは

全球降水観測計画/二周波降水レーダ「GPM/DPR」

日米を中心とした国際協力の下で進められている全球降水 観測計画(GPM計画)。その軸となる人工衛星に搭載された 二周波降水レーダの開発を日本が担当しています。このレーダ では、降水の立体構造を高い精度で観測することができ、 日々の気象予報や気候学の研究にも役立てられています。

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2021年10月1日 更新

ドイツやベルギーで発生した豪雨による洪水~気候変動による大雨の増加~

2021年7月、欧州各地で断続的な大雨が発生し、ドイツやベルギーなどを中心に洪水が発生して甚大な被害が発生しました。被害を受けられた方々に対し、謹んでお見舞い申し上げます。

降水状況の把握に関する情報提供の観点から、全球降水観測計画(GPM)主衛星や衛星全球降水マップ(GSMaP)など、宇宙から雨の状況を観測しているデータを用いて解析を実施しました。本稿では、その解析結果について報告します。また、このような頻発する豪雨災害の背景として、2021年8月に公開された気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書(AR6) 第1作業部会(WG1)報告書に示された、大雨の頻度と強度の増加に関する見解について紹介します。
欧州周辺での7月の大雨の様子
図1は、衛星観測から求めた世界の雨マップ(衛星全球降水マップ;GSMaP)による2021年7月12日~14日(以降すべて世界標準時)の平均降水量(図1左)と、過去21年分のGSMaPの統計から算出した2021年7月12日~14日の豪雨指標(図1右)の分布を示しています。
図1左に示したGSMaPによる衛星降水情報から、洪水による被害が報告されているドイツ西部などを中心とした地域で大雨が確認でき、3日間の積算で75 mmを超える大雨が続いていたことがわかります。同領域での過去21年のGSMaP統計から、7月のひと月に降る雨の総量は、おおよそ60~80 mmなので、例年のひと月(31日)分の雨と同じ程度の雨が3日で降ったことがわかります。
図1右には、過去21年の7月12日~14日の平均降水量のうち上位数%の降水強度以上に相当する降水があった領域を豪雨指数として示しています。濃いピンクの領域が、2021年の7月12日~14日が過去21年分の7月12日~14日の平均雨量と比較して、どの程度極端に雨が多い事例であったかを表しており、ドイツ西部やベルギーなどで持続的に雨が多かった傾向が捉えられています。

欧州周辺での7月の大雨の様子

図1. 2021年7月12日~14日(世界標準時)の衛星全球降水マップ(GSMaP)による平均日降水量 [mm/day](左)と豪雨指数(90, 95, 99パーセンタイル値)(右)
濃いピンクは、過去21年の7月12日~14日の平均降水量のうち上位1%の降水強度(99パーセンタイル値)以上に相当する降水があった領域を示しています。

GPM計画について

GPM計画は二周波降水レーダー(DPR:Dual-frequency Precipitation Radar)とマイクロ波放射計を搭載した主衛星と、マイクロ波放射計を搭載した副衛星群とからなるスケールの大きな観測計画です。
日本(JAXA)とアメリカ(NASA)が中心となり、米国海洋大気庁(NOAA)、フランス、インド、中国等との国際協力により実現します。
JAXAは、主衛星の打ち上げと、情報通信研究機構(NICT)と協力して主衛星に搭載されるDPRの開発を担当しました。主衛星の本体および主衛星に搭載されるマイクロ波放射計はNASAが開発を担当。
マイクロ波放射計を搭載する副衛星群については、NASA、NOAA、フランス、インド、中国等の機関が開発を担当します。これら、複数機の副衛星群により、約3時間毎の全球降水観測が可能になります。

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