トピックス一覧
2021年10月1日更新
ドイツやベルギーで発生した豪雨による洪水~気候変動による大雨の増加~
2021年7月、欧州各地で断続的な大雨が発生し、ドイツやベルギーなどを中心に洪水が発生して甚大な被害が発生しました。被害を受けられた方々に対し、謹んでお見舞い申し上げます。
降水状況の把握に関する情報提供の観点から、全球降水観測計画(GPM)主衛星や衛星全球降水マップ(GSMaP)など、宇宙から雨の状況を観測しているデータを用いて解析を実施しました。本稿では、その解析結果について報告します。また、このような頻発する豪雨災害の背景として、2021年8月に公開された気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書(AR6) 第1作業部会(WG1)報告書に示された、大雨の頻度と強度の増加に関する見解について紹介します。
欧州周辺での7月の大雨の様子
図1は、衛星観測から求めた世界の雨マップ(衛星全球降水マップ;GSMaP)による2021年7月12日~14日(以降すべて世界標準時)の平均降水量(図1左)と、過去21年分のGSMaPの統計から算出した2021年7月12日~14日の豪雨指標(図1右)の分布を示しています。
図1左に示したGSMaPによる衛星降水情報から、洪水による被害が報告されているドイツ西部などを中心とした地域で大雨が確認でき、3日間の積算で75 mmを超える大雨が続いていたことがわかります。同領域での過去21年のGSMaP統計から、7月のひと月に降る雨の総量は、おおよそ60~80 mmなので、例年のひと月(31日)分の雨と同じ程度の雨が3日で降ったことがわかります。
図1右には、過去21年の7月12日~14日の平均降水量のうち上位数%の降水強度以上に相当する降水があった領域を豪雨指数として示しています。濃いピンクの領域が、2021年の7月12日~14日が過去21年分の7月12日~14日の平均雨量と比較して、どの程度極端に雨が多い事例であったかを表しており、ドイツ西部やベルギーなどで持続的に雨が多かった傾向が捉えられています。
図1. 2021年7月12日~14日(世界標準時)の衛星全球降水マップ(GSMaP)による平均日降水量 [mm/day](左)と豪雨指数(90, 95, 99パーセンタイル値)(右)
濃いピンクは、過去21年の7月12日~14日の平均降水量のうち上位1%の降水強度(99パーセンタイル値)以上に相当する降水があった領域を示しています。
2021年8月4日更新
長期衛星降水観測から明らかになった最近10年間の梅雨前線帯の降水の活発化(論文解説)
地球温暖化や気候変動などの影響により、近年は梅雨の季節になると毎年のように豪雨がもたらされ、水災害頻発しています。今年も、7月上旬に活発化した梅雨前線に伴って熱海などの東海・関東南部では大雨による土砂災害が発生しました(詳細はこちらの記事参照)。より正確な降水の予測のためには、近年、雨の降り方がどのように変化してきているかを捉えることが極めて重要です。
JAXAでは、20年以上の長期にわたり、熱帯降雨観測衛星(Tropical Rainfall Measuring Mission; TRMM)と全球降水観測計画(Global Precipitation Measurement Mission; GPM)を通して宇宙から世界の雨を観測しています。これらの長期間の衛星降水観測データを用いた研究として、7月7日付(英国時間)で英国ネイチャーリサーチの『Scientific Reports』電子版で、東京都立大学と名古屋大学による研究成果が掲載されました。この研究発表について東京都立大学から発表されたプレスリリースでは「本研究の結果は、梅雨前線の雨の降り方が変化していることを示唆しています。今後も降雨観測衛星による継続的なモニタリングが重要です。さらに、梅雨前線の雨の降り方の変化に対応した防災対策が必要であると考えられます。」とされています。本研究は、JAXA共同研究(第2回地球観測研究公募; EO-RA2)で実施されました。そこで本稿では、この東京都立大学と名古屋大学による最新の研究成果に加え、使われたJAXAの衛星搭載降水レーダによる降水観測について紹介します。
図1. TRMMとGPMの衛星降水レーダ観測による、1998年〜2008年と2009年〜2019年の各11年平均の降水頻度の差。単位は%。緑色(オレンジ色)は、降水活動が活発化(不活発化)していることを示す。図中の黒丸(灰色の丸)は、平均値の差が有意水準95%(90%)で統計的に有意であることを示す。(東京都立大学の発表資料引用に加筆)
2021年7月9日更新
TE-Japanによる東海・関東南部の土壌水分モニタリング
2021年7月1日~5日頃にかけて、活発化した梅雨前線が日本列島付近に停滞し、東海・関東南部を中心に甚大な被害が発生しました。被害を受けられた方々に対し、謹んでお見舞い申し上げます。
JAXAでは、全球降水観測計画(GPM)主衛星や衛星全球降水マップ(GSMaP)など、宇宙から雨の状況を観測しているデータを用いて解析を実施し、速報記事として「活発化した梅雨前線に伴って東海・関東南部で発生した大雨の観測」として掲載いたしました。
Today’s Earth ? Japan(TE-Japan)とは?
今回の大雨は、7月3日午前に静岡県熱海市で土石流発生を引き起こすなど、大きな被害をもたらしました。こうした土砂災害が起こる主な要因の一つとして、災害の前から土壌中に多量の水分が蓄えられていたことが推測されます。
JAXAでは、陸上の水循環をより詳細に把握するために、陸域水循環シミュレーションシステム「Today’s Earth - Japan(TE-Japan)」を東京大学と共同で開発・運用しています。TE-Japanででは、降雨によってもたらされた水が、陸上のどこにどの程度集まるのかを推定することができ、河川流量や地上からの蒸発散量、土壌中の水分量など、陸上の水に関わる多くの物理量の現況をどなたでもウェブページ経由で閲覧することが可能です。
また、同システムに気象庁の気象予報データを入力することで、およそ30時間後までの予測シミュレーションを定常的に行うことも可能となっています※1。予測精度に関しては、顕著な災害事例を中心に評価を行っており、関東を中心に広い範囲で被害が出た2019年台風19号の事例では高い精度を確認し、東京大学と合同でプレスリリースを行いました。
TE-Japanが推定した7月初旬の大雨による土壌水分量の変化
TE-Japanは、日本全土について約1kmの空間解像度で1時間毎に計算しており、地面の下方向にも図1左に示すように、土壌の各層(計6層)について土壌水分量を推定することが可能となっています。JAXAではこのデータを用いて、今回の災害が発生する前にこれらの地域で土壌水分量がどのような状況であったのかを解析しました。
図1右は、2021年6月28日から7月3日にかけてTE-Japanが推定した日本全土の土壌水分量の平年値※2からの偏差※3を示した図です。7月に入った時点で、太平洋側ではそれまでの長雨により土壌が平年に比べかなり湿った状態にあったことが分かります。
図1.(左)TE-Japanが表現する陸上での水収支のイメージと土壌の各層の厚さ
(右)TE-Japanが推定した土壌第2層における土壌水分量の平年からの偏差(世界標準時6月28日~7月3日)
※1:気象業務法により、予測情報は共同研究機関にのみ公開しています。
※2:TE-Japanが推定した土壌水分量の2007年から2020年までの平均値。
※3:各時刻で推定された土壌水分量から平年値を引き、2007年から2020年までの分散で除した値。おおよそ0に近いと平年通り、1~3で平年に比べやや多い、3以上で平年に比べ非常に多い土壌水分が推定されていたことを示す。
2021年7月5日更新
活発化した梅雨前線に伴って東海・関東南部で発生した大雨の観測
2021年7月5日現在、活発化した梅雨前線が日本列島付近に停滞し、東海・関東南部を中心に甚大な被害が発生しています。被害を受けられた方々に対し、謹んでお見舞い申し上げます。
JAXAでは、降水状況の把握に関する情報提供の観点から、全球降水観測計画(GPM)主衛星や衛星全球降水マップ(GSMaP)など、宇宙から雨の状況を観測しているデータを用いて解析を実施いたしました。
図1は衛星全球降水マップ(GSMaP)による7月1日~3日(世界標準時)の平均降水量(図1左)と、過去21年分のGSMaPの統計から算出した2021年7月1日~3日の豪雨指標(図1右)の分布を示しています。6月末に日本南海上にあった梅雨前線は7月に入ってから北上し、太平洋側を中心に大雨となりました。図1左に示した衛星による降水情報では、土砂災害などの被害が報告されている東海・関東南部を中心に3日間の平均で50 mm/dayを超える大雨が続いていたことがわかります。
図1右には、過去21年間のGSMaP統計値から算出した2021年7月1日~3日の豪雨指標を示しており、濃いピンクの領域が、2021年の7月1日~3日(世界標準時)が過去21年分の7月1日~7月3日(世界標準時)の平均雨量と比較して、どの程度極端に雨が多い事例であったか示しており、東海・関東を中心に強い豪雨傾向が捉えられています。
図1. 2021年7月1日~3日(世界標準時)の衛星全球降水マップ(GSMaP)による
平均日降水量 [mm/day](左)と豪雨指数(90, 95, 99パーセンタイル値)(右)
濃いピンクは、過去21年の7月1日~3日の平均降水量のうち上位1%の降水強度
(99パーセンタイル値)以上に相当する降水があった領域を示しています。
2020年7月8日更新
活発化した梅雨前線に伴って発生した九州地方の線状降水帯の観測
2020年7月6日現在、活発化した梅雨前線が九州付近に停滞し、九州地方を中心に甚大な被害が発生しています。被害を受けられた方々に対し、謹んでお見舞い申し上げます。
JAXAでは、降水状況の把握に関する情報提供の観点から、全球降水観測計画(GPM)主衛星や衛星全球降水マップ(GSMaP)など、宇宙から雨の状況を観測しているデータを用いて解析を実施いたしました。
図1は衛星全球降水マップ(GSMaP)による7月5日の日降水量の分布を示しています。梅雨前線に伴う降水帯が東西に長くのびている様子が確認できます。特に九州周辺では、250mmを超える降水量が宇宙からも捉えられています。
図1:2020年7月5日(日本時間)の衛星全球降水マップ(GSMaP)による日降水量の分布
©JAXA EORC
2020年3月9日更新
衛星雨データから見る世界の豪雨や干ばつ~「世界の雨分布統計」ウェブサイトの公開~
JAXAでは、全球降水観測(GPM)計画の下、GPM主衛星に搭載された二周波降水レーダ(DPR)と、複数の衛星を組み合わせて作成した衛星全球降水マップ(GSMaP)により、宇宙から世界の雨を観測しています。
この度、豪雨や干ばつなどの降水変動監視のための新しいGSMaPウェブサイト「JAXA世界の雨分布統計」を公開しました(図1)。このウェブサイトでは「1日・5日・7日・10日・月」単位の積算降水量や、豪雨指数(パーセンタイル値*)、干ばつ指数(SPI値**)を表示できるため、世界の豪雨や干ばつを容易にモニタリングすることができます。2000年4月から現在までのデータが閲覧可能です。
図1.「世界の雨分布統計」ウェブサイトの画面イメージ(2020年2月の月降水量)
2020年3月5日更新
進路予測が難しかった2019年台風10号
2019年は、台風15号が房総半島を中心に暴風による被害をもたらし、また、台風19号が東日本や東北地方を中心に大雨などによる被害をもたらすなど、台風が日常生活に大きな被害をもたらした年でした。台風10号は、日本上陸に伴い、日本の各地で災害が発生し、死者2名、負傷者56名の大きな人的被害がありましたが、台風進路の予測が難しい台風でした。
この台風10号を対象に、JAXAが東京大学及び理化学研究所と共同で開発した、衛星データと気象モデルを融合するシステム「NICAM-LETKF JAXA Research Analysis (NEXRA)」のデータを使用し、台風進路に影響を与える要素についての解析を行った結果をご紹介します。
図1 JAXA/EORC台風データーベースで提供している2019年台風10号の経路図。
2020年1月31日更新
宇宙から見たオーストラリアの大規模森林火災
2019年9月頃にオーストラリア南東部のニューサウスウェールズ州を中心に多発した森林火災は、次第に規模を拡大し、複数の場所で発生した森林火災が合流して制御不能となる「メガ火災(Mega Fire)」も発生するなど、2020年1月末の段階でも終息の目途が立たない状況となっています。
複数の衛星データを用いて、今回の森林火災を多角的に解析した結果を紹介します。
(左)2019年12月の1か月間のGSMaP降水量から計算したオーストラリアのSPI、(右)同様に2019年10-12月の3か月間の降水量から計算したSPI。SPIの値と干ばつの規模、現象の頻度の関係は、WMO (2012)で整理されており、SPIが「-1.5以下で-2.0より大きい」値を取る場合は、概ね「20年に1回」の著しく乾燥した(雨の少ない)状態、SPIが-2.0未満の場合は、現象の頻度が「50年に1回以下」の極端な乾燥に該当し、社会的影響が非常に大きい干ばつが発生する恐れのあることを示す。
2019年12月6日更新
フィリピンに被害をもたらした台風Kammuriの発達した"雨雲の塔"
JAXAでは、全球降水観測(GPM)計画の下、GPM主衛星に搭載された二周波降水レーダ(DPR)と、複数の衛星を組み合わせて作成した衛星全球降水マップ(GSMaP)により、宇宙から世界の雨を観測しています。今回は、2019年12月にフィリピンに被害をもたらした台風Kammuri(カンムリ)の衛星降水観測事例を報告します。フィリピンのマニラ観測所(Manila Observatory)では、台風Kammuriに関するレポートを公開しており、JAXAのGSMaPデータも情報源の一つとして役立てられています(図1)。
図1. Manila Observatoryによるレポートの抜粋
©JAXA/EORC
2019年7月1日更新
世界中の雨の分布がリアルタイムでわかります!
JAXAでは、複数の衛星の観測データを利用し、世界の雨分布情報(GSMaP)を提供しています。2015年11月から、即時性の高い日本の静止気象衛星「ひまわり」のデータを活用することで、ひまわり領域における実時間の降雨分布を提供するJAXA世界の雨分布リアルタイム(GSMaP_NOW)を開発し公開しています。即時性の高い雨分布の画像やデータは、アジア太平洋地域での降水の現況把握に広く活用されています。2018年11月からは、ひまわり観測領域に加えて、欧州の静止気象衛星「Meteosat」観測領域まで対象領域を拡張しました。
この度、アメリカの静止気象衛星「GOES」データを追加することで、JAXA世界の雨分布リアルタイム(GSMaP_NOW)のデータ領域を全球に拡張しました。これにより、発達中の熱帯低気圧や台風・サイクロンなどの世界中の雨の様子をリアルタイムにウェブ上で閲覧できるようになりました。
[詳細はこちら]
図:GSMaP_NOWの領域の拡張。
2019年6月5日更新
EORC久保田拓志 主任研究開発員が、日本気象学会 岸保・立平賞を受賞
JAXA第一宇宙技術部門 地球観測研究センター(EORC)の 久保田拓志 主任研究開発員が、気象庁気象研究所気象観測研究部 青梨和正 部長と共同で、2019年度日本気象学会 岸保・立平賞「衛星観測による全球降水マップの開発と社会での実利用推進に関わる功績」を受賞しました。
受賞の理由となった衛星全球降水マップ(GSMaP)は、準リアルタイムで配信する高精度高分解能の降水データです。
全球降水観測計画(GPM)主衛星を中心として、JAXAの水循環変動観測衛星「しずく」等の複数台のマイクロ波放射計データと気象庁のひまわり8号等の静止気象衛星データを組み合わせて作成します。2007年11月に「JAXA世界の雨分布速報」としてホームページを公開後、利用ユーザは世界121カ国に広がり、降水監視・洪水予測・干ばつ監視・農業等の様々な分野でGSMaPの利用が進んでいます。
日本気象学会で行っている顕彰事業の表彰を現役のJAXA職員が受賞することは、旧宇宙開発事業団(NASDA)等の旧3機関を通じて、これが初めてとなります。
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2019年4月10日更新
日本気象協会天気予報専門メディア「tenki.jp」における衛星全球降水マップ(GSMaP)実況・予報情報の公開
JAXAは日本気象協会と協力して、GSMaPを用いた予報情報の提供に向けて開発を行って参りました。2019年4月10日より、GSMaPによる降水実況および予報情報が、日本気象協会が運営する天気予報専門メディア「tenki.jp(てんきじぇーぴー)」にて、「tenki.jp×JAXA 世界の雨雲の動き」と題した新サービスとして、提供が開始されました。tenki.jpはWebサイト・アプリを含めた年間ページビュー数は約40億PV、PC・スマートフォン向けWebサイトの月間最大ページビューは約4.2億PV(2018年9月)等、非常に利用者の多い天気予報専門メディアです。
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2019年3月25日更新
衛星全球降水マップ(GSMaP)の海外における農業分野での利活用
JAXAでは、全球降水観測計画(GPM)において、GPM主衛星や水循環変動観測衛星「しずく」など複数の人工衛星データを用いて、「衛星全球降水マップ(GSMaP)」という世界の降水分布データを作成して提供しています。
GSMaPは、これまで気象・防災分野での利用事例が多くありますが、近年は、農業分野においても、作物の生育判断に重要な基本情報としてGSMaPによる降水データの利用が拡がっています。農産物の干ばつ被害のリスク軽減にはさまざまな対策方法がありますが、GSMaPデータが実際に民間企業で利用され、社会実装されている例として「天候インデックス保険」があります。
また、JAXAにおいても農業分野でのGSMaP利用を進めており、東南アジア各国の農業省への農業気象情報の提供のため、JASMIN(JAxa's Satellite based MonItoring Network system)というウェブシステムを開発し、インターネットで公開しています。
JASMINの応用事例として、冒頭の説明にあった天候インデックス保険に関連し、その対象となっているタイチェンマイの干ばつの2015年の例を紹介します。
[詳細はこちら]
2018年12月10日更新
地球観測衛星による雨及び雹データ等を活用したパナソニック社サイト「Rain Power Graph」が公開されました
JAXAは、衛星データの民間利用推進を目的に数種類の衛星データを提供し、それらをもとにパナソニック株式会社 エコソリューションズ社の雨とい事業60周年記念サイト「Rain Power Graph」が公開されました。
同サイトでは、全国100地点の「気象に関する5つの指標(降雨量/瞬間降雨量/瞬間最大風速/降雪量/UVインデックス)」を同社が偏差値化し、家が受ける気象の脅威に関する項目の全国偏差値を水滴グラフで確認できる仕様になっており、衛星データを「家」という視点で編集加工して閲覧できるようにした取り組みです。
2018年11月1日更新
JAXA世界の雨分布リアルタイム(GSMaP_NOW)の領域拡張
JAXAでは、2015年11月より、静止気象衛星ひまわり観測領域において「実時間」の降雨分布を提供する「JAXA世界の雨分布リアルタイム」ウェブサイトおよびそのデータであるGSMaPリアルタイム版(GSMaP_NOW)データを公開しており、2018年9月末で、登録ユーザ約4,200名、114ヶ国と利用が世界中に広がっています。
この度、2018年11月1日より、JAXA世界の雨分布リアルタイム(GSMaP_NOW)の領域を、静止気象衛星ひまわり観測領域に加えて、静止気象衛星「Meteosat」領域まで拡張しました。(図1)
[詳細はこちら]
図1. GSMaP_NOWの領域の拡張
2016年4月21日更新
「GSMap」が文部科学大臣表彰 科学技術賞を受賞
「衛星全球降水マップ(以下、GSMaP)」の開発・研究メンバーが、平成28年度文部科学大臣表彰 科学技術賞(科学技術振興部門)を受賞しました。
「GSMaP」は、データの精度や速報性の不足といった問題から利用が進まなかった降水データにおいて、準リアルタイムで高精度の降水分布データを提供できるシステムが評価されました。
「GSMaP」はアジア・アフリカ・オセアニア・中南米・欧州・米国の気象・水文機関に利用され、降雨監視や洪水予測など降雨災害の被害軽減に貢献しています。さらに「世界の雨分布速報」や「世界の雨分布リアルタイム」といったホームページ上で公開され、一般利用者にも使いやすいシステムとなっています。
2016年4月15日更新
GPM/DPRパネル「宇宙から見た台風の雨」が「科学技術の『美』パネル展」優秀賞を受賞
第56回科学技術週間における「科学技術の『美』パネル展」で、GPM/DPRプロジェクトチームの作品「宇宙から見た台風の雨」が優秀賞を受賞しました。受賞したのは、GPM/DPRがとらえた2014年7月22日0時頃(日本時間)のフィリピン付近での台風10号の内部構造の画像です。雨雲スキャンレーダDPRは、CTスキャンのように雨雲の中の降水(雨・雪)の構造を立体的に見ることができます。赤色は降水の強い領域を、青色は降水の弱い領域を示しています。この時は高度15km付近まで降水が観測されており、非常に発達して台風の目も大きくなっていました。
「科学技術の『美』パネル展」は、研究成果などで発生した印象的な画像の感動を共有し、科学技術への興味を広げることを目的としています。多くの研究機関の画像がパネルとなり全国の科学館などで巡回展示され、見学者による投票アンケートにより優秀作品が選ばれました。
4月15日(金)に科学技術振興機構 東京本部別館にて表彰式が開催され、GPM/DPRプロジェクトマネージャ 古川欣司と地球観測研究センター研究領域上席 沖理子が出席しました。
2016年3月24日更新
GPM主衛星の観測データ、気象庁の数値予報システムに定常利用へ~気象の予測精度向上に貢献
気象庁とJAXAは、GPM主衛星の観測データ利用により降水を中心とした気象予測の精度向上を図るため、共同で調査および技術開発を進めてきました。その結果、天気予報や防災気象情報などの基礎資料を作成する数値予報システムにおいて、降水などの予測精度が向上することが確認できたため、2016年3月24日より、同データの定常利用が開始しました。
数値予報システムに衛星搭載降水レーダのデータを利用することは、世界の気象機関では初めてのことになります。気象庁とJAXAは、衛星の貴重な観測データをより有効に活用するため、今後も技術開発に努めてまいります。
2015年11月2日更新
「JAXA世界の雨分布リアルタイム」を公開!
地球観測研究センター(EORC)では、現在時刻の降雨情報を提供するGSMaPリアルタイム版(GSMaP_NOW)を開発し、「JAXA世界の雨分布リアルタイム」ウェブサイトから公開を開始しました。
これまで提供してきたGSMaP準リアルタイム版(GSMaP_NRT)では、衛星データの収集に3時間を費やし、1時間でデータ処理することで観測終了後から4時間後の提供をしていましたが、GSMaP_NOWは30分毎に、最近1時間の降雨分布を提供することができます。
2014年9月2日更新
GPM主衛星 3D降水データ等の提供を開始
JAXAはNASAと共同開発したGPM主衛星が取得するデータの一般提供を9月2日から開始しました。
これまで、データ精度を向上させる校正作業を実施してきましたが、作業を完了し、JAXAの地球観測衛星データ提供システム「G-Portal」から一般ユーザへGPMプロダクトの提供を開始しました。
これらのGPMプロダクトによって、全球の降水(雨や雪)をこれまでより正確に把握することができるようになり、気象庁等の各国気象機関におけるデータ同化による天気予報精度向上や台風の進路予測に利用されます。また、アジア等の途上国における洪水対策などに利用される予定です。
2014年3月25日更新
GPM主衛星からの画像が届きました!
DPRは3月9日より、GMIは3月5日より、それぞれ初期チェックアウトを開始しており、本チェックアウト中に取得したデータから試験的に処理を行ったものが、初画像として公開されました。
GPM計画は国際共同ミッションで、計画の要となるGPM主衛星はJAXAが情報通信研究機構(NICT)と共同で開発した「雨雲スキャンレーダ」(DPR)と、NASAが開発したGPMマイクロ波放射計(GMI)の二つのミッション機器を搭載しています。
今後はミッション機器の校正、観測データの精度確認を行ない、約半年後からGPM主衛星が観測するデータを世界中の利用者へ提供いたします。
2014年2月28日更新
GPM主衛星を搭載したH-IIAロケット23号機、打ち上げ成功!
2月28日(金)3時37分(日本時間)に、GPM主衛星を搭載したH-IIAロケット23号機が、種子島宇宙センターから打ち上げられました。
ロケットは正常に飛行し、打ち上げから約15分57秒後にはGPM主衛星を分離したことを確認しました。今後GPM主衛星は、通信の確保、姿勢制御を行った後、二周波降水レーダDPRをはじめとするミッション機器の電源投入を行う予定です。
引き続き、皆様からの応援メッセージをお待ちしております!
2013年12月26日更新
「雨雲を、味方にせよ。」雨雲スキャンレーダ「DPR」を乗せたGPM主衛星をH-IIAロケットで打ち上げます!
JAXAとNASAが中心になり、世界中に降る雨を宇宙から見極めるGPM計画。その中心となるGPM主衛星を、2014年2月28日(金)午前3時7分~午前5時7分(日本標準時)にH-IIAロケット23号機で打ち上げることが決まりました!
GPM主衛星には、日本が開発した最先端の二周波降水レーダ(DPR)が搭載されています。DPRは、従来の衛星では観測できなかった小雨から豪雨までを観測するとともに、まるで雨雲をスキャンするように、雲の中にある雨滴や雪・氷粒子の大きさなどの詳細情報を得ることができます。
GPM/DPRスペシャルサイトではコラムを更新しております。ぜひご覧ください。
2013年11月29日更新
「GPM主衛星」、種子島宇宙センターに到着!
GPM主衛星が11月24日(日)12時28分頃にNASAゴダード飛行センターから北九州空港に到着し、貨物船・陸送による移動ののち27日(水)午前2時24分頃に種子島宇宙センター第二衛星試験棟に到着しました。
26日夕方に種子島の島間港に到着した衛星は、深夜0時から移動開始。熟練の輸送チームの手によって、時速15km程度でゆっくりかつ慎重に運ばれました。
2013年11月25日更新
JAXAとNASAが共同開発の人工衛星「GPM主衛星」、日本に到着!
JAXAとNASAが共同開発の人工衛星 GPM主衛星が11月24日(日)12時28分頃にNASAゴダード飛行センターから北九州空港に到着し、貨物船により打ち上げ場所となる種子島宇宙センターに向かいました。北九州空港の到着は22日を予定していましたが、給油地のアラスカの悪天候の影響で2日遅れでの到着になりました。
GPM計画はGPM主衛星と8機程度の衛星群(コンステレーション)を組み合わせて、地球全体の雨の様子を高精度・高頻度で観測する国際協力ミッションです。
今回、日本に到着したGPM主衛星が打ち上げられることでGPM計画が本格始動し、全地球規模での水資源管理や台風・洪水等の水災害の被害低減、天気予報の精度向上等、私たちの日常生活のあらゆる場面で役立てられます。また、GPM主衛星に搭載される二周波降水レーダ「DPR」は、雨を三次元で精度よく観測することができる日本が開発した最先端の観測装置です。
2013年4月9日 更新
JAXAとNASAに質問しよう!GPMライブイベント開催
JAXAとNASAが共同開発している2013年度打ち上げ予定のGPM主衛星。このミッションを広く理解してもらうためのライブイベントを、このたびNASAが開催します。
<質問方法>
<諸注意>
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2013年3月12日 更新
NASA主催のGPMキャラクターコンテストのお知らせ
NASAとJAXAの共同ミッションである全球降水観測計画(GPM計画)。世界中で話題の日本のアニメ文化にあやかって、NASAがGPMキャラクターコンテストを主催しています。 |
2012年6月6日 更新
GPM主衛星へのDPR取り付けが完了
2012年5月、米国航空宇宙局(NASA)ゴダード宇宙飛行センター(GSFC)にて、全球降水観測計画(GPM計画)主衛星への、二周波降水レーダ(DPR)の取り付けが完了しました。 二つの白い箱型の観測装置がDPR (C)NASA 上部の銀色の観測装置はNASAの開発するマイクロ波放射計 (C)NASA
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2012年4月2日 更新
「DPR」をNASAに引き渡しました
3月30日、米国航空宇宙局(NASA)ゴダード宇宙飛行センター(GSFC)にて、全球降水観測計画(GPM計画)の主衛星に搭載される二周波降水レーダ(DPR)を、NASAに引き渡しました。 |
2012年2月10日 更新
「DPR」を報道機関に公開
2月9日、筑波宇宙センターで、全球降水観測計画(GPM計画)の主衛星に搭載される二周波降水レーダ(DPR)を報道機関に向けて公開しました。 |
2011年9月7日 更新
GPM計画の二周波降水レーダDPRのロゴが決定
この度、全球降水観測計画「GPM計画」の主衛星に搭載する二周波降水レーダ「DPR」のロゴマークが決まりました。GPM計画は地球上の降水(雨や雪)を観測するため、日米がリードする国際協力のもと進められており、JAXAは(独)情報通信研究機構NICTと協力してDPRの開発を進めています。DPRは高性能な降水観測装置で、H-IIAロケットによるGPM主衛星の打ち上げ後は、高精度な全球降水マップの作成が期待されています。現在、筑波宇宙センターで試験中のDPRは、今後NASAへ輸送されNASAの開発部分と組み合わされる予定です。 |
2011年6月27日 更新
二周波降水レーダー(DPR)KuPRとKaPRの組合せ試験
TRMMの観測範囲をより高緯度に広げた全球降水観測計画(GPM)の主衛星に搭載する二周波降水レーダー(DPR)の開発が進められています。二周波降水レーダーは、Ku帯とKa帯という2つの周波数帯をもつ2台のレーダー(KuPR、KaPR)で構成され、弱い雨や強い雨、雪を同時に、高精度・高感度に観測することができます。 |
2009年8月3日 更新
GPMの開発及び運用活動に関する了解覚書をNASAと締結
JAXAとNASAは2009年7月31日に、地球全体の雨や雪の降水を複数の人工衛星を使って観測する全球降水観測計画(GPM)の開発及び運用活動に関する了解覚書を締結しました。 |
2009年3月18日 更新
二周波降水レーダー(DPR)熱・構造モデル 振動試験
全球降水観測計画(GPM)の主衛星に搭載する二周波降水レーダー(DPR)の開発が進められています。この二周波降水レーダーは、Ku帯とKa帯という2つの周波数帯を持つ2台のレーダー(KuPR、KaPR)で構成され、弱い雨や強い雨、雪を、同時に、高精度・高感度に観測することができます。現在、DPRの熱・構造モデルの環境試験を筑波宇宙センターにて実施しています。写真は、Ku帯降水レーダ 熱・構造モデルの振動試験の様子です。 |
2008年10月17日 更新
KuPRレーダーのエンジニアリングモデルを試験中
全球降水観測計画(GPM)の主衛星に搭載する二周波降水レーダー(DPR)の開発が進められています。この二周波降水レーダーは、Ku帯とKa帯という2つの周波数帯を持つ2台のレーダー(KuPR、KaPR)で構成され、弱い雨や強い雨、雪を、同時に、高精度・高感度に観測することができます。このうち、Ku帯と呼ばれる周波帯レーダーのエンジニアリングモデルのアンテナパターン測定及びレーダ動作の確認を筑波宇宙センター電波試験棟において行っています。 |
2004年8月30日 更新
「第2回TRMM国際科学会議」開催
本会議は、2002年7月のハワイでの第1回会議に引き続き開催するものです。 |
2002年4月30日 更新
「第2回全球降水観測計画(GPM)国際ワークショップ」開催
熱帯降雨観測衛星「TRMM」の成功を受けて、現在、全球降水観測計画(Global Precipitation Measurement; GPM)が検討されています。2007年度頃に実現を目指しているGPMは、TRMM後継機となる主衛星を中心に、マイクロ波放射計を搭載する複数の副衛星群から構成されます。熱帯地域の観測を目的としていたTRMMとは異なり、GPM主衛星は高緯度地域まで観測範囲を広げて降水観測を行なう計画です。また、短時間で変化する降水現象をモニタリングするため、複数の衛星を利用して、地球全体を高頻度に観測します。GPM主衛星には、TRMMの降雨レーダを高性能化した二周波降水レーダとマイクロ波放射計を搭載します。これによって、降水の観測精度が向上するほか、中・高緯度地方の降雪観測までも可能となります。 |