2026年(令和8年)2月理事長定例記者会見

理事長定例記者会見

山川理事長の定例記者会見のトピックスをお伝えします

日時:2026年(令和8年)2月20日(金) 13:30-14:15

場所:JAXA東京事務所 B1F プレゼンテーションルーム

司会:広報部長 佐々木 薫

1. 最近のプロジェクト、事業等の取り組み

● KiboCUBEに基づく第6回選定メキシコ衛星の放出

 この「Gxiba-1」は、メキシコ国内の火山活動の観測などを目的として運用される予定で、災害監視や技術実証に貢献することが期待されています。2月3日の放出時には、筑波宇宙センターに、メルバ・プリーア駐日メキシコ大使をはじめとする大使館関係者や、衛星開発チームが来訪し、放出の様子をご覧いただきました。衛星放出の様子はJAXAチャンネルでもライブ中継し、メキシコ国内でも、関係者の皆様がパブリックビューイングで見守っていたとのご報告もいただきました。

 なお、JAXAでは、J-SSODによる衛星放出を、2012年から実施しております。KiboCUBEプログラムや、民事事業者による超小型衛星放出なども含めて、今回で通算100機を超える衛星を放出いたしました。「きぼう」日本実験棟からの超小型衛放出ミッションを通じて、技術実証、人材育成、国際協力等に貢献してまいりました。引き続き、宇宙を通じた国際協力、宇宙利用の拡大を目指して取り組んでまいります。

● 宇宙探査イノベーションハブ第13回研究提案募集(RFP)の選定結果

宇宙探査イノベーションハブは、産学官の研究結節点として、様々な異分野の人材・技術を糾合させたオープンイノベーションによる研究、事業に取り組んでおり、2015年4月の設立以降、その活動も10年が経過しております。その間、日本も参画するアルテミス計画をはじめとした国際宇宙探査計画の進展や、企業による宇宙活動も活発化するなど、宇宙探査を取り巻く環境が変化する中、2024年からは「Space Dual Utilization」というコンセプトを掲げ、研究制度「Moon to Mars Innovation」に取り組んでいます。

 宇宙探査イノベーションハブでは、この研究制度のもと、2025年8月から9月にかけて、13回目となる研究提案の公募を行いました。
 今回の公募では、従来の枠組みに捉われない自由な発想に基づく、シーズベースの挑戦的な研究を対象とした「チャレンジ型」を設定しました。「挑戦すること」や「新しく試みること」に価値を置き、提案段階で具体的な計画がなくても、実現可能性を高めるための支援を行なうなど、より提案しやすい形に工夫しております。この「チャレンジ型」のほか、昨年と同様の「システム型」、「ゲームチェンジ型」も合わせて、12件の研究課題を設定したところ、前回(第12回)の約2倍となる、合計43件のご応募をいただきました。最終的には20件のテーマを採択内定しております。今回の採択の特徴としては、全体的に月面の砂「レゴリス」への対策や、レゴリスを活用するアイデアが増えているのが特徴で、将来の月産月消の未来を目指して、採択内定企業等との研究を進めていく予定です。

● 新型宇宙ステーション補給機1号機(HTV-X1)のISS離脱

新型宇宙ステーション補給機1号機(HTV-X1)国際宇宙ステーション(ISS) からの離脱予定日が設定されましたので、お知らせします。
 “HTV-X1号機がISSのロボットアームによる把持から解放されるタイミング” を「ISSからの離脱」としていますが、このISS離脱予定時刻は、日本時間3月7日午前2時5分頃となる見込みです。
 HTV-X1号機 は、2025年10月末にISSへ到着し、ミッションの2つの目的のうち『ISSへの物資輸送』において、補給機として、国際宇宙探査計画に向けた技術実証機器や、ポストISSに向けた民間の実験装置等をISSに届け、補給を完遂いたしました。ISS離脱後は、もう一つの目的である、新たな宇宙技術の獲得を目指した、軌道上における『技術実証ミッション』を実施いたします。
 HTV-X1号機では、約3か月にわたり、技術実証として、“超小型衛星放出「H-SSOD」”、“衛星姿勢をレーザーで計測し、距離や姿勢運動を推定する軌道上実験「Mt. FUJI」”、“展開型軽量平面アンテナの軌道上実証「DELIGHT」” および、“次世代宇宙用太陽電池の軌道上実証「SDX」”を順次行う予定です。

2. F7-10エンジンを用いた「持続可能な航空燃料SAF」燃焼実証試験の成果

 JAXA航空技術部門では、調布航空宇宙センターに、2019年9月に導入した 純国産の航空エンジン『F7-10エンジン』を用いて、持続可能な航空燃料『SAF』による燃焼試験を、株式会社IHI様と共同で実施し、国内において前例の少ない100%SAF燃焼時の排気中に含まれる「すす」などに焦点を当てた詳細計測、分析を行いました
 本研究において「すす」に着目した理由ですが、まず、航空機が気候に与える影響に関する研究分野で関心が高まっている事象に、『飛行機雲等』があります。この『飛行機雲等』が発生する要因として、航空機から排出される「すす」が関与するとされており、さらに『飛行機雲等』は、「地球が太陽から受け取るエネルギー量」と、「地球から宇宙に放出されるエネルギー量」のバランス(放射収支)に影響を及ぼす可能性が指摘されているためです。
 これまで、航空エンジンにおいて、SAF使用時に排出される「すす」などに関して日本国内で得られたデータは限られており、気候影響を解明するために、基盤的な実験データの取得が課題となっていました。

 2025年9月から10月まで、航空エンジン実機による燃焼試験において、「100%SAF」のほか、「従来のジェット燃料」、それらを混合した「混合SAF」を用いて、エンジンから排気される成分について計測、分析を行いました。その結果、100%SAF燃焼時の「すす」排出は、従来ジェット燃料と比べて約75%低減されるデータが得られました。これはジェット燃料燃焼時と比べて約4分の1の低減となります。

 本研究で得られた「すす」の排出特性に関する基盤的な実験データは、飛行機雲の生成特性やその気候影響評価に向けた基礎的な理解に寄与するものであります。加えて、100%SAFの実機エンジンによる燃焼を実証した点は、SAF導入に向けた社会的な意義を持つと考えております。国際民間航空機関(ICAO)では、2050年に国際線の航空機が排出するCO2を実質ゼロとする目標を掲げており、昨今の航空業界における脱炭素化に向けて、持続可能な航空燃料『SAF』は、CO2排出削減の有力な手段として期待されています。今回の燃焼実証が、国内外の航空エンジンメーカはじめ、航空産業界におけるSAF導入の流れを加速し、産業振興の一助となるべく、取り組んでまいります。

 航空技術部門では、今回得られた成果および計測ノウハウを基に、SAF燃焼時の排出成分特性等に関する基盤的研究を継続し、飛行機雲を含む航空分野の気候影響評価に資する科学的基盤の構築を進めてまいります。

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